SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」の概要と取り組みをわかりやすく解説
「SDGsについて興味があるけど具体的に何をすればいいの?」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
SDGsには17の目標があり、まずはそれぞれの目標について理解を深め、「自社の事業と関連が深そうな目標は何か?」を見定めることが大切です。
全部で17あるSDGsの目標のうち「6・安全な水とトイレを世界中に」は、主に「水やトイレ環境」へ目を向けた目標です。今回はSDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」についてわかりやすく解説するとともに、日本や世界における取り組み事例を紹介します。
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目次
SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」とは
SDGsの6番目の目標となる「安全な水とトイレを世界中に」は、大きく2つの問題に焦点を当てています。1つ目は、衛生面に問題のない水が不足している国・地域のすべての人が安全に使用できる水を安く確保できるようにすることです。2つ目は、すべての人が衛生的なトイレを使用できるように普及させることです。
日本の場合は安全な水が豊富であることもあり、水不足についてはあまりピンとこない方も多いのではないでしょうか。蛇口をひねると綺麗な水が出てくるうえに、店舗では気軽に飲み水を購入できます。
また、トイレにおいても自宅はもちろんのこと、公共施設や商業施設などあらゆる場所に設置されているため、必要なときにいつでも利用できる環境が整っています。
しかし、世界に目を向けてみると、水やトイレがしっかりと確保できている国ばかりではありません。
すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する
SDGsの目標6では、世界中のすべての人々が水と衛生へアクセスできるように環境や設備を整えることを目指しています。
生きるうえで水が欠かせない私たちにとって、水道設備のない状況は深刻な問題です。また、トイレがないと、道ばたや草むらなど不衛生かつ危険な場所で用を足さなければなりません。プライバシーへの配慮の観点から見ても、安全に利用できるトイレ設備の設置はスピーディーに実施しなければならないといえます。
数字で見る「水・トイレ」の現状
現在、世界で「水道設備がない状態で暮らしている人」は、約22億人にも及ぶとされています。さらに、安全に衛生管理されたトイレが使用できない人は約42億人、周辺にトイレが設置されておらず、やむなく屋外で済ませなければならない人は約6億7,300万人です。
世界人口で見てみると、10人に3人が安全な飲料水を利用できないうえに、安全なトイレ環境については10人のうち6人が利用できていません。
割合で見ると、世界の40%の人が深刻な水不足に悩まされていることになりますが、今後はさらにこの割合が上昇していくと考えられています。
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SDGsの目標6における6つの達成目標について
SDGsの目標6における達成目標は、大きく6つが存在します。安全性の高い水の利用に関する目標や、だれもが利用できるトイレの設備に関する目標など、幅広く設定されています。
1.だれもが安全な水を安く使えるようにする
- “2030年までに、すべての人が安全な水を利用でき、安く確保できるようにする。”
SDGsの6番目の目標における「達成目標」の1つが、すべての人が安全な水を安く利用できるようにすることです。世界を見てみると、安全な水を利用できる国ばかりではありません。汚染が進んだ水を利用しなければならなかったり、飲み水を購入できるとしても金銭的な事情から諦めざるを得なかったりするなど、水の確保における問題は大きいのが現状です。
こうした状況を踏まえ、年齢や立場、収入などに関わらず、すべての人が安全な水にアクセスできるようにすることが大切といえます。
2.だれもがトイレを利用できるようにする
- “すべての人がトイレを利用できるようにする。そして、女性や女児、障がい者や高齢者など、立場の弱い人が必要としていることに配慮する。”
日本に住んでいると見えにくい「トイレの問題」は、世界で非常に深刻です。こちらの達成目標は、2030年までに屋外で用を足す人をなくすことを目指しています。
また、単純にトイレを設置するだけではなく、女性や女の子も安心して利用でき、プライバシーを重視した設備を目指す必要があります。障がい者や高齢者など、立場の弱い人も同様であり、すべての人の需要に応えられるようなトイレを目指します。
3.水質の改善、排水の問題を解消する
- “汚染を減らし、海や川などにゴミが捨てられないようにする。”
決して日本も他人事ではない「水質」の問題。工場などから有害な化学物質が流れこんだり、人々が海や川へゴミを捨てたりすることで、水はどんどん汚染されていきます。また、未処理のままで流す排水も非常に多く、先進国を中心とした大きな課題です。
