SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の取り組み事例・できること
2015年9月に開催された国連サミットで、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という文書が採択されました。2030年までに、持続可能でより良い世界の実現を目指す、世界共通の行動計画です。この中に、具体的に達成するべき17の目標と169のターゲットが掲げられています。それが、SDGs(Sustainable Development Goals)です。
今回は、このSDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の内容や必要性を解説し、達成に向けた国や企業の取り組み事例、個人でできることをお伝えします。
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目次
SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の内容
アイコンには「パートナーシップで目標を達成しよう」とありますが、SDGsの目標17は、正式には「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」として掲げられています。
グローバル・パートナーシップとは、グローバル、地域、国内、地方の各レベルにおける、包括的なパートナーシップのことです。SDGsは、「誰一人取り残さない」で、持続可能な世界を実現することを誓っています。このためには、各国政府、民間部門、市民社会、国連システムなどのあらゆる主体が協力してSDGsに取り組んでいかなければなりません。
目標17は、すべての主体から利用可能な資源(資金、技術など)を動員して、グローバル・パートナーシップの活性化を目指すものです。
目標17を構成するターゲット
目標17には、大きく5つの項目があり、合わせて19のターゲットがあります。
- 資金(1~17.5)
開発が遅れている途上国の発展に必要な資金を、どうやって確保していくのかが掲げられています。具体的には、先進国は政府開発援助(ODA)を完全に実施すること、後発開発途上国への投資を促進するための仕組みをつくることなどです。 - 技術(6~17.8)
発展のためには技術が必要ですが、持続可能な世界を実現するためには、環境にも配慮しなければなりません。そのために、この項目では、技術に関する知識を世界で共有していくこと、開発途上国に環境にやさしい技術を普及させていくこと、後発開発途上国でもインターネットなどの技術が利用できるようにすることなどが掲げられています。 - 能力構築(9)
開発途上国が能力を高められるように、国際的な支援を強化することが掲げられています。 - 貿易(10~17.12)
すべての国が利益を得られるような、新たな貿易の仕組みを整えていくことが掲げられています。 - 体制面(13~17.19)
持続可能な開発を進めるために、政策・制度に一貫性を持たせること(17.13~17.5)、あらゆるレベルでのパートナーシップを強化すること(17.6~17.17)、よりデータを活用しやすくすること(17.8~17.19)が掲げられています。
なお、一つずつのターゲットの内容については、こちらの記事で詳しく解説しています。
SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の概要と取り組みをわかりやすく解説
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【現状と課題】なぜ目標17が必要なのか?
なぜ、持続可能な世界を実現するためには、目標17が必要なのでしょうか。理由は、大きく2つあります。
SDGsを達成するための資金が不足しているため
持続可能な開発を進めていくには、資金が必要です。特に開発が遅れている国や地域では、自国の民間部門からの資金だけでは、「経済と社会を発展させつつ環境も保全する」のは難しい部分があります。日本を含む先進国も、これまで環境を犠牲にしながら経済と社会を発展させてきました。地球環境も守りながら途上国を発展させていくためには、先進国が資金面で途上国を支援する必要があります。しかし、この資金がまだまだ足りていない状況なのです。
SDGsが採択された2015年のODAは1,316億ドルでしたが、2021年には1,776億ドル(正味)と、過去最高に達しました。しかし、国ごとの実績を見ると、目標17のターゲット17.2が掲げる「GNI(国民総所得)比0.7%以上」をクリアしているのは、ルクセンブルク、ノルウェー、スウェーデン、ドイツ、デンマークの5ヵ国のみです(暫定値)。
近年、日本のODA予算は、ピーク時から大きく減少しています。国内の経済・財政も厳しい状況が続いているため、国民からも「ODAをなるべく少なくするべきだ」という意見が多くなっているのです。ODAに対する国民の理解と支持を得ることも、今の日本の課題の一つとなっています。
「誰一人取り残さない」を実現するため
SDGsは、「誰一人取り残さない」で持続可能な世界を実現することを誓っていますが、現在はまだ、国・地域間でさまざまな格差が存在しています。
たとえば、2020年の世界の食料支援量は年間約420万トンでした。今でも多くの人が、飢餓に苦しんでいるのです。その一方で、日本からは、この食料支援量を大きく上回る522万トンもの食品ロスが発生しています(2020年度推計)。
また、日本ではほとんどの子どもたちが学校に通っていますが、世界では1億6,000万人もの子どもたちが児童労働に従事しているという現実があります(2020年)。
ほかにも、適切な医療を受けられない人、安全な水や便利なエネルギーを利用できない人、スラムに暮らす人、さまざまな理由で故郷を追われた人なども、世界には数多く存在しています。
このような課題を解決するためには、資金だけでなく、技術、能力構築など、あらゆる資源を動員する必要があるため、グローバル・パートナーシップの活性化が欠かせないのです。
SDGs達成に向けたさまざまなパートナーシップ
