よくあるSDGsへの反対意見とは?取り組まないとどうなるか考えてみよう
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットにおいて、加盟国の全会一致で採択された国際目標です。2030年までに持続可能でより良い世界を実現するための、17の目標と169のターゲットで構成されています。
達成に向けた取り組みが世界中で広がっていますが、SDGsに対してポジティブな印象を持つ人ばかりではありません。
今回は、よくあるSDGsへの反対意見を紹介し、取り組まなければどうなるのか、SDGsの進捗状況についても解説します。
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SDGsに対する反対意見
まずは、よくあるSDGsへの反対意見を4つ紹介します。
目標が壮大で曖昧すぎるのでは?
SDGsは、地球上の誰一人取り残さずに、持続可能な世界を実現することを誓っています。この「誰一人取り残さない(leave no one behind)」というスローガンをはじめ、SDGsには「すべての」や、「あらゆる」という文言が多く使われており、目標が大きすぎて身近な問題として感じられないという意見があります。
また、「すべての」や「あらゆる」という文言は、100%達成された状態を指すと考えられますが、一方で「軽減する」「改善する」「強化する」という文言も度々登場します。
たとえば、目標1「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる(貧困をなくそう)」には、次のようなターゲットがあります。
“1.2 2030 年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。”
引用元:仮訳「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」 – 外務省(PDF)
「半減させる」だけでは、「あらゆる貧困を終わらせる」ことはできません。このように、矛盾しているような表現が使われている箇所があるため、「SDGsは結局どのような状態を目指しているのか?」と、疑問視する声もあるようです。
隠れた本当の狙いがあるのでは?
SDGsの本当の狙いは「新興国の経済成長を抑えることなのでは?」という意見もあります。新興国とは、先進国に比べると経済発展のスピードは遅いものの、急速に発展しつつある国のことです。
これまで、世界経済や金融の重要問題は、「G7」と呼ばれる西側の先進国7ヵ国、(フランス・アメリカ・イギリス・ドイツ・日本・イタリア・カナダ)で議論してきました。しかし、年々新興国の影響力が強まり、リーマンショック以降は、G7に中国やインドなどの新興国とEUを加えた20の国と地域、「G20」で議論が行われるようになりました。このように、世界各国のパワーバランスが変化してきているのです。
日本を含む先進国がこれまでそうしてきたように、新興国も環境を犠牲にすれば、今よりもより豊かになれる可能性があります。しかし、そうなれば今以上に世界のパワーバランスが変化してしまうため、欧米諸国がこれを抑えようとしているのではないかと考える人もいるようです。
参考:第1回 先進国と新興国のいま | 池上彰のもっと知りたくなる世界経済のはなし | 三井住友信託銀行株式会社
持続可能な世界=人間中心の世界?
SDGsは、2015年9月に開催された国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という文書に記載されています。この文書には、2030年までに目指す世界像や、現在世界が直面しているさまざまな課題、それらを解決するための手段などが書かれているのですが、冒頭に以下のような文章があります。
“我々は、包括的、遠大かつ人間中心な一連の普遍的かつ変革的な目標とターゲットにつき、歴史的な決定を行った”
引用元:仮訳「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」 – 外務省(PDF)
SDGsは「人間中心」の考え方に基づくものであるということが、はっきりと書かれているのです。
たとえば、目標3「すべての人に健康と福祉を」に貢献するために、新たな薬を開発するとします。薬の開発にあたっては、多くの場合動物実験が行われることになりますが、SDGsはこれを責めることはありません。
また、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」への取り組みとして、ソーラーパネルを設置するとします。すると、ソーラーパネルの下の土には太陽光が届かなくなるため、今までそこで生きていた生きものたちは光合成ができなくなり、生態系にも影響が出る可能性があります。さらに、土の栄養素もなくなってしまうため、再び農地として使うことも難しくなるでしょう。
このような影響が考えられることから、「人間中心の世界を実現することで、何かが犠牲になるのでは」と指摘する意見もあります。
参考:SDGsを発明した人は本当に頭がいい、皮肉な理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン
利益にならない
SDGsは単なる社会貢献活動ではなく、事業として社会課題の解決に取り組むものですが、「利益につながる」というイメージを持っている企業は少ないようです。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が2022年3月に公表した「中小企業の SDGs 推進に関する実態調査 アンケート調査報告書」では、SDGsの取り組みに向けた課題として、19.3%の企業が「取り組むことによるメリットがわからない」と回答しています(最も多いのは「何から取り組めばよいのかわからない」21.0%)。
また、SDGsを経営に取り入れる意義や目的については「企業の社会的責任」が50.4%と、最も多くなっています。
参考:中小企業のSDGs推進に関する実態調査 アンケート調査報告書|独立行政法人中小企業基盤整備機構(PDF)
SDGsに取り組むメリットとして「新たなビジネスチャンスにつながる」ということがよく挙げられます。しかし、成果はすぐに得られるものではありません。SDGsには、長期的な視点で取り組む必要があります。中途半端に取り組めば、「SDGsウォッシュだ」と批判され、利益が得られないばかりか、不利益を被る可能性もあるのです。
SDGsウォッシュとは、「SDGsに取り組んでいると見せかけること」を表す造語です。詳しくはこちらの記事で解説しています。
SDGsウォッシュが企業に与えるダメージとは?事例と対策を紹介
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SDGsに取り組まないとどうなる?
