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【2021年】日本のSDGs達成度は?現状の評価と目標別の課題を解説

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連サミットで採択された、国際目標です。より良い社会の実現を目指し、世界中で取り組みが広がっています。達成期限は2030年、そろそろ折り返し地点が見えてきましたが、日本の取り組みはどのくらい進んでいるのでしょうか。日本の達成度は世界と比べて高いのか、低いのか、現状の評価と今後の課題を解説します。

SDGs達成度ランキング 日本は165ヵ国中18位

毎年6月に公表されている、「持続可能な開発報告書(Sustainable Development Report)」。世界のSDGsの進捗状況をまとめたレポートです。ドイツ最大の財団のひとつであるベルテルスマン財団と、持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)により作成されています。国連に加盟している193ヵ国のうち、評価が可能な165ヵ国について採点し、ランク付けをしています。

2021年6月14日、「持続可能な開発報告書2021」が公表されました。トップ20は、以下のとおりです。

 

順位

国名 スコア

1位

フィンランド 85.9

2位

スウェーデン 85.6

3位

デンマーク 84.9

4位

ドイツ 82.5

5位

ベルギー 82.2

6位

オーストリア 82.1

7位

ノルウェー 82.0

8位

フランス 81.7

9位

スロベニア 81.6

10位

エストニア 81.6

11位

オランダ 81.6

12位

チェコ 81.4

13位

アイルランド 81.0

14位

クロアチア 80.4

15位

ポーランド 80.2

16位

スイス 80.1

17位

英国 80.0

18位

日本 79.8

19位

スロバキア 79.6

20位

スペイン 79.5

 

ランキングを見ると、上位は欧州諸国が占めていることがわかります。日本は18位、スコアは79.8という結果で、前の年と比較すると、スコアは伸びたものの順位を一つ落としてしまいました(2020年:17位・スコア79.17)。

ちなみに、GDPトップのアメリカは32位スコア76.0)、次ぐ中国は57位(72.1)でした。ランキングの下位は、中央アフリカ共和国や南スーダンなど、サハラ以南のアフリカ諸国が並んでいます。

参照:持続可能な開発レポート2021 – 持続可能な開発レポート

参照:持続可能な開発レポート2020 – 持続可能な開発レポート 

目標別の達成度

2021年版レポートの、日本の評価の詳細を見てみましょう。17の目標別の評価は、以下のとおりです。

参照:2021-sustainable-development-report(PDF)(p.264)

 

評価は5段階で色分けされており、

  • 赤=主要な課題が残っている
  • オレンジ=重要な課題が残っている
  • 黄=課題が残っている
  • 緑=達成
  • 灰=不明(情報不足)

となっています。アイコン横の矢印は、前年と比較して改善が見られるか否かを表しています。

目標別に見ると、日本はジェンダーと環境の分野、それからパートナーシップにおいて、特に取り組みが遅れていることがわかります。なかでも目標15「陸の豊かさも守ろう」は、前年から「悪化している」と評価されてしまいました。

暮らしや経済の豊かさは、豊かな自然環境の上に成り立つものです。また、17の目標は互いに関連しています。環境問題への取り組みを強化・加速化しなければ、今後、ほかの目標にも悪い影響が出てくるかもしれません。

参照:2021-sustainable-development-report(PDF)

17の目標別に見る日本の現状

持続可能な開発報告書(Sustainable Development Report)」では高い評価を得ることができた目標も、それはあくまで、グローバル指標に基づいた評価の結果であり、その分野に関してまったく課題がないというわけではありません。現在の日本がどのような課題を抱えているのか17の目標別に解説します。

目標1:貧困をなくそう

厚生労働省の厚労省の2019年国民生活基礎調査によると、2018年の日本の貧困率(※)は15.4%で、6人に1人が貧困に陥っていることがわかりました。子どもの貧困率は13.5%で、特にひとり親家庭の貧困率が高い水準となっています。

