世界保健機関とは?成り立ちや活動内容、SDGsとの関連性について解説
新型コロナウイルス感染症などの報道で、「世界保健機関(WHO)」という組織の名前を見聞きする機会が増えました。しかし、世界保健機関という名称を聞いても、どのような活動をしている組織なのかよく分からないといった方もいるのではないでしょうか。
世界保健機関は各国での人々の健康を守るために活動しており、国家間での協調を図る役割を担うなど、世界の健康にとって非常に重要な立場にある組織です。
そこで本記事では、世界保健機関の概要や主要な活動内容、持続可能な社会を目指す「SDGs」との関連性について解説します。
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世界保健機関とは
世界保健機関は、英語で「World Health Organization(略称:WHO)」と呼ばれており、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的とした国連の専門機関です。
1946年、ニューヨーク国際保健会議にて採択された「世界保健憲章」によって1948年4月7日に設立され、世界の人々の健康を守るための活動を行っています。本部はスイスのジュネーブで、194の国と地域が加盟しており、日本は1951年に正式加盟をしました。また、世界保健機関は、会見時の背景に映る「蛇の描かれたロゴマーク」が非常に印象的です。このロゴマークには、ギリシア神話の医師アスクレピオスが持っていた「蛇が巻き付いた杖」と国連のロゴマークが描かれており、医術と国連の協調が表されています。
世界保健機関による健康の定義
世界保健憲章では、守るべき人々の「健康」を以下のように定義しています。
「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. (日本WHO協会訳:健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。)」
引用:世界保健機関(WHO)憲章とは | 公益社団法人 日本WHO協会 (japan-who.or.jp)
世界保健機関は、上記の世界保健憲章に記された「肉体・精神・社会的にも満たされた状態」であることが、あらゆる人々にとって基本的人権のひとつであると考えています。すべての国に暮らす人々が健康であるためには、個人と国家の全面的な協力が必要です。世界保健機関では、人々の健康に関わる課題の解決に向けた情報の提供や、安全を守るための警告などを行っており、国家と国民がより連携を深められるような環境づくりに取り組んでいます。
また、現代社会においては、世界保健憲章に記されている「ウェルビーイング(well-being)」が大きな注目を集めています。働き方が多様化する現代社会において、身体的・精神的・社会的に満たされた状態を実現するには、「ウェルビーイング(well-being)」に基づいた労働環境の改革が必要です。日本では、厚生労働省が「一人ひとりの豊かで健康的な職業人生の実現、人口減少下での我が国の経済の維持・発展」を掲げ、「ウェルビーイング(well-being)」向上への取り組みを行うとともに、企業に対しても労働環境改善に向けた行動を求めています。
「ウェルビーイング(well-being)」についてより詳しい内容を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
ウェルビーイングとは?意味や構成要素、企業の取り組み4選を紹介
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世界保健機関の主要な活動内容
ここまでで、世界保健機関の目的や健康への認識などを解説しましたが、具体的にはどのような活動を行っている組織なのでしょうか。世界保健憲章の普及や目的達成に向けた協力を行っている「日本WHO協会」では、世界保健機関の活動例として、以下のようなものを挙げています。
- 国際保健事業の指導的かつ調整機関としての活動
- 保健事業の強化についての世界各国への技術協力
- 感染症及びそのたの疾病の撲滅事業の推進
- 医学情報の総合調整
- 保健分野における研究の促進・指導
- 生物学的製剤及び類似の医薬品、食品に関する国際的基準の発展・向上
- 健康関連SDGs目標に到達するために各国を支援
世界保健機関は、感染症対策に関わる活動で大きな注目を浴びていますが、「高血圧」「肥満」「がん」などといった、多くの疾患に関する国際的なガイドライン策定も、重要な活動のひとつです。また、どこかの国で新たな保健問題が発見された場合には、職員による現地調査や処置といった迅速な対応も行っています。世界保健機関では、このような活動を行うことで、すべての人々が平等な「健康」を得られる社会の実現を目指しています。
参考:WHOは何をしているの | 公益社団法人 日本WHO協会 (japan-who.or.jp)
世界保健機関の具体的な活動事例
世界保健機関では、世界中の人々の「健康」を実現するために、さまざまな取り組みを実施してきました。ここでは、世界保健機関が行った具体的な3つの活動事例を紹介します。
天然痘根絶
天然痘は、感染力が非常に強く、死に至る危険性の高い疫病として紀元前より恐れられてきました。世界保健機関は、天然痘感染への被害をなくすため、1958年に「世界天然痘根絶計画」を世界保健機構総会にて可決。取り組み当初は、ワクチン接種による天然痘根絶を目指しましたが、ワクチン接種率を高めても、発生数が下がらず、「患者を見つけ出し、患者周辺に種痘を行う」という、サーベイランスと封じ込め作戦への変更を実施しました。このような取り組みの結果、1977年に発見された患者を最後に世界から天然痘は消え去り、1980年5月には、世界保健機関が「天然痘の世界根絶宣言」を行いました。
