ジェンダーギャップ指数から見る日本の現状・問題点とは
世界経済フォーラム(WEF)は、ジェンダーギャップ(男女間の格差)について世界各国をランキングした「ジェンダーギャップ指数」を毎年公表しています。ジェンダーギャップ指数のスコアや順位を見ていくと、日本が抱える問題点が浮き彫りになります。
本記事では、2021年のジェンダーギャップ指数から、日本の現状や問題点、改善するための政府の取組について解説します。
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目次
ジェンダーギャップ指数(GGI)とは
ジェンダーギャップ指数は、世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)が毎年公表している、世界における男女格差の指標です。
「ジェンダー」とは、生物学的な性差(セックス)とは違い、社会的や文化的につくられている性を指します。つまり、男性と女性の役割の違いによって形成された性別のことです。
ジェンダーギャップ指数を構成する4分野
ジェンダーギャップ指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4分野に分かれ、それぞれが以下のように細かい評価項目に分かれています。
経済分野
- 経済活動への参画機会
- 労働参加の男女平等
- 同種業務の給与における男女平等
- 所得の男女平等
- 管理職における男女平等
- 専門職・技術職における男女平等
政治分野
- 政治への参画
- 国会議員の男女割合
- 閣僚の男女割合
- 女性国家元首の在位期間(過去50年)
教育分野
- 学歴
- 識字率
- 初等教育(小学校の在学率)
- 中等教育(中学校・高校の在学率)
- 高等教育(大学・大学院の在学率)
健康分野
- 健康と生存率
- 出生児の男女割合
- 健康寿命
上記の項目ごとにスコアがつけられ、順位とともに公表されます。そのスコアから国ごとに抱えている問題点や改善するべき点が浮き彫りになります。
ジェンダーギャップ指数の計算方法
ジェンダーギャップ指数は、上述した4つの評価項目ごとに「女性÷男性」の数値を計算し、指数を出します。指数は「0が完全不平等」、「1が完全平等」を表し、「1」に近いほど男女格差が少ないことを示しています。
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【2021年】日本のジェンダーギャップは世界120位
2021年に発表されたジェンダーギャップ指数から、世界の上位5か国と、日本のスコアを比較してみましょう。
※スコアは0に近づくほど「完全不平等」、1に近づくほど「完全平等」
順位 | 国名 | スコア | 前年度順位 |
1位 | アイスランド | 0.892 | 1位 |
2位 | フィンランド | 0.861 | 3位 |
3位 | ノルウェー | 0.849 | 2位 |
4位 | ニュージーランド | 0.840 | 6位 |
5位 | スウェーデン | 0.823 | 4位 |
120位 | 日本 | 0.656 | 121位 |
出典:男女共同参画局
アイスランドは12年連続1位で、最も男女が平等に近い国といえます。また、多くの北欧諸国が上位にランクインしていますが、これは順位に差が出やすい「経済」と「政治」の分野において、高いスコアを得ていることが要因と考えられます。
日本の総合順位は156カ国中120位で、昨年の121位からほぼ横ばいです。これはG7(日本・アメリカ・フランス・イギリス・ドイツ・イタリア・カナダ)の中では2年連続最下位で、アジア諸国の中では韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果です。日本は、他国と比較してジェンダーギャップに大きな課題があると言えるでしょう。
ここからは日本のジェンダーギャップについて、各分野の現状を詳しく見ていきます。
「経済」「政治」分野の男女格差が大きな課題に
日本のジェンダーギャップ指数を分野別に見ると、特に「経済」「政治」分野において格差が大きく、課題が多いことが分かります。
経済分野の各スコア
評価項目 | 順位 | スコア |
総計(経済活動への参画機会) | 117位 | 0.604 |
労働参加の男女平等 | 68位 | 0.840 |
同種業務の給与における男女平等 | 83位 | 0.651 |
所得の男女平等 | 101位 | 0.563 |
