環境

SDGs 達成に向けてCO2排出量削減に取り組む企業・自治体の事例8選

「カーボンニュートラル」や「脱炭素社会」という言葉をよく耳にするようになりました。近年、気候変動対策として、二酸化炭素(CO2)の排出量削減に取り組む自治体や企業が増えています

本記事では、CO2排出量削減が強く求められるようになった理由をまず解説し、CO2排出量削減に取り組むメリットと、具体的な取り組み事例を、自治体と企業に分けて紹介します。

 

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なぜCO2排出量削減が求められているのか

202010月、当時の菅総理大臣が、2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言しました。これ以降、日本でも脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速しています

カーボンニュートラルとは、「CO2をはじめとする温室効果ガス(GHG)の排出量を、全体としてゼロにする」というものです。これを達成するためには、GHG排出量が、植林や森林管理などによる吸収量を上回らないようにしなければなりません

経済産業省の資料によると、中小企業のGHG排出量は1.2億t~2.5億tと推計されています(2017年度)。これは、日本全体のGHG排出量の1~2割を占める量です。日本がカーボンニュートラルを実現するためには、中小企業の取り組みが特に重要であることがわかります

また、日本を含む120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」を掲げており、世界中でCO2をはじめとするGHG排出量削減が求められるようになってきています。その背景には、SDGsやパリ協定といった国際的な枠組みの存在があります。これらが整備されたことで、世界の地球環境問題に対する危機意識が高まっているのです。

参考:カーボンニュートラルとは – 脱炭素ポータル|環境省

SDGsとは?

20159月にアメリカのニューヨークで開催された国連サミットで、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という文書が採択されました。2030年までにより良い世界を実現するための、世界共通の行動計画です。SDGsSustainable Development Goals)は、この文書に記載された、具体的に達成するべき目標のことで、日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれています

SDGsは17の目標と169のターゲットで構成されており、目標13には「気候変動に具体的な対策を」が掲げられています。

パリ協定とは?

SDGsが採択された年の12月、フランスのパリで国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)が開催され、パリ協定が採択されました。2020年以降の気候変動問題に対する国際枠組みです。

パリ協定では、世界の平均気温の上昇を産業革命以前よりも2℃に抑え、さらに1.5℃に抑える努力をすることや、21世紀後半にはGHG排出量と吸収量のバランスをとることなどが、世界共通の長期目標として掲げられています

参考:今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~|広報特集|資源エネルギー庁

 

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CO2排出量削減に取り組むメリット

CO2排出量削減に取り組むことで、自治体や企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。自治体と企業、それぞれのメリットを紹介します。

自治体のメリット

CO2の排出量を削減するためには、主力電源を化石燃料から再生可能エネルギーへ移行していく必要があります地域に再生可能エネルギー設備を導入することで、地域資源を活かすことができ、新たな産業や雇用の創出も期待できるでしょう

また、災害などで火力発電所が停止してしまったとしても、再生可能エネルギーの設備があれば地域に電力を供給することができるため、地域の災害レジリエンス(災害を乗り越える力)の向上にもつながると考えられます。

参考:脱炭素に向けた地方自治体の取り組みについて – 環境省(PDF)

企業のメリット

グローバルに事業を展開する企業の中には、自社だけでなく仕入先や納品業者に対してもCO2排出量削減を求める企業もあります。経済産業省の資料によると、実際に12.9%の日本企業が、海外顧客からカーボンニュートラルへの対応を求められた経験があるようです。CO2排出量削減に取り組むことは、こうした企業や顧客に対する訴求力の向上につながります

また、金融機関や投資家が投融資先を選ぶ際の評価基準にも、企業の気候変動対策への取り組み状況が含まれるようになってきているため、CO2排出量削減に取り組むことで、資金調達における優位性を確保できると考えられます。

さらに働く人も、自分が働く企業の社会問題に対する姿勢を意識するようになってきています。気候変動という課題の解決に取り組むことで、社員のモチベーションが向上や、採用において人材を集める効果も期待できるでしょう。

CO2排出量削減に取り組む自治体の事例4

ここからは、CO2排出量削減の取り組み事例を紹介していきます。まずは、自治体の事例です。「2050年二酸化炭素実質排出量ゼロ」を表明している自治体の中から、4つの自治体の取り組みを紹介します。

1.秋田県

秋田県は、2022420日に「2050年カーボンニュートラル」を目指し取り組むことを表明しました。脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一つ、「秋田ノーザンハピネッツ×秋田県 ゼロカーボン連携プロジェクト」は、地元のプロバスケットボール「秋田ノーザンハピネッツ」との連携プロジェクトです。

ゼロカーボンゲームの開催

20221210日~11日に開催された川崎ブレイブサンダースとの試合は、「ゼロカーボンゲーム」として開催されました。ゼロカーボンゲームとは、会場で使用されるエネルギー由来のCO2相当量を、県内の森林整備により生み出されたCO2吸収量で埋め合せ、実質ゼロにするというものです。

