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SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の概要と取り組みをわかりやすく解説

SDGsについて興味があるけど具体的に何をすればいいの?」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。

SDGsには17の目標があり、まずはそれぞれの目標について理解を深め、「自社の事業と関連が深そうな目標は何か?」を見定めることが大切です。

全部で17あるSDGsの目標のうち9・産業と技術革新の基盤をつくろう」は、主に「持続可能な産業」へ目を向けた目標です。

 

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SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは

SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」が目指すべき道は、主に「持続可能な産業化」です。エネルギーや情報通信技術、輸送などのインフラは今や私たちにとって欠かせない存在です。

また、持続可能な開発の達成や、組織や団体、個人の能力向上を図るにあたり、インフラへの投資も必要といえます。インフラへの投資がもたらすメリットは、生産性の向上、所得の増大、健康や教育面の向上など多岐に渡ります。

レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る

雇用や経済開発を促す「製造業」の分野は、社会にとって必要不可欠な産業です。しかし、現状としては製造業における1人あたりの付加価値は、開発途上国では非常に低い状況です。

実際、アメリカでは製造業の1人あたりの付加価値が4,500ドルである一方、開発途上国における製造業1人あたりの付加価値は100ドル程度。大きな差が生じていることがわかります。

技術が進歩するということは、省エネを実現したり、資源効率を高めたりと、環境面にも良い影響を与えます。技術躍進により、過去10年間で多くの国で二酸化炭素の排出量が減少しました。

  • 「レジリエントなインフラ」とは……自然災害などに遭ってもスピーディーに復旧・回復できるインフラのことです。製造業などの産業が、強いインフラづくりへとつながります。

数字で見る「産業・技術」の現状

現在、開発途上国を中心に道路や電力、情報通信技術など必要なインフラが整っていません。実際、世界人口の16%が携帯ブロードバンド・ネットワークにアクセスできていない状況です。

低所得国などは、インフラが整備されていないことが理由で、およそ企業の生産性が40%損なわれています。つまり、インフラが整備できれば、企業における生産性の向上が見込めるということです。

開発途上国は、食料や飲料につながる「農産業」や、衣料産業などの分野におけるポテンシャルを秘めていると考えられることから、今後の取り組み次第で雇用を増やしたり生産性を向上したりできると期待されています。

 

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SDGsの目標9における5つの達成目標

SDGs目標9では、大きく5つの達成目標があります。主に、インフラに関するものや産業化に関するもの、研究や技術能力の向上等に関するものです。

1.安心して利用できる強いインフラの構築

  • “すべての人が安くて公平に使えるインフラをつくり、経済発展と福祉の推進を図る”

SDGs目標9の達成目標として、まず挙げられるのが「経済発展・福祉の推進」や「強いインフラの構築」です。だれもが利用できるように安価で公平な基準を設定した福祉を推進することは、SDGsにおいて重要な目標です。

また、インフラにおいては、道路やダム、電気などに関するものを整備するだけではなく、災害にも強いインフラであることが重要です。「万が一災害に遭ってもすぐに復旧できるインフラ」の構築が求められています。

2.持続可能な産業化を進める

  • “だれも取り残されない持続可能な産業化を進め、農業や漁業以外の総生産を増大させる。”

技術を高め、食料品や衣料品などの分野の産業化を進めることは、国や人々が豊かになるためにも欠かせない事柄です。

なお、GDP(国の生産性や生産・提供したモノ・サービスの合計価格)においては、GDPに占める農業や漁業など以外の割合を増やすことを目指します。技術が進み、農産物の加工や、工場でモノ作りができるようになることで、GDPの向上を期待できるからです。もっとも開発が遅れている国については、農業・漁業以外の割合を2倍にすることが目標です。

3.モノやサービスの流れが市場に組み込まれるようにする

  • “開発途上国における小規模工場・会社にとって有利に金融サービスが利用できるようにする。”

開発途上国にある規模の小さな工場や会社がより成長するためには、資金が必要不可欠です。しかし、金融サービスが整備されておらず、そもそも金融サービスに触れることも難しいという人も少なくありません

こうした課題を解決し、モノやサービスの流れが市場に組み込まれるようにすることが重要です。

4.資源をむだなく使えるようにする

  • 2030年までに資源をむだなく使えるようにし、環境にやさしい技術を取り入れる。”