管理職における男女平等 | 139位 | 0.173 |
専門職・技術職における男女平等 | 105位 | 0.699 |
経済分野では、特に「所得」や「管理職への登用」、「専門職・技術職に就くこと」に関して男女格差が大きいことが分かります。
世界経済フォーラム(WEF)のレポートによると、女性の72%は働ける状態であるにもかかわらず、パートタイムの女性の割合は男性の約2倍、女性の平均所得は男性よりも43.7%低いことが指摘されています。
政治分野の各スコア
評価項目 | 順位 | スコア |
総計(政治への参画) | 147位 | 0.061 |
国会議員の男女割合 | 140位 | 0.110 |
閣僚の男女割合 | 126位 | 0.111 |
女性国家元首の在位期間 | 76位 | 0.000 |
出典:Global Gender Gap Report 2021(PDF)
政治分野は147位と、4つの分野の中で最も順位が低い結果です。「政治への参画」におけるスコアは昨年の0.049から上がっているものの、順位は昨年の144位から下がっています。これは、世界の国々がジェンダーギャップを解消するための取り組みを加速している中で、日本が遅れを取っていることを意味します。
特に、「国会議員の男女割合」と「閣僚の男女割合」が100位台と格差が目立ちます。また、レポートでは、過去50年に女性の国家元首(内閣総理大臣)が誕生していないことも問題点として指摘されています。
「教育」「健康」分野は高スコアだが課題も
「教育」分野では、1位を獲得している項目がある一方で、課題も浮き彫りになりました。
教育分野の各スコア
評価項目 | 順位 | スコア |
総計(学歴) | 92位 | 0.983 |
識字率 | 1位 | 1.000 |
初等教育(小学校) | 1位 | 1.000 |
中等教育(中学校・高校) | 129位 | 0.953 |
高等教育(大学・大学院) | 110位 | 0.952 |
出典:Global Gender Gap Report 2021(PDF)
教育分野の中でも「識字率」と「初等教育(小学校の在学率)」が1位を獲得し、高い水準を保っています。その一方で、中等教育(中学校・高校の在学率)や高等教育(大学・大学院の在学率)では、他の多くの国が「1(完全平等)」のスコアを獲得しているため、大学の理系学部に進学する女性割合が少ない日本は、相対的に順位を下げています。
健康分野の各スコア
評価項目 | 順位 | スコア |
総計(健康と生存率) | 65位 | 0.973 |
出生児の男女割合 | 1位 | 0.944 |
健康寿命 | 72位 | 1.040 |
出典:Global Gender Gap Report 2021(PDF)
日本は、健康分野の総計において4つの分野の中で最も高い65位を獲得しています。「出生児の男女割合」は昨年に引き続き1位を獲得しています。
ジェンダーギャップの問題点
ジェンダーギャップ指数が低いことで、どのような問題が起こるのでしょうか。日本が抱える問題点をみていきましょう。
政治・政策における問題
上述したように、日本は女性が政治に参画する機会が少ない現状があります。政治への参画におけるジェンダーギャップは、ジェンダーの視点を欠いた政策につながってしまうことから、男女の賃金・経済格差などの改善も遅れてしまう可能性があり、結果的に女性に不利な社会をつくってしまうことが問題視されています。
さまざまな分野において個人が尊重され、多様性が確保された社会を実現するためにも、女性が政治へ参画することは不可欠です。
バイアスによる女性の進学問題
内閣府の総合科学技術・イノベーション会議 教育・人材育成ワーキンググループによると、「女子は理系には向いていない」といった周囲からの根拠のないバイアスがかかり、女性の理系への苦手意識が生まれたり、「理数を使う職業につきたいと思わない」といった気持ちが生まれたりすることから、女性の進路が制限されていることが問題視されています。
実際に、平成25年度の内閣府による「小学生・中学生の意識に関する調査」では、「女の子は女の子らしく育てるべき」と回答した男性保護者は64.1%、女性保護者は40.4%にも上っています。
このような保護者や学校、社会によるジェンダーバイアス(※)を排除し、子ども達が主体的に進路を選択できる環境や、社会的ムーブメントを醸成していく必要があります。
