LGBTQ+とは?それぞれの意味と当事者が抱えている問題、企業事例などを紹介
性的マイノリティの総称を表す「LGBT」という言葉を一度は聞いたことがあるかもしれません。では、「LGBTQ+」は、どうでしょうか。
本記事では、まずLGBTQ+の基礎知識として、「性のあり方」やアルファベットと+記号それぞれの意味、LGBTQ+の割合や関連用語「SOGI」と「Ally」について解説します。加えて、LGBTQ+の当事者が抱えている問題や日本の動き、企業の取り組み事例を紹介します。
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LGBTQ+とは?
LGBTQ+とは、性的マイノリティを表す総称の一つです。具体的にどういった人たちが該当するのでしょうか。
まずは「性的指向」と「性自認」を理解しよう
まずは、「性のあり方」について考えてみましょう。性とは、戸籍上の性別(男性・女性)だけではありません。「性的指向」と「性自認」という要素で考えることができます。
性的指向
性的思考とは、「どういった人が恋愛または性愛の対象になるか」というものです。
- 異性を好きになる(男性が女性を好きになる、女性が男性を好きになる)
- 同性を好きになる(男性が男性を好きになる、女性が女性を好きになる)
- どちらの性も好きになる(男性も女性も好きになる、性別にかかわらず“その人”を好きになる)
- どちらの性も好きにならない(恋愛・性愛の感情を持たない、生命あるものではなく物を好きになる など)
性自認
性自認とは、「自分の性別をどう認識しているか」というものです。
- 出生時の戸籍上の性別と性自認が一致する人
・生物学的な性が男性で、自分でも男性であると認識している
・生物学的な性が女性で、自分でも女性であると認識している - 出生時の戸籍上の性別と性自認が一致しない人
・生物学的な性は男性だが、自分は女性であると認識している
・生物学的な性は女性だが、自分は男性であると認識している - 自分を男性・女性のいずれとも認識していない、わからない、決めたくない人
LGBTQ+とはどんな人たち?
性的指向と性自認について理解できたところで、LGBTQ+とはどんな人たちなのかを見ていきましょう。
LGBTとは
LGBTとは、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシュアル)、Transgender(トランスジェンダー)の頭文字を取った言葉です。
- L:Lesbian(レズビアン)……女性を好きになる女性
- G:Gay(ゲイ)……男性を好きになる男性
- B:Bisexual(バイセクシャル)……男性も女性も好きになる人
- T:Transgender(トランスジェンダー)……出生時の戸籍上の性別と性自認が一致しない人
Q+とは
「Q+」のQは、Questioning(クエスチョニング)またはQueer(クィア)を意味しています。Questioning(クエスチョニング)は、自分の性のあり方が「わからない」「決めたくない」と感じている人たちのことです。Queer(クィア)は、「風変わりな」「奇妙な」などの意味があり、もともとは同性愛者を侮辱する言葉でしたが、近年は、さまざまな性のあり方を包括する前向きな言葉として用いられています。
そして最後の+は、LGBTQのいずれにも該当しない人たちのことです。
【+に含まれる人たちの例】
- Xジェンダー……自分の性を男性・女性に二分できない人(どちらにも感じる、またはどちらにも感じない)
- Aロマンティック……他者に対して恋愛感情を抱かない人
- Aセクシャル……他者に性的な感情を抱かない人
- パンセクシャル……相手の性にかかわらず、“その人”を好きになる人
株式会社電通が2021年に公表した「LGBTQ+調査2020」の結果を見ると、LGBTという言葉の浸透率は80.1%と、高い数値となっています。しかし、LGBTに含まれない性の多様性(Q+)については、まだまだ認知不足のようです。クエスチョニングやAセクシャルなどについては、「言葉も意味も知っている」と回答した人の割合が、いずれも10%を切る結果となっています。
参考:電通、「LGBTQ+調査2020」を実施 – News(ニュース) – 電通ウェブサイト
LGBTQ+の割合は?
