SDGs目標2「飢餓をゼロに」の概要と取り組みをわかりやすく解説

「SDGsについて興味があるけど具体的に何をすればいいの?」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
SDGsには17の目標があり、まずはそれぞれの目標について理解を深め、「自社の事業と関連が深そうな目標は何か?」を見定めることが大切です。
全部で17あるSDGsの目標のうち「2・飢餓をゼロに」は、主に「飢餓」へ目を向けた目標です。今回はSDGsの目標2「飢餓をゼロに」についてわかりやすく解説するとともに、日本や世界における取り組み事例を紹介します。
SDGsのはじめの一歩を実現する「SDGsの社内浸透方法」とは?
\SDGsイベント・研修向け体験型アクティビティの資料はこちら/
SDGsの目標2「飢餓をゼロに」とは
SDGsの 目標2における「飢餓をゼロに」とは、主に「飢餓」の撲滅を目標としたものです。
日本で暮らしていると「飢餓」という状況にはあまりピンとこないかもしれません。実際、開発途上国と比較すると日本における飢餓の割合は圧倒的に少ないのが現状。ただし、日本国内における飢餓もゼロではなく、相対的貧困家庭(その日の食べ物に困る家庭)は、国内では約15%存在する(2015年時点)と言われています。
世界に目を向けてみると、飢餓が深刻化しているケースは多く見られます。SDGsの目標2「飢餓をゼロに」は、まさに世界の飢餓に目を向けて、世界が一丸となって解決することを目指しているのです。
目標の詳しい内容については、以下から解説していきます。
すべての人が栄養豊富な食料を得られるようにする
SDGsにおける目標2「飢餓をゼロに」は、すべての人が栄養豊富な食料を得られるようにすることを目指しています。「食べられるものなら何でもいい」というわけではなく、「栄養豊富な食べ物」であることが重要です。
現在、世界では栄養豊富な食べ物を取り入れることができず、慢性的に栄養不足に陥っている国・地域があります。子どもは、栄養不足により発育不全などの問題を抱えているケースも存在するのです。なお、飢餓にさらされている国の多くは、開発途上国が占めている状況です。
数字で見る「飢餓」の現状
世界の飢餓の現状を見てみると、栄養不良に陥っている人は8億1,500万人にも及ぶとされています。割合にすると、世界人口の9人に1人が栄養不良であるという状況なのです。
なかでも、アジアの飢餓問題は非常に深刻。上記で触れた栄養不良に陥っている8億1,500万人の3分の2をアジアが占めています。
また、子どもの発育不全の問題を見てみると、世界の子どもの4人に1人は発育不全であるという状況です。実際、空腹のまま学校に通う子どもは世界で6,600万人にも及ぶうえに、5歳未満の子どもが年間310万人も「栄養不良」が原因で亡くなっています。
SDGsの社内浸透にお困りですか? SDGsコンパスなら体験を通してSDGsを楽しく学べます!
