「人に喜んでもらえることをやっていたらSDGsに繋がっていた」サンワード株式会社代表・池田 智幸

サンワード株式会社
代表取締役 池田智幸
業 種
製造業
サンワード株式会社 池田智幸

大阪にてカバン・袋物を中心に取り扱う縫製メーカー、サンワード株式会社

地球環境を考慮した規格外消防用ホースのリユース商品、ペットボトルリサイクル素材を使用した商品、平等な働き方を考慮した、障がいを持った方との共同企画商品、フェアトレード商品の取り扱いなど、SDGsに関わる事業を積極的に展開しています。

 

今回は、そんなサンワード株式会社の代表・池田様に、SDGsの取り組み内容や導入背景について詳しくお伺いしました。

SDGsに取り組み始めたきっかけは「人に喜んでほしい」という思い

−SDGsに関してさまざまな取り組みをされていますが、このような取り組みを始めたきっかけを教えてください。

池田様)一番初めの取り組みは、規格外の消防用ホースのリユース商品製造でした。実は始めたのは10年以上前で、まだSDGsなんていう言葉もありませんでした。

 弊社は元々、企業さんからオーダーがあったものを生産するOEMの形をとっていたのですが、当時、「お客さんが手に取って喜んでくれるものや、誰かの役に立てるものを直接手がけたい」という思いもありました。

では何を作るのか、となったときに、ただ流行を追い求めるだけでなく、誰かの役に立つ、誰かを笑顔にするものづくりをしたいと思っていました。

ちょうどその頃、「規格外のホースが余っている」という話が取引先からあり、ゴミが減ったら喜んでくれる人もいるし、ホースからカバンを作るのっておもしろそうだなと思い、取り組みを始めました。

 

1年〜1年半ほどかけて開発を進めたのですが、出来上がったものを見ていただくと、当時は「なんなのこれ!?」「こんな色のホースがあるの?」とものすごくびっくりされました。皆さんに喜んでいただけて嬉しかったですね。

私は、カバンはものを入れるだけのものではなく、コミュニケーションツールの1つであると思っています。私たちが作ったカバンを持っている人が誰かにそのカバンのことを話したい、分かち合いたい、と思うことで人間関係が構築されますし、自分が選んだものを褒められると嬉しいですよね。「環境を考慮したものを使っている」「想像もしないようなものを使っている」といったエピソードを話すことでコミュニケーションが生まれてくれれば嬉しいなと思います。

 

この消防用ホースの取り組みを皮切りに、他の取り組みにもだんだん広がっていきましたね。

 

−なるほど、「SDGsだからやる」のではなく、「お客さんに喜んでもらいたい」「おもしろいことをやりたい」という思いで始めたものが、結果としてSDGsに繋がっていったのですね。

社内で認識を共有することがSDGs推進のカギ

−今お話しいただいた消防ホースの活用以外にも、ペットボトルリサイクル素材を利用した製品や障がいを持った方々との共同開発などさまざまな活動をされていらっしゃいますよね。こういった活動は、事業部や専任の方を決めて動かれているのですか?

 

池田様)小さい会社なので、わざわざ事業部を作って……という進め方ではなく、有志でメンバーを集め、推進しています。

 

弊社がこういった取り組みをしているのは、社員にある程度の共有の認識があるからなんですよね。全く携わりたくないという人はいなくて、「みんなで一緒に考えよう」というスタンスで取り組んでいます。

 

こういう新たな活動は「やらされ感」があっては進まないものですし、やりたい人、情熱を持ってできる人がやるべきだと思っています。

こういった活動をしていると、社員が周囲に「どんな会社で働いているの?」と言われた時に、家族との会話ができますし、自分の会社でやっていることを堂々と言えるようになりますよね。そういうところから愛社心も育っていくのではないかと思います。

 

−事業として強制的にやるのではなく、あくまでも社員の皆さんの自発的な行動が形になったものなのですね。

 

池田様)最近では、SDGsは「取り組むべきもの」というふうに見られがちですが、「やるべき」という想いに囚われて敷居が高くなっている方も多いのではないかと思います。

