SDGsとESGの違いとは?間違いやすいCSR・CSV・サステナビリティについても解説
「SDGs(持続可能な開発目標)」の知名度が高まるにつれて、関連する用語も耳にする機会が増えました。代表的なものには「ESG」「CSR」「CSV」「サステナビリティ」があります。それぞれはSDGsと共通している部分もありますが、定義や内容には違いもあります。この記事では、SDGsやESG、CSRなどの定義とともに、SDGsとの違いも解説します。
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目次
SDGsとは
SDGsは「エスディージーズ」と読み、「持続可能な開発目標」という意味です。持続可能な開発をするうえで重要な17の目標と196のターゲットを定めています。
現在、地球上には気候が大きく変わったり、貧しさに苦しむ人が増えたりなど、さまざまな問題があふれています。この状況がもっとひどくなれば、人類は地球で暮らしていけなくなってしまうでしょう。
そうなる前に、世界中の人々が協力して、地球上にある問題を解決していこうと動き出しました。そのために立てられた目標が、2030年を達成期限としたSDGsです。
SDGsが採択された背景
2015年にSDGsが採択されるまでには、数々の段階を経ています。18世紀後半からはじまった産業革命により世界中で工業化が進んだことから、地球環境は徐々に悪化していきました。戦後になって人権や地球環境について注目が集まるようになったことから、それらを守るための宣言や条約が採択されるようになったのです。
直接的にSDGsに関係するものとして、1992年の国連環境開発会議(地球サミット)で出された「リオ宣言(※)」や、2000年のミレニアムサミットで採択された「国連ミレニアム宣言(※)」などが挙げられます。
地球の環境と開発について27の原則が設けられ、先進国も発展途上国も等しく地球に関する責任を有していることが定められました。
貧困や教育、ジェンダー平等などに関する8つの目標(MDGs)が、2015年を達成期限として設けられました。
国連ミレニアム宣言で採択されたMDGsは、2015年までに一定の成果を挙げたものの、完全に達成とはならなかったため、2015年に開かれた「国連持続可能な開発サミット」で、後続目標としてのSDGsが設定されたのです。
参考:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
SDGsってなんだろう? | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
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ESGとは
ESGとは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)(※)」の頭文字を取ったもので、それら3つの要素を考慮した投資方法を「ESG投資」といいます。
「統治・支配・管理」という意味の言葉ですが、ESGにおいては「利益を出しつつ、環境と社会に考慮した企業経営をするための管理体制」を指します。
一般的な投資では、経営成績や財務状態を示す「財務諸表」を基に企業を評価することがほとんどです。しかし、ESG投資の場合では「財務諸表」だけでなく、環境・社会・ガバナンスの「非財務情報」も考慮したうえで企業を判断します。
SDGsとESGの違い
ESGはSDGsと関連する用語として耳にすることが増えてきましたが、実際のところ、内容がどう違うのかわからない人もいるでしょう。簡単にまとめると、ESGとSDGsには下表のような違いがあります。
ESG | SDGs | |
対象 | 環境・社会・ガバナンス | 飢餓や貧困など17の目標 |
取り組みの主体 | 企業 | 国・企業・自治体 |
内容 | 投資家が企業を選ぶ判断基準 | 世界共通で取り組むべき幅広い指標 |
まず、ESGは環境・社会・ガバナンスの三要素のみを指すのに対し、SDGsでは飢餓や貧困をはじめとする世界が直面している社会課題を17の目標に集約している点が異なります。さらに、ESGの三要素にはそれぞれ明確な定義がないため、SDGsのように具体的な取り組み内容を定めにくいという違いもあります。環境・社会・ガバナンスという大枠は、時代の移り変わりによって対応すべき課題が変化するともいえるでしょう。
また、取り組みを主体的に行うのが、ESGでは企業だけですが、SDGsでは国・企業・自治体と幅広い点も大きな違いです。ESGが投資家から注目されてきているとはいえ、企業として活動して結果を出すにはある程度のコストや手間がかかることから、中小企業にとっては取り組みのハードルが高いかもしれません。その点、SDGsは規模の小さな自治体や個人でも取り組みやすく、活動の裾野が広がりやすいといえます。
ESGという言葉は、投資や資産運用で用いられることが多く、SDGsにはそうした投資的な意味合いはほとんどありません。
SDGsとESGは密接に関わっている
SDGsとESGは対象や取り組みの主体などで違いはありますが、密接な関係にあります。たとえば、ESGの内容(環境・社会)は、SDGsの「7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「8 働きがいも経済成長も」などとリンクしています。
企業がESGに取り組めば自然とSDGsの達成にもつながり、SDGsを達成するための取り組みは、ESG投資を行う機関投資家(法人の大口投資家)からの評価を高めることにつながります。そのため、ESGはSDGs達成のための1つの手段といえるでしょう。
参考:ESG投資の動向について|国土交通省 p.4
間違いやすい言葉「CSR」「CSV」「サステナビリティ」とは?
