SDGs未来都市とは?基本情報や主な都市を紹介
SDGs(持続可能な開発目標)は、17の目標と169のターゲットからなる世界共通のゴールです。
SDGsは各自治体でも取り組まれています。そのなかには「SDGs未来都市」に選ばれた自治体があります。「SDGs未来都市」とは一体どのような都市なのでしょうか。
そこで今回は、「SDGs未来都市」の基本情報や選定された主な都市、選定基準、具体的な事例について紹介します。
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目次
SDGs未来都市とは
「SDGs未来都市」とは、優れたSDGsの取り組みを提案する地方自治体として選定された都市のことを指します。SDGsを原動力とした地方創生を推進することを目的とした政府の取り組みであり、優れたSDGsの取り組みを提案する都市・地域を「SDGs未来都市」として選定しています。そのなかでも特に先導的な取り組みは「自治体SDGsモデル事業」に選ばれ、資金面での支援などが受けられます。
この意図は地方でもSDGsに取り組んでもらいたいという政府の狙いがあり、実際に多くの都市が「SDGs未来都市」に選ばれました。
- ※地方創生……日本全体の活力を上げること目的とした制作のことを指します。「ローカル・アベノミクス」と呼ばれることもあり、2014年の第2次安倍改造内閣が発足した後の記者会見で発表されました。
SDGs未来都市2021年現在の数
「SDGs未来都市は」は、2021年度時点で全国124都市(125自治体)が選定されています。具体的に2021年度の場合、「SDGs未来都市」として31都市、特に先導的な取り組みである「自治体SDGsモデル事業」として10事業が選定されました。
政府は、2024年度までに「累計210都市」を選定することを目標としています。
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SDGs未来都市として選定される基準
「SDGs未来都市」には、選定基準が設けられています。
- 将来ビジョン
- 自治体SDGsの推進に資する取り組み
- 推進体制
- 自治体SDGsの取り組み実現可能性
選定方法は採点方法で合計160点です。評価項目ごとで細かい基準があり、「将来ビジョン」の場合は「地域の実態」「2030年のあるべき姿」「2030年のあるべき姿の実現に向けた優先的な ゴール、ターゲット」という基準があります。
そして、「自治体SDGsモデル事業」にも基準が設けられており、「自治体SDGsモデル事業での取り組み提案」の中に「経済面」や「社会面」、「自治体SDGsモデル事業の実現可能性」などの細かい基準があります。
【北海道・東北】SDGs未来都市の事例
ここまでSDGsに関する基本的なことについて紹介してきましたが、具体的に各都市はどのような取り組みをしたのでしょうか。まずは北海道、東北地方から見ていきましょう。
北海道ニセコ町
北海道ニセコ町は、転入者が多く、人口微増が続く約5千人の町です。「住民参加」と「情報共有」による住民自治のまちづくりを実践しています。主な産業は農業と観光業ですが、観光産業を中心に人手不足となっており、人手を確保して移住希望に応えるための住宅確保が課題となっています。
主な取り組み
- 「NISEKO生活・モデル地区構築事業」の推進
- 働き手不足を解消するとともに地元の零細工務店における人材育成により、優れた燃費性能と防災に優れた住宅建設のノウハウを地元が獲得できるようにする
- 上記のことを踏まえて環境負荷の低減と、地元が投資の受け皿となり経済の内部循環を図る
主な成果
- 本事業全体の運営を担う事業主体として、「株式会社ニセコまち」というまちづくりの会社を設立した
- 専⾨家集団と一緒に協議会(関係者や町民などで構成)での議論を何度も実施して計画づくりを進めていき、持続可能な開発に向けた事業構想・基本設計等を策定した
- 地元事業者向けの技術研修によって地元事業者技術・ノウハウの獲得および蓄積に加え、本事業への理解促進とまちづくり会社(まちづくりを目的として事業に取り組む企業)参画へつながる関係を構築した
山形県飯豊町
山形県飯豊町は山形県の南西部に位置する町であり、屋敷林に囲まれた住宅が広がる「田園散居集落景観」といった魅力を持っています。ただ、人口減少や美しい農山村の維持といった課題を抱えており、そのことから農山村型の持続可能な地域モデルの構築を目指しています。
主な取り組み
- 米沢牛の主産地という特性を活かしたバイオガス発電プロジェクトの推進
