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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や必要性、企業の取り組み事例3選を紹介

近年、特にビジネスシーンにおいて、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が注目されています。DXとは、簡単にいうと「デジタル技術を活用した変革」です。

今回は、DXの意味や定義、必要性、日本のDXの現状と課題を、わかりやすく解説します。あわせて、20226月に公表された「DX銘柄2022」の中から、企業のDX推進の取り組み事例も紹介します

 

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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

デジタルトランスフォーメーションとは、デジタル技術を活用して、企業の制度や文化、ビジネスモデルなどを変革する取り組みのことです。英語では「Digital Transformation」となりますが、略称は「DT」ではなく「DX」と表されます。これは、英語表記では「trans」が「x」に置き換えられる習慣があり、「Digital X-formation」となるためです。

DXには、複数の定義があります。そもそもDXは、2004年に、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授により提唱された概念です。エリック・ストルターマン教授は、DX「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義しています。

また、総務省は「令和3年版 情報通信白書」で、経済産業省は『「DXの指標」とそのガイダンス』などの資料で、それぞれ異なる文言でDXを定義しています。いずれも、共通しているのは、「企業を取り巻く環境の変化に対応するために、デジタル技術の力で変革を起こし、企業の競争優位性を確立する」ということです。

デジタイゼーションとデジタライゼーション

DXを理解するために押さえておきたい言葉があります。デジタイゼーション(Digitization)と、デジタライゼーション(Digitalization)です。それぞれの意味を比較してみましょう。

デジタイゼーション

物理的なデータをデジタルデータ化すること。

例:生産性向上のために製造装置を導入する

デジタライゼーション

業務・製造プロセス全体をデジタル化すること。

例:製造プロセスのシミュレーションができるソフトウェアを導入する

デジタルトランスフォーメーション

デジタル技術を活用して新しいイノベーションを創出したり、ビジネスモデルを変革したりすること。

例:製造の遠隔化

IT化からDX化へ

IT化」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。IT(Information Technology)とは、コンピュータやネットワーク通信技術の総称です。

IT化にも、さまざまな捉え方があります。たとえば、Microsoftでは、前項で紹介したデジタイゼーションとデジタライゼーションの2つがIT化であり、仕事の工数や費用を削減するために行うものとしています。「IT化はDXとイコールではなく、DXを推進するために欠かせないもの」という捉え方です。

しかし、経済産業省の定義では、デジタイゼーションもデジタライゼーションもDXの範囲に含まれています。経済産業省は、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3つの段階に分けて考えることで、DXの具体的なアクションを設計しやすくなるとしています。

このように、IT化やDXの定義は複数存在していますが、いずれにしても、最終的にDXが目指すのは「変革」であるということです。

参考:DX 化 (デジタル トランスフォーメーション) と IT 化の違いとは – Microsoft for business

 

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なぜ、DXが求められているのか

ただデジタル技術を取り入れるだけでなく、新たなイノベーションの創出や、ビジネスモデルの変革まで求められているのはなぜなのでしょうか。ここからは、企業がDXを推進するべき2つの理由について解説します。

2025年の崖」に対応するため

2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に公表した『DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~』の中で使われた言葉です。2025年までに企業がレガシーシステムから脱却できなかった場合に発生する経済損失のことを意味します。経済産業省は、2025年まで複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残っていた場合、最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるとしています。

これは、一体どういうことなのでしょうか。まずは、現在多くの企業が抱えている課題を見てみましょう。

  • 既存システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化しており、データを十分に活用できていない。このような中で新たなデジタル技術を導入しても限定的な効果しか得られず、ビジネスモデルの変革までつながらない。
  • 既存システムがビジネスプロセスに密統合しており、既存システムの問題解消のためにはビジネスプロセス自体を刷新しなければならないため、現場の負担が大きくなってしまう。
  • 既存システムの運用・保守にも多くの資金や人材が割かれているため、新たな技術を導入する余裕がない。

このような課題があり、なかなかDXが進んでいないというのが日本の現状です。

これらを放置すれば、既存システムの運用・保守コストは年々増大します。それだけでなく、これまでシステムの管理・運用を担当してきた人材が退職し、十分に管理ができる人材がいなくなると、セキュリティ上のリスクも高まる可能性があります。また、既存システムのサポートや部品生産が終了すれば、ビジネスプロセスにも影響が出てしまうでしょう。

このようなトラブルを避けるために、変化に柔軟に対応できる新たな体制づくりが求められているのです。

競争力を維持・強化するため

デジタル技術が進歩したことで、消費者の購買行動が変化しています。そのため、既存のビジネスを維持するだけでなく、新たなイノベーションを生み出していく必要があります。