2030年までに「処理をしないまま流す排水を半分に減らす」「安全に再利用する水の量を増やす」などの取り組みが求められています。
4.今以上に効率よく水を使えるようにする
- “淡水を持続形で利用し、水不足に陥る国・地域の問題を解消・軽減する。”
現在、国内外を問わず「水の無駄遣い」が大きく指摘されています。水資源は決して無限ではなく、限りあるものであるため、貴重な資源として大切に使用しなければなりません。そのためには、今よりも効率よく水を使えるようにする必要があります。
また、淡水を持続可能な形で利用して、安全な水を利用できない人を減らすことが目標です。
5.国境を越えて協力できるようにする
- “国境を越えて相互に協力を行い、あらゆるレベルで水源を管理できるようにする。”
水の問題については、決して特定の国だけの問題ではありません。すべての国が手を取り合って、国境を越えた協力体制で問題に臨むことが大切です。
とくに、技術や知識を持つ先進国が主体となって、世界の水不足や水の汚染の問題を解決へと導いていくことが重要です。
そして、2030年までにあらゆるレベルで水源を管理できるようにすることが、SDGs目標6のゴールでもあります。
6.水に関わる生態系を守り、回復させる
- “山や森林、湿地、川、湖などの生態系を守り、回復させる。”
「水の問題」と聞くと、海や川などの汚染をイメージしがちですが、じつは他にも目を向けるべき場所があります。水に関わる生態系は非常に多く、山や森林、湿地、湖、地下水を含んでいる地層など、あらゆる場所につながっています。
水質の汚染と同時に環境破壊も進む今、生態系の破壊が懸念されています。SDGs目標6では、水に関わる生態系を守ることも視野に入れて、目標が設定されているのです。
目標達成のための具体的な方法2つ
目標を達成するために必要な方法は大きく2つが挙げられます。それが、水やトイレの管理と、水に関する技術の向上です。
1.水やトイレの管理を目指してコミュニティを強化
目標達成のための具体的な方法として、まず挙げられるのが「水やトイレの管理を目指したコミュニティの強化」です。
単純に水を確保したり、トイレを設置したりするだけでなく、きちんと管理を行い、いつでも安全かつ衛生的な状態を維持することが重要です。
そのためには、水や衛生に関わる分野において、管理を向上させる必要があります。地域コミュニティなどをつくり、人々に参加を促したり強化したりすることで、水およびトイレの管理が行き届きやすくなるでしょう。
2.真水をつくる技術、リサイクル技術などを向上する
集めた雨水や海水から真水をつくる技術の開発や、水のリサイクル技術などを向上することは重要です。飲み水や生活に使える水は有限であるため、少しでも水資源を増やすためには真水をつくる技術を向上しなければなりません。
また、同時に水の効率的な使用について一人ひとりがきちんと考え、無駄のない利用を心がける必要があります。
企業においては、工場などから排出される未処理の水の扱いについて、明確なルールを設けたり、再利用したりすることが重要といえます。
日本における取り組み事例
水やトイレの問題に目を向けたSDGs目標6。日本では多くの企業が積極的にさまざまな取り組みを実施しています。企業の強みを生かした取り組みや企業の分野を問わずに導入できる取り組みなど、幅広い内容を紹介します。
1.【企業】ウォータースタンド
ウォータースタンドでは、水に関する問題を解決するための取り組みとして、海洋汚染の対策としてプラスチックゴミの削減を促すアクションを取り入れています。
たとえば、水道水を分岐してサーバー内で浄水する同社製品は、ミネラルウォーターなどを別途で購入しなくても美味しい水を飲めるようになるというものです。
結果的にペットボトルゴミの削減につながっているのです。また、全従業員(526人)にマイボトルを配布し、社内の自動販売機からペットボトル飲料を廃止。ペットボトルのゴミを削減することに成功しています。
2.【企業】JTECT(旧:岐阜電設)
JTECTでは、水不足に悩まされている地域及び、災害などで断水が発生した地域に対し、飲料水生産機で飲料水を提供しています。
空気から水を作り出す技術を採用した飲料水生産機である点が特徴です。一般的に使われることが多い「汚水を浄化させて飲料水にする」という方法ではないため、汚水すらも入手が困難にある地域であっても飲料水を確保できます。
また、2018年の豪雨の影響で水不足に陥った施設に無償貸与するなど、水の問題と向き合った取り組みを実施しています。
出典:JTECTのSDGsへの取り組み | 株式会社JTECT -総合省エネルギー電気工事会社
3.【企業】サンケン電気
サンケン電気では、SDGs目標6として、排水の処理を徹底しています。
事業活動で出た汚水はそのまま排水させてしまうと、水質汚染に直結します。これを踏まえ、同社では排水の処理を適切に行い、安全基準を満たしたうえで排出しているのです。具体的には、自社のシステムを見直し、異常排水が河川に漏洩することを防いでいます。
また、上水、地下水、工業用水の水資源を利用する同社では、水資源を限りある貴重な資源と認識し、生態系を保護する観点から、水使用量の削減に努めています。「前年度比原単位1%改善」の目標を設定し、国内拠点全体で取り組んでいます。
出典:サンケンのESG|サステナビリティ|サンケン電気株式会社
4.【企業】ツチヨシ アクティ
