ジェンダー平等に向けてできることを、個人・企業に分けて紹介
ジェンダー(gender)とは、生物学的な性別(sex)ではなく、社会的・文化的な性差のことです。
SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は、地球上に存在しているさまざまな男女格差を解消し、すべての人々が能力を十分に発揮できる世界を目指しています。
本記事では、そもそもジェンダー平等とは何か、日本の男女格差に関する現状や、ジェンダー平等を実現するためにできることの例を、個人・企業に分けて紹介します。
SDGsのはじめの一歩を実現する「SDGsの社内浸透方法」とは?
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ジェンダー平等とは?
ジェンダー平等とは、性別に関係なく、一人ひとりが責任や権利、機会を平等に分かち合い、物事を一緒に決めていくことができる状態を意味します。
近年、世界中で取り組みが広がっているSDGs(※)が掲げる目標の1つでもあり、世界的に取り組んでいかなければならない課題です。
ジェンダーにより生じている不利益
男性と女性では身体のつくりが違いますが、さまざまな状況において平等でなくてはならないはずです。しかし現代社会では、「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」というように、性別で役割を分担したり、生き方や働き方を決められたりすることがあります。これにより、特に女性は、選択肢を狭められてしまうことが多いのです。
例えば、「女の子なのだから」という理由で、赤やピンクを勧められたり、理系の学部や、男性社員が多いイメージのある職業(建設業やエンジニアなど)を目指すことを否定されたりした経験はありませんか? 社会に出た後も、家事や育児のためにキャリアを諦めざるを得なくなったり、偏見や差別により働きづらさを感じたりしている女性が多いのです。
もちろん、女性ばかりが不利益を被っているわけではありません。「男性だから」という理由だけで、女性よりも大きな責任を与えられたり、自由な選択ができなかったりすることもあります。
Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称です。2015年に開催された国連サミットで採択された国際目標で、2030年までに、「誰一人取り残さない」持続可能な社会を実現するための、17の目標と169のターゲットが設定されています。目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は、この内の1つです。
日本のジェンダー・ギャップ指数は120位
ジェンダー・ギャップとは、男女格差のことです。世界経済フォーラムは毎年、国ごとの男女格差を数値化(ジェンダー・ギャップ指数)、およびランク付けをして、「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書」として公表しています。ジェンダー・ギャップ指数は、経済・政治・教育・健康の4つの分野のデータから作成されたものです。
2021年の報告書によると、日本は156ヵ国中120位という結果でした。前回(153ヵ国中)の121位から順位は1ひとつ上がっているものの、スコアはほぼ変わっていません。これは、先進国のなか中で最低レベルです。4つの分野別に見ると、教育と健康のスコアは高くなっていますが、経済は100点満点中60点、政治に関してはたったの6点しかありません。
ちなみに、1位はアイスランド、2位はフィンランド、3は位ノルウェーと、上位には欧州諸国がランクインしています。
また、ドイツの財団ベルテルスマン・スティフトゥンを中心に、国ごとのSDGsの進捗状況をまとめたレポート「持続可能な開発報告書(Sustainable Development Report)」が作成され、毎年6月に公表されています。2021年のレポートを見ると、日本の目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に対する評価は、5段階中最も低い評価となっており、ジェンダー問題への遅れが目立っています。
【関連記事】
ジェンダーギャップ指数から見る日本の現状・問題点とは
出典:2021-sustainable-development-report(PDF)
【個人】ジェンダー平等実現のためにできること
ジェンダー平等を実現するためには、私たち一人ひとりの取り組みが大切です。具体的に何ができるのか、個人ができる4つのことを紹介します。
1. 世界のジェンダー問題とSDGsを知る
世界は、具体的にどのようなジェンダー問題を抱えているのでしょうか。
開発途上国では、人身取引や性的搾取、早すぎる結婚などにより、多くの女性が傷つけられ、人生を奪われています。また、女性器切除という、女性の権利を著しく侵害するような慣習が、一部の地域では根強く残っているのです。これらの行為は、決して許されるものではありません。
一方、日本を含む先進国では、前述したような「男だから」「女だから」という固定観念が残っていることや、雇用機会や賃金の格差、家庭内暴力、家事・育児負担の偏りなどの問題があります。
SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」では、すべての女性に対するあらゆる形態の差別や暴力をなくすこと、家事労働を評価すること、政治や経済などの意思決定の場で、女性が男性と同じように活躍できるようにすることなどを掲げています。
まずは、これらのジェンダー問題やSDGsに関心を持ち、現状を知ることから始まります。そして、「もしも自分が女性だったら……」、「開発途上国に生まれていたら……」と、立場を置き換えて考えてみましょう。「どこか遠くで起こっていること」ではなく、身近な問題として意識することが大切です。SNSで気になるニュースを見つけたら積極的にシェアするなどして、取り組みの輪を広げていきましょう。
2. 家事・育児を平等に
男女格差は、家庭内にも存在しています。「男性は外では働き、女性は家庭を守るべきである」という古くからの固定観念に対して、「反対」意識を持つ人の割合が高くなってきてはいるものの、家事や育児を負担する割合は未だに女性側に大きく偏っており、数年前からあまり改善されていないというのが現状です。
