MDGsとは?SDGsとの違い、経緯や成果を解説
「SDGs(持続可能な開発目標)」は、2015年に達成期限をむかえたMDGs(ミレニアム開発目標)を拡大したものです。この記事では、SDGsとMDGsそれぞれの基本知識と、2つの目標にはどのような違いがあるかをみていきます。
特に、これからSDGsへの取り組みを始めようとしている方は、SDGsとMDGsとの違いを理解しておきましょう。
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MDGsとは?
SDGsとMDGsの違いを理解するために、まずはMDGsの概要と設定された経緯を知っておきましょう。
MDGsは日本語にすると「ミレニアム開発目標」という意味で、開発途上国における貧困や教育、健康などに関する問題を解決するため、2000年に設定された世界的な開発目標です。8つの目標と21のターゲット、60の指標が掲げられていて、2015年を目標の達成期限としました。
MDGsが設定されるまでの経緯
MDGsが設定されるまでには、大まかに以下のような経緯をたどりました。
1972年 | 国連人間環境会議で、オゾン層の破壊や地球温暖化などの環境問題に対して、国際的に取り組むべきであると明記した「人間環境宣言」が採択されました |
1987年 | 「環境と開発に関する世界委員会」が公表した報告書「Our Common Future」の中で「持続可能な開発」という言葉が使われ、その考え方が知られるようになりました |
1992年 | 国連環境開発会議(地球サミット)で、地球環境と開発に関する「リオ宣言」や、リオ宣言の具体的な行動計画である「アジェンダ21」を採択しました |
1995年 | 世界社会開発サミットで、貧困をなくすことや人権を尊重することなどを実現させながら社会開発を進めることを目指し、「コペンハーゲン宣言」を採択しました |
1997年 | 「気候変動枠組条約 第3回締約国会議(COP3)」で、地球温暖化防止のために二酸化炭素の排出量削減を目指し、「京都議定書」を採択しました。 国連環境特別総会で、1992年に採択した「アジェンダ21」の実施状況や課題を確認し、より実施を進めるために「アジェンダ21の一層の実施のための計画」を採択しました。 |
2000年 | ミレニアムサミットで採択された「国連ミレニアム宣言」をもとに、MDGsがまとめられました |
各国で経済成長や開発が進むなかで、次第に地球環境に関する問題が表面化するようになりました。それを受けて、環境や開発に関するさまざまな宣言や条約が採択され、より地球規模での目標とするためにMDGsがまとめられたのです。
MDGsの成果
目標1「極度の貧困と飢餓の撲滅」については、以下のような成果が報告されました。
- 極度の貧困:1990 年には発展途上国の人口の半数近くが1日1.25ドル未満で生活していましたが、2015年には14%まで減少。これにより、10億人以上の人々が極度の貧困から脱却できたと解釈されています。
- 飢餓:発展途上国における栄養不良の人々の割合は、1990年から1992年の期間は23.3%でしたが、2014 年から2016年の期間は12.9%となり、1990年からほぼ半分に減少しています。
目標2「普遍的初等教育の達成」については、以下のような成果が報告されました。
- 初等教育就学:開発途上地域において、2000年の83%から2015年には91%に達しました。
- 非就学児童:世界全体で1億人(2000年)から推計で5,700万人(2015年)まで減少。
- 識字率:15~24歳までの識字率は、世界全体で1990~2015年の間に83%から91%に向上。
目標3「ジェンダー平等の推進と女性の地位向上」については、以下のような成果が報告されました。
- 教育におけるジェンダーの平等:南アジアでは、1990年には小学校に通う女子は男子100人あたりわずか74 人でしたが、2015年には男子100人あたり103人の女子が小学校に通うようになりました。
- 女性の雇用:非農業部門で女性の有給雇用の比率は、1990年の35%から2015年には41%に増加。
- 議会における女性:過去20年間でデータのある174カ国のうち、90%近い国で女性の政治参加が進み、同期間に議会における女性議員の割合は平均でほぼ倍になりました。
目標4「乳幼児死亡率の削減」については、以下のような成果が報告されました。
- 幼児死亡率:世界の5歳未満幼児死亡率は、1990~2015年の間に、生児出生1,000人あたり90人から43人へと低下。(1990年の1,270万人から2015年にはほぼ600万人まで減少)
- 感染症:はしかの予防接種により、世界全体ではしかの症例数は67%減少。少なくとも1回はしかの予防接種を受けた子どもの割合は、世界中で2000年の73%から2013年には84%まで上昇。
目標5「妊産婦の健康の改善」については、以下のような成果が報告されました。