- モビリティシステム専門職大学の誘致準備といった電池バレー構想の推進
- 施工事業者の知識や技術取得に関する勉強会の実施といった環境にやさしい暮らしの実現
主な成果
- バイオガス発電施設「ながめやまバイオガス発電所」を実施して10人ほどの雇用創出効果を生み出し、年間2,000tほどのCO2削減量を見込んでいる
- リチウムイオン電池の主要部品であるセパレーター生産の工場が竣工し、今後の稼働によって100人ほどの雇用創出効果を生み出す予定
- 環境に優しくするために厳しい建築基準を設けた「エコタウン椿」を整備して、事業者の技術取得を後押しした
【関東】SDGs未来都市の事例
「SDGs未来都市」は関東にもあります。東京都江戸川区や神奈川県横浜市などがありますが、今回は以下の自治体をピックアップしました。
栃木県宇都宮市
餃子で有名な栃木県宇都宮市では、これからのまちづくりとして次代の宇都宮市を築く人づくりや骨格の強い都市の形成などが大きな課題と考えています。そのために市では、女性の雇用創出やLRT(次世代型路面電車システム)を軸とした交通ネットワークの充実といったことに取り組んでいます。
主な取り組み
- 交通ICカードの導入といった総合的な交通ネットワークの構築やLRT沿線の拠点化
- 認定こども園の整備や保育士の育成・確保などの子育て環境整備
- 「宇都宮市SDGs人づくりプラットフォーム」の設立
主な成果
- 宇都宮地域のLRTやバスが利用できる「地域連携ICカード」を全国で初めて導入決定
- 待機児童ゼロを達成した
- 「宇都宮市SDGs人づくりプラットフォーム」を設立して、SDGsの普及啓発を実施した
東京都日野市
高度経済成⻑期、企業に隣接するベッドタウンとして人口が急増した東京都日野市。しかし、産業構造の転換やリーマン・ショックなどの影響で市内の製造拠点が撤退してしまい、研究開発機能に転換しつつあります。一方で東京都内のなかで超高齢化が目立つ都市でもあり、ベッドタウンにおける持続可能なモデルが何なのか考えることが必要となっているという課題も抱えています。
主な取り組み
- 食やセルフケア、SDGsなどをテーマにした社会実証と場づくりの推進
- プラスチック類再処理施設の整備をきっかけとした郊外型資源循環都市づくり
- 日野市役所における全職員の意識改革とSDGs普及促進
主な成果
- コニカミノルタ株式会社とのSDGs推進協定を締結するといった地域内外のコラボが活性化した
- プラスチック類再資源化施設の稼働を開始させた
- 全職員の名刺を一新し、個人がSDGsに関するメッセージを発信できるようにした
【北陸・中部】SDGs未来都市の事例
北陸・中部地方では、「SDGs未来都市」の事例として富山県富山市と愛知県名古屋市をピックアップしました。双方ともどのような取り組みをしたのでしょうか。
富山県富山市
富山県富山市では、「SDGs未来都市」を目指すうえで産業活力の強化や技術・社会イノベーションの創出といったことを目標として掲げました。一方で課題の解決として、過度な自動車依存によって公共交通が衰退していることへの対応も富山市に求められていました。
主な取り組み
- 公共交通に対する再生可能エネルギーの利活用拡大といった目標から、路線バスなどにおけるEV・FCV導入検討
- 歩くことを富山市民に促すためのアプリケーション開発
- 健康作物であるえごまの大規模生産体制を確立するために、スマート農業機械の性能分析・比較やスマート農業機械導入による経営シミュレーションの実施
主な成果
- 技術やコストなどの問題からEV・FCVの導入ではなく、時速20km未満で公道を走れる電動車を活用したグリーンスローモビリティを導入し、2020年10月からモデル運行を開始した
- 歩いたり公共交通を利用したりすることでポイントがもらえるアプリを開発・リリースした
- えごまの栽培面積・出荷量の増加
愛知県名古屋市
日本三大都市にも数えられる愛知県名古屋市は、人口も増加傾向で経済力も強く、安定的な雇用を実現しています。また、名古屋市は1999年に「ごみ非常事態宣言」を発表。それ以降、市民や事業者の協力によってゴミの処理量を約4割抑えました。このような経験と実績から、名古屋市では「SDGs未来都市」を目指すための取り組みを始めました。
主な取り組み
- 中小企業に対するイノベーションの促進やスタートアップの支援
- リニア中央新幹線開業に向けたまちづくりを含めた、さらなる都市機能の強化
- 生物多様性の保全や緑に親しめる環境づくり
主な成果
