社会

SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」の概要と取り組みをわかりやすく解説

SDGsについて興味があるけど具体的に何をすればいいの?」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。

SDGsには17の目標があり、まずはそれぞれの目標について理解を深め、「自社の事業と関連が深そうな目標は何か?」を見定めることが大切です。

全部で17あるSDGsの目標のうち10・人や国の不平等をなくそう」は、おもに「不平等や差別」へ目を向けた目標です。

 

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SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」とは

SDGs10番目として設定されている「人や国の不平等をなくそう」は、文字通りすべての人、すべての国における不平等な状況を解消するための目標です。

近年は差別の改善などへ向けて国々が声をあげたり、実際に支援したりしています。これにより、差別や、弱い立場にある人の区別などが少しずつ問題視され、それぞれの問題の撲滅が目指されている状況です。

しかし、まだまだ不平等は根強く多方面で存在しているのが現状です。とくに、開発途上国においては、教育や医療、保険、金融サービスなどの面で格差が存在しています。結果的に、貧困を招くという負の連鎖に陥ってしまい、貧困層や貧困国における「貧困脱出」が遠ざかってしまうのです。

国内および国家間の不平等を是正する

経済や社会、そして環境が持続可能な形で成り立つように開発を進めなければ、不平等の解消は難しく、同時に貧困からの脱出も遠い道のりとなることが想定されます。

所得における不平等の問題については、国内および国家間では縮小傾向にあり、データが入手できる国に限り(60か国)においては、1人あたりの所得が国別で見た平均額を上回っています。

一層の不平等を解消するためにも、社会的弱者などにフォーカスを当て、だれもが平等に生きられる政策づくりが求められます。

数字で見る「人や国の不平等」の現状

人や国の不平等は、開発途上国を中心に根深いものとなっています。まず、貧困層世帯の子どもは、富裕層の子どもよりも5歳未満で死亡する確率が高いのです。

また、農村部の妊産婦の死亡率も高く、出産中に死亡する確率は都市部に住む妊婦の3倍にものぼります。

また、性別によって所得の不平等が生まれているという問題もあります。日本でもいえることですが、開発途上国でも、男性の収入の方が高い傾向にあります。実際、女性の収入は平均所得のわずか50%未満で暮らす可能性も高いとされています。

 

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SDGsの目標10における7つの達成目標

SDGsの目標10を実現するにあたり、以下の7つの達成目標が設定されています。

1.所得の低い人々の所得の増え方を上昇させる

  • “各国において、所得の低いほうから40%の人々の所得の増え方が、国全体の所得の増え方の平均値を上回るようにする。”

SDGs目標10の達成目標の1つが、「貧困者における所得の増え方の改善」です。貧困者のなかでもさらに貧困である層に目を向け、2030年までに所得の増え方が国全体の平均を上回るようにします。また、それが一時的なものとならないよう、増大させたペースはそのまま保つことが目標です。

2.すべての人が社会的、経済的、政治的に取り残されないようにする

  • 2030年までにすべての人が能力を高め、社会的にも経済的にも政治的にも取り残されないように進める。”

年齢や性別、障がいの有無、人種など、あらゆる部分で差別や不平等が起きている状況です。この達成目標では、すべての人が自身の状況に左右されることなく、社会的・経済的・政治的に取り残されないようにすることを目指しています。

国によって差別を受けやすいとされる女性や人種、宗教の違いなどはもちろんのこと、社会的に弱い立場にある人々も対象です。

3.差別的な法律や政策、ならわしをなくす

  • “適切な法律や政策、行動を進めて、人々が平等な機会を持てるようにする。”

まだまだ根絶の難しい差別。一部の国では、差別的な法律や政策が浸透しているケースもあり、すべての人が平等であるとは言い切れない状況に陥っていることもあります。

SDGsの目標10を達成するためには、個人の生まれや背景などに一切左右されることなく、平等なチャンスを手にしたり、所得の格差を縮小させたりすることが重要です。

4.財政や賃金、社会保障などの政策をとる

  • “財政や賃金、社会保障などで適切な政策を行い、人々の不平等を縮小し、徐々に大きな平等を目指していく。”

開発途上国などでよく見られる不平等には「財政の問題」「賃金の問題」「社会保障の問題」などが挙げられます。政策が進んでいないこともあり、厳しい生活を強いられている貧困者は少なくありません。

