社会

日本と世界の差別問題を考える|解決に向けてSDGsを達成しよう

世界にはさまざまな差別問題が存在しており、被害に苦しんでいる人々が大勢います。私たちの住む日本も、例外ではありません。「差別」の定義は法律や条例によっても異なりますが、誰かに対して不当な扱いをすることをいいます。差別のない世界を実現するためには、まずはどのような差別問題が起こっているのかを知ることが大切です。

本記事では、日本の主な差別問題と、世界の差別問題を紹介します。そして、世界から差別をなくすことを目標の一つとして掲げているSDGsについても解説します。

 

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日本に存在するさまざまな差別問題

私たちの身近にも、さまざまな差別が存在しています。ここからは、日本に存在する主な差別問題を紹介します。

性別

「男は仕事、女は家庭」といった固定観念が日本にはいまだに根強く残っており、特に女性は、性別を理由に生き方や働き方の選択肢が狭められてしまうことがあります。

2022年7月に、「ジェンダー・ギャップ指数2022」が公表されました。世界経済フォーラムが「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野のデータから国ごとの男女格差を測り、ランク付けしたものです。これによると、日本は146ヵ国中116位、総合スコアは0.65でした。これは、先進国のなかで最低レベルであるだけでなく、アジア諸国のなかで見ても、韓国や中国、ASEAN諸国よりも低い結果です。

4つの分野のなかで特にスコアが低かったのが、「政治」の分野です。衆議院の女性議員比率を見てみると、2022年3月時点で9.7%。190ヵ国中168位と非常に低い水準となっています。「経済」の分野においても、女性管理職の少なさが指摘されています。また、OECDの統計による日本の男女間賃金格差は22.1%で、OECD諸国加盟国中ワースト3位と、こちらも低い水準です。なお、「教育」については146ヵ国中1位、「健康」は63位と、世界トップクラスとなっています。

ほかにも、家庭内暴力や職場におけるセクシャル・ハラスメントなど、力の弱い女性に対する暴力も存在しています。

男女平等の理念は、日本国憲法に明記されています。男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法などの法の整備も進んでいるものの、まだまだ男女間には大きな格差があるのが現状です。

参考:世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2022」を公表|男女共同参画局

子ども

スマートフォンが普及したことなどもあり、いじめの方法や手段が外から見えにくくなってきています。発見・対処が遅れて、子どもが命を落としてしまった事案もあります。文部科学省の調査では、2020年の小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は517,163件となっており、多くの子どもたちがいじめに悩み、苦しんでいます。

また、教育職員による体罰も重大な問題です。教育職員による体罰は学校教育法11条で禁止されていますが、2020年度は485件もの体罰の発生が報告されています。

家庭内の児童虐待もあとを絶ちません。厚生労働省の調査では、児童虐待相談対応件数は増え続けており、2021年度は207,659 件(速報値)と、過去最多を更新しました。

被害者である子どもは、大人に相談するのをためらってしまうことが多く、表面化する頃には深刻な事態となっているケースも多いのです。

高齢者

2019年10月1日時点の日本の高齢化率は28.4%。現在の日本は、約3.5人に1人は65歳以上の高齢者という状況です。少子高齢化が進行するなかで、高齢者に対するさまざまな差別が社会問題となっています。

たとえば、高齢者に対する職業差別です。労働力人口を確保するために、政府は高齢者雇用対策に力を入れています。しかし、「自分の能力を発揮する機会が少ない」と感じている高齢者は多いのです。

また、介護現場における身体的・精神的な虐待や、高齢者の財産を家族が無断で処分するといった経済的な虐待も発生しています。高齢者をターゲットとした詐欺や悪徳商法もあとを絶ちません。

参考:1 高齢化の現状と将来像|令和2年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府 

障害者

障害を理由とする差別をなくし、すべての人に平等な機会・チャンス・扱いを保証するため、2013年に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が成立しました。この法律では、次の2種類の差別を禁止しています。

【不当な差別的取り扱い】

機能障害や障害に関連することを理由に、区別、排除、制限をすることです。

  • 例1:障害があることを理由に、アパートへの入居を断られた。
  • 例2盲導犬を連れていることを理由に、レストランへの入店を拒否された。

【合理的配慮を行わないこと】

障害がある人もない人と同じような機会を確保できるように変更や調整をすることを合理的配慮といいます。これをしないことも、差別に該当します。ただし、事業者などにとって多額の費用がかかるような場合は除きます。

  • 合理的配慮の例1:資料の内容を知的障害がある人でも理解しやすいように、漢字にはルビをふり、わかりやすい文章で作成する。
  • 合理的配慮の例2:車いすを使用する人が施設を利用しやすいように、入り口にスロープを設置する。

しかし、まだまだ障害者に対する差別はなくならず、平等な機会を確保できていないのが現状です。

参考:障害者差別解消法ってなに? – 障害者情報ネットワークノーマネット(PDF)

