SDGsを社内に浸透させるには?具体的な方法を紹介
SDGsへの意識が世界的に高まるなか、日本でもSDGsに取り組む企業が増えてきました。SDGsを推進するには、経営陣や担当者だけではなく、すべての従業員が当事者意識を持って取り組まなければなりません。しかし、いざSDGsを強く推し進めようとしても「なかなか社内に浸透しない」と悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。SDGsを社内に浸透させるには、その必要性を理解したうえで、手順に沿って作業を進めることが大切です。この記事では、SDGsの社内浸透が必要な理由、浸透させるためのステップを解説します。
SDGsのはじめの一歩を実現する「SDGsの社内浸透方法」とは?
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SDGsとは?
SDGsとは地球上の「誰一人取り残さない」世界を実現するための国際目標です。世界共通の17目標(ゴール)を具体化した169個のターゲットを設定し、2030年12月31日を達成期限としています。
SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)は2000年に始まり、達成期限の2015年までにある程度の成果を上げました。しかし、現在でも世界には、貧困、不平等・格差、気候変動による影響などさまざまな課題があります。
MDGsの課題を引き継ぎ、さらにより多くの課題を包括したものがSDGsです。SDGsでは「環境・社会・経済」という3つの側面から課題解決をめざしています。こうしたSDGsへの取り組みは、地球環境・社会全体のためだけではなく、企業の持続可能なビジネスのためにも不可欠です。
参照:SDGsとは?|JAPAN SDGs Action Platform|外務省
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SDGsの社内浸透がなぜ必要なのか
経営規模の大小に関わらず、企業によるSDGsへの取り組みは、もはや必須事項といえます。SDGsに取り組まない企業は、世界が抱える課題に無関心な企業と評価されて、イメージダウンにつながりかねません。将来的には投資家や消費者から選ばれなくなってしまう恐れがあります。
SDGsを実践するためには、社員一人ひとりの正しい理解と主体的な行動が必要です。先にも述べたように、SDGsは「地球上の誰一人として取り残さない」ことを誓っています。つまり、経営陣や一部の人だけではなく、全社員あげて取り組むことに意義があるのです。
個々人がその本質や重要性を理解していないと、やらされている感があり、SDGsへの取り組みが進まなくなってしまいます。
また、経営陣がSDGs達成に向けた取り組みをいくらアピールしても、社員がSDGsについてきちんと理解していなければ、うわべだけの取り組み(SDGsウォッシュ)とみなされる可能性があります。
SDGsウォッシュとは、実態が伴っていないのに、SDGsに取り組んでいるように見せかける行為を指す言葉です。たとえば、取引先に対してSDGsの取り組みを宣言・公表しているのに「現場の社員のやっていることがまるで違う」という印象を周りに与えると、かえって信用を失いかねません。
多くのビジネスにおいて、取引先や地域社会とコミュニケーションをとっているのは、一人ひとりの社員です。それぞれの意思決定が「企業の行動」として捉えられることを意識し、全員が課題解決に向かって正しいアクションを起こす必要があります。
SDGsが社内に浸透しない理由とは?
SDGsが社内に浸透しない理由として次のようなものが挙げられます。
1.経営者からのメッセージ不足
SDGsを社内に浸透させるためには、経営者からのメッセージがいかに正しく社員に伝わるかが重要となります。たとえ経営陣のなかではSDGsに貢献し、持続可能な企業へと発展する未来像を描けていたとしても、適切に伝えられていなければ、重要性が認識されず、社員の行動につながらない可能性があります。
また、SDGs担当者を決めたあと、実務には参加せず、現場に任せっきりにしてしまうケースも見受けられます。これでは、社員の心は離れていくばかりです。
トップは、社員一人ひとりのSDGsに対する知識の底上げを図る役割を担っています。まずは経営陣が当事者意識を持ち、SDGsへの理解を深めたうえで、SDGsの必要性を社員に発信することが大切です。なぜ会社としてSDGsに取り組むべきなのか、将来どんな理想像を描いているのかなど、価値観を共有しましょう。
2.担当者のSDGsに対する知識不足
SDGsが社内に浸透しない大きな理由として、その担い手である担当者の知識不足が挙げられます。SDGsへの取り組みを効果的に推進するには、十分な知識と情報を備えたリーダー人材が不可欠です。しかし、SDGsは2015年に採択された取り決めであり、日本国内で注目されるようになってから、まだ数年しか経っていません。そのため、多くの人がSDGsについて詳しく知らないのが現状です。
突然トップから担当に任命され、通常業務を同時進行で進めながら、SDGsの取り組みを推進しているメンバーも少なくありません。いざSDGsを推進しようにも、その理念をきちんと理解していない状況では「いったい何から手をつけたらいいのかわからない」と悩むのも当然のことでしょう。
この課題を解決するために、まずは担当者がSDGsの基礎を今一度しっかり身につけることが重要です。SDGsの本質を理解できる良質なコンテンツを活用し、社内で共有・受講するのが得策といえます。