この達成目標は、そうした不平等を平等な状態へと導いていくことです。年齢や性別、人種などに関わらず、大きな平等を実現するために行動を起こす必要があります。

5.金融に関するルールを設け、ルールが守られているかも監視する

  • “世界の金融市場と金融機関のルールを適切につくるだけではなく、ルールが守られているかを監視するシステムを構築する。”

金融に関するルールを設けることは、不平等をなくすうえで重要な取り組みです。一部の人だけが得をしたり、不正が許されたりするようでは、平等とは程遠いといえます。

ルールを設けて終わりではなく、「ルールが守られているか」を継続的に確認するための仕組みづくりも重要でしょう。

6.発展途上国の参加や発言を増やす

  • “世界経済や金融制度について何らかの取り決めを行う際には、開発途上国の参加や発言を増やし、だれもが納得できる制度をつくる。”

世界ではあらゆる取り決めが多数存在していますが、開発途上国の参加や発言は少ないといわれています。先進国が先導して進んでしまうこともあり、開発途上国の需要に合わない方向性で決定してしまう可能性もあるのです。

こうした開発途上国に対する不平等を解消するためにも、世界規模で物事を決めることが重要です。開発途上国が積極的に参加できる環境を整える必要があります。

7.安全に移住することや人々の移動が進められるようにする

  • “計画にもとづいて管理された移住に関する政策を実施するなど、必要な取り組みを行いながら、混乱することなく安全かつ責任のある形での移住・人々の移動を進める。”

事情により移住をすることになったり、住む場所を移動したりしなければならないケースがあります。しかし、それは必ずしも安全とは言い切れないのが現状です。

たとえば、開発途上国においては、移住や人々の移動では命がけとなることもあります。紛争地帯であれば武装者に攻撃されたり、災害の多い地域を長時間かけて移動しなければならなかったりします。安全が確保されたうえで移住や移動ができるように、政策を実施しなければなりません

達成するための具体的な方法3

SDGsの目標10を達成するためには、世界の貿易、開発途上国に対する投資、移住労働者の金銭的負担など、さまざまな点に着目する必要があります。

1.開発途上国に対する貿易において、先進国とは異なる特別な扱いをする

開発途上国やアフリカ諸国などの貧困国に対して、特別な扱いをする必要があります。開発途上国の場合、先進国と同じ条件では貿易が難しくなってしまう可能性が高いのが現状です。世界貿易機関(WTO)協定にしたがって、先進国とは異なる扱いをする必要があります。

貿易は、国の経済成長や、人々の所得の向上などに直結する部分なので、開発途上国が積極的に貿易を行えるようにしなければなりません。

2.開発途上国を中心に援助や投資を行う

開発途上国である国や、小さい島国など、資金が必要であると判断できる国へ十分な援助・支援が行き届くようにする必要があります。

先進国が積極的に手を差し伸べ、開発途上国の経済・社会の発展をサポートし、福祉の向上を促すことは、平等な世界へ近づけることにつながります。

ちなみに、支援においては資金のほかにも技術などの情報提供も含まれます。

3.移住労働者の金銭的負担を軽減する

2030年を目途に、出稼ぎなどの移住労働者が「自分の国にお金を送るときにかかる費用」が、送る金額の3%以下になるようにすることが必要です。

送金方法はさまざまなものがありますが、基本的にどのような手段であっても中間マージンのような形で+αの金額が必要となります。しかし、移住労働者にとって金銭的な負担は深刻な問題です。できる限り少ない割合にとどめるための仕組みづくりが求められます。

日本における取り組み事例

SDGsの目標10は、多くの日本企業が取り組む目標です。企業の規模や業種を問わず、積極的に参画しているので、自社の取り組みの参考になりそうなものはないかチェックしてください

1.【企業】ウエーブ

ウエーブが実施しているSDGs目標10の取り組みは、倫理や社会規範などの遵守の徹底です。公正かつ誠実な競争で事業を展開していくために、従業員にはコンプライアンス研修の機会を提供しています。

また、すべての従業員が社内の制度を活用できるよう、行動計画を定めて「育児休業取得」の推進を図っています。働き方の改善においては、育児のほかにも「介護している従業員への配慮」「65歳以降の継続勤務」「限定職・専門職などの自由な選択」など、あらゆる面で実現しています。