LGBTQ+に関する統計データは複数ありますが、調査機関によって、LGBTQ+の定義や調査方法も異なり、その割合にはばらつきがみられます。
たとえば、前項で紹介した株式会社電通の「LGBTQ+調査2020」では、異性愛者であり、出生時の戸籍上の性別と性自認が一致する人を「ストレート層」とし、これに含まれない人たちを「LGBTQ+層」として調査を行っています。結果、LGBTQ+層に該当する人の割合は8.9%でした。
しかし実際には、LGBTQ+層に該当する人たちはもっと存在している可能性があります。なぜなら、LGBTQ+の当事者は、カミングアウトしていない人もいるからです。カミングアウトとは、LGBTQ+の当事者が、他者に自分の性的指向や性自認を打ち明けることをいいます。
一人ひとりが「LGBTQ+の人たちが身近にいる」という感覚と、性の多様性を理解し尊重しようという意識を持つことで、カミングアウトできる人が増えると、調査による割合があがるかもしれません。
あわせて押さえておきたい関連用語
LGBTQ+とあわせて押さえておきたい言葉に、SOGI(ソジ)とAlly(アライ)があります。
SOGI(ソジ)
SOGI(ソジ)とは、性の要素である性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字をとった性の多様性を表す言葉で、性的マイノリティだけでなく、すべての人が含まれます。これに性表現(Gender Expression)を加えて、SOGIE(ソジー)と表現されることもあります。性表現とは、たとえば一人称(わたし、僕、オレ)や、服装、髪型など、文字通り「自分の性別をどう表現するか」というものです。
性的指向、性自認、性表現に関するハラスメントは、SOGIEハラ(そじはら)とも呼ばれています。嫌がらせをしたり差別的な発言をしたりすることだけでなく、当事者本人の同意なく第三者にSOGIEに関する情報を暴露すること(アウティング)も、このSOGIEハラに該当します。
Ally(アライ)
Ally(アライ)とは、「味方」「支援者」「同盟」などの意味を持つ英単語で、LGBTQ+の当事者以外で、SOGIEの課題について理解し、支援しようとする人のことを指します。次項で詳しく紹介していますが、LGBTQ+の当事者は、さまざまな場面で問題・困りごとに直面します。学校や職場、社会の中にAllyが増えることで、多くの人が自分らしく暮らせるようになるでしょう。
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当事者が直面している問題・困りごと
ここからは、LGBTQ+の当事者が直面している、日常生活の中での問題や困りごとの事例を紹介します。
学校でのいじめ
LGBTQ+の当事者は、学校でいじめの被害に逢いやすいといわれています。
【例】
- クラスメイトが「ホモ」「オカマ」などの言葉を笑いのネタとして使っていた。
- 同級生に「男のくせに仕草が女みたいだな」と言われ、笑われたり、仕草を真似されたりした。
- 友達だと思っていた子に、セクシャリティに関する個人情報をSNSで晒された。
- 自分の性別に違和感を覚えていることを教員に相談したら、「そのままではまともな仕事につけないぞ」などと言われ、真剣に話を聞いてもらえなかった。
- 同性のクラスメイトを好きになり、ラブレターを渡して告白したら、相手の親が学校に通報したため、教員に呼び出された。
就職活動
就職活動中には、性別を問われる場面が多数あります。そのため、出生時の戸籍上の性別と性自認が一致しないトランスジェンダーは特に、履歴書の書き方や、面接でのふるまい方について、難しく感じている人が多いようです。
【例】
- エントリーシートや履歴書に、戸籍上の性別か自認している性別か、どちらの性別を記載するべきか迷った。
- 求人情報に「男女募集」「女性募集」など性別に関する記載があり、応募をためらってしまった。
- リクルートスーツを着るのが嫌だった。
- 面接で、自認している性別とは異なる性別としてふるまわなければならず、苦痛だった。
- 自分が性的マイノリティであることを面接官にカミングアウトしたら、内定を取り消された。
職場
LGBTQ+の当事者は、就職活動を乗り切っても、職場でもさまざまな問題や困りごとに直面しています。
【例】
- プライベートの話をしづらい。
- 自分に正直にふるまえない(異性愛者としてふるまわなければならない、性自認と異なる性別としてふるまわなければならないなど)。
- 性別に応じた服装規定がある。
- トイレや更衣室を使いづらい。
- 人事評価や部署異動で不利益な取り扱いを受ける。
その他
その他にも、日常生活のさまざまな場面で、問題や困りごとに直面したり、ささいな言葉や対応に傷ついたりしています。
【例】
- 女性ものの洋服を買いに行ったときに、トランスジェンダーであるため試着を拒否された。
- 同性のパートナーと一緒に住む賃貸物件を探しているときに、不動産業者から二人の関係性をしつこく聞かれた。正直に答えると、「申し訳ありませんが紹介できるお部屋はありません」と断られた。
- 同性カップルは法的には夫婦として認められていないため、特別養子を受け入れられなかった。
- 入院の際、男女で分けられている共同病室に入院しなければならなかった。トランスジェンダーである自分にとっては、苦痛だった。
- 病院の待合室で大きな声で名前を呼ばれた。名前と服装・髪型などが一致しないため、他の人からじろじろ見られた。
参考:法務省:令和2年度人権啓発資料法務大臣表彰 (moj.go.jp)
LGBTQ+をめぐる日本の動き
LGBTQ+の当事者も自分らしく生きられる社会の実現に向けて、日本ではこれまでに、どのような取り組みが進められてきたのでしょうか。
パートナーシップ制度
欧米には同性婚を認めている国や、アイルランド、イギリス、オランダなどのように、自分の性別を自分で決められる法律が整備されている国もあります。しかし、日本にはまだ、そのような法律がなく、同性カップルは結婚することはできないのが現状です。
