SDGsに関するよくある質問(疑問)
最近、SDGsに関する話題が取り上げられることが多くなりました。SDGsは、2030年までに持続可能な世界を実現するための世界共通の目標で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。
SDGsという言葉自体はよく聞くようになったものの、内容までしっかり理解できているという人は、まだ意外と少ないのではないでしょうか。今回は、そんなSDGsに関するよくある質問(疑問)を10個ピックアップしました。一つずつ、詳しく見ていきましょう。
SDGsイベントの資料をダウンロードする目次
1.そもそも「持続可能な開発」って何?
SDGs(Sustainable Development Goals)は、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。
「持続可能な開発」とは、「将来の世代がそのニーズを満たせる能力を損なうことなしに、現在のニーズを満たす開発」と定義されています。少々難しく感じられますが、「今の暮らしの豊かさだけを求めるのではなく、未来の世代のことも考えて社会を発展させていくこと」と言い換えることができるでしょう。この概念は、1987年に、環境と開発に関する世界委員会(WCED)が発表したレポートの中で、初めて提示されたものです。
持続可能な開発には、経済・社会・環境という三つの側面があります。SDGsが目指す持続可能な世界とは、この三側面がバランスよく調和した世界です。また、SDGsが記載されている「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(以下、「2030アジェンダ」)には、最も大きな地球規模の課題は「貧困」であり、これを撲滅することが持続可能な開発の必須要件であると書かれています。
参考:仮訳「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」 – 外務省(PDF)
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2.SDGsはどうやって生まれたの?
SDGsが採択されるより前に、2015年を達成期限とするMDGsという国際目標がありました。SDGsは、このMDGsの後継として誕生したものです。
MDGs(Millennium Development Goals)は、日本語では「ミレニアム開発目標」と訳されます。1990年代に開催された国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、2000年に採択されたものです。
国際社会は、MDGsの達成期限の5年前(2010年)に、後継枠組みの検討を始めました。その後、2012年に開催された「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)で、SDGs設定のためにオープン・ワーキンググループを設置することが決定し、2014年には、オープン・ワーキンググループにより17の目標に関する提言が出されました。
そして、2015年8月初旬に、193の国連加盟国は2030アジェンダに合意。その年の9月の国連サミットで、SDGsが記載された文書「2030アジェンダ」が正式に採択されました。
3.SDGsとMDGsの違いは?
MDGsは、主に開発途上国の「社会」課題に焦点を当てたものでした。一方SDGsは、開発途上国だけでなく先進国を含むすべての国・地域の「経済」「社会」「環境」の調和を目指しています。
目標とターゲットの数も違います。MDGsでは8つの目標と21のターゲットが掲げられていましたが、SDGsではより広い課題をカバーするため、17の目標と169のターゲットが掲げられています。
【MDGs】
- 極度の貧困と飢餓の撲滅
- 初等教育の完全普及の達成
- ジェンダー平等推進と女性の地位向上
- 乳幼児死亡率の削減
- 妊産婦の健康の改善
- HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
- 環境の持続可能性確保
- 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
【SDGs】
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術改革の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任、つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊さも守ろう
- 平和と公平をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
MDGsは多くの目標で成果が見られましたが、達成できなかったものもありました。また、21世紀に入り、人権問題や、都市部の貧困・格差など、MDGsでは解決できない新たな課題も明らかになってきました。SDGsは、これらをすべて解決することを目指しています。
また、策定までのプロセスも異なります。MDGsは、専門家グループにより非公開で策定されましたが、SDGsは、市民社会をはじめとする多数のステークホルダーとの交渉を経て策定されました。
4.SDGsが達成できなかったらどうなるの?
SDGsが達成できなければ、さまざまな課題が残されたままの世界を、未来の世代に引き渡すことになります。現在世界がどのような課題に直面しているのか、SDGs報告2022より、いくつかデータ紹介します。
- 世界の約10人に1人が飢餓に苦しんでいる。さらにそのうちの約3人に1人は、定期的に十分な食料を得ることができずにいる(2020年)。
- 2,270万人の子どもたちが、基本的なワクチンを接種できていない(2020年)。
- 各国議会における女性の割合は、世界平均で2%(2022年)。
- 過去300年で、地球上の湿地の85%以上が喪失した。
- 世界全体で1億6,000万人もの子供たちが、児童労働に従事している(2020年)。
- エネルギー関連のCO2排出量が2021年に過去最高水準に到達。地球温暖化が止まらない。
- 1700万トンを超える量のプラスチックが海洋に流れ込んだ(2021年)。
- 今後十数年で、約4万種の生き物が絶滅の危機に瀕する可能性がある。
このような課題を放置すれば、いずれ世界は立ち行かなくなってしまうかもしれません。
5.SDGsに法的拘束力はあるの?
