SDGs目標1「貧困をなくそう」の概要と取り組みをわかりやすく解説
「SDGsについて興味があるけど具体的に何をすればいいの?」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。SDGsには17の目標があり、まずはそれぞれの目標について理解を深め、「自社の事業と関連が深そうな目標は何か?」を見定めることが大切です。
17あるSDGsの目標のうち「1・貧困をなくそう」は、主に「世界の貧困」へ目を向けた目標です。
今回はSDGsの目標1「貧困をなくそう」についてわかりやすく解説するとともに、日本や世界における取り組み事例を紹介します。
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SDGs目標1「貧困をなくそう」とは
SDGs目標1における「貧困をなくそう」は、貧困に着目した目標です。
貧困と聞くと、「途上国の難民」をイメージしがちですが、決して日本も他人事ではありません。じつは、日本においても、「貧困」は実在していて多くの人々が苦しんでいる状況です。とくに注目したいのが子どもの貧困です。現在7人に1人の子どもが貧困状態にあるとされています。
途上国のように目に見える貧困ばかりではなく、一見すると貧困には見えないケースも珍しくありません。
SDGsの目標1における「貧困をなくそう」は、国内外で貧困に悩む人々へ手を差し伸べるための取り組みなのです。
あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
SDGs目標1の「貧困をなくそう」は、あらゆる形態の貧困に終始を打つための具体的な目標です。
ここで言う「あらゆる形態」とは、極度に貧しい生活をせざるを得ない人々のことや、各国の基準で「貧しい」と判断される人々のことを言います。
「食料を得ることすらも難しい」「食料を得られるものの必要な教育を受けることができない」など、一口に「貧しい」といっても、さまざまな形態があるのです。
また、2000年以前と比べると、現在は世界の貧困率が50%以下に低下したと言われているものの、途上国エリアは、国際貧困ライン未満で暮らす人々は10人に1人も存在しています。とくに、サハラ以南にあたるアフリカの貧困率は高く、42%にも及んでいる状況です。
- ※国際貧困ライン……1日1ドル90セント
数字で見る「貧困」の現状
現在、国際貧困ライン未満で過ごす人々は、わかっているだけでも7億8,300万人以上です。
とくに、南アジアとサラハ以南アフリカの地域は極度の貧困に苦しむ人々が集中していることから、先進国を始めとした世界が手を差し伸べなければなりません。
この問題は深刻で、全世界で見ると5歳未満の子どもに絞ってみると、4人に1人が年齢に対して低身長であるとされています。
ちなみに、1件以上の社会保障制度を利用して、すぐに現金給付を受けられる人々は世界人口において半分にも満たないのが現状。「明日の生活もままならない」という状況のなか、必要な資金を確保することも難しい状況に陥っています。
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SDGsの目標1における5つの達成目標
SDGsの目標1における達成目標は大きく5つ存在します。
いずれも、貧困の解消・解決に向けたものであり、私たちも関われる内容が多いです。具体的に、どのような達成目標があるのでしょうか。
1. 極度に貧しい暮らしをしている人をなくす
- “2030年までに、1日あたりに使えるお金が日本円で142.5円未満(1日1.25ドル未満※22年12月27日1ドル114円換算)であるような、世界中で極度に貧しい暮らしをしている人をなくす。”
世界には、食事や電気などのライフライン、水、住んでいる家の家賃などを含め、1日あたりわずか142円程度で生活しなければならない人々がいます。
米ドルにすると、およそ「1.25米ドル」であり、いずれにせよ極端に少ない資金のなかでやりくりしなければならない状況が伺えます。
健康に生きられるとは限らないこともあり、薬などの医薬品を購入したり、医療機関を受診したりしなければならない場合もあるでしょう。しかし、極度に貧しい暮らしをしている人々としては、医療サービスを受ける金銭的な余裕がありません。
上記のような事態を解決するためにも、先進国が国内の仕組みづくりや投資などを進める必要があります。
2. 貧しいとされる男性、女性、子どもの割合を半分以上減らす
- “2030年までに、それぞれの国の基準でいろいろな面で「貧しい」と判断される男性や女性、子どもの割合を半分以上減らす。”
「貧しさ」の基準においては、国ごとに基準が大きく異なります。そのため、先進国や途上国を問わず、その国々において「貧しい」とされる男性・女性・子どもの割合に目を向け、少なくとも50%は減らせるように目指していきます。
所得に関すること、資源に関すること、飢えや教育など、あらゆる面での貧困を解決することが、目標1における達成目標の一つです。
3. 貧しい人、弱い立場の人を守れるようにする
- “それぞれの国で人々の生活を守るための、仕組みづくりや対策を行う。そして、2030年までに貧しい人及び立場の弱い人々が守られるようにする。”
各国が進めなければならないのは、「人々の生活を守ること」です。
最低限の人間らしい生活を維持し、性別や世代、年齢を問わずに安全かつ健康的に生活ができるようにすることは、すべての国が目指さなければならない点と言えます。そのためにも、貧困に陥っている人々を守れるような仕組みづくりや対策を進める必要があるのです。
また、単純に貧困を解決するだけではなく、弱い立場にある人々を守れるような対策も重要。さまざまな事情により、発言が難しかったり、差別を受けていたりする人々にも目を向けた取り組みが大切です。
4. すべての人がすべての権利を平等に行使・獲得できるようにする