新型コロナウイルス感染症への対策
世界保健機関の事務局長であるテドロス氏は、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大を踏まえて、2020年3月に「パンデミック宣言」を行い、各国において以下のような感染症対策強化を訴えました。
- 感染のリスクと予防方法を広く周知すること
- 感染者を発見して隔離し、治療するととともに、接触した人を追跡すること
- 医療体制を整え、医療従事者を感染から守ることなどを改めて呼びかけ
また、世界保健機関は、現地での調査も実施しており、2020年2月28日には中国での新型コロナウイルス(COVID-19)の感染に関する「WHOと中国の合同調査団報告書」を公表し、各国への情報提供を行っています。
世界保健デー
世界保健機関では、世界保健憲章が定められた4月7日を「世界保健デー」に定めており、世界中のさまざまな国で健康に関連するイベントを実施しています。世界保健デーには、その年に合ったテーマが設定されており、2022年のテーマは『Our planet, our health(私たちの地球、私たちの健康)』でした。
このテーマには、「環境汚染」や「パンデミック」、「癌・喘息・心臓病の増加」など、人々の健康に関わる問題が増加する中で、地球と人の健康を保つための活動を促進し、「ウェルビーイング(well-being)」な社会を実現していくとの想いが込められています。
参考:世界保健デー2022 : Our planet, our health | 公益社団法人 日本WHO協会 (japan-who.or.jp)
世界保健機関と関連するSDGs達成目標
世界保健機関の目的や活動は、SDGsを達成するためにも非常に重要な役割を担っています。SDGsとは、持続可能な社会を実現するために、17の目標と169のターゲットから構成されている国際的な目標です。このSDGsに掲げられている17目標の一部は、世界保健機関の活動と密接に関係しています。特に関連性が深いものは、「目標3.すべての人に健康と福祉を」ですが、その他の目標で掲げられているターゲットにも、人の健康や命を守る世界保健機関の活動が深く関わっています。
「目標1.貧困をなくす」
この目標では、「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」ことを目的としています。貧困は、人々の健康に直結する問題であり、必ず解消しなければならない社会的な課題です。特に、下記のターゲットは、世界保健機関の活動内容である「保健事業の強化についての世界各国への技術協力」に深く関連しています。
- a:あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。(各国保健予算の確保を含む)
SDGs目標1「貧困をなくす」について、より詳しい内容や取り組みを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
SDGs目標1「貧困をなくそう」の概要と取り組みをわかりやすく解説
「目標2.飢餓をゼロに」
世の中から飢餓を失くし、食の安全や十分な栄養の確保、持続可能な農業の確立を目指すための目標である「飢餓をゼロに」は、下記のターゲットが世界保健機関と関連しています。このターゲットでは、栄養豊富な食料の確保を目的としており、世界保健機関の活動である「食品に関する国際的基準の発展・向上」が、目標を達成するための鍵となるでしょう。
- 2:2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズに対処する。
SDGs目標2「飢餓をゼロに」について、より詳しい内容や取り組みを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
SDGs目標2「飢餓をゼロに」の概要と取り組みをわかりやすく解説
「目標3.すべての人に健康と福祉を」
SDGsの達成目標3である「すべての人に健康と福祉を」では、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」ことを目的としており、すべてのターゲットが世界保健機関の活動内容と深く関連しています。特に、ターゲット8では、世界保健機関が推進しているユニバーサル・ヘルス・カバレージ(※)の達成が掲げられており、両者の目標が完全に一致しています。
- 8:すべての人々に質の高い基礎的な保健サービスヘのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンヘのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
参考:すべての人に健康を | 国連広報センター (unic.or.jp)
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」について、より詳しい内容や取り組みを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の概要と取り組みをわかりやすく解説
「目標5.ジェンダー平等を実現しよう」
この目標では、「男女での差別をなくし、平等な社会を実現すること」を目標にしています。ジェンダーの平等と世界保健機関の活動は、一見関わりが無いように思えますが、「暴力を排除すること」も世界保健機関が掲げる健康目標のひとつです。SDGs達成目標5では、以下のターゲットを定めており、暴力排除を目指しています。
- 2:人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」について、より詳しい内容や取り組みを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の概要と取り組みをわかりやすく解説
