グリーンウォッシュとは?注意すべきポイントや事例を紹介
近年、企業に対して、環境に配慮した商品の生産や取り組みの実施など、環境を守るための行動を求める動きが見られます。企業にとっても、環境問題への取り組みは自社のブランドイメージ向上や資金の確保に繋がるなどのメリットがあり、多くの企業が積極的に環境問題解決に向けた取り組みを行っています。
しかし、環境問題に取り組む企業が増えるなか、「グリーンウォッシュ」と呼ばれる行為が問題視されています。環境問題に関係のない商品や取り組みを、あたかも環境に良いと思わせる「グリーンウォッシュ」は、企業だけでなく、多くの人が知っておきたい問題です。
本記事では、「グリーンウォッシュ」の概要や注意するべきポイント、事例について解説します。
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グリーンウォッシュとは?
「グリーンウォッシュ(Greenwashing)」とは、誤解を生むような表現を使用するなど、環境に配慮した製品の生産や取り組みを実施しているようにみせかける行為を表す言葉です。この言葉は、環境に配慮していることを連想させるグリーン(Green)と、「うわべを飾る・取り繕う」などの意味を持つホワイトウォッシュ(whitewash)を組み合わせた造語です。
SDGsの認知度向上などによって、多くの消費者が環境問題に関心を寄せるようになりました。しかし、製品一つひとつの生産背景までを調べる消費者はあまり多くないのが事実です。そのような消費者の心理や行動を利用して、サステナブル(持続可能)ではない製品を、環境に優しい付加価値のある製品として販売するなどといった「グリーンウォッシュ」問題視されています。
参考:欧州で規制強化 見せかけの環境配慮「グリーンウォッシュ」のリスク:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)
7種のグリーンウォッシュ
製品安全規格を定めているアメリカの「UL LLC」では、「グリーンウォッシュの7つの罪」として、企業が行っている可能性のある、7種のグリーンウォッシュについて公表しています。
1. トレードオフを隠す
環境に負担をかけている要因が存在するにも関わらず、それらを隠し良い部分のみを公表することです。
例えば、大規模な太陽光発電所であるメガソーラーは、資源を消費せずに環境に優しい再生可能エネルギーを生産できる一方で、設置場所を作るために森林伐採などの環境破壊が行われているケースもあります。
2. 証拠がない
環境に良いと謳ってはいるが、消費者が確認できる場所に具体的な内容が公表されていないケースなどが当てはまります。
3. 曖昧な表現
人によって捉え方が異なる曖昧な表現が使われていることもグリーンウォッシュにあたるとされます。
4. 偽の表示
あたかも認証や支持を受けているかのような表現をラベルに使用するなどのケースです。
5. 無関係な主張
「使用が禁止されている有害物質を、わざわざ使用していないと表記する」など、嘘ではないが、消費者にとって有益ではない主張を行っているケースです。
6. より悪いものと比較する
自社の製品と比べ悪いものを取り上げることで、問題点をすり替えているケースです。
7. 嘘をつく
環境に配慮していない製品にも関わらず、環境問題解決に効果があるなど明らかな嘘をつくことです。
参考:Sins of Greenwashing | UL Solutions
グリーンウォッシュの問題点
企業がグリーンウォッシュを行うことで、消費者や投資家にさまざまな問題を及ぼします。結果的には、環境保護のために行われている活動すべてに悪影響を及ぼす可能性もあるため、企業や消費者は、必ずグリーンウォッシュという行為の問題点について理解しておくことが大切です。
グリーンウォッシュによって引き起こされる問題点には、主に以下の4つが挙げられます。
環境問題への取り組みに不信感を抱かせる
企業が、コスト削減や利益を確保するために「環境に配慮して」といったみせかけの文言を使用することで、消費者が環境問題への取り組み自体に疑問を抱いてしまう問題があります。一度このような商品を購入した消費者は、「環境に配慮した商品」という表示自体に不信感を持ち、他の正しく環境に配慮している企業の商品にも疑いの目を向けてしまうでしょう。
結果的に、消費者が環境に配慮した商品を買い控えてしまい、環境問題への取り組みが遅れることが、グリーンウォッシュの大きな問題点のひとつです。
環境破壊に繋がる可能性がある
「環境に配慮して」といったウソのパッケージを使用している商品には、環境破壊に繋がるような悪質なものも存在しています。このような環境に配慮していない製品を購入してしまうことで、購入意図とは正反対である環境破壊に、消費者が意図せず加担してしまう可能性があります。
誰にもメリットがない
企業はグリーンウォッシュを行うことで、短期的には利益を得られるかもしれません。しかし、環境問題への意識が高まっている現代社会では、指摘を受けるリスクも高く、企業イメージを著しく損なうなど大きなリスクが伴います。一見、企業側にはメリットがあるように思われるグリーンウォッシュですが、長い目で見れば企業側にもメリットはありません。