SDGsに法的拘束力はありません。しかし、SDGsは、「誰一人取り残さない」ことを誓っています。達成できない国・地域が一つでもあれば「達成された」とはいえません。そのため、すべての国・地域に取り組みが求められています。
SDGsの進捗状況に関するフォローアップと検証を行う責任は、国連ではなく各国にあります。それぞれの国が国内で枠組みを確立させて、当事者意識を持って取り組んでいかなければなりません。
また、企業においては、SDGsに取り組まないことが、今後「リスク」になっていくのではないでしょうか。SDGsの広がりとともに、世間の社会課題に対する意識も高まっているため、地域社会や環境に配慮しない企業は、投融資を受けにくくなる、就職先として選ばれにくくなるなどの影響が考えられます。
6.どうやって進捗状況を把握しているの?
SDGsには、進捗を測定するためのグローバル指標があります。2017年に初めて承認された際は、指標の数は全244(重複を除き232)でしたが、その後見直しが行われ、現在は全247(重複を除き231)となっています。
参考:総務省|政策統括官(統計制度担当)|持続可能な開発目標(SDGs)
また、「2030アジェンダ」とSDGsのフォローアップとレビューを行う主要なプラットフォームとして、2013年に「ハイレベル政治フォーラム」が設置されました。フォーラムは、総会主催で4年ごと、経済社会理事会主催で毎年開催されています。
7.日本の進捗状況と、特に大きな課題とは?
毎年6月に、SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)とドイツのベルテルスマン財団から、Sustainable Development Report「持続可能な開発報告書」が公表されています。2022年のレポートで、日本が「目標達成」と「大きな課題が残る」と評価された目標は、以下のとおりです。
【目標達成】
- 目標4:質の高い教育をみんなに
- 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
- 目標16:平和と公正をすべての人に
【大きな課題が残る】
- 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
- 目標12:つくる責任 つかう責任
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標14:海の豊かさを守ろう
- 目標15:陸の豊かさも守ろう
- 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
「大きな課題が残る」と評価された目標の中でも、特に遅れが指摘されているのが、ジェンダー問題と脱炭素社会の実現に向けた取り組みです。これらに関してどのような課題があるのか、詳しく見てみましょう。
参考:Japan – Sustainable Development Report 2022 – SDG Index
ジェンダー・ギャップは116位
世界経済フォーラムは、毎年各国のジェンダー・ギャップ指数を公表しています。ジェンダー・ギャップ指数とは、男女格差を測る指標で、経済・教育・健康・政治の4つの分野のデータから算出されるものです。
2022年の日本のジェンダー・ギャップ指数は0.65で、146ヵ国中116位でした。これは、先進国の中で最低レベルであるだけでなく、韓国や中国、ASEAN諸国よりも低い結果です。
分野ごとのスコアを見てみると、教育(1.000)と健康(0.973)はトップクラスであるものの、経済(0.564)、政治(0.061)が低く、国会議員や閣僚、企業の管理職従事者に占める女性の割合が低いことや、男女間で賃金格差があることなどが課題となっています。
参考:「共同参画」2022年8月号 | 内閣府男女共同参画局
不名誉な「化石賞」を3年連続で受賞
2022年11月に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP27)で、日本が「化石賞」を受賞しました。化石賞とは、気候変動対策に消極的な発言をした国・地域に与えられる不名誉な賞です。日本は、この賞を3年連続で受賞しています。
受賞理由は、脱炭素社会の実現に向けて世界が取り組みを進める中で、日本は今後も化石燃料を使い続けるとしており、化石燃料に対して世界最大の公的資金を輩出しているからです。
日本はエネルギー資源が乏しいため、電力の安定供給や経済性の面を考えると、今後も化石燃料をある程度使い続けていく必要があると、政府は考えています。こうした姿勢が、世界には「脱炭素に逆行している」ように見えているようです。
2050年カーボンニュートラルに向けて、現在政府は、火力発電の脱炭素化や、新たなエネルギー源としてアンモニア・水素などを実用化することを目指して、検討を進めています。
参考:【COP27】日本が化石賞を受賞しました |WWFジャパン
8.まずは何から始めればいいの?