出典:内閣府|総合科学技術・イノベーション会議 教育・人材育成ワーキンググループ 「Society 5.0の実現に向けた 教育・人材育成に関する政策パッケージ <中間まとめ> 」
女性管理職の登用問題
日本は諸外国に比べると女性管理職の割合が少なく、女性の能力を活かせていないのが現状です。近年、企業における女性管理職の割合は上昇している傾向にあるものの、上位の役職ほど女性の割合が低くなっています。平成27年は、「係長」級で17.0%、「課長」級で9.8%、「部長」級で6.2%という結果でした。
女性は、出産や育児などのライフイベントによって継続的な就業が難しいケースも多いなか、第1子出産後も就業を継続している女性の割合は年々増えています。今後ますます増えていくことが予想される就業意欲のある女性のキャリアをサポートし、男女にかかわらず能力を生かせるような環境を構築することが企業に求められます。
ジェンダーギャップ改善に向けた政府の取り組み
日本政府は、ジェンダーギャップを改善するためにさまざまな取り組みをしています。ここでは、その中から4つの取り組みを紹介します。
- 政治分野における男女共同参画の推進に関する法律
- 女性活躍推進法
- ポジティブ・アクション
- 輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会
政治分野における男女共同参画の推進に関する法律
政治分野における男女共同参画の推進に関する法律は、平成30年5月23日に公布・施行されました。この法律は選挙において、男女の候補者の数が均等になることを目指しています。各政党には、所属する男女それぞれの候補者数の目標を定めるといった自主的な取り組みが求められています。
女性活躍推進法
女性活躍推進法は、女性の職場での活躍を推進する法律として、平成27年8月28日に成立し、その後の令和元年、令和4年に改正が行われています。事業主には、「女性の活躍推進に向けた数値目標を盛り込んだ行動計画の策定・公表」や「女性の職業生活における活躍に関する情報の公表」が義務付けられています。
ポジティブ・アクション
ポジティブ・アクションは、女性が輝く社会の実現に向け、男女格差の解消や活躍促進を目指すために政府が推進している取り組みです。個々の企業が行う自主的かつ積極的な取り組みを指し、「女性のみを対象とする取り組み」と「男女両方を対象とする取り組み」に大きく分けられます。企業には、職場における男女間格差の現状を把握したうえで、格差を解消し、女性の活躍を推進するための計画を立て、実施していくことが求められます。
職場で女性の能力が十分に発揮されれば、社内が活性化され、企業に様々なメリットをもたらします。また、ポジティブ・アクションに取り組む姿勢が企業の魅力となり、優秀な人材を確保することにつながったり、女性の定着率が向上したりすることによって、結果的に採用・育成コストの削減にもつながると考えられます。
輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会
同会は、企業や団体の男性トップ(代表取締役や社長、理事長など)が参加し、様々な女性が意欲を持ち、能力を発揮できるように取り組み、内閣府を中心にその輪を広げる活動が行われています。
「自ら行動し、発信する」「現状を打破する」「ネットワーキングを進める」の3つの行動宣言に基づき、人材の積極的に採用や能力の開発を行い、女性の活躍を推進のための取り組みを進めています。
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まとめ
日本のジェンダーギャップ指数は、G7(日本・アメリカ・フランス・イギリス・ドイツ・イタリア・カナダ)の中では2年連続最下位で、アジア諸国の中では韓国や中国、ASEAN諸国より低くなっています。
ジェンダーギャップが解消されないと、政治や政策において女性に不利な状況が生まれる懸念や、就業意欲のある女性の能力を生かしきれないといった問題が起こります。女性を含めた誰もが活躍できる社会をつくるためにも、ジェンダーギャップを解消するための取り組みを今後さらに加速させる必要があるでしょう。
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この記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
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