- 妊産婦死亡率(世界全体):1990年以降は世界の妊産婦死亡率はほぼ半減しましたが、その減少の多くは2000 年以降のことです。
- 妊産婦死亡率:南アジアにおける妊産婦死亡率は、1990~2013年の間に64%低下し、サハラ以南のアフリカではほぼ半減。
- 出産立会い:2014年には世界の4分の3近い出産が熟練医療従事者の立会いの下で行われ、1990年の59%から上昇。
目標6「HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止」については、以下のような成果が報告されました。
- 新規HIV感染者:HIVへの新規感染者は、2000年の推定350万人から2013年の210万人へと約40%減少。
- 抗レトロウイルス療法:2003年にはわずか80万人であった、HIV感染者が抗レトロウイルス療法(ART)を受けた人口が、2014年6月までに世界で1,360万人まで増加。ARTにより、1995~2013年の間に760万人がエイズによる死を免れました。
- マラリアによる死およびマラリア発生率:2000~2015年の間に、620万人以上の人々がマラリアによる死を免れました。世界のマラリア発生率は推計で37%低下し、死亡率も半分以下に減少。
- 結核:2000~2013年の間に、結核の予防・診断・治療によって推計で3,700万人の命が救われた。結核による死亡率は45%低下し、有病率は1990~2013年の間に41%低下。
目標7「環境の持続可能性の確保」については、以下のような成果が報告されました。
- 飲料水:2015年には世界の人口の90%以上が改良された飲料水源を使用しており、1990年以降に約26億人が改良された飲料水へのアクセスを得ました。
- 衛生施設:世界全体で21億人の人々が、改良された衛生施設を利用できるようになりました。1990年以降に、野外排泄を行う世界の人口の割合はほぼ半減。
- オゾン層破壊:オゾン層破壊物質は1990年以降ほとんどが除去され、オゾン層は21世紀半ばまでに回復するとの見込みです。
- スラム:発展途上国でスラム地区に居住する都市人口の割合は、2000年の約39.4%から2014年には29.7%まで減少。
目標8「開発のためのグローバル・パートナーシップの推進」については、以下のような成果が報告されました。
- 政府開発援助(ODA):先進国からのODAは、2000~2014年の間に実質ベースで66%増加し、1,352億ドルに到達。
- 貿易:先進国の開発途上国からの輸入のうち、非課税輸入の割合は2000年の65%から2014年にはほぼ5分の4まで上昇。
- インターネット普及率:インターネット普及率は、2000~2015年の間に6%から43%まで増加。
このように、MDGsは一定の成果を挙げました。
MDGsで残った課題
MDGsは一定の成果を挙げたものの、以下の分野ではいまだ課題が残っています。
ジェンダー不平等
ジェンダー平等や女性の地位向上は、MDGsによってある程度は改善されましたが、貧困・労働・賃金・政治などの面において、いまだに大きなジェンダー格差は残っています。
例えば、世界全体で就業年齢の男性の約4分の3が労働に従事しているのに対し、就業年齢の女性で労働に従事しているのは半分です。また、世界全体で女性の国会議員が占める割合は、議員5人あたり1人と決して高いとはいえません。
貧困・飢餓
貧困や飢餓に対しても、割合を半減させるという大きな成果をあげた一方で、いまだに約8億人もの人々が極度の貧困の中での暮らしを余儀なくされています。毎日、約16,000人の子どもが5歳になる前に命を落とし、約8億8,000人がスラム地区で生活しているという実態も報告されており、まだまだ貧困や飢餓に苦しむ人が多いという問題が残っています。
紛争
現在もなお、世界各地で紛争が続いています。2014年末までに、約6,000 万人もの人々が紛争で家を捨て、毎日平均で約42,000人が強制的な移動を強いられているのです。
紛争の影響を受けた国は貧困率とともに非就学児童の割合も高く、1999年の30%から2012年には36%まで増加したという報告もあります。
気候変動
MDGsだけでなく、1997年の京都議定書などさまざまな方面から、地球環境の保護は提唱されてきました。しかし、地球温暖化の原因となる二酸化炭素排出量は、世界全体で1990年以降50%以上も増加しています。
他にも、2010年には推定で520万ヘクタールの森林が失われ、安全な生物学的利用限界内の資源の割合が1974 年の90%から2011年には71%に減少したというのが現実です。
こうした環境破壊によって地球環境が悪化し、気候変動が起こっています。特に、発展途上国では自然環境に依存した経済構造であることが多いため、気候変動による影響は大きなものとなります。
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SDGsとは
