エシカル消費の問題点とは?日本における認知度や実践状況について解説
近頃、耳にすることが増えた「エシカル消費」。認知度や関心は高まっているものの、まだまだ日常生活に根付いているとはいえないでしょう。「エシカル消費」という言葉を聞いたことがあっても、どのような目的があり、どのような行動をすべきなのかを知らない方も多く、エシカルな商品やサービスについての情報を広めていくことが必要な段階です。また、エシカル消費が普及していない背景には、いくつかの問題点が存在します。
本記事では、エシカル消費の目的や、日本における認知度や実践状況、エシカル消費が抱える5つの問題点について解説します。
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エシカル消費とは?
「エシカル(ethical)」には「倫理的・道徳的」といった意味があります。良心に基づいた消費行動を心がけることがエシカル消費です。エシカル消費では、消費者が商品やサービスを購入する際に、その背景や成り立ちを考え、どのような人が関わり、どのような影響を与えているのかなどを意識することが求められます。また、人や社会・環境に配慮した商品やサービスを積極的に購入・利用することが必要です。
参考: エシカル消費とは|エシカル消費特設サイト[消費者庁] (caa.go.jp)
エシカル消費の目的
人や社会・環境に配慮した消費によって、現代社会に存在する数多くの社会的課題を解決することが、エシカル消費の目的です。一人ひとりが社会的課題を意識し、身近に取り組めるエシカル消費を始めることが、誰一人として取り残さない持続可能な社会へと繋がります。
エシカル消費の例
人や社会、環境に配慮したエシカル消費の一例を紹介します。
フェアトレード商品の購入
価格の安い製品には、途上国での児童労働、不当な低賃金での労働などによって生産されて原材料などを使用しているケースがあります。適切な労働環境で生産された「フェアトレード商品」の積極的な購入を心がけることで、途上国における労働者の権利を守ることに繋がります。
障がい者施設で製造された商品の購入
低賃金労働などにより自立が難しい障がい者の方はまだまだ多く、社会課題のひとつです。障がい者施設の就労支援商品を積極的に購入することは、障がい者の自立支援にも繋がる行為だといえるでしょう。
環境に優しい商品の購入
「大量生産・大量消費・大量廃棄」が当たり前になっている現代社会では、製品が生み出される過程や廃棄される過程で、自然環境やそこで暮らす生物に大きな負荷がかかっているケースも少なくありません。環境や生物への負荷をできるだけ抑えている製品には、目印となる認定マークが付けられていることも多く、そのような商品を継続的に購入することが、持続可能な消費へと繋がります。
資源を効率的に無駄なく使う
「天然資源の枯渇」や「廃棄物による汚染」「プラスチックごみ流出による海洋生物への被害」など、経済活動による環境への被害が問題になっています。環境に配慮した商品をの購入する取り組みだけでなくエコバックやマイボトルなどを使用してプラスチック消費量を減らす取り組みや、節水・節電によるエネルギー消費の抑制、食品ロスの軽減など、天然資源の使用を減らす取り組み、廃棄物を減らす活動もエシカル消費のひとつです。
地産地消
現代社会では、ネット通販や大型商業施設での買い物が生活の中心となりつつあります。それらの場所で商品を購入することは非常に便利であり、価格面などでも消費者に大きなメリットが存在します。しかし、ネット通販や大型商業施設での商品購入は、商品の配送や移動、施設の維持に多くのエネルギーを消費しています。一方で、地元で生産された商品を扱う地域のお店や商店街での買い物は、商品の輸送に必要なエネルギーが少なく、環境に優しい消費行動といえるでしょう。また、地産地消を進めることは、「地域雇用の創出」や「地域経済の活性化」に繋がり、持続可能な社会を実現する大きなきっかけとなります。
応援消費
応援消費とは、企業や地域、人そのものを応援するために行う消費活動です。応援消費の例としては、自然災害などにより被害を受けた地域で製造された商品を買うことで復興を支援する「被災地支援」や、文化を守り未来へと繋げるために「伝統工芸品を購入する」こと、特定の地域や団体への寄付に繋がる「寄付つ付き商品の購入」などが挙げられます。
また、差別や偏見がない社会に変えていくために、社会的マイノリティ(障害を持つ人や日本に住む外国人など)が抱える問題解決に向けて、積極的な取り組みを実施している企業の製品やサービスを利用することも応援消費のひとつです。
出典参考:エシカル消費とは|エシカル消費特設サイト[消費者庁] (caa.go.jp)
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エシカル消費が抱える5つの問題点