生活保護を利用する人の数は、2020年12月時点で約205.0万人で、2015年のピーク時と比較すると12万人も減少しました。しかし一方で、生活保護利用が困難であるために、特例貸付で生活を維持する人が急増しています。

※ここでの貧困率とは、「相対的貧困率」です。相対的貧困とは、等価可処分所得(簡単にいうと手取り収入)が一定基準に満たない“大多数よりも貧しい状態”を指します。一方、途上国などの貧困を表す際に用いられるのは、「絶対的貧困率」です。絶対的貧困とは、“必要最低限の基準が満たされていない状態”のことをいいます。

参照:国民生活基礎調査(貧困率)よくあるご質問-厚生労働省(PDF)

参照:第3章 貧困指標-JICA(PDF)

目標2:飢餓をゼロに

日本にも、経済的な理由で栄養バランスの取れた食事ができない子どもたちがたくさんいます。新型コロナウイルス感染症の拡大も影響して、学校給食費の補助や、地域住民等による民間の子ども食堂、NPO等による支援などの重要性が増しています。

また、少子高齢化により、地域や農水産業の持続可能性が低下していることも大きな課題です。大学や研究機関などと連携し、SDGsを通して地域を活性化しようと取り組む自治体も増えてきています

目標3:すべての人に健康と福祉を

新型コロナウイルス感染症により、予防、検査、医療施設へのアクセスなど、強化しなければならない部分が次々と明らかになりました。特に、在日外国人の医療・福祉・保険サービスへのアクセスが不十分であり、整備していく必要があります。

また2020年は、11年ぶりに自殺者が増加しました。日本は世界全体で見ても自殺率が高く、体だけでなく、心の健康も課題となっています。

目標4:質の高い教育をみんなに

日本は、幼児教育・保育の無償化、高等教育の就学支援など、教育費負担を軽減するための制度が充実しています。「持続可能な開発報告書2021」でも、「達成」の評価を得ることができました。

しかし、教育に関して課題がないわけではありません。新型コロナウイルス感染症の影響で教育のオンライン化もこれまで以上に進みましたが、一方で、デジタルデバイド(情報格差)も明らかになりました。

これに加えて、外国籍の児童・生徒においては、6人に1人が未就学状態であることもわかっています。

目標5:ジェンダー平等を達成しよう

各国の男女格差をはかる「ジェンダー・ギャップ指数」によると、日本はG7のなかで最下位の120位。「持続可能な開発報告書2021」でも、5段階のうち一番低い評価となった目標です。

要因としては、

  • 家事・育児等を負担する割合の偏り
  • 女性の管理職・役職へのパイプライン構築が不十分である
  • 男女の固定観念的な性別による役割分担意識や無意識の思い込み等の存在

などが考えられます。

一定の前進が見られる部分もありますが、より取り組みを強化していく必要があります。

目標6:安全な水とトイレを世界中に

安全な飲料水へのアクセスは、ほぼ100%に達しています。今後の課題としては、取り残されている人々をなくすこと、水道インフラの老朽化、耐震化などがあります。

また、渇水が発生した時の対応、浸水災害対策など、気候変動への備えも必要です。

目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに

2012年にFIT制度を導入して以降、再生可能エネルギー比率は拡大しており、2018年の導入量は再エネ全体で世界6位、太陽光発電は世界3位となりました。

日本は、2050年までに脱炭素社会(カーボンニュートラル)の実現を目指しています。達成に向けて、取り組みをより拡大・加速させていくことが求められます。

ただし、FIT制度を利用したメガソーラーの設置拡大に法整備が追いついておらず、環境破壊に繋がっているケースが問題視されています。森林伐採などの問題悪化に繋がらないように配慮する必要があるでしょう。

目標8:働きがいも 経済成長も

定年後の継続雇用や女性を中心としたパート労働者の増加などにより、非正規雇用者が増加しており、最低賃金の引き上げや同一労働同一賃金など、待遇の改善に向けた取り組みが進められています