では、世界や日本は、どのようにグローバル・パートナーシップの強化に取り組んでいるのでしょうか。パートナーシップの例を見てみましょう。
南南協力と三角協力
南南協力と三角協力は、ターゲット17.6と17.9に、グローバル・パートナーシップを活性化させる具体的な手段として示されています。
- 南南協力
開発のために途上国同士が支援し合うことです。ある分野で開発が進んでいる途上国が、ほかの途上国を支援します。途上国の多くが南半球にあるため、南南協定と呼ばれています。 - 三角協力
先進国や国際機関が、南南協力の資金や技術、運営などを援助することです。南南協力で支援する側の途上国をA国、支援される側の途上国をB国とすると、先進国はA国の取り組みを手助けします。
近隣にある途上国同士ならば、言語や文化、気候といった取り巻く環境などが似ている傾向にあります。そのため、先進国や国際機関だけで途上国の開発を支援するよりも、技術の移転がスムーズに進み、自立発展につながるといわれています。
ESG投資
ESG投資とは、SDGsや社会課題に取り組む企業を支援するために行う投資のことです。投資家と企業のパートナーシップの一つといえるでしょう。ESGは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字を取ったものです。
これまでは、投資家は企業のキャッシュフローや利益率といった財務情報をもとに投資先を選んでいました。ESG投資では、これに加えてESGの三つの要素も考慮して、投資先を決めます。
このような動きは金融機関にも見られ、SDGsに取り組む企業を対象とした融資商品を提供する銀行も増えています。
地方創生SDGs官民連携プラットフォーム
地方(東京圏以外)には、人口減少や地域経済の縮小が大きな課題となっている地域が多数あります。政府は、SDGsの理念に沿って、まちづくりや地域活性化に向けた取り組みを進めることで、地方創生の課題解決が促進すると考えており、「地方創生SDGs」を推進しています。
「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」は地方創生SDGsの取り組みを加速させるために、行政と民間部門のパートナーシップを促進する場として、内閣府が立ち上げたものです。
このプラットフォームに会員登録をすると、会員が主催するイベントなどの情報の発信・受信や、プラットフォームが主催するマッチングイベントや、新事業の創出を目指す分科会への参加など、さまざまなメリットが得られます。
参考:地方創生SDGs|地方創生SDGs・地方創生SDGs官民連携プラットフォーム・「環境未来都市」構想(内閣府)
目標17に対する企業の取り組み事例
目標17の達成に向けて、日本の企業はどのような取り組みを実施しているのでしょうか。政府は、2017年から、SDGs達成に資する優れた取り組みを行う企業や団体等を表彰する「ジャパンSDGsアワード」を実施しています。この中から、これまでに「SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」を受賞している企業の事例を紹介します。
参考:ジャパンSDGsアワード | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
富士通株式会社
まずは、2020年の第4回ジャパンSDGsアワードでSDGsパートナーシップ賞(特別賞)を受賞した、富士通株式会社の事例です。
富士通株式会社は、2020年2月、目標4「質の高い教育をみんなに」の実現に向けた取り組みとして、病気などにより校外学習への参加が難しい児童生徒を対象とした、遠隔教育プロジェクトを実施。5Gや水中ドローン、VRなどの先端技術を駆使して、沖縄の美ら海水族館と病院内学級をリアルタイムでつなぎ、ジンベエザメなどを観察するという体験学習を行いました。
このプロジェクトは、美ら海水族館だけでなく、関西学院大学教育学部や、NTTドコモなど多様なセクターとの連携により実現したものです。そのため、目標17にも貢献したと評価されました。
参考:5Gによる遠隔教育をデザイン~水族館と院内学級をつないだ体験学習 : 富士通
日本リユースシステム株式会社
次に、2019年の第3回ジャパンSDGsアワードで、SDGsパートナーシップ賞(特別賞)を受賞した、日本リユースシステム株式会社の事例です。
日本リユースシステム株式会社では、「古着deワクチン」という、要らなくなった衣類のリユースと社会貢献を同時に行うことができるサービスを実施しています。
簡単に、サービスの概要をご紹介します。まずは、パソコン、スマホ、電話のいずれかで衣類の回収を申し込みます。次に、送られてきた専用回収キッドに不要になった衣類を詰めて送ります。回収された衣類は、カンボジアや開発途上国に送られてリユースされるのですが、「寄付」ではなく現地で手に取りやすい価格で「販売」されます。こうすることで、現地の雇用やビジネスの創出にもつながるのです。
さらに、専用回収キッドを一つ購入するごとに、購入代金の中からポリオワクチン5人分が寄付される仕組みとなっています。ポリオ(急性灰白髄炎)とは、「脊髄性小児麻ひ」とも呼ばれている病気です。手足がまひし、最悪の場合は命を落とすこともある恐ろしい病気ですが、ワクチン接種により発症を防ぐことができます。
また、専用回収キッドの封入・発送作業は福祉作業所に依頼することで、国内の障がい者の活躍の場も創出しています。
日本リユースシステム株式会社は、この取り組みで、目標17を含む計9つの目標に貢献しています。
目標17を達成するために私たちができること
グローバル・パートナーシップと聞くと、難しく感じてしまうかもしれませんが、政府や自治体、企業・団体などだけでなく、私たち一人ひとりにも、目標17を達成するためにできることがあります。ここからは、個人でできるアクションをいくつか紹介します。
SDGsへの理解を深める
まずはSDGsへの理解を深めることが、個人ができることの第一歩です。SDGsの17の目標は、それぞれ別々のゴールを目指しているように見えて、実は互いに関連し合っています。そのため、目標17に限らずSDGsの全体像を理解することが大切です。
