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SDGsウォッシュが企業に与えるダメージとは?事例と対策を紹介

より良い未来を実現するための世界共通の目標、「SDGs(持続可能な開発目標)」。このSDGsを達成するためには、企業の協力が必要不可欠です。また、SDGsに取り組むことでさまざまなメリットが期待できるため、取り組みを検討している企業も多いのではないでしょうか。

SDGsに取り組む際に気をつけなければならないのが、「SDGsウォッシュ」です。この記事では、その言葉の意味や指摘されないための対策を解説します。

 

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SDGsウォッシュ」の意味

「SDGsウォッシュ」とは、SDGsに対する“ごまかし行為”のことを表す言葉です。SDGsに取り組んでいるフリをすること、または実際の取り組み以上によく見せようとすることなどが、これに該当します。

語源となっているのは、「グリーンウォッシュ」という言葉です。環境保護への意識が高まってきた1990年頃から海外で使われるようになり、最近は日本でも耳にすることが多くなりました。
グリーン(green)=「環境」、ウォッシュ(whitewash)=「ごまかし、粉飾」の意味があります。

特別環境に配慮しているわけではない、それどころか悪い影響を与えているのにもかかわらず、環境に配慮しているように見せかける行為や、根拠もなく「地球にやさしい」「エコ」など、誤解を招くような表現を用いている企業に対して使われています。

「SGDsウォッシュ」と「グリーンウォッシュ」は、いずれもネガティブな意味を込めて使われる言葉です。そのため、企業はこのような指摘をされないよう、情報を発信する際は特に注意が必要です

SDGsウォッシュの例

では、具体的にどういった行為がSDGsウォッシュとみなされてしまうのでしょうか。

まず、実際の取り組みと発信されている情報が一致しないような場合SDGsウォッシュに該当します。一例としては、以下のようなケースが当てはまります。

  • SGDsにまったく取り組んでいないにもかかわらず、取り組んでいるとアピールする
  • 実際の取り組み以上に、よく見えるような誇大な表現を使う 

また、陥りやすいのが「よい情報のみを発信し、不都合な事実を開示しない」というパターンです。具体的には、以下のようなケースが考えられます。

  • ある自動車会社が、気候変動を緩和するために電気自動車を販売する(SDG目標13に貢献)。しかしその一方で、バッテリーに含まれるコバルトが、児童労働によって採掘される可能性がある(SDG目標8にマイナスの影響)

SDGsは、人権や環境を犠牲にすることなく「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ということを理念として掲げています。そのため、自社の事業やSDGsへの取り組みによって犠牲になる存在(トレードオフ)がある場合、そこへどう対応するかというのは非常に重要な部分です。

また、優先度の高い課題よりも、現在の事業が既に関連している課題に取り組んでいるだけの「チェリーピッキング(いいとこ取り)」や、自社事業とSDGsを紐づけした段階でストップしてしまっているケース、取り組みを実施していても達成度の計測を行っていないケースなども、SDGsウォッシュとみなされる場合があります。 

 

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SDGsウォッシュが企業に与えるダメージ

一度SDGsウォッシュとみなされてしまえば、SDGsに取り組むことによって得られる「ブランディング強化」や「人材の確保」といった様々なメリットを得られなくなるだけでなく、企業は大きなダメージを受けるおそれがあります。

ブランド・イメージが損なわれる

たとえば、「環境にやさしい」とアピールして販売されていた商品やサービスが、実際はそうではなかったことがわかったとき、消費者はどう感じるでしょうか。その企業に対しての信頼が失われることはもちろん、「エコ」や「SDGs」自体に対してよくない印象を持ってしまうかもしれません。

また、SDGsウォッシュを指摘されれば、その後の経営にも影響が出てきます。顧客や取引先、金融機関などの外部のステークホルダーとの関係を悪化させてしまうだけでなく、その対応による人員不足、社員のモチベーション低下など、社内にも新たな問題が発生してしまうおそれがあるのです。 