「目標6.安全な水とトイレを世界中に」
「目標6.安全な水とトイレを世界中に」は、世界中での「安全な飲料水を確保できる環境」と「衛生的な環境」の実現が目的です。「飲料水」「下水施設・衛生施設」への平等なアクセスは、人々の健康に直結する問題であり、以下のターゲットが世界保健機関の活動に関連しています。
- 1:2030 年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。
- 2:2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設ヘのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女子、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を向ける。
- a:2030年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術などを対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」について、より詳しい内容や取り組みを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」の概要と取り組みをわかりやすく解説
目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
この目標では、「環境に負担をかけないエネルギー生産技術」や、「誰もがエネルギーにアクセスできるようなシステム」の確立を目的としています。以下のターゲットで記されている、エネルギーへのアクセス権は、世界保健機関が目指す、人々の健康的な生活には欠かせない権利です。
7.1:2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスヘの普遍的アクセスを確保する。
SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」について、より詳しい内容や取り組みを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の概要と取り組みをわかりやすく解説
「目標11.住み続けられるまちづくりを」
都市部において、環境悪化による健康被害が増加しており、まちに住む人々の健康を守るため、目標11では下記のターゲットが設定されています。2022年の世界保健デーのテーマにもあるように、環境問題は人々の健康に大きく関係しており、世界保健機関の活動とも深い関連があります。
- 6:2030年までに、大気の質及びその他の廃棄物を含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」について、より詳しい内容や取り組みを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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「目標16.平和と公正をすべての人に」
SDGsの達成目標16「平和と公正をすべての人に」では、世界中のすべての人が、安心して暮らせる平和な社会の実現を目指しています。特に、人々の命を守ることを目的としている下記のターゲットが、世界保健機関が掲げる「守るべき人々の健康」に深く関連しています。
- 1:あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」について、より詳しい内容や取り組みを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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概要
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- あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
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概要
- 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
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- ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
世界保健機関は、世界中の人々の「肉体的」「精神的」「社会的」に満たされた健康な状態を守るために活動している組織です。現代社会は、人々の健康を脅かすさまざまな課題を抱えており、これらの問題を解決するためには、世界保健機関の活動が重要な役割を担っています。また、社会的課題の解決に繋がる活動を行う世界保健機関は、持続可能な社会の実現を目指すSDGsの達成においても、不可欠な存在といえるでしょう。
現在もパンデミックや環境問題、病気の増加などによる人々への健康被害は続いており、世界保健機関が人々の健康を守るために、今後どのような活動を行うのかが大きな注目を浴びています。
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この記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
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