地域活性化に必要な5つのことと、成功に導くポイントを解説
昨今、全国各地の自治体や企業が地域活性化に取り組んでいます。その一方で、地域活性化を目的とした企画のつくり方や、取り組み方において、悩みを抱える担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、地域活性化の概要や地域活性化に必要な5つのこと、成功させるポイント、地域活性化を進める4つの方法についてそれぞれ解説します。
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地域活性化とは
地域活性化とは、それぞれの地域における経済活動、文化活動、産業活動などを活発化させたり、地域住民の活動意欲を向上させたりすることで、その地域を発展させていくための活動のことをいいます。地域活性化は、街づくり・街おこしといった意味合いで使われることもあります。
地域活性化という言葉に明確な定義はなく、一般的には、それぞれの地域が今後も持続可能な社会を創り上げるための取り組みや活動などを総称して使われています。
地域活性化が注目されたきっかけ
2014年の第二次安倍内閣で「まち・ひと・しごと創生法」が議決・執行されたことをきっかけに“地方創生”という言葉が国内で広く認知され、地域活性化への取り組みに注目が集まりました。
「まち・ひと・しごと創生法」は現在では廃止されているものの、政府が地方創生へ取り組むために掲げた戦略やビジョンなどは「まち・ひと・しごと創生総合戦略」「まち・ひと・しごと長期ビジョン」として継続して推進されています。
出典:地方への多様な支援と「切れ目」のない施策の展開│地方創生推進事務局(PDF)
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地域活性化が必要な理由
日本で地域活性化が必要な理由として「少子高齢化による地域の人口減少」「東京圏への人口集中」の2つの問題が挙げられます。
地域の人口減少
(出典:総務省統計局|人口推計 2022年(令和4年)1月報)
以前から日本では、少子高齢化が社会的課題の一つとなっています。国内総人口は、2008年の1億2808万人がピークであり、2022年1月時点では1億2544万人と、年々減少傾向にあります。
人口減少に伴い労働人口が減少することで、特に人口の過疎化が著しい地域においては、65歳以上の高齢者であることが多く地域経済の先細り、公的サービスの充実がのぞめない状況が顕在化してきていることで、地域外からの若い人の流入を促すような地域おこしが直近の課題と考えられます。
併せて、人口減少によって地域でのサービスや事業の需要が減少することで、地域に根付いた経営を行なっている中小企業の数も減り、税収の減少や地方経済の縮小、雇用の悪化などにつながることも懸念されます。
少子高齢化が続いて地域の労働人口が減少することで、未来の地域経済を担う人材不足につながり、地域のサービスや経済活動の維持が困難になるという悪循環を生み出してしまうのです。
東京圏への人口一点集中
(出典:住民基本台帳人口移動報告2021年(令和3年)結果│統計局ホームページ)
総務省の2018年の統計によると、東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の1都3県)への転入超過数は13.6万人(転出者数は35.5万人、転入者数は49.1万人)と、東京圏から出ていく人よりも、東京圏に入ってくる人の方が多い状況でした。
東京圏の人口は2018年で約3,658万人ですが、これは国内総人口の約3割に値します。東京圏に人口が集中してしまうと、地方の人材不足や労働力不足へ悪影響を及ぼす他、大規模な自然災害が起こった際に支援が届かない人が出てしまうことが考えられます。
特に、地方の大学や企業が衰退することはその地域での人口・税収・雇用の減少に悪影響が及び、自治体の行財政の維持が困難になることもあるでしょう。
このように、東京圏への人口一点集中は様々な問題を引き起こすことが懸念され、それぞれの地域で地域活性化への取り組みが求められています。
地域活性化に必要な5つのこと
地域活性化を行うには下記5つが必要と考えられます。
- 地域課題の発見と目標設定
- 地域資源の棚卸し
- 人材育成
- 助成金・補助金などの資金
- 外部機関との協力