試合当日は、会場内に特設ブースを設け、脱炭素につながる取り組みのPRや、オリジナルグッズが当たる抽選企画も実施されました。

「あきエコどんどんプロジェクト」とのコラボレーション

「あきエコどんどんプロジェクト」とは、秋田県が実施している、スマートフォンアプリを利用した環境配慮行動を促進するためのプロジェクトです。

本プロジェクトと秋田ノーザンハピネッツとのコラボレーションは、202210月からスタートしました。レジ袋辞退、リサイクルBOXの利用などを実践してエコポイントを貯めると、観戦チケットやオリジナルグッズ、県産品などの賞品が当たる抽選に参加することができます。

参考:「秋田ノーザンハピネッツ×秋田県 ゼロカーボン連携プロジェクト」について | 美の国あきたネット

2.愛媛県

愛媛県は、2020212日に、2050年に温室効果ガス排出実質ゼロの脱炭素社会を目指すことを表明しました。また、2030年度の温室効果ガス排出量を、2013年度比で27%削減するという中期目標も設定しています。

愛媛県では、これらの目標の達成に向けた具体的な取り組みを、産業部門・業務部門・家庭部門・運輸部門の4つの部門に分けて策定しています。その中から、家庭部門の取り組みの一つ、「温泉でほっ!とシェア」キャンペーンを紹介します。

家庭から排出されるCO2のうち、約15.0%を「給湯」が占めています(2020年度)。「温泉でほっ!とシェア」キャンペーンは、温泉・銭湯施設を利用して、入浴時の「給湯」によるCO2を削減しようという取り組みです。対象の温泉・銭湯施設でもらえるスタンプを5個貯めると、豪華賞品が当たる抽選に参加できます。

キャンペーン期間は111日から2月いっぱいまでで、2017年以降毎年実施されています。

参考:愛媛県庁/令和4年度「温泉でほっ!とシェアキャンペーン」の実施について

3.京都府京都市

京都府京都市は、2019511日に、「2050年までのCO2排出量正味ゼロ」を目指すことを表明しました。また、2030年度までに、CO2排出量を2013年度比で46%削減するという中期目標も設定しています。

京都府京都市では、ゼロカーボンシティを表明する以前より、「DO YOU KYOTO?」プロジェクトという地球温暖化防止の啓発活動を実施しています。「DO YOU KYOTO?」は、「環境にいいこことしてますか?」を意味する合言葉です。

毎月16日は「DO YOU KYOTO?デー(環境に良いことをする日)」となっており、ノーマイカーデー、ライトダウン、京灯ディナーなどの取り組みを実施しています。

  • ノーマイカーデー
    通勤などにマイカーを使用せず、公共交通を利用することを呼びかけています。
  • ライトダウン
    屋外照明などの消灯を呼びかけています。
  • 京灯ディナー
    店内の照明をいつもより落とし、ろうそくやランプなどの明かりでディナーを楽しもうという取り組みです。

参考:京都市:「DO YOU KYOTO?」プロジェクトについて

4.福岡県福岡市

福岡県福岡市は、2020221日に、「2040年温室効果ガス実質ゼロ」を目指すことと、「脱炭素社会へのチャレンジ」を表明しました。

これらを実現するための取り組みの一つに、「福岡市博多湾ブルーカーボン・オフセット制度」があります。ブルーカーボンとは、アマモなどの藻場が吸収・固定するCO2のことです。「福岡市博多湾ブルーカーボン・オフセット制度」は、このブルーカーボンをクレジット化して販売する制度で、2020年度に創設されました。

博多湾ブルーカーボン・クレジットを購入することで、市民や企業はどうしても減らすことができないCO2をオフセット(埋め合わせ)できます。クレジットの販売収益は、アマモ場づくり活動をはじめとする博多湾の環境保全活動に活用されています。

参考:福岡市博多湾ブルーカーボン・オフセット制度を創設 – 福岡市(PDF)

CO2排出量削減に取り組む企業の事例4

次に、日本企業のCO2排出量削減に向けた取り組み事例を紹介します。

1.トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、「新車CO2ゼロチャレンジ」として、世界で販売する新車のCO2排出量を、2050年までに2010年比で90%削減するという目標を掲げ、電動車の開発を進めています