ESGのほかにも、SDGsと混同しやすい言葉として、「CSR」「CSV」「サステナビリティ」があります。それぞれの意味を確認していきましょう。
CSRとは
CSR(Corporate Social Responsibility)とは、「企業の社会的責任」を意味する言葉です。企業は社会的に責任ある立場であり、周囲から信頼される活動をしなければならないという、企業の取るべき姿勢を示しています。
SDGsやESGのように分野を特定しているわけではなく、「ISO26000」をはじめとする国際規格などに沿って判断されることが多いです。
参考:企業会計、開示、CSR(企業の社会的責任)政策(METI/経済産業省)
CSVとは
CSV(Creating Shared Value)は「共通価値の創造」という意味の言葉です。企業は利益を出すことだけではなく、社会的な価値のある活動を積極的にしていくべき、という姿勢を示しています。
CSVにはSDGsやESGのような分野や、CSRにおける「ISO26000」のような基準はありません。しかし、社会課題を解決するための取り組みが利益や業績に結びつくという理念は、SDGsやESGなどと共通しています。
サステナビリティとは
サステナビリティ(Sustainability)は直訳すると「持続可能性」という言葉です。企業に対して使う場合は、利益を追うばかりではなく、環境や社会などについても目をむけるべきという考え方を指します。特に、企業が環境や社会などに配慮した経営を長期的に行うための取り組みを、「コーポレート・サステナビリティ」と呼びます。
サステナビリティは企業活動だけでなく、子どもたちへの教育(サステナブル教育)や環境に配慮した観光(サステナブルツーリズム)など、幅広い場面で使われる言葉です。
SDGsやESGが注目される背景
SDGsが2015年に設定されるまでに、地球環境や人々の社会生活は大きく変化してきました。そのなかで環境保護や人権尊重など「持続可能な社会」を目指す考えが広まっていき、近年には当たり前のものとなってきています。
こうした背景から、SDGsに無関心だったり、取り組まなかったりすることは、「消費者や顧客からの信頼を失う」「企業価値が下がる」といったリスクをはらんでいます。
ESGは、そもそも社会課題を解決するための自主的な対応からスタートし、次第に機関投資家(法人の大口投資家)によって、投資による利益を得られる企業を選ぶ基準の1つとなった歴史があります。
2006年には、投資にESGの視点を組み入れることなどを定めた機関投資家の投資原則「責任投資原則(PRI)」を、国連が提唱しました。PRIの署名数は年々増加し、2020年8月末時点の署名機関数は3332となりました。そのうち、日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめとする85機関が署名しています。
こうしてESGを重要視した投資が広く普及し、SDGsとあわせて注目されるようになったのです。
参考:SDGsってなんだろう? | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
企業がSDGsやESGに取り組むメリット
SDGsやESGの注目度が高まるにつれて、取り組みをはじめる企業も増えています。その理由は、SDGsやESGの取り組みを行うことには数々のメリットがあるからです。ここではおもなメリット2つを解説します。
ブランド力や信頼性の向上につながる
SDGsやESGに取り組む過程で、環境保護活動を行ったり、社内の労働改善を改善したりすることで、企業経営は健全化していきます。そうした企業には周囲からの信頼性が付与されるようになります。
2019年に文部科学省が行った調査では、SDGsの達成や社会課題の解決を目的に提供・製造されたサービス・商品の購入について、約45%の人が「そう思う」「一定程度考慮する」と回答しています。
また、2020年にMckinsey & Companyが行った調査によると、57%の企業経営者・投資家が「ESG要因は企業価値を高める」と回答しています。
SDGsやESGに取り組むことでブランド力や市場競争力が高まり、総合的な企業価値の向上にもつながるでしょう。
資金が集まりやすくなる
SDGsやESGに取り組むことで企業価値が高まれば、優良企業と評価されて金融市場や投資家から資金を集めやすくなります。
世界持続的投資連合(GSIA)が行った調査で、2020年の世界のESG投資額が35.3兆ドルであると発表されました。運用されているすべての資産の35.9%を占める計算となるため、ESG投資で動く資金は莫大なものです。
SDGsやESGに取り組んで企業のブランドイメージや業績への評価を高めれば、こうした資金を得やすくなるのです。
SDGsの取り組み事例3選
ここでは、企業が行っているSDGsに対する取り組みを3つ紹介します。
1 株式会社伊藤園