内閣府男女共同参画局の資料によると、家事・育児を行っている夫の割合は、以下のとおりです。
出典:みんなで目指す!SDGs×ジェンダー平等(仮)|内閣府男女共同参画局(PDF)
また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、より女性の負担が大きくなっているという報告もあります。家事・育児を分担する具体的な方法については、例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 家事をすべてリストアップしてそれぞれの担当を決める
- 曜日で分ける
- 家事代行サービスを利用する
ただし、共働きや専業主婦、子どもの有無など、家庭の形態はさまざまですので、どういった状態が「平等」なのかは家庭によって異なります。家族できちんと話し合う時間を設け、納得できる「わが家の形」を見つけていきましょう。
3. 寄付する・ボランティアに参加する
開発途上国の問題に対しては、「寄付」が最も直接的な支援になります。しかし、いざ寄付しようとしたときに、寄付先に迷う方も多いでしょう。有名な団体としては、
- 認定NPO法人 国連ウィメン日本協会
- 公益財団法人ジョイセフ
- 国際人権NGOヒューマンライツナウ
などが挙げられます。
また、寄付だけでなく、海外派遣、国内でのイベントスタッフ、募金箱の設置などのボランティアを募集している団体もあります。
上記以外にもたくさんの団体が、女性の権利を守り、地位を向上させるため活動しています。取り組みや考え方に共感できる団体を選びましょう。
出典:認定NPO法人 国連ウィメン日本協会 | 国連ウィメン日本協会は皆さまのご寄付をUN Womenに届け、UN Womenが世界に展開するプロジェクトを支援しています
出典:世界の女性を支援する募金 | ご支援/ご寄付 | 国際協力NGOジョイセフ(JOICFP)
出典:認定NPO法人 ヒューマンライツ・ナウ Human Rights Now
4. 身近な差別に対してアクションを起こす
近年、いじめや家庭内暴力が見えにくくなってきています。耳を塞ぎたくなるような痛ましいニュースも、後を絶ちません。原因はさまざまですが、インターネットの普及、核家族世帯の増加、地域のつながりが希薄になったことなどが挙げられます。
身の回りで、少しでも「おかしい」と感じることがあれば、勇気を出してアクションを起こしましょう。
【企業】ジェンダー平等実現のためにできること
前述したように、日本のジェンダー・ギャップ指数は156ヵ国中120位で、先進国では最低レベルです。経済・政治・教育・健康の分野別にみると、経済と政治が特に低くなっており、日本のジェンダー平等実現のためには、企業の取り組みがとても重要であることがわかります。
具体的にどんなことができるのか、企業ができる4つのことを紹介します。
1.雇用条件や待遇を見直す
まずは、現在自社で運用している制度の確認を行いましょう。男女雇用機会均等法では、職場において、性別を理由に異なる扱いをしないことが求められています。募集・採用、配置、昇進、教育訓練などの機会や条件が男女で異なっている場合、「差別」と見なされる可能性が高いので、直ちに見直しを行わなくてはなりません。
このような法律があるにもかかわらず、実際はまだまだ男性が優遇されている現状が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により明らかになりました。一時は、男性の倍以上となる約74万人の女性の雇用が失われ、その後の再就職においても、男性が有利な状況が続いています。
そしてもう1つ、ジェンダー平等実現のために、企業が特に取り組むべきなのが、非正規雇用者の雇用条件・待遇の見直しです。令和元年度の非正規雇用比率は、男性が22.8%であるのに対し、女性は56.0%と、非正規雇用者は圧倒的に女性が多いのです。
2020年4月、パートタイム・有期雇用労働法が改正され、正規雇用者と非正規雇用者の間の、不合理な待遇差が禁止されました。厚生労働省は、不合理な待遇差解消のための業界別マニュアルを作成しています。点検ワークシートもありますので、活用してみてはいかがでしょうか。
参照:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)|厚生労働省
2.ダイバーシティ経営の推進
日本の管理的職業従事者に占める女性の割合は13.3%で、世界的に見てもかなり低くなっています。女性管理職が少ない理由として圧倒的に多いのが、「結婚や出産で管理職を続けづらい雰囲気があるから」というものです。
女性が結婚・出産後も働きやすい職場環境をつくるために、「ダイバーシティ経営」に取り組む企業が増えています。ダイバーシティ経営とは、多様な人材を受け入れ、それぞれが十分に個性や能力を発揮できるようにすることで、新たな価値の創造につなげている経営のことです。
さまざまな取り組みを実践する企業がありますが、例えば、以下のような取り組みが挙げられます。
- 多様な働き方ができる制度を導入する(フレックスタイム制、短時間勤務制度、テレワーク制度など)
- 積極的な産休・育休等の制度の利用を推進する
- 社員の意識改革のための研修・セミナーを実施する
また、女性のなかには管理職を望まない、または管理職という選択肢がそもそもないという人も少なくありません。性別を問わず、入社後の早い段階からキャリアを意識できるような研修・セミナーを実施する、責任のある仕事を任せてみるなど、管理職を育成するシステムを構築することも必要になるでしょう。
3.ハラスメントを防止する
世のなかには、さまざまなハラスメントがあります。職場で特に発生することが多いのが、パワー・ハラスメント(パワハラ)、セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)、マタニティ・ハラスメント(マタハラ)の3つです。これらに関しては、防止措置を講ずることが法律で義務付けられています。
ハラスメントのなかには、以下のように判断が難しいケースや、加害者側が無自覚なケースもあります。例えば、その人の能力にかかわらず、「女性だから」という理由だけで、お茶汲みやコピー取りなどの簡単な業務ばかりをさせてはいませんか? このように、合理性がなく「過小な要求」をすることもパワー・ハラスメントに該当する可能性があります。