SDGsは「エスディージーズ」と読み、日本語にすると「持続可能な開発目標」になります。MDGsが期限をむかえた2015年に開かれた「国連持続可能な開発サミット」で、SDGsは設定されました。MDGsでは8つだった目標を17まで増やし、196ものターゲットを定めることで、地球をより良くしようとしたのです。
前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)は一定の成果を挙げましたが、ジェンダー不平等や貧困・飢餓、紛争、気候変動といった分野で課題を残しました。また、MDGsでは環境や経済の分野がほぼカバーされていないということも指摘されました。それらの課題や問題点を改善するために、SDGsではMDGsよりも目標数および分野が拡大されて、包括的な目標となったのです。
SDGsは、地球環境を持続可能な状態で保全して未来の世代へ受け継ぐために、世界中の人々が協力して取り組むために設定された目標です。2030年を達成期限とし、現在も国や自治体、企業や個人によるさまざまな取組が続けられています。
MDGsとSDGsの違い
MDGsとSDGsのおもな違いとして、下表のような点が挙げられます。
MDGs | SDGs | |
目標数 | 8 | 17 |
ターゲット数 | 21 | 169 |
指標数 | 60 | 232 |
対象 | 途上国 | 途上国・先進国 |
設定までのプロセス | 国連の専門家主導 | 加盟各国の協議 |
取り組みの主体 | 政府主導 | 政府・自治体・企業・個人 |
SDGsとMDGsを比べると、SDGsの扱う範囲が広がったことがわかります。目標やターゲットの数が増えたことはもちろん、開発目標の対象に先進国も含まれたことが大きな違いといえるでしょう。また、MDGsに対する取り組みが政府主導で行われたのに対し、SDGsでは政府・自治体・企業・個人とさまざまな立場の人々が取り組みを行っていることも違いとして挙げられます。
なお、MDGsからSDGsに移行するにあたって目標の数が増えましたが、カバーしている分野・内容については以下のような違いがあります。
MDGsの目標 | |
1 | 極度の貧困と飢餓の撲滅 |
4 | 乳幼児死亡率の削減 |
5 | 妊産婦の健康の改善 |
6 | HIV/エイズ、マラリア及びその他の疾病の蔓延防止 |
2 | 普遍的初等教育の達成 |
3 | ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上 |
7 | 環境の持続可能性の確保 |
8 | 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進 |
SDGsの目標 | |
1 | 貧困をなくそう |
2 | 飢餓をゼロに |
3 | すべての人に健康と福祉を |
4 | 質の高い教育をみんなに |
5 | ジェンダー平等を実現しよう |
6 | 安全な水とトイレを世界中に |
7 | エネルギーをみんなに そしてクリーンに |
8 | 働きがいも経済成長も |
9 | 産業と技術革新の基盤をつくろう |
10 | 人や国の不平等をなくそう |
11 | 済み続けられるまちづくりを |
12 | つくる責任 つかう責任 |
13 | 気候変動に具体的な対策を |
14 | 海の豊かさを守ろう |
15 | 陸の豊かさも守ろう |
16 | 平和と公正をすべての人に |
17 | パートナーシップで目標を達成しよう |
MDGsは貧困や健康に重点が置かれていたため、経済やエネルギーなどの分野はほとんどカバーされていませんでした。その部分をSDGsでカバーしたといえます。
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まとめ
SDGsとその前身であるMDGsは、世界全体で達成すべき目標という点では共通しています。しかし、MDGsは対象が発展途上国だけであったり、取り組み主体が政府主導であったり、地球環境や経済に関する目標がほぼカバーされていなかったりと、その内容は限定的なものでした。結果として、ジェンダー平等や貧困、飢餓などについて課題を残したため、より包括的な目標とするためにSDGsが設定されました。
SDGsについての取り組みを行い、目標を達成させるためには、MDGsとSDGsの違いやMDGsの課題を把握することが有効です。今後、より効果的な取り組みができるようにSDGsについてしっかり学んでいきましょう。
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SDGsとは
この記事を書いた人
マッスー
Webライター兼Web編集者。出版社に約10年勤務した後にフリーランスに。おもに、金融系・社会科系・ライフスタイル系のジャンルで執筆・編集に携わっています。基本的には引きこもりの超夜型で、お気に入りの音楽とスイーツに囲まれながら仕事をしています。