緑茶産業をメインとしている「株式会社伊藤園」では、茶畑から茶殻までの工程を伊藤園内部ですべて行うことで、17の目標のうち「12 つくる責任 つかう責任」に貢献しています。
他の業者を間に入れないことで、無駄を出すことなく、本当に必要な量だけ生産できるようになったのです。生産のなかで出た茶殻は、肥料にしたり、ダンボールや紙などの製品にリサイクルされたりするため、最後まで地球にもやさしい流れです。
こうした生産体制の変化は新たな雇用も生み出し、「8 働きがいも 経済成長も」への貢献もしています。さらに、お茶を活用した健康に良い商品もいろいろ発売されているため、「2 飢餓をゼロに」にもつながります。
これらの取組が評価され、第1回ジャパンSDGsアワードのSDGsパートナーシップ賞(特別賞)を受賞しました。
参考:SDGsパートナーシップ賞(特別賞) 株式会社伊藤園(スライド)
持続可能な開発目標(SDGs)とは | 伊藤園グループのサステナビリティ | CSR(社会・環境) | 伊藤園
2 株式会社日本フードエコロジーセンター
食品のリサイクルを事業とする「株式会社日本フードエコロジーセンター」では、飲食店やスーパーで廃棄された食品を引き取り、独自技術で家畜のえさに作りかえる取組をしています。作ったえさは畜産農家へ安く提供され、そのえさで育った家畜の肉が飲食店やスーパーに回る、という流れを繰り返すことになります。
こうすることで、食品ロス(まだ食べられる食品を捨ててしまうこと)を減らすことに貢献しているのです。
廃棄される食品が減ればごみとして処理する労力やコストが減りますし、廃棄食品から作られたえさは輸入されたものより安いため、家畜を育てている畜産農家の負担を減らせます。
複数の問題を同時に解決できるうえ、2,3,7,8,12,13,17の目標に貢献できる仕組みが評価され、この取組は第2回ジャパンSDGsアワードのSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞しました。
参考:SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞 株式会社日本フードエコロジーセンター(スライド)
日本フードエコロジーセンターの取り組みと 「SDGs」(スライド)
3 株式会社LIXIL
住宅の設備を取り扱っている「株式会社LIXIL」では、安くて品質の良いトイレを発展途上国に提供することで、衛生環境を改善する取組を行っています。なかでも、LIXILのトイレを1台購入するごとに簡易トイレ1台を発展途上国に寄付する「みんなにトイレプロフェクト」は、ビジネスとSDGsを効果的に組み合わせたとして評価が高いです。
こうした取組は、17の目標のうちの「3 すべての人に健康と福祉を」や「6 安全な水とトイレを世界中に」に貢献するだけでなく、「5 ジェンダー平等を実現しよう(※)」にもつながっています。
生物学的な性別ではなく、「家事は女性の仕事」という考え方のように社会的・文化的につくられた性別のこと
「トイレがジェンダーと何の関係が?」と思うかもしれませんが、トイレがない地域では、女性や子どもが用を足すために人目のない場所へ行く際に暴力を受けるという被害が後をたちません。トイレが整備されれば、女性や子どもがそういう被害にあうことも防げるのです。
トイレ1つでさまざまな問題解決につなげられるLIXILの取組は、第2回ジャパンSDGsアワードのSDGs副本部長(外務大臣)賞を受賞しました。
参考:SDGs副本部長(外務大臣)賞 株式会社LIXIL(スライド)
LIXILがSDGsに貢献できること | サステナビリティ | 株式会社LIXIL
LIXIL | LIXIL × SDGs NEXT STAGE | アンバサダー 内田 篤人さんの活動記録
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
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概要
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- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
SDGsという言葉をよく聞くようになったものの、ESGやCSRといった似たような言葉もあるため、違いがわからず混乱している人もいるかもしれません。この記事で解説したSDGsの定義や似た言葉との違いを理解することで、効果的なSDGsへの取り組みをはじめてみましょう。
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SDGsとは
この記事を書いた人
マッスー
Webライター兼Web編集者。出版社に約10年勤務した後にフリーランスに。おもに、金融系・社会科系・ライフスタイル系のジャンルで執筆・編集に携わっています。基本的には引きこもりの超夜型で、お気に入りの音楽とスイーツに囲まれながら仕事をしています。