不買運動に繋がるリスクがある

SDGsウォッシュとみなされ企業のイメージが損なわれると、不買行動に繋がることもあります。

株式会社博報堂が2019年に公表した「生活者のサステナブル購買行動調査」では、「環境・社会に悪影響を与える商品・企業」に対する不買意向が8割以上という結果が出ており、消費者が商品やサービスを購入する際、「環境・社会への配慮」がこれからの判断基準となっていくことが予想されています。

また、将来を担うZ世代(1990年代後半から2000年代生まれ)は社会貢献欲が高いとも言われており、デジタル機器やソーシャルメディアを使いこなした情報発信力もあります。SDGsウォッシュは、こうした世代を中心とした不買運動に繋がるリスクもあるのです。

出典:「ミニマル(最小限)」「ロングライフ(長期的)」「サーキュラー(循環)」3つのサステナブル基準で選ぶ生活者‐博報堂(PDF)

投資先として選ばれにくくなる

投資の際に、企業の環境や社会に対する取り組みを重視する動きが拡大しています。財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)といった非財務情報も考慮する「ESG投資」は、世界的な潮流です。日本でもSDGsと合わせて注目されており、今後はESG投資額がより増加することが考えられています。

SDGsウォッシュと見なされれば、投資先として選ばれにくくなる可能性が高いと言えるでしょう。

また、金融機関にも同じような傾向が見られます。融資の条件が厳しくなったり、融資が止められてしまったりするなど、資金調達の面で大きなダメージを受けることも考えられるのです。 

SDGsウォッシュとして指摘された事例

大手グローバル企業が、中国の少数民族であるウイグル族の強制労働に加担している可能性が指摘され、世界的に問題となっています。

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が2020年に発表した報告書では、指摘を受けた企業は83社で、その中にはSDGsへの取り組みを押し出している企業や、日本企業も14社含まれていました。この問題は投資家からも注視されており、米国の評価会社「S&Pグローバル」は数社のスコアを引き下げたと報じました

また、新疆ウイグル自治区で栽培されている「新疆綿」を使用するアパレル業界には特に厳しい視線が向けられており、不買運動に繋がっているケースも見られます。 

そのほか、パーム油のサプライチェーン(原材料の調達~提供までの一連の流れ)の把握・管理が問題となることも多くあります。

パーム油はアブラヤシからとれる植物油で、お菓子やカップラーメン、洗剤や化粧品など、私たちの身近にあるさまざまな製品に使われています。しかし、アブラヤシ農園の開発には、熱帯雨林の破壊、生物多様性の減少、気候変動といった地球環境の面だけでなく、児童労働や開発者と地域住民との紛争など、さまざまな問題が指摘されています。

日本の某大手旅行会社は、パーム油を燃料としたバイオマス発電所を新たに建設し、20211月から操業を開始しました。こちらの発電所では「RSPO」という持続可能性認証を受けたパーム油が使われています。

しかし、海外ではパーム油を原料とすることを再生可能エネルギーと認めない傾向が強まっており、批判的な目を向ける人も少なくありません。

出典:ウイグル族の強制労働問題 問われる日本企業のビジネスと人権への対応|Sustainable Brands

なぜSDGsウォッシュが起こるのか?

優先すべき課題に正しく取り組んでいても、以下のように情報の発信の仕方次第ではSDGsウォッシュとみなされてしまうケースもあります。

  • SDGsにどんなふうに貢献しているのか、取り組みが具体的に示されていない(表現が曖昧である)
  • よいイメージを連想させるような、事実とは関係のない写真や画像を使用している
  • ステレオタイプのイメージや差別意識などを感じさせる表現になっている
  • 国や宗教によっては違う意味にとれる言葉が含まれている

無自覚でも、このような表現を使って炎上してしまった広告やCMが過去にもありました。気をつけていても、発信側のメディア情報リテラシー(情報を読み解く力)の欠如により、SDGsウォッシュを指摘されてしまう場合もあるのです。