⇒SDGsコンパスの資料を見てみたい
SDGsの目標2における5つの達成目標
SDGsの目標2には、大きく5つの達成目標が存在します。「飢餓」と聞くと、日本は無関係のようなイメージがありますが、各達成目標を見てみると、先進国も決して無関係なことではないことがわかります。
具体的に、どのような達成目標があるのか、そして今何が世界にとって必要なことなのか、などを詳しく見ていきましょう。
1.飢餓の撲滅
- “2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、とくに貧困層及び幼児を含む弱い立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。”
SDGsの目標2で策定されている達成目標のうちまず一つ目が「飢餓の撲滅」です。現在、開発途上国を中心に飢餓が深刻化している状況。サハラ以南のアフリカなどはとくに深刻であり、子どもも大人も飢えに悩まされています。
飢餓を撲滅するためには、安全かつ栄養のある食料を確保できるようにすることが大切。そのためにも、食料の生産・共有・消費について各国がシステムを構築し、先進国が先立って持続可能な農業の開発を支えることが重要です。
2.あらゆる形態の栄養不良を解消する
- “栄養バランスの悪さ、栄養不足などを解消して成長が妨げられる子どもを減らす”
前項でも触れた通り、飢餓に陥っている国・地域は総じて子どもの発育不全も深刻な状況です。単純に食料が足りていないのはもちろんのこと、食べ物があっても「栄養が偏っている」「年齢基準で必要な栄養を満たせていない」などの問題があります。
また、子どもだけではなく「妊娠中の女性」「高齢者」などの栄養不足の解消も目標の一つです。
3.食料生産者の生産性向上と所得の倍増
- “小規模食料生産者の生産性及び収入を倍にするために、土地や資源の確保、知識の獲得、金融サービスなどの活用ができるようにする。”
SDGs目標2では、生産者に目を向けた達成目標が設定されています。飢餓を解消する手段として、まずは小規模食料生産者の生産性と収入を向上させることが重要です。とくに、女性や先住民や、牧畜、漁業などを生業とする人の生産性と収入が向上することが望ましいでしょう。
小規模食料生産者の生産性及び収入を向上するためにも、対象となる人々が土地や資源を得られるようにしたり、必要な知識を身につけたりすることが重要です。さらに、収入や立場、貧しさに関わらず金融サービスを利用でき、生産したものを売れるようにならなければなりません。
また、飢餓の原因となる「貧困」も解消すべく、農業以外の仕事に就けるチャンスも、誰もが平等に得られることが重要です。
4.持続可能な食料生産システムの確保
- “自然災害に負けないような持続可能な食料生産の仕組みを作ると同時に、食料生産性及び生産量の向上ができるようにする。”
世界の飢餓を解消するためには、まずは食料の確保が大切です。しかし、一時的に食料が確保できても、それが持続できていなければ、再び飢餓状態に陥ってしまいます。
そのため、飢餓に悩む国自身が自然災害などのトラブルが起きてもすぐに食料の生産を再開できるような持続可能なシステムを確保する必要があります。
また、自然災害に対応するだけではなく、土壌を豊かにするための仕組みも必要です。食料を確保するにあたり、土壌の状態は重要なポイント。生態系を守りつつ持続可能な食料生産システムの確保が望ましいと言えます。
そして、単純に食料を生産するだけではなく「生産性と生産量を向上すること」も目標の一つ。国が主体となって食料生産を行えるようにします。
5.作物の種子・栽培される植物・家畜の遺伝的な多様性を守る
- “作物の種子や栽培される植物、家畜の多様性を守る。そして、国際的にこれまでに得た知識や得られる利益を共有し、公平に使えるようにする。”
食料となる作物や家畜は多様性があります。多様性とは、あらゆる種類が数多く存在することを意味するもので、食用の植物一つとっても、その種類は膨大であることがわかります。そうした多様な作物や家畜を守ることは、飢餓を解決へと導くことにつながります。
また、これまでに人類が得てきた「生産の技術」「生産の知識」などを国際的に共有できるようにすることも目標の一つ。誰もが作物や家畜に関する知識に触れることができれば、国々の飢餓解決は大きく一歩前進するのです。
達成するための具体的な方法3つ
SDGsの目標2を達成するために、必要なのは以下のような3つの方法です。具体的に、どのような方法でSDGsの目標2をクリアしていくのか見ていきましょう。
1.飢餓をなくすための支援をする
まず、SDGsの目標2において実現しなければならないのは、先進国が開発途上国の農業生産量を増やすための支援をすることです。
農業に必要な施設・研究・技術開発・遺伝子の保存などを行うための資金をだして支援します。こうした支援を通じて、開発途上国が農業生産量を増やせるようになり、飢餓からの脱出を図れます。そのためには国際協力が必要です。
2.偏った取引をなくす
現在、世界中で取引される農作物は、貿易で制限があったり、適正価格で取引されていないといったケースがあります。
偏った取引は生産者の貧困を招くリスクがあるので、平等な貿易を実現しなければなりません。
3市場を安定させる