- “2030年までに貧しい人々や弱い立場にある人々も含めたすべての人が、生活に必要な基礎的サービスを使えるようになり、土地や財産の所有・利用をできるようにする。”
貧しい人々や、立場の弱い人々はなかなか土地や財産を所有することができません。もともと金銭的に余裕がないので、資産を持つことが難しいのが現状。そのうえ、新しい技術や金融サービスなどの利用も難しい傾向にあります。
目標1における「達成目標の一つ」では、すべての人が平等に基礎的サービスの利用や資産の所有ができることを目指しています。
資金の有無や差別などによって、権利を得ることや使うことに対して格差が生じないようにすることが、2030年までに達成しなければならない項目なのです。
5. 自然災害、経済ショックのリスクを減らす
- “2030年までに、貧しい人たちや弱い立場の人々が、自然災害・経済ショックなどの被害にあわないようにしつつ、被害にあっても生活を立て直せるようにする。”
貧困に悩む人々や、弱い立場にある人々にとって自然災害や経済ショックは大きな問題です。たとえば、台風や津波などで家を失ってしまったり、その日の食料を失ってしまったりした場合、生活は大きく傾いてしまうことが予測されるでしょう。
また、社会が混乱に陥るほどの経済ショックが起きれば、貧しい人々の仕事がなくなったり、収入が途絶えてしまったりするなど、更なる深刻な貧困を招きます。
そのため、貧しい人々が自然災害や経済ショックに巻き込まれるリスクを減らす取り組み・仕組みづくりを進めることと、万が一巻き込まれてもそれぞれが生活を立て直せるように力をつけるための支援が必要不可欠です。
達成するための具体的な方法2つ
世界中の貧困を解決するための、目標1「貧困をなくそう」。達成するための具体的な方法は、大きく2つ存在します。それが、「資金の確保」と「政策づくり」です。
1. 貧しさの解消のために資金を集める
貧困を解決するにあたり、まず必要となる具体的な方法が「資金の確保」です。
人々の貧しさを解消するためには、まずはお金が必要不可欠と言えます。国や地方自治体、企業などの支援や寄付、個人における募金、投資などさまざまな形で資金を集める必要があるのです。
集めた資金は、貧困を解消するための計画・取り組みで活用したり、策定した政策の実行のために使用したりします。
2. 貧しい人たち、ジェンダーに配慮した政策をつくる
貧困が深刻化している国を中心に、政策づくりには注力しなければなりません。とくに、政策づくりでは「貧しい暮らしをしている人々」に目を向け、さらにジェンダーに配慮した政策づくりが必要です。
国によっては、富裕層や一定の資産を持つ人々に有利な政策が多いケースが見られます。また、男女での差別や待遇の違いも見られる場合があり、女性や、性的マイノリティ(※)に不利な政策が見られることも珍しくありません。
- ※性的マイノリティ……性的少数者を指し、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)などがある。
そのため、政策づくりでは、貧困層に着目し、男女が平等に政権の恩恵を得られることが大切です。
また、同時に資金を増やしていくことで、より一層政策の進行はスピーディーになります。さまざまな方法での資金集めと、すべての人々に平等な政策づくりが重要です。
日本における取り組み事例
世界中で取り組みが進んでいるSDGs。日本でもその動きは年々加速している状況です。
SDGsにおける目標1「貧困をなくそう」の場合、日本ではどのような取り組みが実施されているのか、4つの事例をご紹介します。
小川珈琲(企業)
「おいしいコーヒーの提供」をモットーとする小川珈琲。事業内容は、コーヒー豆やコーヒー器具の販売、ケーキの製造・販売などです。また、喫茶店の経営者や、これから喫茶店のオープンをしたいと検討している人へ向けた喫茶材料の卸や販売サービスも提供しています。
同社では「フェアトレード」を中心に貧困に陥っている人々を支援しています。コーヒーの生産国はほとんどが途上国である点に着目し、生産者の生活に視点を向けたうえで、適正価格でのフェアな取引を実施しているのです。
実際、2004年からは、国際フェアトレード認証コーヒーの販売をスタートしています。顧客へ安く提供するだけではなく、生産者の暮らしを守ることも、小川珈琲は大切に考えているのです。
加賀建設(企業)
加賀建設は、土木事業や建築事業などを手掛ける企業です。住宅やオフィス、向上など、さまざまな建物の建築や企画を担っているほか、維持や管理にも対応しています。また、同時に、地域活性化事業として、地域の特性を生かしたプロジェクトの企画や提案をはじめ、運営も行っています。
そんな加賀建設が実施するSDGs目標1の取り組みは、まず社内における浸透会議です。「環境・社会・経済」の領域及び「人・企業・地域」の要素に着目し、加賀建設ならではの技術の提供や地域社会への貢献を進めています。
また、独自にロジックツリーを開発し、取り組みをフレーム化した「SASAフレーム」の作成を行うなど、経営者が描く理想と社員の意識の乖離を解消し、具体的な行動につなげるために、多岐に渡る取り組みを実施しています。
山承工業(企業)
建築や土木工事、舗装工事、造園など、多岐に渡る事業を展開する山承工業。一般的な新築工事やリフォーム工事のほか、地域の水道施設工事なども請け負っている会社です。大々的な働き方改革や、スタッフを講師として派遣するなど、もともと地域貢献や社内改革などの取り組みを積極的に行っている会社です。
目標1における「貧困をなくそう」に着目し、国内の所得格差を解消すべく、ローコストで高品質な住宅を展開し無理なくマイホームを持てるよう配慮しています。
消費者の支出を軽減し、子どもの教育などへ投資することに着目したSDGsの取り組みです。
滋賀県(自治体)
滋賀県では、全国に先駆け2017年1月にSDGsへの取り組みを開始しました。貧困家庭などへ目を向け、「十分な食料の確保」として、フードバンクを導入。印字ミスなどにより販売できなくなった食品や、美味しく食べられるものの規格外により販売できない農産物、各家庭で余った食品の寄付などを推進する活動を実施しています。