SDGsウォッシュにならないための対策

SDGsウォッシュは、企業にさまざまなダメージを与えることがわかりました。では、SDGsウォッシュと指摘されないためには、どうすればよいのでしょうか。リスクを回避するためのポイントを解説します。

SDGコンパスを活用する

SDGコンパス(SDG Compass SDGsの企業行動指針-)は、企業がSDGsを経営戦略と整合させるためのガイドラインです。SDGsにとっての企業の重要性、取り組むメリット、導入から測定・管理の手順が細かく解説されています。SDGsに取り組むことになった際には、まず入手するべきツールといえるでしょう。

SDGコンパスは、以下の5つのステップで構成されています。

  1. SDGsを理解する
  2. 優先課題を決定する
  3. 目標を設定する
  4. 経営へ統合する
  5. 報告とコミュニケーションを行う

各ステップの詳しい解説は省略しますが、自社事業を効果的にSDGsに紐づけるために重要なのが、ステップ23です。

ステップ2では、「バリューチェーン・マッピング」という方法で、ステークホルダーに対してどのような影響を与えているのかを分析することが推奨されていますこのときにできるだけ多くの正・負の影響を洗い出し、影響の大きな領域を特定して、ステップ3の目標に繋げていくことが大切です。

初めは難しく感じる部分もあるかもしれませんが、その取り組みが自社の規模や能力に見合っているか、本当にもっとも優先すべき課題なのか、持続可能な取り組みであるかなどを判断する手助けになります。

また、SDGs17のゴールはそれぞれが互いに関連しています。設定した目標によりトレードオフが生じる可能性を考慮することも忘れてはいけません。

出典:SDGsの企業行動指針‐SDG Compass (PDF) 

デューデリジェンスの実施

「デューデリジェンス」とは、自社事業のサプライチェーンなどにおける負の影響を、企業自身が調査・特定し、防止または軽減することです。また、特定した負の影響へどのように対処するかについて、説明責任を果たすために企業が実施すべきプロセスのことをいいます。

先ほど紹介したSDGコンパスのステップ2で用いるバリューチェーン・マッピングは、正と負の影響を洗い出すものでした。それに対しデューデリジェンスは、負の影響のみに重点を置いた予防手段です。

SGDsウォッシュと指摘される例の中には、この負の影響への取り組みが十分でない、または見落としているというケースがありますデューデリジェンスを実施することは、SDGsウォッシュを避けることに繋がるのです。

「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」では、以下の6つのプロセスで、デューデリジェンスの実施方法が解説されています。

  1. 責任ある企業行動を企業方針および経営システムに組み込む
  2. 企業の事業、サプライチェーンおよびビジネス上の関係における負の影響を特定し、評価する
  3. 負の影響を停止・防止および軽減する
  4. 実施状況および結果を追跡調査する
  5. 影響にどのように対処したかを伝える
  6. 適切な場合、是正措置を行う、または是正のために協力する

ガイダンスは100ページ近いボリュームがありますが、半分以上がQAです。「負の影響とはどのようなものか」、「優先順位はどう決定するか」などの疑問についても、具体例を交えて細かく解説されています。

また、セクター別のガイダンスも発行されており、仮訳された資料が外務省のホームページからダウンロードできます。自社事業がかかわる負の影響を防止・軽減するために、ぜひ活用してみましょう。

出典:責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス(日本語版)(PDF)

出典:OECD多国籍企業行動指針|外務省

SDGsへの取り組みを正しく発信する

SDGsウォッシュを避けるためには、情報を正しく発信することです。嘘をつかず、実際の取り組みをありのまま発信することはもちろん、以下の項目に当てはまるものがないかチェックしてみましょう。

