グリーンコンシューマーとは?10の原則と取り組みの具体例を紹介
「グリーンコンシューマー」という言葉を聞いたことはありますか? Green(緑)とConsumer(消費者)の二つの英単語を組み合わせた造語で、直訳すると「緑の消費者」という意味になります。
本記事では、グリーンコンシューマーとは何か、グリーンコンシューマーの歴史と10の原則、取り組みの具体例、注目されている理由や、グリーンコンシューマーの活動による効果を解説します。また最後に、近年注目を集めている「エシカル消費」との違いについても紹介します。
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目次
グリーンコンシューマーとは
グリーンコンシューマーの「グリーン」は、「環境」を意味しています。グリーンコンシューマーとは、地球のことを考えて環境にやさしい買い物をする人のことです。
みなさんは普段、買い物をするときに、どういった基準で商品やサービスを選んでいますか? 価格、性能、安全性などももちろん大事なポイントですが、グリーンコンシューマーはこれらに加えて、「どのくらい環境に負荷がかかるか」という点を重視します。
このようなグリーンコンシューマーによる消費行動は、「グリーンコンシューマー活動」または「グリーン購入」とも呼ばれています。
ロハス(LOHAS)との違い
グリーンコンシューマー活動と似たような概念に、「ロハス」があります。ロハス(LOHAS)は、Lifestyle of Healthy and Sustainabilityの略称で、健康や地球環境、持続可能な社会生活を意識したライフスタイルのことをいいます。1990年代後半のアメリカで、新たなビジネス・コンセプトとして生まれた概念です。
さまざまな解釈がありますが、グリーンコンシューマー活動は「環境のことを考えた消費行動」であり、ロハスは「環境と自身の心身の健康のことを考えたライフスタイル」と整理することができるでしょう。つまり、グリーンコンシューマー活動もロハスの一部といえます。
消費行動以外のロハスの具体例としては、サプリメントや予防医療を取り入れて健康増進を図る、ダイエットに取り組んだりセミナーに参加したりするなどして自己啓発に励むなどが挙げられます。
グリーンコンシューマーの歴史
グリーンコンシューマーという言葉が使われるようになったのは、1988年9月に、イギリスで「グリーンコンシューマー・ガイド(The Greenconsumer Guide)」という本が出版されたことがはじまりです。この本では、イギリスの人たちが日常的に使っている商品がライフサイクル(商品が作られて廃棄されるまでの一連の過程)全体でどのくらい環境に負荷を与えているのか、また、スーパーチェーンがどのくらい環境対策に熱心に取り組んでいるかなどが紹介されました。
発売当時のヨーロッパは、チェルノブイリ原子力発電所事故、ライン川汚染、酸性雨問題など、環境問題が深刻な状況にあり、人々の地球環境に対する意識も高まっていました。そのため、「グリーンコンシューマー・ガイド」は、イラストもほとんど無いような文字ばかりの本でしたが、第1版は30万部も売れたそうです。
この本のヒットをきっかけに、新たな市民運動として、グリーンコンシューマー活動がヨーロッパ諸国に広がっていきました。
参考:認定NPO法人 環境市民 – 4 グリーンコンシューマーの歴史
グリーンコンシューマーの10原則と取り組みの具体例
では、グリーンコンシューマー活動とは具体的にどういった消費行動なのでしょうか。
環境NGO環境市民のホームページでは、グリーンコンシューマー全国ネットワークが作成した「グリーンコンシューマーの買い物 10の原則」が紹介されています。項目ごとに、できることの例を見てみましょう。
参考:認定NPO法人 環境市民 – 2 グリーンコンシューマーの買い物 10の原則
1.必要以上に買わない
途上国には、十分な食料が得られなかったり、便利なエネルギーが使用できなかったりする人が大勢います。その一方で、先進国は資源を使いすぎており、ごみや食品ロスが多く発生しているのが現状です。
すべての人の持続可能な暮らしのためには、先進国の資源消費量を減らしていかなければなりません。本当にそれが必要なのか、十分考えてから購入するようにしましょう。
【取り組みの具体例】
- 安売りをしているからと言ってまとめ買いをしない
- 食品は賞味期限内に食べきれる量だけ購入する
- 外食をするときは自分が食べきれる量だけ注文する
- 衝動買いをしない
2.長く使えるものを選ぶ
ごみを処分する過程でも、多くの二酸化炭素(CO2)が発生します。焼却時だけでなく、ごみの運搬にもエネルギーが必要になるからです。CO2は、地球温暖化への影響度が最も大きいとされています。CO2の排出量を削減するためには、手軽な使い捨ての商品ではなく長く使える商品を選び、ごみを出さないようにすることが大切です。
また、使い捨ての商品よりも、少々値段が高くても長く使える商品のほうが、何度も買い替えずに済むため、結果的に経済的にもお得になることもあるでしょう。
【取り組みの具体例】
- 交換パーツが販売されている商品を選ぶ
- 耐久性が高い商品を選ぶ
- 劣化しにくい素材でできている商品を選ぶ
3.過剰な包装を避ける