3.社内のコミュニケーション不足
企業にとって、SDGsは大きなビジネスチャンスにもなりえます。しかし、そのことを多くの社員が理解していなければ前には進みません。経営トップはこのチャンスを逃すまいとSDGs推進を図る一方で、社員は当事者意識を持てず、両者の間で大きな溝が生まれてしまうケースもあります。
こうした状況を生んでしまう主な原因として、社内のコミュニケーション不足が考えられます。社内にSDGsを浸透させるためには、社内コミュニケーションを通じて意思の疎通を図り、企業としてSDGsに取り組むことの意義やメリットを共有することが重要です。
最近はリモートワークの浸透により、社内コミュニケーションが減ったという声がよく上がっています。「社員のSDGsに対する理解度を上げたいが、社員が一堂に会する機会がない」と悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。
全員がオフィスに集まるのが難しい場合、場所を問わずに学習できるeラーニングや、個人単位で受講できるオンラインセミナーを導入することをおすすめします。社内SNSや社内報といった社内コミュニケーションツールを活用し、企業の理念や行動指針を一人ひとりに浸透させるのも1つの手です。
企業がSDGsに取り組む際の5ステップ
企業がSDGsに取り組む際に活用したいのが「SDGコンパス」です。
SDGコンパスとは、米国の非営利団体「GRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)」と、国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト」、先進的な企業約200社が加盟する「WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)」が共同で作成した、企業がSDGsを導入するための行動指針をいいます。
このガイドラインでは、企業がSDGsに取り組む際のステップとして次の5つを提示しています。
参照:SDGs の企業行動指針(PDF)| SDG Compass
1.SDGsを理解する
最初のステップとして、SDGsの本質を理解することから始めましょう。活動方針を示すべきリーダーがSDGsについてしっかり理解していないと、的確な指示を出すことができず、社員のモチベーションが低下する事態になりかねません。競合他社に先駆けてSDGsに取り組み、競争優位に立ちたいところですが、基礎ができていないと取り組みが空回りに終わってしまうだけです。まずは、経営層・担当者がSDGsを知り、企業としてSDGsに取り組むことの意義やメリットを理解することが重要です。
2.優先課題を設定する
SDGsの基礎をしっかり理解できたら、次に課題の設定を行います。SDGsは17の目標と169のターゲット(具体的な目標)、さらにその下にターゲットの進捗度を測るための232の指標を提示しています。しかし、そのすべてを自社の課題に落とし込み、ビジネスとして取り組むのは現実的ではありません。SDGs の17目標のなかから自社の事業活動と関連性の高いものをいくつかピックアップし、優先的に取り組む課題を決定しましょう。担当者だけで適切な課題を設定するのは難しいため、経営層のリーダーシップが求められます。
3.数値目標と方法を設定する
事業経営において、明確な数値目標を立てることは重要です。SDGsの取り組みにおいても同じことが当てはまるでしょう。「働きがいのある職場づくりをする」「日頃からこまめな節電を心がける」といった抽象的な目標では、人によって判断が分かれてしまい、達成が難しくなってしまいます。たとえば「3年以内に事務所の照明をLED電球に変え、消費エネルギーを○%削減する」など具体的な目標と達成期限を掲げましょう。明確な数値目標を設定すると、ゴールや達成の進捗度が把握できるので、モチベーションの向上にもつながります。
4.経営へ統合する
ステップ3で目標を設定したあとは、その目標を企業経営に統合し、SDGsへの取り組みを開始しましょう。目標を設定しただけでは、各々の社員は具体的にどう動いたらいいのかわかりません。また、日々の業務に追われてSDGsへの取り組みが後回しになってしまう懸念もあります。部門ごとに実行することを決める、活躍した社員に対しての特別報償を設ける、部門横断的なプロジェクトチームをつくり進捗を確認するなど、業務に組み込む工夫をしましょう。企業のビジョンに、持続可能性への意欲を反映させるのも有効です。
5.報告とコミュニケーションを行う
SDGsへの取り組みは、社内外のステークホルダーの共感を生み出します。ステークホルダーとは、株主・経営者・従業員・顧客(消費者)・取引先、地域住民といった企業の利害関係者を指す言葉です。自社の取り組みを正しく理解してもらうためには、コミュニケーションが重要です。設定した目標の進捗状況、達成度を定期的にステークホルダーへ開示・報告し、適切なコミュニケーションをとることで、企業イメージの向上につながります。会社の魅力が高まれば、離職者の減少や求職者の増加も期待できるでしょう。SDGsに関連する実績や将来の目標をホームページやSNSで積極的に公表すると、自社の取り組みを広くアピールできます。
具体的な例を考えてみよう
たとえば、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に向けて、企業はどのような手段を用いることができるのか考えてみましょう。
