環境

パリ協定とは?わかりやすく経緯、日本の取り組み、SDGsとの関係性を解説

 

環境問題を考えるうえで知っておきたい「パリ協定」。「実際にどのようなことが取り決められているのか」「何を目的としているのか」「パリ協定自体よく知らない」といった方もいるかもしれません。

本記事では、パリ協定の概要や採択されるまでの経緯、パリ協定の目標達成に向けた日本の取り組み、2015年に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)との関係性についてわかりやすく解説します

 

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パリ協定とは

2015年にフランス・パリで開催された、温室効果ガス削減に関する国際的な取り決めを話し合う「国連気候変動枠組条約締約国会議(Conference of the Parties):COP」で合意された“気候変動問題に関する国際的な枠組み”が「パリ協定」です。

パリ協定は、1997年に開催されたCOP3(第3回目の国連気候変動枠組条約締約国会議のこと)にて定められた「京都議定書」の後継となるもので、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みが定められています

京都議定書では、一部の先進国のみに温室効果ガス排出削減が課せられていたのに対し、パリ協定では会合の参加各国が対象となり、先進国だけではなくすべての国において温室効果ガス排出削減に向けた取り組みが求められています。

パリ協定の目的と目標

パリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」を、温室効果ガス排出削減の目的としています。

目的達成のために「できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとること」を目標として掲げています

これらの目的・目標達成のために、先進国・途上国を問わず、各国が削減目標(約束)を作成・提出・維持するとともに、削減目標を達成するための国内対策をとることが求められています。各国が掲げた削減目標は、5年に一度、提出・更新をして前進を示す必要があります。

日本は中期目標として、2015年7月に地球温暖化対策推進本部において「日本の約束草案」を作成し、「国内の排出削減・吸収量の確保により、2030年度に2013年度比−26.0%の水準にすること」を決定して国連に提出しました。

その後、2021年4月の「米国主催気候サミット」において菅総理大臣(当時)は、「2050年カーボンニュートラルと整合的で野心的な目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指すこと」を表明しました。つまり、現時点で日本は、当初掲げていた削減目標である“26%削減”より20%高い“46%削減”を温室効果ガスの削減目標として掲げています。

なお、パリ協定で各国が自主的に定めた目標は以下のようになっています。

出典)温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

パリ協定の特徴

環境問題や気候問題を考えるうえで、なぜパリ協定を知っておく必要があるのでしょうか。それは、パリ協定が歴史上ではじめて、気候変動の枠組みに関する条約に加盟する196カ国全ての国が削減目標・行動をもって参加することをルール化した、公平な合意だからといえるでしょう。

上述したように、パリ協定の前身である京都議定書では、先進国だけに温室効果ガスの排出削減が課せられていました。しかし、京都議定書が採択された1997年から現代までに、中国やインドなどの当時は途上国であった国々が急速な経済成長を遂げたことで、それらの国々における温室効果ガス排出量も増加しています。

そのような時代の変化に伴い、先進国・途上国を問わずに温室効果ガス排出の削減目標を掲げ、各国が一丸となって取り組むことがパリ協定に定められています。各国が削減に向けた取り組みの実施状況を報告、レビューすることに加え、先進国・途上国を問わない自主的な資金提供などが期待されています。

なお、日本からは2020年に安倍総理大臣(当時)が首脳会合に出席し,現状の支援額の1.3倍となる約1.3兆円の途上国向け資金支援を発表。先進国全体で、2020年までに年間1,000億ドル(約11兆円)という目標の達成に向け取り組むことを約束しました

 

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パリ協定が採択されるまでの経緯

2015年にパリ協定が採択されるまで、主にCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)ではどのような動きがあったのでしょうか。本項では、パリ協定が採択されるまでの経緯を、COPにおける主な出来事に沿って解説します。

1992年│国連気候変動枠組条約(UNFCCC)採択

世界全体で地球温暖化問題に取り組むために、1992年6月にブラジル・リオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」にて、「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」が採択されました

大気中の温室効果ガス濃度の安定化を究極の目標として開催された本会へは、日本を含め155カ国が参加して条約に署名し、1994年3月より条約が発効されました。

また、条約により「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」が設けられ、1995年から毎年会合が開催されています

1997年│京都議定書の採択

1997年に京都で開催されたCOP3では、京都議定書が採択されました。本会では、6種類の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素(亜酸化窒素)、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六ふっ化硫黄)に対して「2008年から2012年の間に、1990年比で約5%削減すること」が定められました

そして、削減目標に基づく削減義務が課せられたことでEUは8%、アメリカ合衆国は7%、日本は6%の削減を約束しました。

なお、アメリカは後に京都議定書体制を脱退しましたが、京都議定書で定められた目標は温室効果ガスに関する世界初となる取り決めであり、世界全体が協力して地球温暖化問題に取り組む大きな一歩となったといえます。

