防災に必要な取り組みとは?その内容や事例を紹介
日本は、世界的に見ても自然災害が非常に多く発生している国です。地理や地形・気象など諸々の条件から、毎年のように「地震」「台風」「豪雨」「豪雪」など、多種多様な災害に悩まされています。また、近年では地球温暖化など気候変動を原因とした自然災害が世界的にも問題視されており、課題解決に向けた具体的な対策が求められています。自然災害による被害を抑える防災への取り組みは、あらゆる場所で不可欠なものといえるでしょう。
日本では人々の安全な生活を守り持続していくために、さまざまな場所で防災への取り組みが行われています。本記事では、企業や自治体・家庭や学校などで行える、防災に向けての取り組み内容や事例を紹介します。
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防災への取り組みの必要性
自然災害が多い日本では、国民の生活や安全を守るため、政府がさまざまな防災対策を実施しています。しかし、国が行う「公助」だけでは災害による被害を完全に抑えることが難しいため、さまざまな場所において防災への取り組みが必要です。とりわけ「企業」「自治体」「学校」など、多くの人々が活動している場所では、防災への取り組みを強化していく必要があるでしょう。また、個人においても防災意識をしっかりと持つ「自助」の精神が不可欠であり、各家庭において防災に取り組む必要があります。
参考:6 課題及び今後への期待 : 防災情報のページ – 内閣府 (bousai.go.jp)
自治体での防災の取り組みと事例
起こりやすい災害は地域の特性などによって異なるため、自治体ではそれらに合わせた災害対策を立てる必要があります。そのため、各自治体では、1961年に制定された防災に関する「災害対策基本法」に基づいて、地域の特性に合わせた防災計画である「地域防災計画」を作成し、人々の安全を守るための取り組みを実施しています。しかし、既存の防災計画のみで地域の人々の安全を守ることは困難でしょう。
ここでは、自治体が新たに取り組める防災対策の内容と、取り組み事例について見ていきます。
自治体で取り組める防災
自治体で行える災害対策だけでは、市民の安全を守ることは難しいといえるでしょう。次のような、市民自らが防災への意識を持つきっかけを作る取り組みを行うことで、災害時における被害を軽減することができます。
地域住民向けの避難訓練
普段暮らしている土地であっても、災害時にどの場所が安全であるか、どの経路を通れば避難所に安全にたどり着けるかなどは、意外と覚えていないものです。定期的に地域住民に向けた避難訓練を行うことで、緊急時のリスクを大きく軽減します。避難訓練だけでなく、地域住民自らにハザードマップを作成してもらうなどの取り組みも、非常に効果的でしょう。また、定期的な避難訓練は、住民同士が交流する機会にもなるため、緊急時に声を掛け合いやすい環境づくりに繋がるなどのメリットもあります。
自治体職員向けの防災研修
一般市民と異なり、自治体職員は災害時にさまざまな役割を担う必要があるため、以下のような防災研修を行う必要があります。
- 災害対策本部設置防災訓練
大規模な災害が起きた際に必要な「防災本部」設置に向けた手順を確認し、実践する訓練
- 参集訓練
非常時に定められた規定に従って、職員が参集できるかを確認するための訓練
- 避難場所開設防災訓練
災害時に市民が避難するための「避難場所」を、迅速に開設するための訓練
- 防災通信機器操作訓練
災害時に使用する、防災通信機器の操作方法を学ぶための訓練
災害ボランティアへの勉強会
災害時には、多くのボランティアが被災地に集まります。しかし、ボランティアには参加資格等がないため、現地で適切な活動をするためには、経験や学習が必要です。自治体でボランティア向けの研修会や勉強会を事前に行うことで、緊急時に適切な行動が行える人材が育成できます。被災した市民はボランティア活動への参加が難しく、地域の安全には直接結びつきにくい取り組みですが、多くの自治体が行うことで、地域同士が助け合える環境づくりへと繋がります。
防災イベントやセミナーの開催
防災における重要なポイントは、地域に暮らす一人ひとりが防災意識を持ち続けることです。近年では、防災意識向上を目指した、楽しみながら防災について学べるイベントやセミナーなどが積極的に開催されています。地域住民が興味を持ち、積極的に参加できるようなイベントやセミナーを企画することも、防災に向けた重要な取り組みのひとつといえるでしょう。