かつては食品や衣服など、あらゆるものを実店舗で購入することが一般的でした。しかし、インターネットやスマートフォンが普及したことで、オンラインショップと実店舗を使い分けたり、商品やサービスを「所有する」のではなく、「一定期間使用する」ために料金を支払う「サブスクリプションサービス」を利用したりする人が増えています。このような消費者のニーズに合わせて、これまでにない新たな商品やサービスが次々と誕生しています。

DXを推進する目的は、「企業の競争優位性を確立すること」です。競合他社との差別化を図り、企業の競争力を維持・強化するためには、デジタル技術の活用が欠かせなくなってきているのです。

また、少子化の進行により、1995年以降日本の生産年齢人口(15歳~64歳)は減少傾向にあり、人材の採用に苦戦する企業も多くなっています。採用力を強化していくことももちろん大切ですが、デジタル技術を活用して業務を効率化・省人化することで、少ない人数でも生産力を維持・向上させることが可能です。今後の労働力を補うためにも、DXの推進は必要であるといえるでしょう。

参考:総務省|令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少

日本DXの現状と課題

総務省が2021年に公表した調査結果を見ると、「DXを実施しておらず、今後も取り組む予定がない」という企業の割合は約6割となっています。企業規模や業種、地域によってばらつきはありますが、まだ日本は、十分にDXの取り組みが広がっていないのが現状です。

なぜ、DXが進まないのでしょうか。ここからは、多くの日本企業が直面している2つの課題を解説します。

人材が不足している

総務省の「令和3年版 情報通信白書」では、日本、アメリカ、ドイツの企業に「DXを進める上での課題」を尋ねた結果が紹介されています。日本企業で最も多かった回答は「人材不足」(53.1%)、次いで「費用対効果が不明」(32.8%)、「既存システムとの関係性」(25.8%)で、「人材不足」の割合が他2つの回答と比較しても非常に高くなっています。

出典:第2節 企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーションの現状と課題|総務省

 

また、同資料ではアメリカとドイツの調査結果についても紹介されており、DXを推進する上で「人材不足」が課題であると回答した割合は、アメリカは27.2%、ドイツは31.7%でした。海外と比べても、日本は圧倒的にDXを推進するための人材が不足していることがわかります。

では、DXを推進するためにはどのような人材が必要なのでしょうか。まず欠かせないのが、AIやビッグデータといったデジタル技術を使いこなせる人材です。経済産業省の資料によれば、2018年時点で、IT人材の需要は供給を22.0万人上回っています。すでに大きな需給ギャップがある状況ですが、これが2030年までに、多く見積もって78.7万人まで拡大する可能性があるとされているのです。

日本では、デジタル技術に強い人材がICT企業に多く配置されていることが、以前からの課題となっています。また、DXを推進するためには、ほかにもDXの主導者や、新たなビジネスを企画・立案できる人材なども求められます。企業は、採用・育成の両方に力を入れて、DX推進のための人材を確保していく必要があるでしょう。

参考:ーIT 人材受給に関する調査 ー 調査報告書 – 経済産業省(PDF)

変革への危機感が低い

経済産業省の資料「DXレポート2中間取りまとめ(概要)」では、日本には抜本的な変革ではなく、現在のビジネスモデルの継続を前提とした変革を望む企業が多いというデータが紹介されています。

また、総務省の「令和3年版 情報通信白書」では、多くの企業がDXを推進する上で「人材不足」を課題として感じているものの、具体的にどのような人材が不足しているか尋ねた際には、「そのような人材は必要ない」と回答した企業が、日本はアメリカ、ドイツに比べて多くなっています。この回答比率が特に高かったのが、「UI・UXに係るシステムデザインの担当者」(10.8%)、「AI・データ解析の専門家」(12.2%)です。

また、デジタル人材の確保・育成に向けては、採用力の強化よりも「社内・社外研修の充実」に取り組む企業が多く(47.3%)「特に何も行っていない」との回答比率も高くなっています(18.5%)

これらのデータから、変革への危機感が低いことも、日本企業のDXがなかなか進まない原因の一つであると考えられます。経済産業省は、ITシステムだけでなく企業文化(固定観念)を変革してビジネスを変えていかなければ、デジタル競争の敗者になると警鐘を鳴らしています

日本企業のDX推進事例3

2020年より、経済産業省は、東京証券取引所及び独立行政法人情報処理推進機構と共同で、DXを推進し、ビジネスモデルおよび経営の変革にチャレンジし続けている企業を「DX銘柄」として選定しています。20226月に公表された「DX銘柄2022」の中から、3社の取り組みを紹介します。

参考:「DX銘柄2022」「DX注目企業2022」を選定しました! – 経済産業省

1.株式会社アシックス

株式会社アシックスは、202010月に、将来目指す姿として「VISION2030」を策定しました。この中で、すべての事業ドメイン(企業の本業となる事業)に共通する中核テーマの一つとして、「デジタル」を掲げています。