食料支援を必要とする家庭や施設(主に福祉施設)への食品の提供は無償で行っており、地域と手を取り合いながら貧困対策を実施しています。
国内でも深刻になっている「貧困家庭」に目を向けた取り組みであり、現在はさまざまな自治体で取り組みが進んでいるSDGsの事例でもあります。
世界における取り組み事例
SDGsの取り組みは、日本のみならず世界でも積極的に進んでいる状況です。世界で活躍する大企業をはじめ、規模を問わずに多くの組織・団体がSDGsに取り組んでいます。
以下では、「ACC」「DBLグループ」「マルチ・スズキ」の3つの取り組みを紹介していきます。
ACC
ACCは、インドマハーラーシュトラ州に本社を置く、セメントの会社です。インド最大のセメントメーカーであり、生コンクリートも提供しています。また、提供先は国内にとどまらず、輸出業として国外にも積極的に販売。国内外で活動するインドの会社です。
そんなACCが実施しているSDGsの取り組みは、貧困を解決するための「コミュニティ作り」や「プロジェクトの創出」などです。
地域コミュニティを強化して、貧困に陥る現場のニーズをキャッチし、現場の需要に沿ったプロジェクトの創設を行っています。とくに、「貧困に悩む人の雇用」に着目し、職業ガイダンスにも力を入れています。これにより、持続可能な生活の創出につながり、貧困状態の打開を狙っているのです。
DBLグループ
バングラデシュを拠点に活動しているDBLグループ。製薬会社などを始めとした関連企業が集まったグループであり、事業内容は多岐にわたります。
DBLグループでは、低所得労働者に対して「Bandhan」を創業。安価な工場価格で生活必需品などが購入できる店舗のことであり、低所得労働者の支出を軽減する狙いがあります。
ちなみに、購入による請求額は購入者の給料と調整され、現金払いのないクレジット払い取引で商品を購入できます。低所得者の目線で確立された支援と言えるでしょう。
マルチ・スズキ
インドで展開している自動車メーカー「マルチ・スズキ」は、耐久性の高い車両の製造や販売などを行っています。日本の自動車メーカーである「スズキ」の子会社であり、インド国内ではシェアが高い自動車メーカーです。
マルチ・スズキが実施しているSDGs目標1「貧困をなくそう」の取り組みとしては、部品の現地調達です。自動車における部品調達を現地でできるようになると、複数の国の間で生じる為替変動リスクの削減や、現地の経済成長を促進することにつながるのです。
また、現地での能力開発も可能にし、現地の人々の収入向上にも取り組んでいます。
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
概要
- SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
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- オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化
特徴
- 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
- チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
- 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる
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概要
- 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
- 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
- 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能
特徴
- あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
- 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)
概要
- 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
- 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
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特徴
- ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
SDGsの目標1に該当する「貧困をなくそう」は、貧困に目を向けた目標です。性別や年齢に関係なく対象者が多いだけではなく、日本も決して他人事ではありません。
国よって貧困の基準が異なるので、まずはすべての人々がその国の基準を満たせるような生活を送れるよう、企業や自治体が手を取り合って取り組んでいく必要があります。
企業や自治体の担当者は、今回紹介した事例を参考に、まずは第一歩として、「貧困の問題に関心を寄せること」、「適正な価格で取引されている製品を購入すること」などから始めてみてはいかがでしょうか。
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SDGsコンパスの資料をダウンロードするこの記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
SDGsコンパスは、SDGsに踏み出したい企業や自治体様の「はじめの一歩」を後押しするメディアです。SDGsの目標やSDGsの導入方法などのお役立ち情報を発信していきます。