市場が正常に機能し、食料を得られるようにすることで飢餓からの脱出につながります。また、現時点でどの程度の食料が備えられているのかという情報は誰もがいつでも確認できるようにすることも重要です。
日本における取り組み事例
SDGsの目標2について、自社でも取り組みたいと考えている方もいるかもしれません。
飢餓の撲滅というと、一見難易度が高いように見えますが、意外にも気軽に取り入れられる取り組みは多いです。ここからは、日本の取り組み事例に触れていくので、自社で実施できそうな取り組みがないか参考にしてみましょう。
1. 【企業】味の素株式会社
日本の大手食品企業として知られる味の素株式会社では、自社の強みを生かした取り組みを行っています。ガーナ共和国(西アフリカ)やマラウイ共和国(アフリカ)などで「栄養改善プロジェクト」として、栄養豊富な食品が安く手に入るように普及させたり、機能性食品の研究開発を行い高齢者の栄養問題に取り組むなどの活動をしています。
国内外を問わず、食を通じてSDGsの目標2の実現に向けて活動しているのが特徴です。
出典:社会課題を解決し、社会と価値を共創する ASV(Ajinomoto Group Shared Value)(PDF)
2.【NGO】グッドネーバーズ・ジャパン
グッドネーバーズは、日本の農家における生産性向上を促すために支援を展開していたり、食の安全保障と栄養改善に関する支援を行ったりしています。
具体的には、国内のひとり親家庭に対して、食品を共有する「フードバンク」のサービスを提供しています。日本の貧困家庭を中心に問題視されている「子どもの栄養不足」に目を向けた取り組みと言えるでしょう。
出典:グッドネーバーズ SDGs達成への取り組み | 特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン (gnjp.org)
3.【NGO】JPF
JPFは、近年飢餓が増加傾向にあることをふまえ、食糧支援や農業支援を行っています。たとえば、海外で大量発生している害虫であるサバクトビバッタ対策として、害虫駆除活動及び害虫駆除研修事業の支援を実施。バッタが大量発生すると農業は深刻な影響を受けます。食料となる作物を食べてしまうため、農業地域としては死活問題となってしまうのです。
また、干ばつなどの災害の影響で貧困・飢餓に陥ってしまった人々への支援として、灌漑施設(※)の改善事業も行っています。さらに、現地の人々に現金給付で食糧支援を行うなど、精力的に活動しています。
- ※灌漑施設(かんがいしせつ)……農地に水を供給するための施設。 水道やダム、スプリンクラーなどが含まれる。
出典:SDGsでみるJPF20年|国際協力NGOジャパン・プラットフォーム(JPF) (japanplatform.org)
4.【企業】名古屋銀行
名古屋銀行が取り入れているSDGs目標2の取り組み内容は、地元のファンドを立ち上げたり、農業者向けに融資をしたりするなど、金融機関の強みを生かしたものです。
まず、地元のファンドは、「あいち・じもと農林漁業成長応援ファンド」として、作物の付加価値を高めるためのブランド作りを推進しています。
農業者向けの融資は、「農業の底力」という名称で、融資期間7年以内(設備資金は10年以内)、融資金額を100万~5,000万円で実施しています。
出典:SDGsへの取組み|名古屋銀行について|名古屋銀行 (meigin.com)
世界における取り組み事例
SDGsの目標2は、世界でも取り組みが行われています。ここからは、海外の取り組み事例を紹介するので、自社の事業内容と照らし合わせながら、参考になるものを探してみてください。
出典:SDG Industry Matrix日本語版 -食品・飲料・消費財| グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン
1. カーギル
カーギルは、アメリカに本社がある穀物メジャーです。穀物のほかにも、肉類や製塩といった食品に関わっています。食品を扱う組織として、SDGs目標2の「飢餓をゼロに」の取り組みを行っています。
カーギルでは、栄養不足を改善するために、必須ビタミンA,D,Eを取り入れた食用油を使ったサービスを2,500万人に提供しています。カーギルでは、「食用油こそが食習慣に最低限の変化を加えるだけで、良い影響をもたらす機会になる」と考えています。
同社は、世界中で深刻化している栄養失調を改善するための取り組みを実施しているとして評価されています。
2. ディアジオ
イギリスで誕生した酒造企業である「ディアジオ」。アルコール飲料を中心に展開していて、独自のブランドも多数保有しています。そんなディアジオが行っているSDGs目標2「飢餓をゼロに」の取り組みは、自社で得た作物栽培に関する知識の情報提供です。
現在、小規模農業者と連携して事業を展開する企業が少なくありません。同社では、こうした「小規模事業者協働作業をするそのほかの企業」に対し、これまでに得た農業の教訓や知識を積極的に提供しているのです。
3. ネスレ
コーヒーやアイスクリーム、ミネラルウォーターなど、多くの製品を扱うスイスの会社「ネスレ」。日本でも数多くの商品が販売されているので、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