環境問題への投資を鈍らせる
環境に配慮した活動を行っている企業に対して、優先的に投資を行う「ESG投資」など、環境問題に関わる金融市場は急激に拡大しています。この投資の拡大によって、企業はより一層環境問題に向けた取り組みを加速させており、プラスに進む大きな流れが生まれています。
グリーンウォッシュは、このような環境に配慮した投資家をも欺く行為です。グリーンウォッシュが蔓延すれば、ESGの市場が縮小し、正しく環境問題に取り組む企業に、資金が集まらなくなってしまうなどの問題が生まれます。
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消費者・企業が注意すべきポイント
環境問題への関心が高まる社会において、今後グリーンウォッシュに関する問題は増加していくと考えられます。グリーンウォッシュ問題に巻き込まれないために、消費者・企業それぞれの立場からグリーンウォッシュに注意することが大切です。
ここでは、消費者が商品を購入する際に注意すべきポイントと、企業がグリーン事業を始める際に注意すべきポイントについて紹介します。
【消費者】グリーンウォッシュに加担しないために注意すべき6つのポイント
一般消費者が、商品を一目見ただけでグリーンウォッシュを見抜くことは難しい場合もあります。誤ってグリーンウォッシュ商品を購入しないためにも、消費者自身が下記のような注意すべきポイントを参考に、調べる努力をすることが大切です。
1. 曖昧な表現
「エコ〇〇」「優しい〇〇」など、曖昧な表現がされている商品が販売されているケースも少なくありません。どのように環境に良いかや、どのような配慮を行っているのかなど、具体的な表現がされていない商品の購入を控えましょう。
2. 専門的な言葉
一般消費者に伝わりにくい専門用語が羅列されている商品には注意が必要です。そのような商品の中には、正しく環境に配慮されているものもありますが、消費者の知識不足を悪用し、誤った情報を記載している場合があります。
3. 抽象的な内容
「環境に優しい原材料を使用しています」などの表記のみがされており、具体的な成分や比率などが分からないものには注意が必要です。実際には、ほんの数パーセントしか使用されていないなどの問題が発覚した事例もあるため、気になるものは企業に直接確認しましょう。
4. 有害なもの
人体への健康被害が懸念されるものや環境に害があるものは、サステナブル(持続可能)のような表現がされていても、安全ではありません。表示や広告内容だけでなく、商品自体の本質も理解しておくことが大切です。
5. 認定や推薦などの表記
第三者機関の認証や、第三者の推薦などを大きく謳っている製品に注意しましょう。実際は環境にあまり関係のない機関や人物である可能性もあるため、購入前に機関や人物について調べることで、誤った商品の購入を防げます。
6. 企業の信頼度
商品を購入する前に、商品を生産している企業について知っておくことが大切です。どれだけよい内容が書いてある商品でも、生産している企業自体を信頼できなければ、何らかの問題がある可能性があります。
【企業】グリーンウォッシュと指摘されないために注意すべき5つのポイント
企業側も、悪意なくグリーンウォッシュを行ってしまうケースがあるほど、グリーン商品は扱いが難しいものです。企業は、「グリーンウォッシュだ」と指摘されないように、下記のような点に注意する必要があります。
1. 具体的な効果を示す
商品やサービスが環境に与える効果を具体的に示さずに、「エコ」や「自然」といった曖昧な表示をすることは、グリーンウォッシュをしていると疑われてしまう危険性があります。商品のパッケージや説明には、曖昧な表現を使用せずに、具体的な効果や数値を表示することが大切です。
2. 過去の事例を調べる
過去には、企業がグリーンウォッシュを指摘された例がいくつか存在しています。環境保護に関連した事業を始める際には、事前に自社の製品や取り組みが、過去の指摘事例と類似していないか調べることで、意図していないグリーンウォッシュ行為を防げます。
3. トレードオフを明確にする
環境に与える悪影響の部分が後々露見することにより、消費者からの信頼を失うなどのケースが少なくありません。環境に良いところだけでなく、悪影響についてもしっかりと公表することが、企業の信頼へと繋がります。
4. 自社製品が与える影響を知る
環境保護を目的とした事業であっても、いくつかの負の側面(環境に負荷を与えるようなこと)は、少なからず存在します。事業を始める際には、自社の製品やサービスが、環境にどのようなプラスとマイナスの影響を与えるのか事前に調査しておくが大切です。下記のような手法やサービスを利用することで、事業が環境に与える影響を調べることが可能です。
- ライフサイクルアセスメント(LCA)
製品やサービスのライフサイクル全体、またはその特定の段階において、環境に与える負荷を算出する手法です。
参考:ライフサイクルアセスメント(LCA) – 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア (nies.go.jp) - Trucostによる環境調査データ
