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SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」の取り組み事例15選

 

SDGsの目標6は「安全な水とトイレを世界中に」をゴールにしています。私たちが生きていくうえで水は必要不可欠です。私たちが暮らす日本では、安全かつ衛生的に水を利用できる環境が整っています。しかし世界に目を向けると、それは決して「当たり前」ではありません。誰もが安全な水と衛生施設を利用できるようにするために、私たちは何をすべきでしょうか。この記事では、世界の水問題の現状や、その解決に向けた国内外の取り組み、そして個人ができることについて紹介します。

 

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SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」とは?

SDGsの目標6では「安全な水とトイレを世界中に届ける」というテーマのもと、飲料水や下水処理施設、衛生施設、水の利用効率、水に関連する生態系の保護・回復などに関する8つのターゲット(具体的な目標)が設定されています。
ここでいう安全な水とは、自宅で必要なときに入手できる、汚染されていない飲み水のことです。私たち日本人は当たり前のように、水道から出る水を飲み、清潔で快適なトイレを使っています。しかし、世界的に見れば、このように安全で衛生的に水を利用できる環境が整っている国はごくわずかです。開発途上国を中心に、何十億人もの人々が安全な水や衛生に関する問題を抱えています。
こうした人たちをなくすために、SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」が掲げられています。水問題の解決は、一筋縄ではいきません。水やトイレに関する活動への国際協力を拡大し、誰もが安全で安価な水を利用できる環境を整えることが重要です

参照:6.安全な水とトイレを世界中に|SDGsクラブ|日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)

 

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世界の水問題の現状

国際連合広報センターの資料によると、2020年において、安全な飲料水を利用できていない人が20億人(26%)、安全な衛生施設を利用できていない人が36億人(46%)、そのうちトイレがなく、屋外で用を足す人は4 億 9,400 万人、基本的な手洗い設備がない人が23億人(29%)と報告されています。

安全に管理された水やトイレを利用できず、不衛生な環境で暮らしていると、コレラや赤痢などの病気のリスクを高めます。なかには命を落とす人も少なくありません。また、水を汲むために険しい道を何時間も歩かねばならず、学校に行けない子どもたちもいます。

2015年にSDGsが採択されてから8年の月日が流れましたが、まだ16億人が2030年までに安全に管理された飲料水を利用できる目処が立っていません。SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」を達成期限までに実現するには、現在の改善速度を4倍に上げる必要があるとされています。

参照:6.安全な水とトイレを世界中に|SDGsクラブ|日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
参照:SDGs報告2022|国連広報センター

日本も水が足りなくなる?世界が抱える「水ストレス」とは?

現在、世界的な水不足が深刻化しています。水不足によって、日常生活で不便を感じるほどの状態を「水ストレス」といいます。1年間に必要な水の量は、1人あたり1,700 m3 が最低基準とされており、これを下回ると「水ストレス下にある」状態です。1,000 m3 を下回る場合は「水不足」とされています。

水は飲み水や炊事、洗濯、風呂、水洗トイレなどの日常生活で使われるほか、農業用水や工業用水、発電用水などに使用されています。工業用水や発電、生活用水の使用量は増加傾向にあり、2000年から2050年にかけての水需要は、全体で55%増加の見込みです。2050年には、世界人口の40%以上にあたる36億人が深刻な水不足に陥ると予想されています。

日本にいるとあまり実感がないかもしれませんが、水不足は決して他人ごとではありません。日本では食料の約60%を輸入に頼っています。もしその輸入食品を生産するとしたら大量の水が必要です。こうした水のことを「バーチャルウォーター(仮想水)」といいます。日本は世界有数のバーチャルウォーター輸入大国であり、目に見えない形でさまざまな国の水資源に頼っているのが事実です。私たちは潜在的な水リスクにさらされていることを覚えておきましょう。

水不足問題の原因とは?

世界で起こっている水資源問題の主な原因として「人口の増加」「気候変動」「水紛争」の3つが挙げられます。

参照:水資源:水資源問題の原因|国土交通省

1.人口の増加

国際連合(国連)の「世界の人口推計(2015改訂版)」によると、世界の総人口は2015年時点で約73億5,000万人、2050年には約97億3,000万人になる見込みです。人口が増えれば増えるほど、当然ながら使用する水の量も増加します。世界の水の使用量は1950年(昭和25年)から1995年(平成7年)の間に、約2.74倍に達しており、同期間の人口の伸び(約2.25%)よりも高い結果となりました。特に生活用水の使用量は6.76倍と急増しています。

2.気候変動

地球温暖化による気候変動は、大雨や干ばつなどの異常気象を引き起こし、水の利用可能量を左右します。たとえ総降雨量が変わらなくても、その影響力は甚大です。農業用水を例にとって考えてみましょう。冬季に山に積もった雪は、暖かくなった春先には雪解け水となって、田畑を潤します。しかし、地球温暖化による気温上昇に伴い、雪があまり積もらなくなると、雪解けが早く進んで川に流出してしまい、必要なときに必要な場所へ分配されなくなります。このように気候変動は、水資源にとって不安な要素です。