2009年│コペンハーゲン合意の留意

2009年12月にデンマーク・コペンハーゲンにて開催されたCOP15では、「コペンハーゲン合意」と呼ばれる取り決めが“留意”されました。コペンハーゲン合意では、先進国は2020年までに削減すべき温室効果ガスの目標を、途上国は温室効果ガス削減のための行動をそれぞれ決め、2010年1月末までに提出することが求められました

コペンハーゲン合意が“留意”となった理由は、一部の参加国から「合意文書作成のプロセスが不透明」などと唱えられたためです。参加国の意見が全会一致でなければ採択できない決まりとなっているため、結果として「コペンハーゲン合意に留意する」ことでCOP15は閉幕しました。

2010年│カンクン合意の採択

2010年11月〜12月にメキシコ・カンクンで開催されたCOP16では、“地球の平均気温上昇を2°C未満に抑える”という、締約国が目指す長期目標の確認として「カンクン合意」が採択されました

加えて、途上国も温室効果ガスに対する適切な削減行動をとること、先進国の削減目標や途上国の削減行動の実施がより透明で信頼性の高い形で行われるよう測定、報告、検証を強化することなどが定められました。

2011年│ダーバン合意の採択

1997年に採択された京都議定書で定められた温室効果ガス削減目標は2012年までの目標であり、それ以降は新たな目標設定が必要です。そのため、2011年11月〜12月に南アフリカ・ダーバンで開催されたCOP17では、すべての締約国が参加する温室効果ガス削減に向けた、新たな枠組みを決めるための交渉が開始されました。

COP17の一番の成果は、温室効果ガス削減に向けた将来の枠組みに関して、法的文書を作成するための新しいプロセス「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会」が設置されたことです。

作業部会は2012年に設置されて以降、2015年中には作業を終え、2020年には新しい枠組みを発効させて実行に移すための議論がされました。作業部会の立ち上げは日本の提案であり、日本の建設的な貢献が評価された結果といえるでしょう

2013年│ワルシャワ決定

2013年11月にポーランド・ワルシャワで開催されたCOP19では、締約国における2020年までの取り組みの底上げと、2020年以降の新たな温暖化対策の枠組みに向けた議論が行われました

結果として、本会では各国が自主的に約束草案を提出する方式について初めて合意され、約束草案の作成にあたり、途上国を支援することも併せて決定されました。その一方で、各国が約束草案を提出した後の協議プロセスについては、具体的な議論には進展しませんでした

2014年│気候行動のためのリマ声明の採択

2014年12月、ペルー・リマで開催されたCOP20では、2020年以降の地球温暖化対策に関する国際的な枠組みの合意に向けて「気候行動のためのリマ声明」が採択されました

リマ声明では、締約国が約束草案に最低限記載する内容の要件や手続きの決定と、約束草案をまとめた『統合報告書』を作成することが定められ、温室効果ガス削減の「新たな枠組み」の実現へと進展が得られたといえます。

2015年│パリ協定の採択

2015年にフランス・パリで開かれたCOP21にて「パリ協定」が採択されました。パリ協定の発効には「55ヵ国以上の批准」と「参加国における温室効果ガス排出量が世界中の排出量の55%に達する」必要がありましたが、採択された翌年2016年10月5日にはこの条件を満たし、同年11月4日に発効されました

パリ協定の目標達成に向けた日本の取り組み

2019年6月11日に閣議決定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略の閣議決定」では、「脱炭素社会」を最終到達点として掲げられました。それに伴い日本では、パリ協定の目標達成に向けて下記の取り組みが実践されています。

気候変動分野における途上国支援

パリ協定が採択された2015年のCOP21では、本会へ参加した安倍総理大臣(当時)より「日本が2020年に1兆3000億円の気候変動分野における途上国支援を実施する」ことが表明されました。先進国のなかでも大きな経済規模と、多くの温室効果ガス排出量をもつ国として、途上国への支援が気候変動対策の進展につながると考えられた結果といえます。

加えて、2021年のG7コーンウォール・サミットでは、菅総理大臣(当時)より「2021年から2025年までの5年間において、官民合わせて6.5兆円相当の気候変動に関する支援を実施すること」「気候変動の影響に脆弱な国(主に途上国)に対する適応分野の支援(インフラの整備や人材育成支援)を強化していくこと」が表明されました。

二国間クレジット制度(JCM)の活用

二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)とは、日本が途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の成果を両国で分け合う制度をいいます。二国間クレジット制度を活用することで、途上国への優れた脱炭素技術などの普及と、世界規模での温暖化対策への貢献につながります。