- 国連地域開発センターによる監修のもと、名古屋市の取り組み事例を紹介した冊子を作成した
- 名古屋市立大学や市内企業と協力したフォーラム「SDGs IDEA FORUM 2020」を開催した
- 子どもたちに対してSDGsの意識を育むためのプロジェクトを実施した
【近畿】SDGs未来都市の事例
近畿でもSDGsに関する取り組みが行われており、京都府舞鶴市や奈良県十津川村などが「SDGs未来都市」として認定されています。
京都府舞鶴市
日本海に面する京都府舞鶴市には重要港湾である京都舞鶴港があり、関西の経済圏における国防や海の安全、エネルギーなどさまざまな役目を果たしています。また、都会にはない自然豊かな環境や歴史も魅力的な都市であり、地域資源と多様な連携を活かした取り組みをしています。
主な取り組み
- コワーキングスペースを活用して「舞鶴版SDGs」をPR
- ICTを活用した防災および減災システムを実装するモニタリング事業の実施
- 日本で初めて「共生型MaaS」を導入するに係る実証実験の実施
主な成果
- コワーキングスペースを通じた都市部からの来訪者数が800名ほどを突破した
- 企業や教育機関と連携したことで、各機関からも取り組みに関する情報を発信してもらえるようになった
- 「SDGs未来都市」となったことで新しい企業等との連携創出や投資促進を実現した
奈良県十津川村
奈良県最南端に位置する十津川村は、高齢化率が40%以上という少子高齢化と過疎化が進んでいる村です。林業と世界遺産である熊野古道や温泉による観光業が主要産業ですが、人口減少や高齢化によって祭の維持が困難になったり空き家が増加したりなどの課題を抱えています。
主な取り組み
- 観光業事業者や農林業事業者をメインとした「十津川村インバウンド受け入れ協議会」の設置
- SNSといったものを活用した地域のPR
主な成果
- インバウンド向けホームページを制作した
- 2016年は429人だったにもかかわらず、2019年には1329人までインバウンド旅行者が拡大した
- 空き家バンクの成約数が、2015年は6件だったのに対して2019年は9件にまで増えた
【中国・四国】SDGs未来都市の事例
中国・四国地方にも複数の「SDGs未来都市」が存在します。そのなかから今回は、山口県宇部市と徳島県上勝町の事例を紹介します。
山口県宇部市
山口県宇部市では、県の南西部に位置する都市です。豊かな自然環境と空港や高速道路などの交通基盤がそろっていますが、市内の産業規模縮小や人材不足などの課題が徐々に大きなものとなりました。そこで宇部市は、「共存同栄・協同一致」という精神をもとにした取り組みを行っています。
主な取り組み
- 「宇部SDGs推進センター」の設置
- 未来を作っていくSDGs人材の育成
主な成果
- SDGsに取り組んでいる、あるいは取り組む意欲を持つ個人・企業の支援や相互連携を目的とした「SDGsフレンド制度」を設立した
- 「せかい!動物かんきょう会議」を開催して子どもたちへのSDGs教育を実施した
- 「宇部SDGs推進センター」のホームページを設置し、SDGsの普及啓発や情報発信を実施した
徳島県上勝町
四国で一番小さな町でもある徳島県上勝町は、里山の葉っぱや花を収穫して料理の“つま”として出荷する「葉っぱビジネス」でも知られている町です。上勝町の場合は過疎化が課題となっており、後継者不足や地域経済の衰退などが危惧されています。そこで「葉っぱビジネス」やまちづくりを通じて交流人口や移住者の増加などを目指しています。
主な取り組み
- 「葉っぱビジネス」のマニュアル化
- 豊かな自然を活用したヘルスツーリズムプログラム開発・実施
- 起業家の育成・支援による新たな雇用創出や移住・定住の実現
主な成果
- 産業振興事業の1つ「いろどり山ラボ」に目標の3倍にあたる850名が参加した
- ヘルスツーリズムや間伐材を利用した木糸の製品などにより、「いろどり山ラボ」の売上創出額が1,460万円となった
【九州・沖縄】SDGs未来都市の事例
最後は九州・沖縄地方の「SDGs未来都市」を見ていきましょう。どのような取り組みをしてどんな成果を出したのでしょうか。
福岡県大牟田市
福岡県大牟田市は熊本県との県境にある都市であり、世界文化遺産の「三池港」や「宮原坑」などがあります。ただ、少子高齢化や核家族化によって地域のつながりや家庭の機能が低下しているという課題が生じていることから、まち全体としてのつながりや未来を担う人材の育成が求められています。
主な取り組み
- 大牟田市動物園や世界文化遺産を活用した事業の展開