ワーク・ライフ・バランスの実現や、新型コロナウイルス感染症の影響で失業してしまった人、困窮している人の支援も課題となっています。

目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう

「持続可能な開発報告書2021」では、「達成」の評価を得ている目標です。

世界知的所有権機関(WIPO)が発表した「Global Innovation Index: GII」によると、日本は人的資本と研究、創造的アウトプットの指標でランクが低くなっています。人的資本と研究のランクが低い要因としては、教育に対する政府の支出が少ないこと、高等教育に関して海外からの留学生が少ないことなどが挙げられます。

目標10:人や国の不平等をなくそう

所得格差は改善が進んでおらず、不平等が拡大しています。また、経済的な不平等だけでなく、外国人労働者に対する権利の保障、移民政策や難民の受け入れなどについての課題や、新型コロナウイルス感染症の影響により、医療従事者や感染者への差別・偏見なども存在しています。

目標11:住み続けられるまちづくりを

日本は、自然災害が多い国です。災害時のさまざまな支援の体制づくりを、絶え間なく続けていくとともに、国民の一人ひとりが、災害に対する知識を持ち、備えをしておくことが求められます

また、都市部と地方の格差も課題となっています。運転免許を返納する高齢者は年々増加していますが、過疎化が進む地方においては、公共交通サービス維持・確保が厳しい状況にある地域も少なくありません。時代に対応した交通体系の構築が急がれます

目標12:つくる責任 つかう責任

世界中の多くの人々が飢餓や栄養失調に苦しんでいるなか、日本は年間570万tもの食品ロスを排出しています(令和元年度推計値)。また、一人あたりの使い捨てプラスチック容器量は、世界2位の多さとなっています。

SDGsが認知されるとともに、資源循環の動きや意識の変化も見られるようになってきましたが、まだ大幅な改善には至っていません。事業者・消費者それぞれに、より積極的な取り組みが求められています。

参照:食品ロスとは:農林水産省

目標13:気候変動に具体的な対策を

「持続可能な開発報告書2021」で、5段階のうち一番低い評価を受けた目標のひとつです。

世界の平均気温と同様、日本の平均気温も上昇を続けており、経済や社会活動、生物多様性などに影響が出てきています。政府や企業・団体の間で、脱炭素社会の実現に向けたさまざまな取り組みが広がっていますが、まだまだ市民レベルに浸透しているとはいえない状況です。脱炭素社会を実現するためには、一人ひとりが気候変動に関心を持ち、ライフスタイルの転換等アクションを起こしていかなければなりません。

目標14:海の豊かさを守ろう

こちらも、「持続可能な開発報告書2021」で、主要な課題が残っているとされた目標です。

プラスチックごみや油の流出などによる海洋汚染が、深刻な状況になっています。2020年に日本周辺海域で確認された海洋汚染の件数は453件で、前年から21件増加、過去10年の平均件数(415件)も上回りました。なかでも一般市民によるものは、前年から1.1倍の増加となっています。海洋生物や漁業活動など、さまざまな影響が懸念されています。

目標15:陸の豊かさも守ろう

「持続可能な開発報告書2021」では、重大な課題が残っており、かつ前年より悪化していると厳しい評価を受けた目標です。

開発や乱獲、自然の質の低下、外来種などの持ち込み、地球環境の変化などにより、日本でも多くの生物が危機に瀕しています。地球上のすべての生命は支えあって生きており、生物多様性が保たれているからこそ、地球からの恩恵を受けることができるのです。

2018年の環境問題に関する世論調査によると、「生物多様性」という言葉の認知度は51.8%と、目標である75%以上を大きく下回る結果となりました。普及・啓発活動を強化し、まずは「生物多様性」という言葉と考え方を広めていく必要があるでしょう。

参照:生物多様性に迫る危機 | 生物多様性 -Biodiversity- 

目標16:平和と公正をすべての人に

「持続可能な開発報告書2021」では「達成」の評価を得ているものの、多くの課題を抱えている目標です。

ひとつは、児童虐待です。児童相談所の虐待相談対応件数は増え続けており、2020年度は過去最多を記録しました。かけがえのない子どもの命を守るため、より強固な法律や支援体制の構築が求められます。