SDGsに取り組まなくても、罰則やペナルティはありません。しかし、SDGsを達成するには、すべての国、すべての人のアクションが必要です。
たとえば、環境問題について考えてみましょう。国連は「持続可能な開発(SDGs)報告書2022」で、このままのペースだと以下のような未来がやって来ると警鐘を鳴らしています。
- サンゴ礁は地球の気温が5℃上昇すれば70%~90%が消滅し、2℃上昇すれば完全に消滅する
- 2100年までに海面が30~60cm上昇する
- 2030年までに、干ばつの影響で推定7億人もの人が故郷を追われる
- 2040年までに、海洋に流れ込むプラスチックの量が2021年(1,700万t超)の2~3倍に達する
- 今後数十年で約4万種の生きものたちが絶滅の危機に瀕する
このような未来を迎えないためには、一人ひとりが意識を変え、小さなことから積み重ねていかなければなりません。「持続可能」や「サステナブル」と聞くと難しく感じてしまいますが、「10年先、20年先に同じ生活ができているだろうか」「子供や孫の世代まで豊かに暮らせるのだろうか」と置き換えて考えてみてください。SDGsが少し身近に感じられるのではないでしょうか。
SDGsに取り組まないことが最大のリスクに
特に企業は、SDGsに取り組まないことが「リスク」になり得ます。SDGsの広まりとともに、さまざまな社会課題に対する危機意識は世界中で高まっており、社会の持続可能性に向き合わないような企業は、支持されにくくなってきているのです。
たとえば、株式会社学情が2021年に公表した「Z世代のコロナ禍就活・調査レポート」を見ると、2022年卒学生のうち約半数が、就職活動において企業のSDGsに関する取り組みや社会貢献活動を意識しているという調査結果が出ています。社会課題に向き合わない企業は、就職先としても選ばれにくくなっていることがわかります。
また、買い物をする際に、人や社会、環境に配慮した商品を選ぶ消費者も増えており、利益だけを追求した商品は、どんどん選ばれにくくなっていくのではないかと考えられます。このような消費行動は「エシカル消費」といいます。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
エシカル消費とはなにか?認定マークや事例を紹介
また、投資家や金融機関も、企業の業績だけでなくE(Environment:環境)、S(Social:社会)、G(Governance:ガバナンス)を重視するようになってきており、社会課題に取り組まない企業は資金調達の面でも不利になってきています。
このようなさまざまな影響があることから、SDGsに取り組まないことは大きなリスクであり、逆にSDGsに取り組むことは、企業の持続可能性を高めることでもあると言えます。
SDGsの進捗の現状
毎年6月に、「持続可能な開発報告書(Sustainable Development Report)」という、国連加盟国193ヵ国のSDGsの進捗状況をまとめたレポートが公表されています。2022年版のレポートによると、日本の達成度は163ヵ国中19位、スコアは79.58でした。
順位 | 国名 | スコア |
1 | フィンランド | 86.51 |
2 | デンマーク | 85.63 |
3 | スウェーデン | 85.19 |
4 | ノルウェー | 82.35 |
5 | オーストリア | 82.32 |
6 | ドイツ | 82.18 |
7 | フランス | 81.24 |
8 | スイス | 80.79 |
9 | アイルランド | 80.66 |
10 | エストニア | 80.62 |
11 | イギリス | 80.55 |
12 | ポーランド | 80.54 |
13 | チェコ共和国 | 80.47 |
14 | ラトビア | 80.28 |
15 | スロベニア | 79.95 |
16 | スペイン | 79.90 |
17 | オランダ | 79.85 |
18 | ベルギー | 79.69 |
19 | 日本 | 79.58 |
20 | ポルトガル | 79.23 |
19位という順位だけを見ると「日本はSDGs先進国なんだ」と感じてしまいがちですが、実際はそうとは言えません。17の目標別の評価を見てみると、最低評価をつけられた目標が6つあります。
- 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
- 目標12:つくる責任 つかう責任
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標14:海の豊かさを守ろう
- 目標15:陸の豊かさも守ろう
- 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
目標12、13、14、15と、地球の資源や環境にかかわる課題が多く、この分野で特に取り組みが遅れていることがわかります。私たちの暮らしは、自然の恵みの上に成り立っています。一人ひとりがこのことを認識し、取り組みを加速させていかなければなりません。
また、男女間の賃金格差や、女性議員の少なさについても指摘されています。男女共同参画社会の実現に向けて政府はさまざまな取り組みを進めていますが、まだまだ性別による格差が存在しているのが現状です。
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まとめ
SDGsに対しては、少なからずネガティブな意見を持つ人もいます。しかし、地球が危機的な状況にあることは紛れもない事実です。未来の世代が安心して地球で暮らし続けられるように、一人ひとりがライフスタイルを変えていかなければなりません。
企業においては、SDGsに取り組まないことが企業の持続可能性にもかかわってきます。短期で利益につなげることは難しいかもしれませんが、長期的な利益を考え、取り組んでいくべきと言えるでしょう。
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SDGsとは
この記事を書いた人
あらたこまち
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。