- 「宮原坑子どもボランティアガイド」といった世界遺産学習の実施
- 省エネ行動を促進するための事業の実施
主な成果
- 国連大学が認定するESD実践拠点「RCE」への加盟に認定されたことから、認定式と外務省からの挨拶、国連大学による記念講演が開催された
- 市内の小学校がESD大賞における最高賞を受賞した
- 第3回「ジャパンSDGsアワード」で教育委員会が特別賞を受賞した
沖縄県恩納村
最後に紹介する沖縄県恩納村は、沖縄本島のほぼ中央に位置する村です。大学やリゾートホテルの影響で人口が増加しているものの、年少人口よりも高齢者の人口増加が上回っており、少子高齢化が進んでいます。また、観光リゾート地としての恩恵が村民にもたらされていないという課題も抱えています。
主な取り組み
- 村民に対して村での取り組みを伝えるために、「サンゴの村宣言」SDGsガイドブックを全世帯に配布
- 村内関係団体等の代表者で構成されるSDGs推進委員会で意見を交換し、「恩納村SDGs推進戦略」を策定した
- UNEPとイギリスのReef World財団によるサンゴ礁保全における取り組みである「GreenFins」の導入
主な成果
- 2030年のあるべき姿をイメージ図として作成することで把握しやすくなったという意見が出た
- 養殖サンゴの植え付け本数が増加した
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
概要
- SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
- 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
- オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化
特徴
- 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
- チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
- 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる
【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)
概要
- 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
- 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
- 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能
特徴
- あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
- 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)
概要
- 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
- 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
- すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント
特徴
- ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
今回は、「SDGs未来都市」の基本情報や主な事例などを紹介しました。「SDGs未来都市」は日本政府が取り組んでいるSDGs事業の1つであり、地方創生の一環としても機能している取り組みです。毎年多くの都市が「SDGs未来都市」となっているため、今後もさらに多くの「SDGs未来都市」が誕生するでしょう。
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進めるための具体的なステップを紹介!
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この記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
SDGsコンパスは、SDGsに踏み出したい企業や自治体様の「はじめの一歩」を後押しするメディアです。SDGsの目標やSDGsの導入方法などのお役立ち情報を発信していきます。