世界的にも拡大傾向にあるエシカル消費ですが、まだまだ日本では普及していません。2019年に消費者庁が行った「倫理的消費(エシカル消費)」に関する調査消費者意識調査報告書では、前回の2016年の調査から2倍に認知度が増加していますが、一般的には知られていないというのが現状です。一方で、「エコ」や「ロハス」などエシカル消費に関連する言葉は、一般的に広く認知されており、さまざまな取り組みも行われています。エシカル消費を普及させるためには、「エシカル消費」という単語自体の認知度を上げる必要があるのです。
出典:「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書 (caa.go.jp)
ここでは、日本においてエシカル消費への意識が低く、広まらない原因である5つの問題点について解説します。
1. 価格が高い
エシカルな商品は、販売価格が高い傾向にあり、一般消費者の経済的負担が重くなりがちです。環境や人権に配慮した商品の価格が高いことには、下記のような製造コストがかかるといった要因があります。
人件費によるコスト増加
商品が製造され消費者の手に届くまでには多くの人が関わっており、そこにかかる正当な人件費を確保するためには、商品の販売価格を上げることが必要です。
原材料などの管理コスト
環境に配慮した商品においては、大量に生産することが難しく、商品一つひとつを管理するために大きなコストが発生します。一例として、環境に優しい商品であるオーガニックコットンの生産では、有機原料の含有率を上げることや、化学薬品の使用を最小限に抑えるなど、自然環境に対する配慮を行っているため、コストが上昇し、それが販売価格に反映されます。
このように製造に大きなコストがかかり、価格が高くなってしまうエシカル商品は、経済的負担がかかる消費者側はもちろんのこと、販売する企業側にとっても利益の確保が難しいといった大きなリスクが伴います。企業側が利益を確保するためには、販売数量を増やすか価格を上げるしかありません。しかし、価格が高ければ、環境問題や人権問題に関心があり、経済的に余裕のある一部の層が購入するだけに留まります。それではエシカル消費自体の認知度が上がらず、商品のブランド力訴求が困難です。
このような価格のジレンマが、販売する企業側と購入する消費者側の両者にとって、エシカル消費が普及しない大きな問題点となっています。
参考:「エシカル消費ってなに?」 細川幸一教授(2020年1月14日「消費者の需要と経済力に影響」より)
2. 商品やサービスとしての機能性に不安
化粧品や洗剤などといった機能や効能が重要となる商品は、製造コストが高いことから、販売価格帯が高くなるため、大手メーカーの同価格帯の商品と比べると品質が劣ると感じられ、消費者側は購入をためらう場合があります。エシカル消費に興味を持ち、環境や人への優しさを考慮した商品の購入に至ったとしても、商品自体の性能が良く継続的に使ってもらえなければ、あまり意味がありません。
また、大量生産による利益の確保が難しいエシカルな商品は、大企業ではなく、比較的小規模な製造元が販売しているケースが多々あります。小規模な製造元では、マーケティングやパッケージデザインまでに力をいれることが難しく、商品自体の良さやエシカルな商品の価値が消費者まで届かないといった問題も、エシカルな商品が普及しない理由のひとつです。
3. 小売店などで、「エシカル消費」に関する商品が買いづらい
大手メーカーの商品と比較すると、身近な小売店で販売されているケースが少なく、日常的な買い物で購入することが難しい点も一般的にエシカル消費が普及しない要因です。ネット販売やエシカル消費に力を入れている販売店などでは、大々的に「エシカル消費」と謳われている売り場もありますが、毎日の買い物で利用する一般的な小売店などでは、エシカル消費に関する商品を探すこと自体が困難です。
エシカル消費を普及するためには、消費者がエシカルな商品を気軽に手に取れるような、販売環境の工夫をする必要があります。
4. エシカル消費自体が認知されておらず、信用されていないケースも
日本のエシカル消費認知度のアンケート結果からもわかるように、エシカル消費は非常に認知度が低い環境下にあります。「エシカル消費」という意味自体が理解されておらず、「価格が高いだけの商品」というようなイメージがあり、購入が避けられているといったケースもあります。
まずは、エシカル消費の認知度を上げ、消費者にエシカルな商品を購入することの意味について、理解を得る必要があります。
5. 認定マーク取得のハードルと認知度
エシカル消費に関する商品であることを証明する認証マークは下記のようなものを中心に、数多く存在しています。
- サスティナブルな水産物を表す認証マーク(MSCマーク・ASCマーク)
- 地域や人に配慮し、持続可能な森の管理により生産された木材を使用している認証(FSC認証)
- 国際フェアトレード基準が守られていることを証明するラベル(国際フェアトレード認証ラベル(The FAIRTRADE Mark))
- 農園の環境や土壌・水を含めた環境資源や生態系に対する配慮や、労働環境に対する厳しい基準を満たした農園に与えられる認証(RAINFOREST ALLIANCE INC.)