環境省が毎年実施している「容器包装廃棄物の使用・排出実態調査」の2021年度の調査結果を見ると、家庭から排出されるごみのうち、66.0%を容器包装廃棄物が占めています(容積比)。
参考:容器包装廃棄物の使用・排出実態調査(平成18年度~) | 環境再生・資源循環 | 環境省
ごみの量を減らすために、買い物の際は、包装されていないもの、またはできるだけ少ないものを選びましょう。
【取り組みの具体例】
- 量り売りの商品を選ぶ
- 簡易包装の商品を選ぶ
- マイバック、マイボトルを持参して包装や容器を断る
4.ライフサイクル全体で環境負荷が少ないものを選ぶ
商品は、原材料の調達から生産・製造、輸送、利用、廃棄に至るまで、それぞれの過程で環境に負荷を与えています。商品を選ぶ際は、すべての過程での環境負荷を考えることが大切です。
【取り組みの具体例】
- 購入する前に、その商品にどのような資源が使われているかチェックする
- カーボンフットプリントの表示がある商品を選ぶ
参考:カーボンフットプリント(CFP)の概要 – 経済産業省(PDF)
5.化学物質が使われていない・または少ないものを選ぶ
身近な商品や食品の中には、農薬、食品添加物、薬剤などの化学物質が使われているものが多くあります。また、生産・製造や廃棄の過程で、ダイオキシンが発生するものもあります。これらは、環境だけでなく人体にも悪い影響を与えることがあるため、できるだけ少ないものを選びましょう。
【取り組みの例】
- 購入する前に食品表示をチェックする
- オーガニック製品を選ぶ
6.自然と生物多様性を損なわないものを選ぶ
これまでに人間は、過剰な漁業を行ったり、農地や宅地を開発するために森林を伐採したりしてきました。その結果、生物多様性がとても速いスピードで失われています。私たちの暮らしは、生態系からの恵みなしには成り立ちません。そのことを自覚し、環境や生物多様性に配慮した商品を選びましょう。
【取り組みの例】
- FSCマークの付いた商品を選ぶ
- MSC「海のエコラベル」の付いた商品を選ぶ
参考:MSC「海のエコラベル」とは | Marine Stewardship Council
7.近くで生産・製造されたものを選ぶ
生産・製造された場所が遠くであればあるほど、輸送に多くのエネルギーが必要になり、その分だけCO2の排出量も多くなります。できるだけ近くでつくられた商品を選ぶことで、輸送に係るCO2排出量を削減できます。
【取り組みの例】
- 地元産の商品を選ぶ
- 国内産の商品を選ぶ
8.フェアトレードなものを選ぶ
安価な商品の中には、途上国の生産者や労働者に正当な対価が支払われていないものがあります。途上国でつくられた商品を適正な価格で購入し続けて、生産者や労働者の生活を支えていく貿易の仕組みを「フェアトレード」といいます。
【取り組みの例】
- 国際フェアトレード認証ラベルの付いた商品を選ぶ
※国際フェアトレード認証ラベルとは……国際フェアトレードラベル機構が定めた国際フェアトレード基準を、原料の生産から商品が完成するまでのすべての過程でクリアしていることを証明するもの。
参考:フェアトレードミニ講座|フェアトレードとは?|fairtrade japan|公式サイト
9.リサイクルされたもの・リサイクルシステムがあるものを選ぶ
リサイクル製品も、需要がなければいずれ生産されなくなってしまいます。リサイクルされたものやリサイクルシステムがあるものを選ぶことで、「リサイクル製品を求めている」という消費者としての意思を、事業者に示すことができます。
【取り組みの例】
- リサイクルされた原料で作られていることを示すマークがある商品を選ぶ
(グリーンマーク、再生紙使用マーク、牛乳パック再利用マークなど) - 店頭に回収BOXを設置するなどして、不要になった自社商品やその容器を独自に回収しているお店で購入する
10.環境問題に取り組み、環境情報を公開している企業の製品を選ぶ
SDGsの広がりとともに、世間の環境問題に対する意識も高まっており、環境負荷低減に取り組む企業も多くなっています。しかし、外部からのイメージアップのために、「取り組んでいるように見せている」企業も中には見られます。本気で環境のために取り組んでいる企業をしっかりと見極め、支持していくことが大切です。
【取り組みの例】
- 企業のホームページをチェックし、SDGsやCSRにどのように取り組んでいるかを確認する。
※どんな活動に取り組んでいるか、具体的な数値目標が掲げられているか、進捗状況は公表されているかなどをチェックしましょう。
グリーンコンシューマーが注目されている理由
グリーンコンシューマーが注目されているのは、近年、地球温暖化やごみ問題、生物多様性の喪失など、さまざまな環境問題が深刻化しているからです。
美しい地球を守るためには、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄の暮らしから脱却し、持続可能な社会システムをつくっていかなければなりません。グリーンコンシューマー活動を行うことで、「環境に配慮した商品・サービスを購入したい」という消費者としての意思を、事業者に示すことができます。グリーンコンシューマーが増えれば、消費者のニーズに合わせて、環境に配慮した商品・サービスをつくる事業者も増えていくでしょう。社会システム全体を変革していくためには、このように消費者側から事業者側にアプローチしてくことが重要なのです。