限りある資源を、効率よく無駄なく使えるようにするためにも、環境にやさしい技術を生み出したり、環境への負荷が少ない生産方法を開発したりして、持続可能なインフラ・産業を整備することを目指します。

これは、開発途上国も例外ではなく、すべての国が、各国の能力のもとで取り組んでいくことが求められます。

5.さまざまな産業での科学研究を進めて技術能力をのばす

  • 2030年までにイノベーションを推進し、研究・開発者の人数を増やす。”

さまざまな産業での科学研究を進めるためには、その分野に特化した人手が必要です。まずは、これまでになかった新たな技術やアイデアを生み出すために、研究・開発分野で働く100万人あたりの人数を増やす必要があります。開発・研究に使える資金も増やし、イノベーションを進めていくことが大切です。

なお、開発途上国においても同様で、産業の種類を問わず、あらゆる分野で科学研究を進めていき、技術能力を向上していくことが目標です。

達成するための具体的な3つの方法

SDGs目標9を達成するためにも取り組むべき方法は大きく3つです。各方法の概要や、どのように進めていくのかについて、以下に詳しく解説していきます。

1.貧困国を中心に災害にも強いインフラの開発

現在、開発途上国などの貧困国では、まだまだインフラの整備が行き届いていません。電力やガス、道路などのインフラは安全かつ豊かに暮らすためにも必須のものです。

とはいえ、単純にインフラを整備すればいいというわけではありません。大雨や洪水、強風などあらゆる災害に強いインフラを開発することが重要です。災害に耐えられて、万が一災害に遭ってもすぐに復旧できるインフラが望ましいとされています。
そのためにも、積極的に支援を行い、技術面の研究・開発を促進していく必要があるのです。

2.技術開発や研究、イノベーションの支援

開発途上国のあらゆる産業が発展し、「価値のある製品」を世に送り出すための政策を先進国が考えなければなりません。開発途上国への支援に関する政策を整えることで、開発途上国の技術開発や研究、イノベーションの支援につながります。

とくに、資金面や、流通に関する政策は、製造側の収益に直結する部分です。開発途上国が国内での技術開発や研究、イノベーションを実現できるように支援していくことが大切です。

3.インターネット環境の整備

現在、日本ではもはや当たり前となっているスマートフォンや携帯電話。しかし、開発が遅れている国では、インターネットにアクセスできていないどころか、そもそも端末を持てていない人も存在します。

インターネットは、雇用の増加や産業革新、貧困の解消などあらゆる面でメリットを生み出します。開発途上国を中心に、スピーディーなインターネット環境の構築が必要といえます。

なお、インターネットは安価で使えることが大前提です。だれもが安心して利用できるよう、品質が高く安価に利用できるインターネットを整備する必要があります。

日本における取り組み事例

世界中が今一丸となって取り組んでいるSDGs。目標9においても、企業の規模や国を問わず、多くの組織が取り組んでいます。

1.【企業】アイネット

アイネットでは、SDGsの目標9の取り組みとして、環境に配慮したグリーンデータセンターを完備しています。水や風など、持続可能な資源を活用して電力の利用量を削減しています。

また、立地を生かし、風通しをよくして夏でも快適に作業をしやすくしたり、環境マネジメントシステムを独自に構築し、消費電力負荷の低減に努めたりしています

高度な技術が採用された環境対策がとられているだけではなく、堅牢なデータセンターは24時間365日常に稼働できるのが特徴です。社会の情報インフラとしての役割を担っています。

参照:サステナビリティ|株式会社アイネット

2.【企業】共伸グループ

共伸グループが取り組むSDGs目標9は、使用済みの自動車のリサイクルです。使用済みの自動車に適正なリサイクル処理を行い、リユース部品として生産・販売を行っています。これにより、32万トンを超える二酸化炭素の排出を抑えられると考えられています。

また、自動車の資源リサイクルについては、100%を目指しています。自動車から発生するごみ(樹脂やガラスなどの破砕くず)を0にすることを目標として、SDGsに取り組んでいます。

参照:新潟市:共伸商会>>SDG’sへの取り組み

3.【企業】サノヤスホールディングス

サノヤスホールディングスが実施しているSDGs目標9の取り組みは、「使う人」に目を向けた製品開発です。同社では、平面仕様を採用するなど、バリアフリーの機械式立体駐車装置を開発・販売しています。

また、あらゆるニーズに応えられるよう、金属加工機械を用いた半導体製造装置などを「部品供給」という形で支援しているのも特徴です。日本の高度かつ最先端の技術を自社製品で応援しています。