ネスレが行うSDGs目標2の取り組みは、まず違法・不公平などで奪取されていない土地から原材料を調達していることです。農業における公平性を保つために、原材料の調達先を厳選しています。
さらに、女性が土地を保有できるよう、他社と協力しながらネスレと同様の取り組みを行うよう奨励しています。
4. エングロ・フーズ・リミテッド
パキスタンで有名な加工乳メーカーとしてサービスを展開する「エングロ・フーズ・リミテッド」では、SDGs目標2の取り組みとして、小規模農業従事者を中心としてサプライチェーンに組み込むという取り組みを行っています。
具体的には、巨大な直接調達インフラを構築し、およそ30万戸の小規模農業従事者を物流システムの回収センターなどへ引き入れました。また、アクセスにも目を向けて徒歩もしくは地元の交通手段を利用して自宅と回収センターを行き来できるようにしたのです。
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
概要
- SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
- 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
- オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化
特徴
- 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
- チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
- 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる
【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)
概要
- 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
- 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
- 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能
特徴
- あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
- 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)
概要
- 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
- 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
- すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント
特徴
- ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
本ページでは、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」について解説しました。世界の飢餓と戦うための目標であり、私たちもまだまだやらなければならないことはたくさんあります。
SDGsの目標2に企業が取り組めることとしては、開発途上国への農業に関する支援や、給食支援、就労機会の提供などが挙げられます。こうした取り組みは、開発途上国における経済や社会状況の安定につながります。
本記事を参考に、企業としてどのように取り組むかを検討してみてください。
SDGsのはじめの一歩を支援するSDGsイベント・研修とは?
SDGsのはじめの一歩を実現する「SDGsの社内浸透方法」とは?
進めるための具体的なステップを紹介!
自分ゴト化を促進!3分で分かるSDGs研修・イベントサービスの詳細動画
\SDGsイベント・研修向け体験型アクティビティの資料はこちら/
【関連記事】
SDGsとは
「飢餓をゼロにするための取り組みを行いたいけれど、何から始めるべきかわからない」
「SDGsについてもっと理解を深めたいけれど、方法がわからない」
そんなお悩みをお持ちの方には、「SDGsコンパス」をおすすめします。
SDGsコンパスは、SDGの取り組みを行いたい企業や自治体の「はじめの一歩」を支援するプロジェクトです。
年間で1000件以上のイベントの運営を行なっているIKUSAがワークショップやオンライン謎解きを通して、SDGsに興味を持つきっかけを作ります。
「会社や自治体でSDGsの取り組みを行いたいけれど、何から始めればいいのかわからない」
「SDGsについて、謎解きやワークショップなどの遊びを通して理解を深めたい」
そう考えている方は、ぜひ資料をご覧ください。
SDGsコンパスの資料をダウンロードする
この記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
SDGsコンパスは、SDGsに踏み出したい企業や自治体様の「はじめの一歩」を後押しするメディアです。SDGsの目標やSDGsの導入方法などのお役立ち情報を発信していきます。
関連記事