さまざまな地域の状況やニーズに対応できるよう、電動車は4つのラインナップを用意しています。

  • HEV
    HEV
    (ハイブリッド車)は、ガソリンで動くエンジンと、電気で動くモーターの2つの動力源が備わった車のことです。効率よい運転になるよう、車がエンジンとモーターを自動で切り替えてくれます。
  • PHEV
    PHEV
    (プラグインハイブリッド車)は、自宅のコンセントからでも充電できるハイブリッド車のことです。電気だけ長距離の走行が可能で、CO2排出量も削減できます。
  • FCEV
    FCEV
    (燃料電池自動車)は、水素と空気中の酸素でつくった電気でモーターを回転させて走る車のことです。発生するのは水だけで、CO2を排出しません。
  • BEV
    BEV
    (電気自動車)は、バッテリー(電池)に電気を貯め、その電気でモーターを回転させて走る車のことです。自宅でも充電が可能で、再生可能エネルギーで充電すれば、CO2排出ゼロで走行できます。

参考:SDGsへの取り組み | サステナビリティ | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

2.JALグループ

JAL(日本航空)グループは、20206月に、2050年までにCO2排出実質ゼロを目指すことを宣言しました。この実現に向けて、2030年までにCO2の総排出量を2019年比で10%削減するという目標を設定し、航空・地上施設の両面から、CO2排出量削減に取り組んでいます。

JAL Green Operations」は、航空機の運航に伴うCO2排出量を削減するために日々行っている工夫の総称です。具体的な工夫の例を、いくつか紹介します。

  • 燃料消費を抑えるために、消費燃料が少なくなるような飛行計画を作成しています。また、軽量化コンテナの導入、機内の飲食物の搭載基準の見直し、ドライアイスの搭載量軽減など、搭載物の軽量化も進めています。
  • 駐機中の機内の照明などに必要な補助動力装置(APU)の稼働時間をできるだけ遅らせ、利用時間を短くしています。
  • 離陸後早期に加速する、飛行中は燃費も考慮して速度を調整する、着陸時はCO2削減につながる連続降下方式を積極的に利用するなど、操縦も工夫しています。
  • 定期的なエンジンの洗浄、機体の改良など、運航時以外でも燃費向上に取り組んでいます。

参考:気候変動への対応|サステナビリティ|JAL企業サイト

3.ヤマトグループ

ヤマトグループは、2050年温室効果ガス排出実質ゼロを目標に掲げており、その実現に向けて、2030年までに、温室効果ガス排出量を2020年度比で48%削減するという中期目標も設定しています。

グリーン物流を推進するため、株式会社デンソーと連携して開発した小型モバイル冷凍機「D-mobico」をはじめとする機械式コールドボックスを積極的に導入し、冷凍・冷蔵宅配用のドライアイスの削減に取り組んでいるほか、2030年までに電気自動車(EV)を20,000台導入することを目標に、低炭素車両への移行も進めています。

また、再配達に伴うGHGを削減するための、顧客向けのサービスも展開しています。希望の受け取り日等を指定できる「クロネコメンバーズ」や、宅配ロッカー「PUDOステーション」などです。

ヤマト運輸株式会社、ヤマトオートワークス株式会社、ヤマトシステム開発株式会社では、再生可能エネルギーの利用も進めており、2021年度は再生可能エネルギー由来の電気購入により24,000t以上のCO2を削減することができました(前年度比)。

参考:エネルギー・気候 | ヤマトホールディングス株式会社

4.株式会社大川印刷

株式会社大川印刷は、日本で初めてPPAモデル(※)を利用して太陽光パネルを設置し、「再生可能エネルギー100%印刷工場」を実現した企業です。太陽光パネルにより賄われているのは、使用する電力のうちの20%で、残りの80%は青森県横浜町の風力発電による電力を購入することで、再生可能エネルギー100%を実現しています。

再生可能エネルギーはコストが高いというイメージを持っている人もおられるかもしれませんが、株式会社大川印刷は、2019年度はエネルギーコストの8%削減(前年度比)に成功しています。

また、自社のCO2排出量削減だけでなく、同業他社や製本業者、配送業者などに対してCO2排出削減に関するセミナーを開催するなど、サプライチェーン全体のCO2排出量削減に取り組んでいます。

※PPAとは……Power Purchase Agreementの略称。無償で発電設備を設置し、その電気を利用できる仕組み。設備の所有者は第三者(エネルギーサービス契約を結んだ事業者または別の出資者)となるため、「第三者モデル」とも呼ばれている。

参考:CO2 ZERO PRINTING – 大川印刷

 

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  • あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
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【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)

概要

  • 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
  • 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
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特徴

  • ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
  • 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
  • ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進

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まとめ

2015年にSDGsやパリ協定といった国際的な枠組みが整備され、さらに2020年には国として「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことで、近年は日本でも脱炭素社会の実現に向けた取り組みが広がっています

自治体や企業は、CO2排出量削減に取り組むことで、SDGsやパリ協定の目標達成に貢献できるだけでなく、さまざまなメリットが期待できます。単なる気候変動対策ではなく、地域活性化や新たなイノベーションにつなげている事例も多数あります。さまざまな事例も参考にしながら、地球のためにできることを考えてみてはいかがでしょうか。

 

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あらたこまち

この記事を書いた人

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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