性的マイノリティ

性的指向(恋愛・性愛がいずれの性別に向いているか)や、性自認(自己の性別をどう認識しているか)は、人それぞれです。たとえば、性的マイノリティを表す総称の一つに「LGBT」があります。Lは同姓を好きになる女性「レズビアン」、Gは同姓を好きになる男性「ゲイ」、Bは両性を好きになる人「バイセクシャル」、Tはこころとからだの性が一致しない人「トランスジェンダー」の頭文字です。こうした人々は、少数派(マイノリティ)であるために、差別や偏見を受けやすい傾向があります。

こころとからだの性が一致せず、社会生活に支障をきたす場合は、「性同一性障害」と診断されることがあり、このことを理由に好奇の目にさらされる、昇進を妨げられるなどの差別もあります。

また、多くの人は自身が性的マイノリティであることを明かさずに生活をしています。世の中には「LGBTの人は自分の周りにはいない」といった無意識の思い込みや偏見(アンコンシャスバイアス)も存在しているため、性的マイノリティの当事者たちは、さまざまな場面で困りごとに直面しているのです。

同和問題

同和地区と呼ばれる地域の出身であるというだけで、経済的・社会的・文化的に低い位置に置かれる、結婚を反対される、職場などで不利な扱いを受けるといった差別が存在しています。これは日本特有の人権問題で、部落問題ともいわれています。

内閣府が2017年に実施した調査によると、近年はインターネットにおいて、個人または不特定者を対象とした誹謗中傷が発生していることも明らかになっています。

また、同和問題に関する人権侵犯事件の新規救済手続開始件数は、2018年は92件、2019年は221件、2020年は244件と増加傾向にあり、いまだに偏見・差別意識が残っているのが現状です。

参考:部落差別(同和問題)を解消しましょう – 法務省

アイヌの人々

近世以降の同化政策や高齢化などにより、アイヌの人々の固有の言語や、伝統的な儀式・祭事、口承文学(ユーカラ)などの独自の文化を保存・伝承していくための基盤が失われつつあります。

また、アイヌの人々に対する理解が不十分であるため、就職や結婚といった場面での偏見や差別も、依然として存在しています。

外国人

日本で生活する外国人は増え続けており、2019年12月末時点での外国人登録者数は約215万人と、過去最高を記録しました。このようななかで、言語や宗教、文化、習慣などの違いから、外国人に対するさまざまな差別が発生しています。

たとえば、外国人であることを理由にアパートへの入居や公衆浴場の利用を拒否される、外国人についての根拠のないうわさが広まるなどです。

また、近年は「ヘイトスピーチ」も大きな問題になっています。ヘイトスピーチとは、特定の国の出身者やその子孫に対する一方的な内容の言動のことで、特定の民族や国籍の人々の排除をあおり立てるものや、危害を加えようとするもの、著しく見下すようなものなどがこれに該当します。このような言動は当然許されるものではなく、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ法)」で禁止されています。

参考:ヘイトスピーチ、許さない。 – 法務省

HIV感染者・ハンセン病患者

エイズウイルス(HIV)は、性的接触に注意すれば日常生活ではほとんど感染することはありません。また、ハンセン病についても、ハンセン病の原因である「らい菌」は感染力が非常に弱い細菌であり、感染したとしても発病することは極めてまれです。

これらの感染症に対する知識と理解が不十分であるために、患者や元患者に対する差別がいまだに存在しています。たとえば、結婚を反対される、就職の場面や職場において不利な扱いをされるなどです

2003年に、熊本県内のホテルでハンセン病療養所入所者に対して宿泊を拒否するという事案が発生しました。このような差別をなくすために、2008年に,「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」が成立し、翌年の4月より施行されています。

犯罪歴がある人やその家族

刑を終えて出所した人や、その家族に対する偏見や差別が存在しています。たとえば、就職の場面で差別を受ける、アパートへの入居を拒否されるなどです。

出所した人が社会復帰をするためには、本人に強い更生意欲が必要なのはもちろんですが、周囲の理解と協力が欠かせません。一人ひとりが思いやりの心を持つことが大切です。

犯罪被害者やその家族

犯罪の被害にあった人やその家族が、犯罪そのものの被害や後遺症などの苦しみのほかに、二次的な被害を受けることがあります。たとえば、報道によりプライバシーが侵害される、根拠のないうわさや誹謗中傷を受けるといったケースです。

このような人々の権利や利益を保護するために、2004年に「犯罪被害者等基本法」が制定されました。

インターネット上の人権侵害

インターネットの普及により、SNSいじめ、ヘイトスピーチを助長するような投稿、誹謗中傷、インターネット上の情報に起因する犯罪やトラブルなど、さまざまな問題が発生しています。