ほかにも、収容施設における人権侵害や虐待、意思決定の場における視点の偏りなどの課題があります。

目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

「持続可能な開発報告書2021」で、重大な課題が残っているとされた目標です。

評価の詳細を見ると、この目標の7つの評価項目のうち、4つが「不明」(灰色)の判定となっています。この目標だけでなく、データの提出がないために「不明」となっている項目が目立ちます。

1位のフィンランドをはじめ、上位5カ国についても日本と同程度が不明の判定となっており、日本がとりわけデータ整備が遅れているということではなく、調査タイミングの問題であると推察できます。 

政府は2021年6月、「SDGsに関する自発的国家レビュー(VNR)」を公表しました。2017年以来4年ぶり、2回目のVNRです。そのなかから、SDGs推進円卓会議(※)の民間構成員(NGO、NPO、有職者、民間セクター、国際機関、各種団体等の関係者)による現状の評価を紹介します。

※SDGs推進円卓会議とは、SDGs推進本部の下に年2回を目途に開催されている会議です。SDGsの達成に向けて、関係府省庁構成員と民間構成員とが集まり、意見交換を行います。

参照:持続可能な開発目標(SDGs)推進円卓会議外務省(PDF)

進歩した点

SDGs推進円卓会議の民間構成員による現状評価では、17の目標とは別に進歩した点として、以下の3つが挙げられています。

  • 政府としての枠組みを、ある程度構築することができた(アクションプラン、ジャパンSDGsアワード、分科会の設置、2019年の実施指針の改定など)
  • 菅元総理が、「2050 年までの温室効果ガス排出実質ゼロ、中間目標として2030年の46%削減」という具体的な目標を示した。
  • SDGsが広く認知されるようになった。SDGs達成を後押しするような融資や投資、企業や自治体の積極的な取り組みも拡大し、SDGsが学校教育にも盛り込まれるようになった。

今後の課題

一方で、今後の課題として以下の点が挙げられています。

  • 新型コロナウイルス感染症により、高齢者、女性、子ども、障害者など、弱い立場にある人々が「取り残され」がちであることが明らかになった。
  • 各ステークホルダーの役割分担、分野間の連携が不足している。
  • 科学に基づく指標の整備、企業や団体の取り組みをSDGsと連携させるツールが未発達である。
  • SDGs達成のために新しいビジネスモデルを展開していくにあたり、旧来の規制や業界のルールなどが阻害要因となる可能性がある。

政府による今後の取り組み方針

政府は、今回のレビュー(VNR)を通じて明らかになった進捗と課題を踏まえて、以下の5つに留意しながら取り組みを進めていくとしています。

  1. SDGs推進体制の強化(若者を含めたステークホルダーの意見を反映できる体制の構築)
  2. 目標や指標、進捗評価体制の整備
  3. 日本の取り組みの国際展開(取り組みを他国に共有し、連携を深めるなど)
  4. 一人ひとりの行動変容につながるような国内啓発
  5. 望ましいタイミングでVNRを実施する

上記を踏まえて、2030年のSDGs達成に向けて、いかに取り組みを加速させていくかがカギとなります。

まとめ

日本のSDGs達成度、目標別の課題について解説しました。「持続可能な開発報告書2021」では、日本のSDGs達成度は165ヵ国中18位で、順位だけ見ると低くはありません。しかし、特に環境問題に関して重大な課題が残っており、脱炭素社会実現に向けた取り組みも、世界と比べて少々遅れをとっている印象もあります。グローバル指標で見ると「達成」の評価を得ている目標についても、まったく課題がないわけではありません。また、目標以外の部分で強化すべきところも見えてきました。

2030年によりよい世界を実現するために、一人ひとりが意識を高め、取り組みを加速していく必要があるでしょう。

参照:SDGsに関する自発的国家レビュー(VNR)概要-首相官邸(PDF)

参照:SDGsに関する自発的国家レビュー(VNR)本文-首相官邸(PDF)

SDGsコンパス編集部

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