  • 確かな根拠、情報源はあるか
  • 誇大な表現が使われていないか
  • 曖昧な言葉、抽象的なイメージ画像や写真が使われていないか
  • 言葉の語源を調べた上で使用しているか(国や地域、宗教的背景などで違う意味を持つ言葉もある)
  • 宗教的な表現、差別意識を連想させる表現になっていないか

世界には、さまざまな価値観・文化が存在します。SDGsは世界の共通言語ですので、「世界に向けて発信している」と意識し、あらゆる人たちに対して適切な表現であるか、十分に検討するべきでしょう。

また、SDGsウォッシュを避け、効果的なプロモーションを行うために、株式会社電通が作成した「SDGsコミュニケーションガイド」を活用するものおすすめです。

出典:SDGsコミュニケーションガイド-電通(PDF)

時代の変化に敏感になる

物事の判断基準というのは、世界の潮流や、国や地域、宗教的背景などによっても異なるものです。また、近年は情報が拡散されるスピードも驚くほど速くなり、ひとたびSDGsウォッシュと指摘されれば、企業は大きな社会的風評被害を受けることになるかもしれません。

そうならないために、多様な価値観・文化を理解することはもちろん、以下のような時代の変化をキャッチし、アップデートしていくことが重要になります。

  • SDGsESGへの関心の高まり

企業はこれまで、消費者や地域社会、生活環境の維持のために商品やサービスを提供してきましたが、これからは社会課題への積極的な取り組みが、より求められる時代となっていくでしょうSDGsESG投資は日本でも大きな注目を集めており、今後はビジネスにおいて、SDGsへの対応が取引条件になる可能性があるとも言われています。

  • 世界ではSDGsウォッシュを排除する動きも

世界を見ると、SGDsウォッシュ及びグリーンウォッシュを排除する動きも活発になってきています。20217月、欧州委員会は、グリーンボンド(環境債)の法案を公表しました。新基準では、企業は資金調達の目的や使途を公表・報告すること、EUの基準に沿っているか第三者機関による審査を受けることなどが義務づけられています

  • ドイツでは人権や環境へのリスク調査・管理が義務化

またドイツでは、20216月「サプライチェーンにおける企業のデューデリジェンスに関する法律」が承認、成立しました。企業に人権や環境に対するリスク管理及び分析を求め、リスクが確認されれば対策を講じることが義務づけられました202311日から段階的に施行されます。

日本だけでなく世界の情勢を敏感にとらえ、外部からの視点(アウト・サイド・イン)でアプローチすることが、SDGsでは求められているのです。

出典:すべての企業が持続的に発展するために 持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド_概要版-環境省(PDF)

出典:欧州委、環境債に発行基準 実態を審査: 日本経済新聞

出典:デューデリジェンス法が成立、2023年1月に施行|JETRO

 

SDGs研修・体験型SDGsイベント

SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)

 

概要

  • SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
  • 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
  • オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化

特徴

  • 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
  • チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
  • 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる

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【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)

概要

  • 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
  • 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
  • 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能

特徴

  • あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
  • 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
  • ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進

サービスの詳細をまとめた資料はこちらから

 

【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)

概要

  • 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
  • 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
  • すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント

特徴

  • ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
  • 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
  • ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進

サービスの詳細をまとめた資料はこちらから

 

まとめ

SDGsに対するごまかし行為「SDGsウォッシュ」の、事例と対策について解説しました。

SDGsウォッシュに対しては、明確な基準や罰則があるわけではありません。しかし、SDGsウォッシュとみなされてしまうと、SDGsが目指す持続可能な社会の実現から遠ざかってしまうばかりか、企業は大きなダメージを受けることになります。SDGs経営をスタートさせる前より、企業の評価を落としてしまうことにもなりかねません。

SDGsウォッシュと指摘されないためにも、SDGsを本質的に理解し真摯に取り組み、正しく情報を発信することを心がけましょう。

出典:研究員コラム 「SDGsウォッシュと呼ばれる前に企業が考えるべきこと」

 

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あらたこまち

この記事を書いた人

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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