Trucostとは、炭素排出量や環境に関するデータの収集、リスク分析を行っている調査会社で、14,000 社以上の環境への配慮や取組み内容の調査と評価を行っています。
参考:Trucost のリサーチ・プロセス(PDF)
5. 情報の発信方法に気をつける
環境に配慮した商品やサービスであることを消費者などに伝える場合には、グリーンウォッシュと誤解されないよう細心の注意が必要です。企業側には悪意がないものであったとしても、受け取り手が誤解を生むような表現を使用することで、消費者からグリーンウォッシュを行っていると指摘を受けてしまう危険性があります。
グリーンウォッシュの事例
過去には企業がグリーンウォッシュの疑いがあると指摘を受けたケースがあります。ここでは、2つの企業の事例について紹介します。
マクドナルド
2018年、マクドナルドは、環境保護への取り組みとして、イギリスとアイルランドの全1361店舗で、プラスチックストローを紙製ストローへと切り替えました。英国では、2020年までにプラスチックストローを廃止という政府の方針と消費者からの強い要望があり、プラスチック削減に向けたマクドナルドの取り組みは、当時注目を浴びていました。しかし、マクドナルドが切り替えた紙ストローは、紙が厚すぎてリサイクルができずに、一般ごみとして処理されていることが、英紙サンによる内部文書の公開によって露見。消費者かからグリーンウォッシュであると大きな非難を受けました。
以前まで使用していたプラスチックストローはリサイクル可能であったため、紙製ストローへの切り替えは環境問題への対策となっておらず、環境への負荷を高めるマイナス行為であるとの指摘を受けたのです。
参考:マクドナルド、紙製ストロー「リサイクルできず」 英国とアイルランドで導入 – CNN.co.jp
H&M
2019年、ファストファッションブランドであるH&Mは、オーガニックコットンやリサイクルポリエステルを使用し、サステナブルを前面的に打ち出した「H&M コンシャスコレクション」を発表。しかし、このH&Mの取り組みに対して、ノルウェーの消費者庁より持続可能性の根拠が乏しいとの指摘があり、グリーンウォッシュであるとの判断を受けてしまいました。
実際にH&Mは、この取り組みに対して「製品や生地に何%リサイクル素材が使われているのか」などの具体的な根拠を示していませんでした。
このH&Mの取り組みは、サステナブルな素材を使用していることに誤りはなく、企業としても消費を騙すような意図はなかったように思われます。しかし、過度に「サステナブルな商品」であるとの印象を消費者に植え付けるような、マーケティング手法自体がこの事例の大きな問題点といえるでしょう。
参考:【オピニオン】ブランドにとってグリーンウォッシュ以上の危機とは | Circular Economy Hub – サーキュラーエコノミー(循環経済)メディア (cehub.jp)
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
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- 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる
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概要
- 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
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特徴
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- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
社会において環境問題への意識が高まる一方で、それらを悪用する行為である「グリーンウォッシュ」が大きな問題となっています。グリーンウォッシュが蔓延すれば、環境問題の解決が遠のいてしまいます。グリーンウォッシュを増やさないためにも、企業や消費者はどのような製品や行為がグリーンウォッシュに当たるのかを知ることが必要です。
環境保護に繋がる商品は、表示や宣伝などの扱いが難しく、たとえ企業側に悪用するつもりが無かったとしても、間違った情報の発信によって消費者から指摘されてしまえばグリーンウォッシュになってしまいます。
環境に関する商品やサービスを扱う際は、注意すべきポイントをしっかりと押さえ、持続可能なビジネスや消費行動を行うことが大切です。
SDGsのはじめの一歩を支援するSDGsイベント・研修とは?
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この記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
SDGsコンパスは、SDGsに踏み出したい企業や自治体様の「はじめの一歩」を後押しするメディアです。SDGsの目標やSDGsの導入方法などのお役立ち情報を発信していきます。