しかし、このような認証マークの取得はハードルが高く、コストもかかることから、認証マーク取得の条件を満たしている商品であっても、マークを付けずに販売しているといったケースもあります。エシカル消費自体の認知度の低さと、マーク取得のハードルの高さが相まって、消費者にマーク自体の存在があまり知られていません。そのため、マークが付いている商品であっても購買に繋がらず、企業側もマークの取得やマークを取得できる製品の開発に至らないとう悪循環が、認定マークにおける問題点です。
参考:MSC「海のエコラベル」とは | Marine Stewardship Council
参考:ASCについて – ASC Japan (asc-aqua.org)
参考:FSC認証について | Forest Stewardship Council
参考:認証ラベルについて|フェアトレードとは?|fairtrade japan|公式サイト (fairtrade-jp.org)
参考:Home | Rainforest Alliance | 法人向け (rainforest-alliance.org)
日本でエシカル消費はどれくらい実践されている?
エシカル消費に対するアンケート調査によると、エシカル商品の購入を除けば、エシカル消費に関連する取り組みを実施している人は少なくないという結果が出ています。一方で、商品の購入に関しては消極的な意見もあり、エシカル消費の普及が日本であまり進まない問題点が見えます。
ここでは、2019年に消費者庁が行った「倫理的消費(エシカル消費)」に関する調査消費者意識調査報告書から、日本におけるエシカル消費の意識や取り組みの現状について紹介します。
エコバッグの利用・省エネ・食品ロス削減への取り組みが増加
エシカル消費に対する取り組みを実践している人を対象にした、実施しているエシカル消費に関連する取り組みのアンケートでは、限りある資源を効率的に無駄なく使用するための取り組みとして、「エコバック、マイ箸、マイカップの使用」や「省エネへの取り組み」「節水・節電」「食品ロス削減」などエシカルな行動をしているとの回答が多くを占めています。
一方で、「エシカル商品の購入」や、「エシカル消費を取り入れている企業への投資」などといった購入に関連する回答は少ないとの結果が出ています。アンケートの内容から、エシカル消費に繋がる「エコ」な行動は多く実践されていながらも、エシカル消費自体へは関心が低いといった現状が伺えます。
出典:「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書 (caa.go.jp)
エシカル消費は拡大しているが消極的な意見も
2019年のアンケート結果では、4割近くがエシカル商品やサービスを購入しており、前回行われた2016年の調査結果から微増しています。また、今後購入を考えている人は大きく増加しているとともに、「今後購入したいと思わない」といった否定的な意見は減少傾向にあります。日本においてもエシカル消費への意識は高まりつつあり、さらなる拡大が見込めるでしょう。
出典:「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書 (caa.go.jp)
一方で、エシカル消費が抱える問題点でも挙げたように「価格が高い」「本当にエシカル消費に繋がるかわからない」「身近にエシカル消費に繋がる商品・サービスがない」などといった、エシカル商品やサービス購入に対して消極的な意見も数多くあります。
アンケートの結果からもわかるように、エシカル消費が求められている理由や、エシカルな商品が高い要因、エシカル商品のわかりやすい訴求など、エシカル消費に対する知識を一般消費者に広めていく必要があるといえるでしょう。
出典:「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書 (caa.go.jp)
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概要
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- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
エシカル消費の認知度はまだまだ低く、広く普及させていくには、解決しなければならない問題点がいくつか存在します。エシカル消費の考えを根付かせるためには、「なぜエシカル消費が必要なのか」「なぜエシカルな商品は高いのか」など、エシカル消費自体の知識やエシカル商品が持つ本当の価値、持続可能な消費に転換していかなければならない理由などを、消費者に理解してもらう必要があります。
エシカル消費が抱える問題点を解決し、持続可能な社会の実現に向けて、全員が一丸となって行動していくことが、現代社会に生きる私たちに求められています。
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この記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
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