出典:持続可能な開発目標(SDGs)への取り組み | 株式会社ウエーブ会社概要サイト

2.【企業】花王

花王のSDGs目標10の取り組みはおもに「自社製品」にスポットを当てた内容となっています。たとえば、ユニバーサルデザインを採用し、特殊な設計をしなくてもすべての人が利用できるような工夫が施されています。

また、車いすで生活している人でも使いやすいフロアワイパーの設計などもSDGsの考え方に沿った製品であるといえます。

出典:花王 | ユニバーサル プロダクト デザイン

3.【企業】スタイル・エッジ

SDGsの目標10に取り組む企業の1つが「スタイル・エッジ」です。あらゆる事業を展開する同社ですが、目標10においては「事業を通じて人々の知識格差をなくし、社会的弱者のいない世の中へ。1人でも多くの人が安心して暮らせる、豊かな社会をつくります。」を掲げています。

具体的には、士業・師業に特化したコンサルティングを行ったり、メディア開発事業で情報発信をしたりする活動が挙げられます。

出典:国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関する取り組み|株式会社スタイル・エッジ

4.【企業】TIPS

TIPS」では、能力次第では性別を問わずに重要ポストへ就けるように職場環境を整備しています。また、65歳以上の社員が希望した場合には継続勤務ができます。

性別や年齢などに制限されることなく積極的に登用したり、職場環境を整備したりしているのが特徴です。他にも、ワークライフバランスを重視し、長時間労働や休日出勤を減らす取り組みも行っています。

出典:sdgs – tips2011 ページ!

世界における取り組み事例

SDGsの目標10は、世界で問題視されている「不平等」に目を向けた目標です。世界ではこの問題に正面から向き合い、工夫やアイデアで独自の取り組みを行っている企業が少なくありません

ここからは、世界における取り組み事例について触れていきます。

出典:SDG Industry Matrix日本語版-製造業 | グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン

1.セメックス

メキシコのモンテレイに本社があるセメックスは、さまざまなセメントを取り扱う企業であり、世界にも積極的に輸出しています。同社が行うSDGs目標10の取り組みは、「労働権利の保護」が挙げられます。セメックスは世界中に拠点がありますが、全従業員が安全に働ける環境を提供しています。

また、敬意ある労働環境の確保も同社の取り組みの1つです。性別や国籍などを問わず、すべての従業員の労働権利を保護しています。

2.フォード

自動車メーカーとして知られる「フォード」は、アメリカで誕生した企業です。マイノリティーと女性が経営する企業の支援や、サプライヤーが黒字化するための機会の創出をサポートしています。

過去には、マイノリティーが経営する200社サプライヤーから67.5億米ドルの製品・サービスを購入した実績があるだけでなく、女性が経営する150社を超える企業から21億米ドル分の製品・サービスも購入しました。

3.ゼネラルモーターズ

アメリカを中心に展開するゼネラルモーターズでは、SDGsの目標10として、従業員の育成支援を行っています。

専門職として必要な知識・技術を身につけるための機会を提供するなど、性別や年齢を問わずにすべての従業員を対象として積極的に取り組んでいます。

また、事業計画として、人材獲得や人材育成、事業支援などを目的としたリソースグループを作成しています。多方面に影響を与える取り組みを実施しています。

4.シーメンスAG

シーメンスAGは、ドイツのバイエルン州に位置する企業です。情報通信や交通、防衛などの事業を展開しています。

同社が実施しているSDGs目標10の取り組みは、職業訓練を受けることが難しい人(移民など)に対して、個人のスキルを育成するための機会を提供しています。こうして人々の雇用のチャンスを高めながら、多様性に関する教育も実施しています。

働くにあたり高いモチベーションとスキルや技術、必要な知識を持つ従業員を育成しています。 

 

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まとめ

今回紹介したSDGsの目標10は、世界の人々のなかにある不平等に目を向けた目標です。先進国が積極的に貧困国へ手を差し伸べる必要がある目標であるといえるでしょう。

実際、世界には「社会的弱者」と呼ばれる人々がたくさんいます。とくに、開発が進んでいない場所や、貧困が深刻化している場所は社会的弱者が多く「不平等」が成り立ってしまっている状況です。

私たちがSDGsの目標10に取り組むとすれば、まずは世界の現状に目を向けてみることから始める必要があるでしょう。

企業ができる取り組みとしては、家庭環境を問わずに積極的に仕事に従事できる制度を設けることなどから始めてみてはいかがでしょうか。

 

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