ほかにも、化粧品や医薬品などの業界において必要な機器や調合タンクを需要に沿って製造しています。課題と向き合いながら化粧品や医薬品の製造産業を支えています。

参照:SDGsへの取り組み | CSR情報 | サノヤスホールディングス株式会社

4.【企業】チヨダウーテ

SDGs目標9に取り組む「チヨダウーテ」の活動内容は、製造工程における二酸化炭素の排出削減や、廃材をはじめとした資源の再利用、現場における施工効率化などです。

環境問題の大きな原因となっている二酸化炭素が、製品の製造過程で発生してしまう状況に目を向け、石油燃料のボイラーではなく、木質系バイオマスを利用したボイラーへ転換しています。また、事業で廃材となる「せっこうボード」などを回収して、原料石膏の一部として再利用しているのです。

また、技術革新として、「現場の施工効率化」のために、独自に製品を開発。多くの建設現場の働き方改善にもつながっています。

参照:チヨダウーテのSDGsへの取り組み | 会社情報 | チヨダウーテ株式会社

世界における取り組み事例

世界が一丸となって取り組んでいるSDGs。日本以外にも目を向けてみると、各国でさまざまな取り組みを実施していることがわかります。

ここからは、世界で活躍する企業4社の取り組み事例を紹介します。SDGsについて、どのように取り組んでいるのでしょうか。

出典:SDG Industry Matrix日本語版-製造業 | グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン

1.アトラスコプコ

アトラスコプコは、スウェーデンで誕生した世界最大級の規模を誇る産業機械企業です。世界ではおよそ20か国に製造施設を持ち、事業自体は180か国以上に展開しています。

そんな同社では、SDGs目標9の取り組みとして、燃料の消費削減を目指し独自に制定した「厳しい廃棄ガス規制」に基づいて自動車の製造を実施しています。

また、最先端の組み立て技術について、グループ会社などにも情報提供を行っているのが特徴です。

2.セメックス

メキシコに本社を置くセメックスは、主にセメントを取り扱う海外企業です。セメックスの目指すSDGs目標9は、自社製品のセメント製品での地域改善です。道路の舗装を支援するために、マイクロローン(小口金融)を地域住民に提供しています。

この取り組みにより、地域の不動産価格の上昇や、住民の所得が増大するなど、さまざまなメリットが生まれています。

ちなみに、マイクロローンの融資は、35,000件以上が割り当てられました。低所得世帯に恩恵をもたらし、地域全体を改善へと導いています。 

3.ヒューレット・パッカード

ヒューレット・パッカードは、コンピュータと電子計測機器の製造や販売を行う企業です。アメリカに拠点を持つ会社であり、世界に事業を展開しています。

同社は独自のエコシステムを開発しSDGsに取り組んでいます。これにより、デジタル業界に革新をもたらし、イノベーションを加速させることを期待されています。

また、3Dデータからオブジェクトを作成する技術を使って、複雑かつ繊細なデザインも実現できるようにしました。 

4.MAN SE

MAN SEはドイツの機械工学会社です。SDGsの目標9の取り組みとしては、再生可能エネルギーだけで稼働する工場の開設です。6,300㎡にも及ぶ太陽光発電装置を設置し、二酸化炭素の大幅な削減に貢献しています。

また、新設した太陽光発電工場は、年間で81万kWhの発電を実現。余剰電力も生み出すほどで、環境に配慮した産業の理想的なヴィジョンといえるでしょう。 

 

SDGs研修・体験型SDGsイベント

SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)

 

概要

  • SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
  • 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
  • オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化

特徴

  • 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
  • チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
  • 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる

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【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)

概要

  • 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
  • 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
  • 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能

特徴

  • あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
  • 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
  • ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進

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【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)

概要

  • 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
  • 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
  • すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント

特徴

  • ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
  • 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
  • ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進

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まとめ

私たちが当たり前のように使っているインターネットは、貧困国から見ると決して当たり前ではありません。

最新情報にアクセスできるようになると、人々の暮らしに変化がもたらされやすくなります。そして、開発途上国にとって、産業化は国を豊かにするきっかけになります。また、産業化により、仕事が増えるなど、メリットが大きいものです。

SDGs目標9への取り組みを検討している方は、まずは、デジタル化を進めて「生産性」の向上を図るなど、少しずつSDGs目標9への関心を高めてみてください。

 

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