SDGsの概念を図式化したものとして、「ウエディングケーキモデル」というものがあります。持続可能な開発の三側面、経済・社会・環境の三層構造の図に、17の目標を当てはめたものです。これについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
SDGsウェディングケーキモデルとは?関連する目標と取り組みをわかりやすく解説
または、SDGsが記載されている文書「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」を読むのもおすすめです。これを読むと、SDGsが採択された背景や、2030年までに目指す世界像、それを実現するための方法などがよくわかります。外務省の仮訳で37ページと、そこまで分厚い文書ではないので、一度読んでみてはいかがでしょうか。
参考:仮訳「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」 – 外務省(PDF)
SDGsに関する情報を発信する
SDGsに関するニュースは、テレビやインターネットなどで日々発信されています。世界の社会課題に関心を持ち、それらにアンテナを張っておくことも大切です。そして、自身がSDGsに関する状況をキャッチするだけでなく、積極的に周囲に発信しましょう。
たとえば、「今日世界のこんなニュースがあったよ」と家族に話したり、SNSでSDGsに関するニュースを見つけたら「いいね」や「シェア」したり、身近なところから発信してみましょう。一人ひとりがこうした行動を意識し、実行することで、パートナーシップの輪が広がっていきます。
寄付や募金をする、イベントやボランティア活動に参加する
目標17のターゲットと見ると、半分以上が「途上国をどう支援していくか」というような内容になっています。「途上国の支援」と聞くと、どうしても遠い話に感じられ、個人では何もできないと思ってしまいがちです。しかし、途上国のさまざまな課題の解決に取り組んでいる団体などに寄付や募金をすれば、個人でも直接途上国を支援できます。募金や寄付をする際は、その団体がどういった活動をしているのか、ホームページなどでよく確認しましょう。
また、個人が参加できるイベントやボランティア活動などを探して、それらに参加するのも一つの方法です。地域の清掃活動やお祭りに参加することも、パートナーシップの輪を広げることにつながるのではないでしょうか。無理のないところから、「誰かと一緒にSDGsに取り組む」ということを意識してみてください。
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
概要
- SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
- 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
- オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化
特徴
- 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
- チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
- 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる
【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)
概要
- 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
- 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
- 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能
特徴
- あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
- 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)
概要
- 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
- 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
- すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント
特徴
- ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」について解説しました。目標17は、グローバル・パートナーシップを活性化することを目指した目標であり、主に、開発が遅れている途上国をどう支援していくかということが示されています。
SDGsの達成期限は2030年。折り返し地点も過ぎましたが、まだ目標17は達成には程遠いのが現状です。17の目標の中でも、目標17は特に難しく感じてしまいがちですが、自治体、企業・団体などだけでなく、個人にもできることはたくさんあります。目標17を達成するためには、一人ひとりが途上国の課題を含む世界のさまざまな課題を「自分ごと」として捉えることが大切です。まずはSDGsへの理解を深め、知り得たことを家族や友達に発信したり、地域のイベントに参加したりして、身近なところからパートナーシップの輪を広げていきましょう。
SDGsのはじめの一歩を支援するSDGsイベント・研修とは?
SDGsのはじめの一歩を実現する「SDGsの社内浸透方法」とは?
進めるための具体的なステップを紹介!
自分ゴト化を促進!3分で分かるSDGs研修・イベントサービスの詳細動画
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この記事を書いた人
あらたこまち
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。