 

SDGsはもっと身近にあるものなので、「楽しいことをやってみよう」ぐらいの始め方でいいと思います。

 

SDGsはすごく難しくて重大なもののように扱われていますが、人間として、会社としてやって当たり前のことなので、言葉に囚われすぎず、もっと自然に進められたらいいと思っています。

私たちも、SDGsをやっていたのではなく、人に喜んでいただくことをやっていたら自然にSDGsに繋がっていました。

 

ただ、これが一過性のもので終わってしまってはダメで、続かないと意味がないと思っています。SDGsという言葉がなくなっていくぐらい自然なものになるように、長く続けているような仕組みを作っていくことが大切だと感じています。

大阪メトロとの共同開発について

−今取り組んでいる活動で最も力を入れている取り組みについて教えてください。

 

池田様)どれも力を入れてはいるのですが、やっぱり新しいものほど熱が入りますね。

現在は、大阪メトロさんとの共同プロジェクトで、引退車両のつり革や連結部の素材を利用したグッズの開発を進めています。なんとかこのブランドが独り立ちしてくれれば良いなと思います。

私たちのような小さな会社がやるだけではどうにもならないことも、大きな企業さんと提携することで大きな影響力が生まれますし、もっと多くの企業さんとも関わっていけたらいいなと思っています。

利益を出すことで、裾野を広げていきたい

池田様)とはいっても、僕らも会社なので、きちんと利益を出したいと思っています。

 

周りの企業に「いいことをやっていても利益にならない」「自分たちはお金がないからSDGsに取り組めない」と思われてしまっては、裾野が広がらないですよね。大阪は零細企業がほとんどなので、ここの裾野が広がらない限り、SDGsは広まっていかないと思います。

私たちもまだまだなところはありますが、例えば私たちがメディアに取り上げられたり、実際に利益が生まれたりすることで、「自分たちもやってみよう」と思う企業が増えれば、裾野が広がると思っています。

裾野を広げながらいろいろな企業と協業していきたい

−今後の目標はありますか?

 

池田様)これまでお話しした通り、裾野を広げていきたいという思いがありますね。

 

また、大阪府下のメーカーさんの中にSDGsに取り組む企業が増えてきたら、各社の商品を使って空間を作るというのも面白いのではないかと思っています。例えば廃材を使った家具を利用したり、フェアトレードの飲み物を扱ったり……。人が当たり前に集まるような空間を作っていきたいですね。

 

−ワクワクしますね!実際に池田様が主体となって動かれているのですか?

 

池田様)まだ具体的には始まってはいないですが、いろんな企業の方とお話しする機会を設けています。

地元の企業が集まる会に参加したり、ビジネスのマッチングをしてくれている団体を通じて他の企業を紹介してもらい、お話しさせていただいたりしていますね。

 

−多くの企業が関わることで大きなインパクトが生まれますし、ぜひ実現できたら嬉しいですね。

SDGsとは、日常生活にあるもの

−最後の質問です。池田様にとって、「SDGs」とはどのようなものでしょうか?

 

池田様SDGsとは、日常生活の中にあるもので、そんなに難しいことではないと思っています。障がいを持った方とお付き合いをするのも、ゴミを見て「これを使ってなんか作れないかな」と思うのも、私にとってはごくごく自然なことです。

 現在はSDGsに関する本もいっぱい出ていますが、教科書を見ることで余計難しくなりますよね。SDGsは勉強することではなく、感じることが大切なのではないでしょうか。気負わずに自然に取り組めるようになっていけばいいなと思います。

 

−そうですよね。SDGsが「やるべきもの」ではなく、「当たり前」のものになるように、私たちも自分たちができる分野で取り組みを進めていきます。

本日は現場の生の声を聞くことができ、とても学びになりました。ありがとうございました。

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JJ

この記事を書いた人

JJ

あそびの会社、株式会社IKUSAのマーケター。「あそびの力で社会課題を解決する」という目標を掲げ、企業や自治体、商業施設へ「あそび」を届ける仕事をしています。

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