「ジェンダー平等」とは、一人ひとりの人間が社会のあらゆる場面において、性別に関わらず平等に責任や権利や機会を分かち合い、あらゆるものごとを一緒に決めることを意味します。
多様な働き方が選択できる社会の実現が求められている一方で、昔から根強く残っている社会問題として男女の格差が挙げられます。世界の男女格差を可視化した2022年版の「ジェンダーギャップ指数」において、日本の総合スコアは世界146カ国中116位でした。まだまだ、男女の格差が大きいのが現状です。
職場におけるジェンダーギャップを解消するためには、女性活躍に取り組み、男女ともに働きやすい環境を作ることが求められます。
<ジェンダー平等に取り組む手順>
- ステップ1:職場における男女不平等の現状を把握する
ジェンダー格差を解消するためには、まず現状を「見える化」して実態を知ることが大切です。男女格差に関するアンケート調査を実施し、職場でどのくらいジェンダーの差別があるのか現状を把握しましょう。 - ステップ2:目標を設定する
ジェンダー平等の実現に向けた具体的な目標を設定します。
目標例:「2025年までに女性管理職の比率を○%にする」 - ステップ3:ジェンダー平等に向けた取り組みを実施する
関連する社員がジェンダー平等に向けた具体的な取り組みを開始します。
取り組み例:「女性管理職を育成するプログラムやセミナーを実施する」
SDGsへの取り組みを社内に浸透させる方法
ここでは、SDGsへの取り組みを社内に浸透させる方法を紹介します。
1.企業全体でSDGs研修を実施する
全社員を対象にSDGs研修を実施すれば、SDGsの概念を正しく社内に浸透させることができます。SDGsの言葉を最近見聞きすることが増えたため、あやふやな理解のまま「知っているつもり」の人も多いのが現状です。社員一人ひとりがSDGsの内容をしっかり理解することで、企業として適切に取り組みを進められます。研修内容を社内で一から企画するのが難しい場合、外部の専門家に頼るといいでしょう。
2.e–ラーニングを活用する
e-ラーニングとは、受講生が静止画や動画コンテンツなどを視聴して、学びを深める研修スタイルです。インターネット環境さえあれば、場所や時間を問わず学習機会を設けられます。e-ラーニングは比較的安価で、1人からでも受講できるので、小規模の企業でも低コストで導入しやすいのがポイントです。テレワーク化や働き方の多様化が進むなか、注目を集めています。
3.ビジネスゲームを取り入れる
ゲームというと「みんなとワイワイ遊んで楽しい」というイメージがあるかもしれませんが、SDGsのビジネスゲームはただ遊ぶだけでなく、体験的に楽しみながらSDGsの本質を学ぶ機会を得られるものがあります。堅苦しくない雰囲気のなかで、気軽に実施できるのも魅力です。協調性や団結力が試されるビジネスゲームに取り組めば、チームワークの向上も見込めるでしょう。
おすすめのSDGsビジネスゲームを紹介します。
- ワールドリーダーズ
ワールドリーダーズは、企業経営を疑似体験できるSDGsビジネスゲームです。各チームは企業として事業戦略を立て、労働力や資本を使って利益を競い合います。ただし、自社の利益を追求するだけの利己的な経営では企業価値を向上させることができません。環境や社会などさまざまな要素を考慮して、より良い社会の実現に貢献するマーケティング視点が求められます。またゲームを通じて、仲間とのコミュニケーションが活性化し、チームワークの向上が期待できます。
4.SDGsイベントを企画する
SDGsを社内に浸透させる方法として、関連するイベントを開催するのも1つの手です。自社開催のイベントであれば、SDGsについて来場者にわかりやすく説明できるようにしておく必要があるでしょう。人に教えることは自己の学びにつながります。SDGsイベントを企画することで「社会的責任を果たす意志のある企業」とみなされるため、企業イメージの向上にも効果的です。
5.社内報を活用する
社内コミュニケーションの一環として、社内報を発行している企業も多いのではないでしょうか。そのなかでSDGsに関する記事を定期的に取り上げれば、社員のSDGsへの理解促進を図ることができます。SDGsを自分ごととして考えてもらうために、社内報でSDGsのアイデアを募るのもいいでしょう。
まとめ
今やSDGsはこれからの企業活動に欠かせないものです。とはいえ、社内に浸透・定着させることは、一朝一夕にはいきません。SDGsへの取り組みを進めるためには、経営層のリーダーシップと社員の理解が不可欠です。
SDGsの重要性を社内に浸透させる手段として、今回紹介したビジネスゲームやe–ラーニングを試してみてはいかがでしょうか。SDGsを自社の経営にうまく取り入れることで、持続可能な社会の実現への貢献と、ビジネスの維持・拡大を両立させましょう。
SDGsのはじめの一歩を支援するSDGsイベント・研修とは?
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こちらの記事では、世界のSDGsの達成度について解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
SDGsとは
こちらの記事ではSDGsの目標5を達成するために世界で行われていることを紹介しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の概要と取り組みをわかりやすく解説
この記事を書いた人
正木友実子
福岡在住。大学を卒業後、大手食品メーカー勤務を経て、異業種のライターへ転身。求められている情報をわかりやすく伝えることがモットー