それぞれについて解説していきます。
出典:地域活性化について語る(1)あるものを生かす地域力創造│【日立】自治体ICT応援サイト
出典:自治体を悩ませる経済活性化の課題とは?地域の資源を活用したビジネスの成功例│JTB 法人サービス
1.地域課題の発見と目標設定
地域活性化に取り組むための最初のステップとして、地域課題の発見と目標設定が必須です。その地域にどのような課題や問題があり、それらによって地域がどのような悪影響を受けているのかについて理解し、問題提起をしましょう。
地域活性化として課題解決に取り組むためには、明確な目標(ゴール)の設定が欠かせません。地域の課題やニーズをしっかりと把握し、それを解決できるような目標を設定しましょう。
2.地域資源の棚卸し
地域課題の発見と目標設定を終えたら、既に地域に存在している資源の棚卸しをしましょう。ここでいう資源とは人や物(特産品・名産品など)だけではなく、自然、気候、風土、歴史、伝統、文化などのあらゆるモノを含みます。
地域活性化を進めるには、いかにして地域資源を有効活用できるかが成功のカギになります。その地域の特性や特徴を把握し、活用できそうな資源を棚卸ししましょう。
“負”の地域資源を活かした地域活性化の事例
青森県五所川原市では、地域特有の気象現象である「地吹雪」を地域資源として活用した「地吹雪ツアー」を実施しています。地吹雪は、本来であれば地域住民の生命に関わる気象現象であり、いわゆる“負”の地域資源です。
しかし、関係者の発想や努力の積み上げにより地吹雪を“正”の地域資源として観光資源化したことで、ユニークな地域活性化への取り組みとして活用できました。
このように、地域住民にとっては“不要なもの”だとしても、発想の転換によって地域資源となり得るものは多く眠っているといえます。地域資源の棚卸しをする際には、今までとは違った視点から物事を考えてもいいかもしれません。
出典:地域づくりにおける「負の資源」の活用プロセス:北海道紋別市の流氷の価値創造の事例│北海道大学学術成果コレクション : HUSCAP
3.人材育成
地域資源が豊富に存在していても、それを活用するのは人間です。資源を有効活用するためにも、人材育成は地域活性化にとって必要不可欠な要素といえます。
地域の人材は大きく「多様な個々の人材」「リーダーの役割を果たす様々な人材」「リーダーを支える人材」の3つに区分できます。それぞれの役割などを把握し、適切な育成を行うことが大切です。
「多様な個々の人材」を育成する取り組み
地域活性化に取り組むには、その地域の人々の協力や理解が必要不可欠です。
地域に住む多様な個々の人材が活躍できるように、「住民相互の話し合いの機会を作ること」「地域の活動を外部へ向けてPRし、参加者の拡大を図ること」「役割分担をし、各々が得意分野を活かすこと」が有効です。
地域住民が一同に集まって話をする機会を提供することで、地域に対する想いや考え、意見などの共有をし、一人ひとりが当事者意識を持てるように動機付けをしましょう。
そのような機会では、地域の歴史や文化、統計データなどを共有することで地域の現状をより詳細に把握し、地域に対する理解を深めることが大切です。
自分たちの活動をより多くの人に知ってもらうために、地域のマスコミやSNSなどを活用してPRをし、多くの仲間を集めていきましょう。
地域一丸となって地域活性化に取り組み、一人ひとりが個性を活かしながら、やりがいや生き甲斐を持って取り組んでもらうことが、地域活性化の成功につながります。
「リーダーの役割を果たす様々な人材」を育成する取り組み
「地域を良くしたい」という想いや信念を持ち、地域住民の様々な意見を引き出してまとめ上げることができるリーダーは、地域活性化への取り組みに欠かせない存在です。
リーダーとなるべき人材が生まれるには、「発掘と育成」「組織内部での後継者育成と役割分担」が重要です。
その地域において“誰がリーダーとなり得るか”について組織内で相談しながら、リーダー候補者を発掘、育成します。リーダーを役割や部署ごとに複数名選任し、リーダー同士が相互に情報交換できる機会を設定したり、研修を活用したりすることで、リーダーを育成していきます。
また、リーダーの後継者となる人材の育成も欠かせません。現職のリーダーが現場で共に活動しながら、後継者を育てることで、持続可能な地域活動へと取り組むことができるでしょう。