また、マタニティ・ハラスメントの被害者は、女性だけではありません。男性社員の育休の取得を妨害する、または取得しづらい雰囲気をつくることも、マタニティ・ハラスメントです。
具体的な防止措置としては、会社としての方針・対処法を明確にして就業規則等に定める、社員に対して研修・セミナーを実施する、相談窓口を設置するなどが挙げられます。
4.性的マイノリティが働きやすい職場環境を整備する
SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」は、主に女性の権利を守ること、地位を向上させることを目的としたものですが、SDGsには「誰一人取り残さない」というスローガンがあります。このことからも、男性・女性という2つの性別だけでなく、性的マイノリティ(LGBT)への理解と対応も必要であるといえるでしょう。
性的指向(恋愛・性愛の対象となる性別)や、性自認(自身が認識する性別)は、人によってさまざまです。これらは本人の意思や選択で変えられるものではなく、また、その必要もありません。尊重すべき個人の尊厳です。しかし性的マイノリティの当事者たちは、「プライベートの話をしづらい」、「異性愛者としてふるまわなければならない」、「人事評価で不利益な取り扱いを受ける」など、困りごとを抱えながら仕事をしています。
性的マイノリティの当事者たちが働きやすい環境をつくるために、例えば、以下のような取り組みを実践している企業があります。
- 就業規則を改訂し、性的指向・性自認に関する差別禁止を明記した。
- LGBTについての研修会や勉強会の実施。
- 相談窓口の設置。
- 事実婚(婚姻同等の関係にある同性カップルも含む)をした社員に対する福利厚生を設けた。
- ジェンダーフリーのトイレや更衣室を設けた。
当事者たちの困りごとは、人によってさまざまなので、取り組みに「正解」はありません。1つの参考として、認定NPO法人虹色ダイバーシティの資料によると、当事者たちは「福利厚生での同性パートナーの配偶者扱い」を最も希望しており、「差別禁止の明文化」や「トランスジェンダー従業員へのサポート」、「職場での性的マイノリティに関する研修やeラーニング」を望む声も多いようです。また、LGBT施策の数が多いほど、当事者たちの勤続意欲が高いこともわかっています。
出典:多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例集~性的マイノリティに関する取組事例~の概要|厚生労働省(PDF)
出典:LGBTも働きやすい職場づくり‐NIJI BRIDGE(PDF)
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
概要
- SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
- 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
- オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化
特徴
- 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
- チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
- 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる
【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)
概要
- 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
- 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
- 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能
特徴
- あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
- 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)
概要
- 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
- 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
- すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント
特徴
- ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
紹介した取り組みは、ほんの一部です。ジェンダー問題に関する理解を深め、男性・女性、そして性的マイノリティを含むすべての人々が、いきいきと活躍できる社会の実現を目指しましょう。
SDGsのなか中で、ジェンダー平等が明記されているのは、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」ですが、17の目標は、互いに関連し合っています。他の目標への取り組みも、間接的にジェンダー平等の実現に向けた取り組みになるのです。SDGsへの理解を深めることで、できることをより多く見るける見かけることができるでしょう。
日本は、先進国のなか中でもジェンダー問題への対応が遅れています。一人ひとりが意識を変え、それぞれの立場で取り組みを進めることが大切です。
出典:みんなで目指す!SDGs×ジェンダー平等|内閣府男女共同参画局(PDF)
出典:ひとりひとりが幸せな社会のために_パンフレット2020|内閣府男女共同参画局(PDF)
SDGsのはじめの一歩を支援するSDGsイベント・研修とは?
SDGsのはじめの一歩を実現する「SDGsの社内浸透方法」とは?
進めるための具体的なステップを紹介!
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この記事を書いた人
あらたこまち
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。