3.水紛争

国土が隣国と接していない日本では、なじみが薄いかもしれませんが、世界各国を見てみるとさまざまな要因により水紛争が起きています。水紛争とは、文字どおり、水をめぐる争いです。対立の理由として、湖や河川の上流地域での水の奪い合いの激化、上流地域が排出した汚染物質による下流地域の水質悪化、水所有権の問題、水資源の開発と配分に関する問題などが挙げられます。

世界の取組事例3選

ここでは、SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」に関する世界の取り組み事例を紹介します。

1.ウォーターエイド

ウォーターエイドは、水・衛生分野に特化して活動してきた国際的な非営利団体です。1981年にイギリスで設立され、2021年現在、日本を含む世界34カ国に拠点を置いています。2030年までにすべての人々が、すべての場所において、清潔な水とトイレを利用し、正しい衛生習慣を実践できるようにするための支援を続けています。

参照:ウォーターエイド | 水・衛生専門のNGO

2.THE ICE STUPA PROJECT

「Ice Stupa(アイス・ストゥーパ)」とは、インド北部のラダック地方で始まった、人工氷河による緑化プロジェクトです。冬の間は利用されずに川へ流れ出てしまう雪解け水を汲み上げ、仏塔(ストゥーパ)のような円錐状に凍らせることで、春に農業を営むうえで必要な用水を確保することに成功しました。

参照:THE ICE STUPA PROJECT 公式サイト

3.Warka Water

「Warka Water(ワルカウォーター)」は、アフリカの水不足を解消するために、イタリアの建築家Arturo Vittori氏が考案したプロジェクトです。Warka Towerと呼ばれる竹製の安価な給水塔を設立し、電気を使うことなく、大気中の霧や雨露を集めて飲み水を確保する取り組みをしています。

参照:Warka Water 公式サイト

国内企業の取組事例12選

安全で良質な水資源の確保と持続可能な水利用の実現に向けた動きは、日本にも広がっています。ここからは、国内企業の取り組み事例を紹介します。

4.株式会社LIXIL

水回り商品を扱う株式会社LIXILは、国連児童基金(ユニセフ)とパートナーシップを結び、アジアやアフリカの学校を中心に、病気の感染や悪臭を防ぐ簡易式トイレ「SATO」を提供しています。世界中で累計380万台以上が出荷されており、約1,860万人の衛生環境の改善に役立っています。

参照:株式会社LIXIL 公式サイト

5.博報堂DYホールディングス

同じくユニセフと連携して「TAP PROJECT JAPAN」という取り組みを実施したのが博報堂DYホールディングスです。レストラン・カフェで募金への協力を呼びかけ、アフリカ・マダガスカルにおける水と衛生の活動に広く活用しました。2017年には、マダガスカルの子どもたちが毎日行う水運びの大変さを疑似体験できるバーチャル体験型イベント「ROAD to WATER」を実施しました。なお、このプロジェクトは2018年に終了しました。

参照:博報堂DYホールディングス 公式サイト

6.富士フイルムホールディングス株式会社

富士フイルムグループは、フイルムの製造時に大量の清浄な水を必要としたため、早くから水使用量の削減に取り組んできました。2030年度までの目標として「自社グループによる水投入量の30%削減(2013年度比)」と「水処理に活用される製品・サービスを通じて、社会での年間3500万トンの水処理に貢献」を掲げています。

参照:富士フイルムホールディングス株式会社 公式サイト

7.WOTA株式会社

WOTA株式会社は、2014年の設立以来、水問題の構造的解決に挑んできました。世界初のポータブル水再生処理プラント「WOTA BOX」と、水道不要のポータブル手洗いスタンド「WOSH」を開発。一度使った水の98%以上が再利用可能です。2022年10月には、水問題の解決に向けて、東京都利島村と合意書を締結しました。

参照:WOTA株式会社 公式サイト

8.王子ネピア株式会社

王子ネピア株式会社は、商品の売上の一部で東ティモールのトイレづくりを支援する「千のトイレプロジェクト」を展開しました。2008年から2021年までに、約2万2,000件のトイレづくりを果たし、約13万4,000人が衛生的なトイレを使えるようになりました。プロジェクトを通じて、5歳未満の子どもの死亡率が約36%改善しています。東ティモールでは国の計画として、2024年までに全国で衛生的なトイレを取り入れることが決まり、このプロジェクトは2021年に活動を終了しました。

参照:王子ネピア 公式サイト

9.サントリーホールディングス株式会社

サントリーグループは「水と生きる」を企業理念に掲げ、水のサステナビリティの実現をめざしてきました。具体的な取り組みとして「環境目標2030」「環境ビジョン2050」を策定。2030年までに自社工場の水の使用量をグローバルで35%削減、2050年までに全世界の自社工場での水使用量を50%削減することを目標に掲げています。