「リーダーを支える人材」を育成する取り組み
地域活性化は、その全てをリーダーに一任して成り立つようなものではありません。リーダーを支えることのできる、多様な人材が必要です。
リーダーを支える人材には、「能力や世代などが多種多様な、主体的に行動できる」「水平性・公平性を保ち、周りを巻き込みながらサポートできる」「組織の上層と下層をつなぐ役割を担える」といった特徴を備えた人材が求められます。
リーダーを支える人材を発掘するには、地域活動のPRや情報発信を行いながら協力者を見つけるとともに、実際の現場で主体的に動けるように教育することが有効です。
出典:地域づくり人育成ハンドブック│総務省人材力活性化・連携交流室
4.助成金・補助金などの資金
地域活性化に取り組むにはある程度の活動資金が必要になりますが、活動初期は資金が十分に集まらないことも考えられます。そこで活用できるのが、政府などが地域活性化推進に向けて支援している助成金や補助金などの制度です。
助成金や補助金は、ある一定の条件を満たすことで活用できるものが多くあるため、自分たちの活動の取り組み内容や趣旨などを条件と照らし合わせて、活用できるかどうかは事前に確認しておきましょう。
助成金・補助金の例
農林水産省では、国内各地にある山村の特色ある農林水産物や景観、伝統文化などの地域資源の活用を通じた地元住民の所得や雇用の増大に向けた取り組みを支援する目的として、「山村活性化支援交付金」を提供しています。
茨城県城里町での活用事例
茨城県城里町(しろさとまち)では、農作物への獣害対策に伴い捕獲頭数が増加傾向にあるイノシシの資源利用を進めるために山村活性化支援交付金を活用し、イノシシの食肉加工商品と皮加工商品の開発に取り組みました。
地元の猟友会、東京農業大学、狩猟免許などを取得した地域おこし協力隊員と連携し、ワークショップ形式での商品開発や町内施設における料理の試験提供などを企画。イノシシの地産地消に向けた取り組みを推進し、雇用促進、商品開発などの地域活性化へとつながりました。
出典:イノシシの肉・皮を活用した加工品開発と体制づくり│農林水産省(PDF)
5.外部機関との協力
地域に存在する資源や人材のみでは、より大きな活動を行うには限界があります。さらなる地域活性化へ取り組むには企業や大学などの外部機関との協力関係を築くことが大切であり、双方にとってメリットのある取り組みを実施することで、より大きな成果が得られるといえます。
岡山県岡山市の事例
岡山県岡山市では、行政と民間団体が協業して公園を活用したイベントの開催に取り組んでいます。中心市街地にある西川緑道公園は「人通りが少ない」「利用頻度が低い」「イベント開催に適さない環境」といった要素が影響し、住民の関心が低い公園でした。
しかし、平成21年に開催された「全国都市緑化フェア」の会場の一つとなったことで、公園の需要が大きく変わります。フェアに参画した市民団体などから、西川緑道公園での継続的な市民協働のイベント開催を求める声が多くあり、平成22年に西川パフォーマー事業が立ち上げられました。
公園で自主的に賑わいづくりのイベントなどを実施する団体を市が認定し、イベント開催費や関係各所への届出などの支援を市が行うことで、民間と行政の協業によるイベント開催へとつながりました。
出典:自治体等による民間まちづくり支援の取組み事例│国土交通省都市局まちづくり推進課官民連携推進室(PDF)
地域活性化を成功させるポイント
地域活性化を成功させるには、「住民の主体性を育む」「DX化を推進する」「グリーンツーリズムを取り入れる」「持続可能な事業を作る」「若い世代に着目する」といった5つのポイントを押さえましょう。
出典:持続可能な地域振興・活性化に必要な3つの視点を事例や取り組みからご紹介│JTB 法人サービス
出典:地域活性化のカギ「若者の創造力」はどう育てる?│ORICON NEWS
出典:地方を活性化するには?活気あふれる地域づくりの取り組み│自治体クリップ
1.地域住民の主体性を育む
地域住民一人ひとりの「自分の住む地域をさらに良くしたい」という主体性は貴重な原動力であり、地域活性化には欠かせません。
住民同士の交流や意見交換以外にも、同じ地域で活動している複数の団体と関係構築をすることで、より大きな取り組みに挑戦できるようになります。
2.DX化を推進する