自治体による防災への取り組み事例
茨城県常総市「防災先進都市を目指す常総市の取り組み」
関東東北豪雨で大きな被害を受けた茨城県常総市では、「被災した常総市」から「災害に強い常総市」を目指し、さまざまな防災への取り組みを実施しています。代表的な取り組みは以下のようなものです。
- マイ・タイムライン(※)作成支援
- 避難訓練
- 福祉施設の避難所指定
- 防災機能の充実
また、これらの「公助」的な取り組み以外に、防災教育の実施や市民による自主防災組織の設立推進など、「自助」に対する取り組みも積極的に行っています。
※マイ・タイムライン……台風接近による河川の水位上昇が起きた際に、とるべき防災行動を時系列的に整理して、とりまとめるもの
参考:防災先進都市を目指す常総市の取り組み | 常総市公式ホームページ (joso.lg.jp)
東京都板橋区「防災基本条例を中心とする減災のための地域づくり」
板橋区では、自治体が地域住民主体の減災活動推進に取り組んでいます。2002年には、地域住民による減災のための地域づくりに向けて「防災基本条例」を制定しました。この条例では、「防災ひとづくりの推進」「防災まちづくりの推進」「要援護者への配慮」を目標に、以下のような取り組みを実施しています。
- 自主防災組織による自発的な防災訓練
- 全中学生を対象とする救命講習
- 減災のための住宅改良事業や耐震補強の推進
- 災害時に備えた「要援護者名簿登録制度」
これらの取り組みを推進することで、すべての人が安心して暮らすことができる安全な地域を実現し、後の世代に継承させていくよう努めています。
参考:防災基本条例を中心とする減災のための地域づくり(減災への取組) : 防災情報のページ – 内閣府 (bousai.go.jp)
堺市南区「みなみ防災フェスタ!体験型ワークショップで楽しく防災を学ぼう!」
堺市南区では、イベントの実施や研修サービスを提供している株式会社IKUSAと連携し、体験型防災イベント「みなみ防災フェスタ」を実施しました。「みなみ防災フェスタ」では、起震車や自衛隊車両の展示、警備犬によるパフォーマンス、防災を楽しく学べるワークショップなど、さまざまな企画が実施され、親子で楽しみながら防災について学ぶことができました。
このイベントでは、防災への学びだけでなく、地域の交流を行うことができ、参加者の90%以上が楽しめ満足できたとのアンケート結果が出ています。「みなみ防災フェスタ」は、体験型形式による防災への取り組みを行うことで、市民の積極的な参加が見込める良い事例となったイベントです。
参考:【アンケート結果公開】堺市南区にて「みなみ防災フェスタ」を開催!体験型ワークショップで楽しく防災を学ぼう! | あそび防災プロジェクト (asobi-bosai.com)
学校での防災の取り組みと事例
災害発生時の時間帯によっては、多くの児童に被害が出る可能性があるため、学校における防災への取り組みは非常に重要です。教員への防災研修はもちろんのこと、生徒自身の防災意識を高めることが、災害リスク軽減に大きく繋がります。
学校で取り組める防災
学校における防災への取り組みは、生徒への伝わりやすさを重視する必要があります。学校で取り組めることについて見ていきましょう。
防災教育を授業に取り入れる
東日本大震災後から、学校教育の場では「防災教育」への取り組みが強く求められています。しかし、授業などで防災を取り上げる学校は半数ほどであり、まだまだ防災教育への取り組みが進んでいません。理科や社会などの授業に防災教育を取り入れ、生徒の防災意識向上に取り組んでいく必要があります。
防災訓練の実施
予期せぬ災害などが起きたときには、自分の身を守る方法を身に付けておく必要があります。生徒が、「自分の身を自分で守る」ことができるよう指導するため、地域の特性に合った防災訓練を行いましょう。
学校による防災への取り組み事例
続いて、学校で実際に行われた防災教育の取り組み事例を紹介します。
兵庫県立明石北高等学校「SDGs×防災で未来を拓く」
明石北高等学校では、SDGsと防災を結びつけることで、以下のような教育を実施しています。
- 地理総合で「持続可能な地域づくり」と「防災」を関連付けて学び、地域の自然環境と社会環境を踏まえた防災力を身につける
- SDGsと防災の共通点(=誰一人取り残さない)に着目し、我がこと意識を持って社会の課題と向き合い、ダイバーシティを実現する人材を育てる