内閣府の調査によると、低年齢層(0~9歳)の子どもの74.3%がインターネットを利用しているという結果が出ています。インターネットを利用し始める時期が低年齢化しているため、子どもが加害者や被害者となり、トラブルに巻き込まれるケースも増えています。

特に近年問題となっているのが、児童ポルノです。いったんインターネット上に流出した画像はすべて回収するのが極めて困難となり、被害児童は将来に渡って苦しむことになります。

参考:令和3年度少年のインターネット利環境実態調査 調査結果(概要)– 内閣府(PDF)

ホームレス

自立の意思がありながらも、やむを得ない事情でホームレスとなった人々が日本には多数存在しており、そのような人々に対する差別や人権侵害の問題が発生しています。たとえば、通行人から暴力を受ける、じろじろ見られる、避けられる、嫌がらせをされるなどです。

厚生労働省の調査によると、2021年度の全国のホームレス数は3,824人でした。政府はホームレスの自立を図るためにさまざまな取り組みを実施しており、近年ホームレス数は減少傾向にあるものの、いまだに多くの人々が健康的で文化的な生活ができずにいます。

参考:ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について – 厚生労働省(PDF)

その他の差別問題

ここまで紹介した以外にも、さまざまな差別が存在しています。たとえば、震災等の大きな災害に起因する偏見や差別です。不確かな情報を鵜呑みにして他人を傷つけたり、根拠のないうわさを発信したりすることは、重大な人権侵害であるだけでなく、避難や復興の妨げにもなります。

また、近年は新型コロナウイルス感染症や、ワクチン接種に関連した誤解や偏見、差別もあります。

このような問題をなくすためには、あふれる情報のなかから正しい情報を見極めて冷静に行動すること、そして一人ひとりが思いやりの心を持つことが大切です。

 

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世界の差別問題

世界にも、国や地域ごとにさまざまな差別問題があります。ここではその一例として、アメリカの人種差別と、インドのカースト制度を取り上げます。

アメリカの人種差別

アメリカでは、黒人に対する差別がいまだに根強く残っており、黒人を被害者とした殺害事件や暴行事件が後を絶ちません。近年大きなニュースとなったのが、2020年5月にミネアポリスで発生したジョージ・フロイドさん暴行死事件です。白人の元警官が、被害者の黒人男性フロイドさんの首を長時間にわたり膝で押さえつけ、暴行死させたというものです。

この事件をきっかけに、世界中で「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」をスローガンに掲げた抗議運動が広がりました。この抗議運動には黒人だけでなく白人も多く参加しており、人種を超えて差別の撲滅を訴える動きが広がっています。

参考:「差別と闘う」声明相次ぐ 米黒人暴行死の有罪評決で – 日本経済新聞

インドのカースト制度

インドには、かつてカースト制度という身分制度がありました。カースト制度では、人々は以下のいずれかに分けられていました。

  • バラモン(司祭階級)
  • クシャトリア(王侯・武士階級)
  • バイシャ(庶民階級)
  • シュードラ(隷属民)
  • 上記4つのいずれにも含まれないアウトカースト(不可触民)

ブッダは、このカースト制度を絶滅させ、人々の平等を目指して仏教を開いたとされています。カースト制度は現在憲法でも禁止されていますが、いまだに根強く残っているのが現状です。

参考:カースト制度の残るインドで最大の平等を知る|NIKKEI STYLE

差別問題の解決に向けてSDGsを達成しよう!

近年世界中で取り組みが広がっているSDGsも、差別の撲滅を目標の一つとして掲げています。SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2030年までに持続可能な世界を実現するために達成するべき目標のことです。17の目標と169のターゲットから構成されています。

SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された「我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」という文書に記載されています。この文書のなかで、2030年までに目指すべき世界像が以下のように示されています。

人権、人の尊厳、法の支配、正義、平等及び差別のないことに対して普遍的な尊重がなされる世界
引用元:仮訳「我々の世界を変革する: 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」 – 外務省(PDF)

また、17の目標別に見ると、差別問題は、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標5「ジェンダー平等を達成しよう」目標10「人や国の不平等をなくそう」などに深くかかわります。

一人ひとりが思いやりの心を持ち、行動を起こさなければ、SDGsを達成することも、差別問題を解決することもできません。2030年までに持続可能でよりよい世界を実現するために、身近な問題に目を向け、意識を変えていきましょう。

 

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まとめ

私たちの身近にも、さまざまな差別が存在していることがわかりました。同じように、世界にも国や地域ごとに特有の差別問題があり、多くの人々が苦しめられています。

法律や制度が整備されても、一人ひとりの差別意識がなくならなければ、世界から差別をなくすことはできません。意識を変えるためには、まずは差別問題を正しく知ることが大切です。自分の周りにどのような差別問題があるのか、目を向けるところから始めてみましょう。

 

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あらたこまち

この記事を書いた人

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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