DXとは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略語であり、企業がビジネス環境の激しい変化に対応するためにデータとデジタル技術を活用し、顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルの他、業務、組織、プロセス、企業文化・風土なども変革し、競争における優位性を確立することと定義されています。
出典:「DX 推進指標」とそのガイダンス|経済産業省(PDF)
地域活性化を目指すためには、様々な関係機関とのやり取りを行ったり、複数のデータを解析したりといった行程が必要です。また、作業の効率化を図るためにも、インターネット周りの環境整備も求められます。
地域でデジタル技術やデータを活用するDX化を推進することは、業務の効率化だけでなく、住民の利便性を高めることにもつながります。
3.グリーンツーリズムを取り入れる
グリーンツーリズムとは、旅先の農村や漁村で自然・食事・文化に触れる旅行のスタイルをいいます。
特に、地域の観光スポットなどへ観光客を呼び込んでの地域活性化を行う場合には、その地域ならではの環境を楽しんでもらえるようなグリーンツーリズムの取り組みが、地域への理解を深められることにつながります。
4.持続可能な事業を作る
企業の事業と同様に、地域活性化に向けた活動も利益や人件費を求めないで取り組んでしまうと継続できず、持続的な課題解決にはつながりません。
地域活性化に取り組む際には、長期的な戦略ビジョンを持ち、持続可能な事業や取り組みを実践することが経済振興、雇用創出に重要といえます。
5.若い世代に着目する
これからの地域社会は若い世代が担っていきます。若い世代が「ここに住みたい」「ここで仕事をしたい」と思えるような地域環境を作ることが、今後の地域活性化には求められる要素といえるでしょう。
もちろん、全てを若い世代に任せるのではなく、地域のベテラン世代と若い世代とでの交流・意見交換ができる機会などを作り、相互理解を深めることで、地域住民の求めるニーズを見つけることにつながります。
地域活性化を進める4つの方法
地域活性化を進めるには大きく4つの方法があります。
出典:地域活性化の取り組み事例から学ぶ、成功の秘訣 | TURNS(ターンズ)
1.産業振興
地域資源を再発掘し、新しい特産品や名産品を作ることで販路拡大・地域産業の振興を目指す方法です。商品の販路拡大を目指すことで、その地域だけではなく全国規模で商品を展開できるため、今後の雇用増加も見込めます。
2.経済振興
地域に人(観光客など)を呼び込み、地域経済を活性化させる方法です。その地域ならではの限定品や、職人が手がけた商品の販売、イベントの企画などが当てはまります。その地域でしか味わえない体験を企画し観光客へ提供することで人を呼び込み、地域経済の活性化につなげます。
3.街づくり・交流・コミュニケーション
地域住民から求められている施設やコミュニティなどを作り、地域住民を集めて活動を活性化させる方法です。駅前やその地域の中核地点に大型の施設を作る、商店街や地域住民が一体となってイベントを企画するなどの取り組みが挙げられます。
4.教育
「地域の学校や学生に対して職業に関する教育をする」「地域外の人を対象にインターンシップを企画して地域への理解を深めてもらう」といった活動が挙げられます。活動を通して、地域の魅力のPRや地域への転入などの効果が期待できます。
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まとめ
地域活性化は、地域の少子高齢化や人口減少などの対策として実施されています。実際に、地域活性化の取り組みによって経済振興や新たな街づくりにつながったケースは多くあり、民官学を問わずに地域活性化への注目が集まっています。
地域活性化に取り組みには、目標設定や地域資源の棚卸し、人材育成が必要不可欠です。今回紹介した内容を参考に、地域活性化へ取り組んでみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
りょう
都内在住。美容系メディアのコンテンツ制作をきっかけにライター活動をスタート。現在までにSDGs、HR領域、SNSマーケティング、外遊び、オンラインイベントなどの幅広いジャンルを執筆。読者の皆さまに寄り添えるような、わかりやすい文章を心がけています。