SDGsの17の目標は、いずれも地球規模の課題であるため、「できることはあるの?」「何から始めればいいの?」という声もよく聞かれます。SDGs達成に向けてまずできることを、個人・企業に分けて紹介します。
個人が今日からできること
まずは、SDGsを理解することが第一歩です。SDGsをわかりやすく解説した書籍やゲームなどを活用したり、テレビやインターネットで日々発信されているニュースを意識して見たりすると、SDGsの理解が深まります。現在世界にはどんな課題があるのか、SDGsは2030年までにどんな世界を目指しているのか、自治体や企業はどのようにSDGsに取り組んでいるのかなどを知ることで、自分にもできることが見えてきます。たとえば、以下のような取り組みが、個人で今日からできることとしてあげられるでしょう。
- 節電・節水を心がける
- ごみの分別を徹底する
- 捨てる前に「修理できないか」「別の用途で使えないか」を考えてみる
- マイバック・マイボトルを持参して包装を断る
- 食べきれない量を買わない・注文しない
- 地元のお店で買い物をする
- 省エネタイプの家電に買い替える
- 公共交通機関や自転車を活用し、マイカーでの移動を減らす
- 周りでいじめや差別があれば、勇気を出して声をあげる
- SNSで社会課題に関するニュース・投稿を見つけたら、「いいね」や「シェア」する
これらは、ほんの一部です。一つひとつは小さなアクションですが、世界中の人々が実践することで、未来は変えられるのではないでしょうか。
参考:持続可能な社会のために ナマケモノにもできるアクション・ガイド(改訂版) | 国連広報センター
企業ができること
企業の場合も、まずはSDGsを理解することが第一歩です。17の目標と169のターゲットのすべてを理解するのは大変ですので、全体像をざっくり理解出来たら、自社の事業とSDGsを紐づけ、何に取り組んでいくかを考えてみましょう。
SDGsは幅広い課題を含んでいるので、新たな事業を始めなくても、今の事業が既にいずれかの目標にかかわっていることもあります。現在の事業活動を洗い出して、それでもなかなかSDGsとのつながりが見つからない場合は、本業以外に取り組んでいることにも目を向けてみましょう。たとえば、以下のような取り組みも、SDGsの貢献につながります。
- 地元の業者から材料を仕入れている
- 独自の休暇制度や手当を設けている
- 高齢者やブランクのある女性でも安心して働けるような職場環境づくりに取り組んでいる
自社にとってより重要なものをピックアップしましょう。
参考:中小企業のためのSDGs活用ガイドブック – 中小機構(PDF)
9.SDGsとESG、CSRとの違いとは?
SDGsと混同しがちな言葉に、ESGとCSRがあります。まずは、それぞれの意味を確認してみましょう。
- SDGs
Sustainable Development Goalsの略称です。2030年までに持続可能な世界を実現するための世界共通の目標で、17の目標と169のターゲットで構成されています。 - ESG
企業の成長に必要な三つの要素、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字をとったものです。 - CSR
Corporate Social Responsibilityの略称で、「企業の社会的責任」と訳されます。企業は自社の利益ばかりを追求するのではなく、地域や環境にも配慮し、社会を構成する一員としての責任を果たすべきという考え方です。
【SDGsとESG】
SDGsは世界で協力して達成するべき「目標」で、ESGは企業の成長に必要な「要素」です。SDGsには目標8「働きがいも 経済成長も」や、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」など、経済にかかわる目標もあるので、ESGを重視した経営を行うことは、SDGsへの貢献にもつながります。
【SDGsとCSR】
「SDGsは事業として取り組むもので、CSRは事業以外で取り組むもの」という意見もありますが、近年は「CSRも事業として取り組むもの」という考え方が主流となっています。
捉え方はさまざまありますが、SDGsとCSRの違いは、「利益をあげることを目的としているかどうか」ではないでしょうか。SDGsは、経済・社会・環境を調和させるものなので、社会・環境の課題解決に取り組むだけでなく、その取り組みを通して利益をあげ、企業を成長させることも目的の一つです。一方CSRは、目的はあくまでも社会・環境の課題解決に取り組むこと。その効果として利益が生まれるのであり、利益をあげること自体は目的ではありません。
10.SDGsを学ぶおすすめの方法は?
SDGsを学ぶ方法としては、インターネットで情報を集める、書籍を購入する、セミナーに参加するなどいろいろなものがあります。SDGsを達成するためには、一人ひとりがさまざまな課題を「自分ごと」と捉えることが大切ですので、SDGsを身近なものに感じられるような、ゲームやワークショップを活用するのもおすすめです。
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このゲームは、3~6名ずつのチームに分かれて行います。与えられた労働力、資金、情報を使って利益を競うというものなのですが、ただ利益を追求するだけでは、このゲームで勝利することはできません。環境や社会にも配慮し、社会全体のバランスを考えてアクションを起こす必要があります。
SDGsへの取り組み方を学べるだけでなく、チームで戦略を立てたり、ほかのチームと交渉をしたりする中で、経営的視点、戦略的思考、交渉力など、さまざまなスキルが身につきます。
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概要
- 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
- 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
- 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能
特徴
- あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
- 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
SDGsは、すべての国・地域で取り組まなければ、達成することはできません。一つひとつの目標のスケールも大きいため、初めはどうしても難しく感じてしまいますが、どの目標も、私たちの身近にある問題ばかりです。一人ひとりの小さなアクションが、未来の世界を変えます。まずはSDGsに関心を持ち、理解を深め、できることから始めて行きましょう。
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SDGsのはじめの一歩を実現する「SDGsの社内浸透方法」とは?
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SDGsとは
この記事を書いた人
あらたこまち
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。