参照:サントリーホールディングス株式会社 公式サイト

10.株式会社JTECT

株式会社JTECT(旧:岐阜電設)は、慢性的な水不足が続く地域や、災害時に急に水の供給が止まった地域に、安心・安全な水を提供するため、空気から飲料水を作る製水機「IZUMIせせらぎ」を開発しました。2018年7月の西日本豪雨の際は、甚大な被害を受けた広島県三原市本郷町に製水機を無償で貸与。今後も水不足に悩む地域への貢献が期待されます。

参照:株式会社JTECT 公式サイト

11.株式会社伊藤園

「お〜いお茶」でおなじみの株式会社伊藤園では、水資源を守るために、社内での生産活動における水の使用量を2030年度までに16%削減(対2018年度)することを指標にしています。それと同時に、製造委託先の排水状況と水使用状況を把握して、水資源の保全に努めています。

参照:株式会社伊藤園 公式サイト

12.テラオライテック株式会社

福井県にあるテラオライテック株式会社は、設備工事と電気工事を本業とする施工会社です。水道などのインフラ設備の工事を担うなか、水問題に着目するようになりました。自社の専門技術を活用し、カンボジアやブータンで上下水道のインフラを整備するプロジェクト「National Pride」を展開しています。

参照:テラオライテック株式会社 公式サイト

13.サラヤ株式会社

サラヤは、1952年に日本で初めて薬用手洗い石けん液と石けん液容器を開発・事業化するなど、創業以来、環境衛生にこだわったビジネスを展開してきました。日本ユニセフ協会と協力し、アフリカ・ウガンダで石けんによる正しい手洗いを普及する「100 万人の手洗いプロジェクト」に取り組み、感染症予防に貢献しています。

参照:サラヤ株式会社 公式サイト

14.日本コカ・コーラ株式会社

コカ・コーラ株式会社は、工場における水使用量の削減や工場排水の管理など、継続的に水資源の保全活動を行なっている企業です。天然水「い・ろ・は・す」の売上の一部を、日本各地で水資源の保護を行う自治体やNPOに寄付する「い・ろ・は・すの森活」プロジェクトを運営。2022年度は22団体に保護活動の支援を実施しました。

参照:日本コカ・コーラ株式会社 公式サイト

15.日本航空株式会社

SDGsの17の目標すべてに取り組んでいるのはJALグループです。水資源問題を解決するため、使用量の削減と保全に努めています。機体の修理工程や部品洗浄過程において大量の水を使いますが、JALではその大部分を施設内でリサイクルし、水の再利用を徹底しています。

参照:日本航空株式会社 公式サイト

安全な水を守るために個人ができること

SDGs目標6を達成するために、政府や企業だけでなく、個人でもできる取り組みがたくさんあります。ここで、具体例をいくつか紹介しましょう。

参照:おいしい水を守るために私たちにできること|青森市

1.水の大切さや他の国の状況について考える

日本では、蛇口をひねるだけできれいな水を手に入れられます。しかし、世界の水事情はどうでしょうか。水道水をそのまま飲める国は、日本を含む9カ国だけです。世界の水問題は深刻さを増しており、日本も他人ごとではなくなっています。水の大切さや他国の状況について改めて考えてみましょう。

2.トイレを流すときに大小のレバーを使い分ける

1日に5~10回使うトイレを「大」で流すのと「小」で流すのでは、使う量の水に2リットルもの差が出ます。水は大切な資源です。節水するために、「大」「小」のレバーを使い分けましょう。消音のための2度流しは禁物です。

3.お風呂の残り湯を有効活用する

お風呂の残り湯を活用することで、水を節約できます。残り湯は捨てずに、洗濯や植物の水やりなどに再利用しましょう。時間が経つと雑菌が増える恐れがあるので、その日のうちに使うのがおすすめです。

4.油汚れをシンクに直接流さない

フライパンや皿などに残った油汚れを直接シンクに流すと、汚水をきれいにするために大量の水が必要になります。布や紙で拭きとってから洗うようにして、できるだけ油を下水道に流さないよう心がけましょう

 

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  • ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進

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まとめ

私たち日本人は当たり前のように、安全に管理された水を飲み、衛生的なトイレを使っています。しかし、このように安心安全な水を利用できる環境が整っている国はごく少数派です。2022年現在、世界では16億人が安全に管理された水を飲むことができず、28億人が安全に管理された衛生施設(トイレ)を利用できていません。

2030年までに安全な水と衛生施設へ誰もがアクセスできる世界の実現をめざし、さまざまな企業がSDGsに取り組んでいます。近年、世界中で水問題が深刻さを増しており、日本も明日は我が身かもしれない状況です。安全な水に関連する取り組みについて理解を深め、自分たちにできることを考え、行動に移してみましょう。

 

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正木友実子

この記事を書いた人

正木友実子

福岡在住。大学を卒業後、大手食品メーカー勤務を経て、異業種のライターへ転身。求められている情報をわかりやすく伝えることがモットー

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