- 明石市が掲げる「SDGs未来都市計画」と「強靭化地域計画」の関連性を高校生の視点で検証し、専門家の指導助言も取り入れながら「SDGs防災」の取り組みを提案する
これらの教育によって、生徒の自主性を育み、生徒一人ひとりが主体的に行動できるような成長を目指しています。
参考:防災教育チャレンジプラン (bosai-study.net)
岡山市立操南中学校「操南中&防災チャレンジwith?よりそい愛″」
操南中学校では、地域住民と協力し、より持続可能な市を創ろうとの思いから「つながり・よりそう」視点をコンセプトとした、SDGs推進活動や防災・減災に関わる活動を実施しています。地元住民と連携・協働した参加型・対話型の学習活動を行うことで、地域との交流を活発化し、世代間のつながりを大切にした「地域防災学習」の実現を目指しています。
参考:防災教育チャレンジプラン (bosai-study.net)
つくばみらい市立富士見ヶ丘小学校「防災クイズ大会」
つくばみらい市立富士見ヶ丘小学校では、学校内文化祭「秋祭り」内において、株式会社IKUSAと協働で「防災クイズ大会」を実施しました。当日は、低学年・中学年・高学年に分けた三部制でイベントを実施し、全学年の生徒が楽しみながら、防災への理解を深めました。より気軽に防災に興味を持てるイベントを計画することで、生徒自身が自発的に防災を学ぶきっかけの創出が期待できます。
参考:富士見ヶ丘小学校にて「防災クイズ大会」を実施しました! | あそび防災プロジェクト (asobi-bosai.com)
企業ができる防災の取り組み
従業員の安全性を確保するとともに、事業の継続性を高めるためにも、企業における「防災への取り組み」は、非常に重要です。近年に発生した大規模自然災害では、企業に大きな被害総額が出ているとの報告もあるため、企業防災は経営において不可欠なものといえるでしょう。
企業で取り組める防災
企業で取り組めることについて、次のようなものがあげられます。
事業継続計画(BCP)の策定
BCPとは、災害などの緊急事態下においても事業が継続できるように、戦略や施策を記した計画書です。非常事態が起きた際には、できる限り早く業務を再開させ、被害を最小限に抑える必要があります。事前にBCPを策定し、しっかりと対策を練っておくことで、災害によるリスクを軽減できます。
従業員の安否確認システムの導入
災害が起きた際には、従業員が無事であるかの確認を取るための手段が必要です。災害発生時は、電話やインターネットなどの回線が込み合うため、確実に安否確認を行えるシステムを導入しておきましょう。
テレワーク環境の整備
大規模な災害発生時には、従業員の直接的な被害がなかったとしても、出社が困難になる可能性があります。事前にテレワーク環境を整備しておくことで、出社が難しい状況下であっても業務が継続できます。
防災マニュアルの作成
災害における被害を事前に想定し、実行可能な対策を記したものが防災マニュアルです。防災マニュアルは、作成するだけでなく、従業員への内容周知を行う必要があります。ポスターや社内報など、日頃から従業員の目に留まる場所に、防災マニュアルを掲載しておきましょう。
オフィス家具の転倒防止
大規模な地震が発生した際などは、オフィス家具の転倒による二次被害が懸念されます。事前に転倒防止が必要な場所を確認しておき、置き場の移動や転倒防止グッズの取り付けを行っておきましょう。
防災訓練の実施
安全経路の確認など、会社における防災訓練は非常に重要な取り組みです。しかし、毎回同じような内容では、従業員の防災への関心が薄れ、効果がなくなってしまいます。より効果的な防災訓練を行いたい場合は、防災イベントなどを企画している専門的な会社へ依頼すると良いでしょう。
災害対策品の備蓄
飲料水や食料・簡易トイレ・毛布などを、災害時に必要なものを備蓄しておきましょう。備蓄量は、従業員数や地域などによっても変動するため、必要な数量をしっかりと把握しておくことが重要です。
企業による防災への取り組み事例
実際に、企業による取り組み事例を見ていきましょう。
ソフトバンク株式会社「防災・減災への取り組み」
ソフトバンク株式会社では、AIやICTを活用することで、災害から身を守る防災対策や、災害発生後の被害を少なくする減災対策に取り組んでいます。具体的な取り組み内容は、以下のようなものです。
- 社内体制の整備
- 防災訓練の実施
- ネットワーク障害対応訓練