ツチヨシ アクティが取り組んでいる活動は、自社の独自技術を用いた水づくりを目指しています。限られた水資源に目を向け、活性炭や微生物のバイオフィルムなどを活用し、細菌を分解。安全性の高い水へと導いていきます。
また、ツチヨシ アクティは、浄水施設で不要になったろ材を廃棄物として処分するのではなく、再生・有効活用している点も特徴です。ゴミを減らし、資源を循環させて、結果的に水資源や自然を守ることにつなげています。
国内外を問わず、安全な水を供給していくことを目標に活動しています。
【関連記事】
SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」の取り組み事例15選
世界における取り組み事例
世界的に見ても、水の問題やトイレの問題は深刻であり、とくに発展途上国は「水不足」「トイレ不足」が慢性化している状況です。
そんななか、海外の企業・組織では、SDGs目標6に関するさまざまな取り組みを実施しています。世界ではどのような取り組みが行われているのか、以下から詳しく紹介します。
出典:SDG Industry Matrix日本語版−食品・飲料・消費財 | グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン
1.ユニリーバ
イギリス、ロンドンに本拠があるユニリーバ。食品やヘアケア製品、洗剤など、さまざまな家庭用品を展開している会社です。
同社で行っている取り組みは、殺菌効果の高い石鹸の開発です。汚染された水に含まれる「バクテリア」は、胃腸炎やコレラ、腸チフスなどの原因になります。少しでも安全に水を使用できるよう、ユニリーバでは殺菌効果が高く安心して使える石鹸を開発・販売しています。
また、この石鹸は目や皮膚などの感染症を防ぐ効果もあるとされていて、健康リスクを回避することが期待されているのです。
ちなみに、ユニリーバはこの取り組みにより売り上げが15%アップ。自社自身の成長の後押しにもなっています。
2.ネスレ
コーヒーやアイスクリームなど、食品や菓子類を展開するネスレ。スイスに本社のある企業ですが、日本でも同社の商品が数多く並んでいるので、馴染みのあるメーカーでもあるのではないでしょうか。
そんなネスレでは、2005年以降、商品1トンにつき、取水を37%削減するという目標を達成しています。主要市場での責任や目標、期限などを細かく設定した「ウォーター・スチュワードシップ・マスター・プラン」として導入されています。
自社工場では、300件以上の節水プロジェクトを作成・実施していて、水資源を守ることを徹底しているのが特徴です。
今後は、水に関する問題を抱えている地域などに位置する製造施設では、184万立方メートルの節水を目指していくとされています。
3.コカ・コーラカンパニー
コカ・コーラをはじめとした、清涼飲料水などを製造・販売している「コカ・コーラカンパニー」。同社では、水不足に陥る地域や、水質汚染に目を向けたSDGsに取り組んでいます。
まず、同社で完成した飲料およびその製造に利用した水と同量の水をコミュニティや自然に還元するというもの。安全に還元することが前提となっています。
実際、2014年は、生産工程のなかで使用した1,267億リットルの水を適切に処理し、安全な水としてコミュニティおよび自然に還元しています。製造するだけではなく、「還元」にも目を向けているのが同社のSDGsの取り組みです。
4.アンハイザー・ブッシュ・インベブ
アンハイザー・ブッシュ・インベブは、ベルギーに本社のある酒類メーカーです。同社が取り入れているSDGsの取り組みは、現地のパートナーと連携しながら、水の保全を行うことです。年間の水の使用量を3.6%にまで削減することを達成しました。
水の使用量が減少したことで、金銭的な節約も大きくなり2012年から累計「1200万ドル以上」の経費削減を実現しました。
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- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
今回はSDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」を紹介しました。
「水」の資源に関する問題は想像以上に大きく、とくに貧困国はまだまだ干ばつや水の汚染などに悩まされている状況です。限りある水資源を守るためにも、私たちは日常生活のなかで水の使い方を意識することが大切です。
また、トイレにおいては、日本は設備が整っているものの世界ではそれが当たり前ではありません。女性や女児、立場の弱い人などが今でも草むらや道ばたで用を足さざるを得ない状況です。
自社でSDGsの取り組みを実施したいと考えている方は、普段の水の使い方に意識を向けてみることや、従業員にマイボトルの使用を推進して「ペットボトルゴミの削減」などを行うことから始めてみてはいかがでしょうか。
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SDGsコンパスの資料をダウンロードするこの記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
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