また、グリーンコンシューマー活動は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて個人ができるアクションの一つでもあるため、近年はより注目度が高くなっています。グリーンコンシューマー活動を行うことで、17の目標のうち、
- 目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
- 目標12「つくる責任 つかう責任」
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」
- 目標14「海の豊かさを守ろう」
- 目標15「陸の豊かさも守ろう」
などに貢献できます。
グリーンコンシューマーがもたらす効果
グリーンコンシューマー活動により、具体的にどのような効果が生まれるのでしょうか。大きくは2つ、CO2排出量削減と、ごみの排出量削減です。
CO2排出量削減
グリーンコンシューマー活動により、CO2排出量を削減できます。具体的には、
- 省エネ性能が高い家電製品を選ぶ → 使用時のCO2排出量を削減できる
- 燃費の良い車を選ぶ → 走行時のCO2排出量を削減できる
- 近くで生産された食材を選ぶ → 輸送に係るCO2排出量を削減できる
などです。
また、買い物の際に「環境」の視点をプラスすることで、トータルコストが安くなることもあります。たとえば、省エネ性能が高い家電製品は購入価格も高くなる傾向にあります。しかし、使用時に必要なエネルギー量が少ないため電気代は安くなり、結果として、省エネ性能が低い安価な家電製品よりも、長い目で見ると経済的にお得になる場合があるのです。
家電製品や車などは、一度購入したら長期間使用することになるでしょう。買い替え頻度の低い製品は特に、環境や家計のためにも、省エネ性能や燃費について十分に検討することをおすすめします。
※内閣府の「消費動向調査(令和4年3月実施調査結果)」によると、主要耐久消費財の平均使用年数は、冷蔵庫が12.9年、洗濯機は10.8年、エアコンは13.7年、テレビは10.4年、乗用車(新車)は9.2年となっています。
参考:消費動向調査 – 経済社会総合研究所 – 内閣府(PDF)
ごみの排出量削減
グリーンコンシューマー活動には、3R(スリーアール)を実践することも含まれますので、ごみの排出量削減につながります。3Rとは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)のことで、次のような消費行動を指します。
【リデュース】ごみを出さないようにする、資源を使いすぎない
- マイバックを持参して包装を断る
- 少ない資源でつくられた商品を選ぶ
- 長く使えるように耐久性の高い商品を選ぶ など
【リユース】繰り返し使う
- リターナブル容器に入った商品を選び、使い終わったら回収に出す
- いらなくなったものをフリーマーケットに出す、リサイクルショップに引き取ってもらう など
【リサイクル】原材料やエネルギー源に生まれ変わらせる
- ごみの分別を徹底する
- 再生材料からつくられた商品を選ぶ
リユースまたはリサイクルするからといって、使いすぎて良いわけではありません。なぜなら、リユースやリサイクルの過程でもエネルギーが必要になるからです。この中で最も大切なのはリデュース。できるだけごみを出さない、資源をつかいすぎない買い物を心がけましょう。
参考:3Rについて | リデュース・リユース・リサイクル推進協議会
グリーンコンシューマーからエシカル消費へ
ここまでグリーンコンシューマーについて解説してきましたが、近年は、グリーンコンシューマーに代わって「エシカル消費」が広まりつつあります。
エシカル消費とは、環境だけでなく、人や社会、地域にも配慮した消費行動のことをいいます。具体的には、先ほど紹介したようなグリーンコンシューマー活動に加えて、障がい者や被災地支援につながる商品を選ぶ、地域活性化のために伝統工芸品を購入するなどです。
エシカル消費について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
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人間がこれまで大量生産・大量消費・大量廃棄の暮らしを続けてきたために、地球環境が危機的な状況にあります。社会システム全体を変革していくためには、消費者である私たち一人ひとりが行動を変え、事業者にアピールしていくことが重要です。
グリーンコンシューマーの10の原則を、一度にすべて実践するのは難しいかもしれません。まずは、地球が直面しているさまざまな問題に目を向けてみてください。そして、必要以上に買いすぎない、簡易包装の商品を選ぶよう心掛けるなど、できることから無理なく実践してみませんか?
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この記事を書いた人
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