- 安否確認訓練
- 火災・地震の対応訓練
- 自治体防災訓練への参加
また、自社社員の安全だけでなく、災害時の安心を提供するサービスや通信ネットワーク早期復旧など、多くの人々の安全に繋がる取り組みを実施しています。
参考:防災・減災への取り組み | 企業・IR | ソフトバンク (softbank.jp)
京都府商工会議所青年部連合会「防災運動会」
京都府商工会議所青年部連合会では、楽しみながら防災を学べる、株式会社IKUSAの「防災運動会」を実施しました。当日は、80名の方が参加し、体を動かしながら防災への理解を深めました。防災研修と聞くと、少しハードルが高く、参加しづらいといった印象があるかもしれません。しかし、運動会形式で行えば、多くの方が気軽に参加することができます。
参考:京都府商工会議所青年部連合会様で防災運動会を実施!当日の様子をご紹介! | あそび防災プロジェクト (asobi-bosai.com)
(株)日立製作所「おうち防災運動会」
(株)日立製作所は、株式会社IKUSAが提供するサービス「おうち防災運動会」を活用し、従業員の防災意識向上への取り組みを行いました。「おうち防災運動会」とは、インターネットを使い、楽しみながら防災知識を学ぶことができる運動会です。防災には、5つのフェーズが存在しており、各フェーズによって必要な知識や対策が異なります。「おうち防災運動会」では、5つのフェーズを運動会形式に分けて学ぶことで、効率的に防災知識を得ることができます。
参考:【組合イベントに最適】(株)日立製作所様で遊んで学べる『おうち防災運動会』を実施いたしました! | あそび防災プロジェクト (asobi-bosai.com)
家庭でできる防災の取り組み
災害による被害を軽減するためには、事前の準備が大切です。日頃から家庭での防災対策の状況を把握しておくことで、緊急時に慌てることなく適切な行動が取れるでしょう。ここでは、家庭でできる防災への取り組みについて見ていきましょう。
家具などの落下事故を防止
大規模な地震が起きた際には、多くの方が倒れてきた家具の下敷きになり、亡くなったケースや大けがをするなどの二次被害が発生しています。大型の家具を置く場合は、必ず転倒防止対策を講じておきましょう。また、寝室や子供部屋には、可能な限り家具を置かないなどの対策も重要です。
備蓄品の準備
災害時は、電気やガス・水道などのライフラインが止まってしまう可能性があります。普段から、飲料水や保食料などを備蓄し、緊急時に備えておきましょう。また、ライフライン普及に時間がかかるケースがあるため、懐中電灯や簡易トイレ・ろうそく・カセットコンロなど、生活に必要なものを準備しておくことも大切です。
避難場所や避難経路の把握
災害時に安全な行動を行うためには、事前に避難場所や避難経路を把握しておくことが大切です。自治体や国土交通省のホームページから、防災マップやハザードマップを確認しておきましょう。
安否確認方法の共有
家族が別々の場所にいる際に災害が発生した場合、お互いに安否確認を素早く行う必要があります。事前に、安否確認方法を家庭内で共有しておきましょう。通常の電話などでは安否確認が取れない可能性があるため、状況確認用のアプリやサイトへの登録がおすすめです。
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- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
自然災害が多い日本で安全な生活を持続させるためには、防災への取り組みが不可欠でしょう。政府が行う「公助」は必要ですが、国だけでなく、自治体や学校・企業、個人も防災意識を持つことが大切です。身近な人々の安全を守るためにも、一人ひとりが防災に関する知識を身に付け、取り組む必要があるでしょう。
今回紹介した防災への取り組み内容や事例以外にも、さまざまな取り組みや施策が行われています。自身の周りで行われている取り組み内容の検索や、積極的な防災イベントへの参加がより安全な生活へと繋がるでしょう。
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この記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
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