株式会社アシックスは、これまでにもバーチャル空間でのマラソン大会や駅伝レースを開催してきました。このようなデジタルを通じた新たなランニング体験の創出を目指し、20222月に、アメリカ・カリフォルニア州に本社を置くZwift社と、パートナーシップを締結しています。

Zwift社との取り組みの第一弾として、20226月に、サイクリング・ランニングトレーニングアプリ「Zwift」上で、株式会社アシックス独自のワークアウト「ASICS Pro Series(アシックスプロシリーズ)」を、期間限定で開催しました。参加者は、アプリ内で最新シューズの着用や、株式会社アシックスが契約するアスリートのアバターと一緒にトレーニングができます。

参考:完了するとアバター用のランニングシューズなどが獲得できる! – 株式会社アシックス コーポレートサイト

2.旭化成株式会社

旭化成株式会社では、2021年度に「DX Vision 2030」を策定し、「デジタル導入期」「デジタル展開期」「デジタル創造期」「デジタルノーマル期」の4つのフェーズに分けて、段階的にDXの推進に取り組んでいます。

  1. 2018年~:デジタル導入期
    マテリアルズ・インフォマティクス(※)、生産技術革新など、機能別DXの基礎を固めるためにグループ全体で約400件のプロジェクトを立ち上げました。
  2. 2020年~:デジタル展開期
    全社にDXの範囲を拡大していくために、さまざまな部門のデジタル人材を集めてデジタル共創本部を設立しました。DX Vision 2030の策定もこの段階で実施しています。
  3. 2022年~:デジタル創造期
    現在はこの段階です。ビジネスモデルの変革や、無形資産の価値化、新規事業創出を進めています。また、独自のオープンバッジ制度の運用や、DXの成功事例を学ぶ機会の提供など、デジタル人材の育成にも力を入れています。
  4. 2024年~:デジタルノーマル期
    全社員がデジタル活用のマインドセットで働ける状態です。
※マテリアルズ・インフォマティクスとは……デジタル技術を活用して、材料開発の効率化を図ること。

参考:戦略 | デジタルトランスフォーメーション | 企業情報 | 旭化成株式会社

3. ENEOSホールディングス株式会社

ENEOSホールディングス株式会社では、2025年までの目標として「既存事業の徹底的な最適化」(DX Core)、2030年までの目標として「新ビジネス・新顧客基盤の積極創出」(DX Next)を掲げ、DX化を進めています。今回は、さまざまな取り組みの中から、デジタル(DX)人材育成の取り組みを紹介します。

ENEOSホールディングス株式会社では、次のとおりデジタル人材に求める知能や能力を定義しています。

  • AAI、アナリティクス(AI Analytics
  • B:ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence
  • C:サイバーセキュリティ(Cyber Security
  • D:デザイン思考(Design Thinking

そして、「基礎」と「専門」のレベル別に、これらを習得するための研修プログラムを全社に展開しています。2021年度には、デジタルリテラシーと基礎力の底上げを目的とした「基礎」レベルの研修を約1,000名が受講しました。また、「専門」レベルの研修を受講した社員のうち32名が、高度な資格を取得しました。

参考:DXの取り組み|経営方針|ENEOSホールディングス

 

SDGs研修・体験型SDGsイベント

SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)

 

概要

  • SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
  • 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
  • オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化

特徴

  • 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
  • チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
  • 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる

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【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)

概要

  • 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
  • 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
  • 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能

特徴

  • あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
  • 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
  • ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進

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【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)

概要

  • 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
  • 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
  • すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント

特徴

  • ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
  • 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
  • ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進

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まとめ

DXの定義にはさまざまなものがありますが、ただデジタル技術を導入して業務を効率化するだけでなく、デジタル技術を活用して、企業の制度や文化、ビジネスモデルを変革することをいいます。

DXを推進するためには、デジタル技術を使いこなせる人材だけでなく、DXという一つの大きなプロジェクトを牽引できる人材も必要です。少子化が進行している日本では、人材の確保が厳しい状況が続いていますが、採用・育成の両方に力を入れ、DX推進のための人材確保に取り組んでいきましょう。

経済産業省は、2025年までにレガシーシステムから脱却できなければ、大きな経済損失が発生し、セキュリティ上のリスクも高まるとして、警鐘を鳴らしています。変化の激しい時代において企業が競争力を維持・向上させていくためには、デジタル技術の活用は不可欠です。まずはDXの必要性を理解し、他社の事例も参考にしながら、DX推進のための取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。

 

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あらたこまち

この記事を書いた人

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

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