しかし、さまざまな自治体で、パートナーシップ制度が施行されています。パートナーシップ制度とは、自治体が同性カップルを、婚姻に相当する関係だと承認する制度です。パートナーと認められることで、公的な手続きなどがスムーズに行えるようになります。
ただ、パートナーシップ制度は、法的な「夫婦」とは異なるもの。LGBTQ+の当事者が直面している問題や困りごとをすべて解決することはできません。また、カップルのうちどちらか一人がその地域に住んでいれば申請できる自治体もあれば、二人ともその地域に住んでいる、もしくは転居予定でなければ申請できない自治体もあるなど、自治体によって要件に差があることも課題となっています。
法律の整備
LGBTQ+に関する法律についても整備が進められています。最近であれば、2017年に施行された「改正セクハラ指針」(男女雇用機会均等法に基づくもの)によって、被害者の性的指向や性自認にかかわらず性的な言動や行動があれば、職場におけるセクハラの対象となることが明記されました。
また、同年には「いじめ防止対策推進法」に基づく「いじめの防止等のための基本的な方針」も改定され、LGBTへの対応が明記されています。
LGBTQ+に関する企業の取り組み事例
近年、ダイバーシティ経営の一環として、LGBTQ+の当事者がいきいきと自分らしく働けるよう、職場環境や社内制度の整備に取り組む企業が増えています。
ダイバーシティ(diversity)は、「多様性」を意味する英単語です。ダイバーシティ経営とは、多様な人材を集めて、それぞれが十分に能力を発揮できる環境を整えることで、新たな価値創造につなげる経営のことをいいます。性別や年齢、国籍、障がいの有無、価値観、キャリア、経験など、多様な人材を活かすことで、これまでにないイノベーションが生まれやすくなり、企業の競争力強化につながるとして、経済産業省もこれを推進しています。
今回は、ダイバーシティ経営に取り組む企業の中から、LGBTQ+に関する取り組みを実施している企業の事例を、2つ紹介します。
サントリーグループ
サントリーグループでは、LGBTへの取り組みを強化するために、2016年にプロジェクトチームを発足させました。以降、国内外でさまざまな取り組みを実施しています。
【これまでの取り組みの一例】
- 社員に、自分の身近にもLGBTの当事者が存在していることを認識してもらうために、社外講師を招いてLGBTに関する社内セミナーを実施した。
- 社内規定を改定し、配偶者の定義に「同性パートナー」を追加し、同性パートナーがいる社員でも育児休暇や住宅施策などの手当を受けられるようにした。
- LGBTQ+に関する相談窓口を設置した。
- LGBTを含めたセクシュアルハラスメント、パワーハラスメントに関するe-ラーニングを実施した。
- 社内ネットワーク上で、さまざまなケーススタディを掲載したAllyの為のハンドブックを公開した。
このような取り組みが評価され、サントリーグループは、PRIDE指標で最高評価のゴールドを、5年連続で受賞しています。
参考:ダイバーシティ経営の更なる加速へ、LGBTに関する活動を推進|サントリー ホームページ
参考:PRIDE指標とは – work with Pride
NTTグループ
NTTグループでは、誰もが自分らしくいきいきと働ける組織、社会の実現を目指して、2016年からLGBTQに関する取り組みを進めています。その一環として、2018年には、同性パートナーなどに対する各種手当や福利厚生の適用範囲を拡大しました。たとえば、扶養手当や、結婚・忌引きなどの特別休暇、育児・介護関連の制度、住宅補助費、社宅の利用などです。
また、LGBTQに関する外部のイベントやプロジェクトにも、積極的に参加しています。
- TOKYO RAINBOW PRIDE
2019年4月、LGBTQの当事者や支援者らにより「東京レインボープライド2019」というイベントが開催され、NTTグループ各社から、200名を超える社員とその家族らが、パレード行進に参加しました。 - プライドハウス東京
プライドハウス東京は、団体や個人、企業などが連携し、LGBTQなどに関するさまざまなイベントやコンテンツの提供を目指す取り組みです。NTTグループからは、ウェルネス・サポートチームが参加しており、ダイバーシティ&インクルージョンに関する情報発信や、イベントなどを実施しています。
このような取り組みが評価され、2020年度には、NTTグループ18社が、PRIDE指標の最高評価のゴールドを受賞しました。
参考:LGBTQの取り組み | NTTグループの取り組み事例 | NTTグループのダイバーシティ&インクルージョン | NTT
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まとめ
世の中には多様な性のあり方があります。LGBTQ+の当事者は、マイノリティ(少数派)であるというだけで、さまざまな困りごとを抱えながら暮らしていることがあります。また、多数派の無意識の言動や行動に傷つくこともあるでしょう。
性の多様性だけでなく、すべての人がいきいきと自分らしく暮らせる社会を実現するためには、一人ひとりが「自分の周りには多様な人がいる」ということを自覚し、違いを受け入れる意識を持つことが大切です。
また、企業においては、LGBTQ+をはじめ、多様な人材を活かすことが競争力強化につながります。他社の取り組み事例も参考に、ダイバーシティ経営に取り組んでみてはいかがでしょうか。
参考:職場におけるダイバーシティ推進事業_事例集 – 厚生労働省(PDF)
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この記事を書いた人
あらたこまち
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。