加えて、日本からの温室効果ガス排出削減効果を適切に評価することで、日本における削減目標の達成に活用することを目的としています。二国間クレジット制度はこれまでに、アジア、アフリカ、島しょ国、中南米、中東の17カ国と署名済みです。

緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)への拠出

緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)とは、途上国の温室効果ガス削減(緩和)と気候変動の影響への対処(適応)を支援するための基金のことです。

2010年に開催されたCOP16にて基金の設立が決定され、翌年2011年のCOP17で、日本はGCFの委託機関として指定されました。2015年5月に日本がGCFへの拠出を確定したことで、GCFの活動開始に必要な資金が集まり、GCFの活動が開始されました。

日本は最初の拠出で15億ドル(日本円で約1700億円)の拠出を実施。2019年10月に開催された第1次増資会合では、国会の承認が得られれば最大で15億ドルを拠出する意向を表明し、日本は温室効果ガス削減に向けたGCFの取り組みに期待しています

パリ協定とSDGsの関係性

SDGsとは、2015年9月に開催された国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた世界共通の目標です。

貧困・飢餓、環境問題、経済成長、ジェンダーなどの幅広い課題が網羅された17のゴールと、169のターゲットから構成されるSDGsでは、地球上の「誰一人取り残さない」ことを掲げ、2030年までの目標達成を目指しています。

2019年6月に閣議決定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」では、“脱炭素社会への移行により、他のSDGsとのコベネフィット(一つの活動がさまざまな利益につながっていくこと)の最大化を目指す”ことを掲げています

同戦略では、脱炭素化・SDGsの達成のために下記のようなコベネフィットの例を挙げています。

  • 断熱性能の高い住宅……CO2排出削減と同時に、快適性の向上や健康維持に資する 
  • 徒歩や自転車による移動の普及……移動に伴うCO2を抑制するとともに、健康増進、混雑緩和等に貢献する
  • ICTの活用によるテレワークやフレックスタイム制の導入推進……通勤交通に伴うCO2排出を抑制すると同時に、仕事と育児・介護との両立がしやすい環境や生産性の向上を実現する

パリ協定で定められた温室効果ガス削減目標を達成することは、結果としてSDGsのさまざまな目標達成へつながるといえるでしょう。

パリ協定が企業に及ぼす影響

パリ協定の採択を契機に、気候変動に対応した経営戦略の開示(TCFD)(※1)に取り組んだり、脱炭素に向けた目標設定(SBT、RE100)(※2)(※3)を行なったり、企業が脱炭素経営に取り組む動きが進展しています。

産経新聞の調べによると、この温室効果ガス排出削減目標である「SBT」の認定取得に取り組む企業が2020年頃から急増していることがわかりました

SBT認定を受けることは、“パリ協定が求める温室効果ガス削減目標に足並みを揃えた経営に取り組んでいる企業”と見なされるため、企業価値の向上や持続的な事業継続を目的に、SBT取得の動きが加速しつつあるといえるでしょう。

最近では、ESG投資(環境・社会・企業統治に配慮した経営に取り組んでいる企業を重視、選別した投資)が広く認知されたこともあり、環境問題へ積極的に取り組むことはさらなる企業価値の向上につながることが期待できます。

SDGsが採択され、世界的に脱炭素社会の実現が期待されている現在において、環境問題の解決や脱炭素経営を実践することは他社との差別化や新たな取引先との契約、ビジネスチャンスの獲得、事業の拡大、SDGsへの貢献などにつながるでしょう。

(※1)TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)……金融安定理事会(FSB)により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース」のこと。企業などに対して、気候変動がもたらす「リスク」及び「機会」に関する財務的影響を把握し、開示することが推奨されている。
(※2)SBT(Science Based Targets)……パリ協定が求める温室効果ガス排出削減の水準と整合した、5年~15年先を目標として企業が設定する温室効果ガス排出削減目標
(※3)RE100(Renewable Energy 100%)……企業が自社事業における使用電力を100%再生エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ

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まとめ

今回は、パリ協定の概要やパリ協定の目標達成に向けた日本の取り組みなどを解説しました。

パリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」ことが目的として掲げられ、先進国・途上国を問わず温室効果ガス排出削減に向けた取り組みが求められています。また、パリ協定の採択を契機にさまざまな企業が脱炭素経営に取り組む動きが増えています

温室効果ガス排出削減は、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsとも深い関係性があり、企業経営の一環として環境問題の解決へ取り組むことは、企業価値の向上や新たなビジネスチャンスの獲得につながるといえるでしょう。

 

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りょう

この記事を書いた人

りょう

都内在住。美容系メディアのコンテンツ制作をきっかけにライター活動をスタート。現在までにSDGs、HR領域、SNSマーケティング、外遊び、オンラインイベントなどの幅広いジャンルを執筆。読者の皆さまに寄り添えるような、わかりやすい文章を心がけています。

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