再生可能エネルギーのメリット・デメリットは?エネルギーの種類別に解説
化石資源の枯渇が危惧されるなか、自然環境を利用した再生可能エネルギーが注目を浴びています。再生可能エネルギーは、枯渇の心配がなく半永続的に生産が続けられる、環境に優しい持続可能なエネルギーです。しかし、再生可能エネルギーには大きなメリットがある反面、コスト問題などのさまざまなデメリットが存在します。
本記事では、再生可能エネルギー自体のメリット・デメリットをお伝えするとともに、9種の再生可能エネルギーごとに、メリット・デメリットを見ていきます。また、デメリットに対する解決策についても解説します。
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目次
再生可能エネルギーとは
再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスなどの自然環境を利用して生産されたエネルギーです。化石燃料に代わる新たなエネルギーとして期待されており、ここ数年で日本においても普及率が伸びてきています。今後、多くのメリットを持つ再生可能エネルギーが主たる電力になると考えられている一方で、デメリットがあることも事実です。
ここからは、再生可能エネルギーのメリットとデメリットについて解説します。
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再生可能エネルギーのメリット
再生可能エネルギーのメリットには、以下の4つが挙げられます。
環境負荷が少ない
自然環境を利用してエネルギーを生産するので、二酸化炭素を排出せず、環境への負荷が少ないことが特徴です。地球温暖化の主たる原因である温室効果ガスの多くは、二酸化炭素が占めており、その排出量の削減は世界でも大きな課題として挙げられています。二酸化炭素増加の原因には化石燃料の燃焼が大きく関わっており、再生可能エネルギーの割合が増加することで、二酸化炭素排出量の削減へと繋がります。
参照:気象庁 | 展示室1 温室効果ガスに関する基礎知識 (jma.go.jp)
枯渇しない
世界のエネルギー需要量は、2040年には2014年の約1.3倍にもなると予想されており、今後は化石燃料をめぐる競争激化が懸念されます。枯渇する化石燃料と違い、再生可能エネルギーは資源を消費せずに生産でき、半永久的に使用できるため、エネルギー獲得競争への解決策として期待されています。
参照:世界のエネルギー事情|エネルギーの現状 |エネルギー|事業概要|関西電力 (kepco.co.jp)
予備電源になる
災害など緊急時には、発電所などが正常に機能せず電気の供給が停止するおそれがあります。しかし、再生可能エネルギーは、自然の力を使い電気を生産するので、災害時などでも電気供給が可能な場合があります。日本のように地震などの災害が多い国にとって、再生可能エネルギーは災害対策にもなるのです。
エネルギー自給率の改善
エネルギー資源の少ない日本において、再生可能エネルギーの生産は、エネルギー自給率の向上に繋がります。現在の日本では、エネルギー供給の8割以上を石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が占めています。さらにそのほとんどを海外からの輸入に頼っており、エネルギー自給率は12.1%(2019年)と、他のOECD諸国と比較して低水準です。
(出典:経済産業省 資源エネルギー庁|日本のエネルギー 「エネルギーの今を知る10の質問」)
国内で生産できる再生可能エネルギーを普及させることで、エネルギーの自給率を高め、国際情勢の影響を受けにくい安定したエネルギー供給が可能となります。
参照:総論|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー (meti.go.jp)
再生可能エネルギーのデメリット
一方で、再生可能エネルギーには以下のようなデメリットがあります。
大きな設備が必要
化石燃料での発電と比べて面積割合での効率が低く、エネルギーを多く生産するためには、大きな設備を設置できる広大な土地が必要です。大阪の堺市にある堺太陽光発電所は、同市の堺港発電所(火力発電所)と比べ、面積は約2倍ですが、発電量は0.1%にも満たない程であり、発電効率(発電に使われたエネルギーが電気に変換された割合)に大きな差があります。
参照:再生可能エネルギーの課題|再生可能エネルギーとは|再生可能エネルギーへの取組み|エネルギー|事業概要|関西電力 (kepco.co.jp)
発電コストが高い
再生可能エネルギーは、発電するに当たり大きなコストが発生します。2014年時点での試算結果によると、再生可能エネルギーの主な発電方法のコスト(1kWhあたり)は、風力で21.6円(陸上設置施設の場合:海上設置施設と陸上設置施設それぞれ効率が異なる)、太陽光(メガソーラー※)で24.2円です。一方で、他の発電方法では、原子力発電は10.1円、火力発電(石炭)が12.3円と、再生可能エネルギーよりも低コストで生産可能です。再生可能エネルギーには、燃料費がかからないといったメリットはありますが、それ以上に多くのコストがかかっています。
参照:原発のコストを考える|原子力|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
発電量のコントロールが困難
電気は大量に生産したものを貯めておくことが難しく、需要に合わせて発電する必要があります。しかし、風力や太陽光に代表される再生可能エネルギーは、気候などの状況に左右されやすく、安定した発電が困難です。また、欧州のような地続きの国であれば、電気生産量によって受け渡しを行うなど周辺国との協力が可能ですが、島国の日本では他国と協力ができず発電量のコントロールが困難です。島国の日本では、欧州のように周辺国と協力して発電量をコントロールすることができないため、再生可能エネルギーを主たるエネルギーへ変える際の課題となっています。
参照:資源エネルギー庁がお答えします!~再エネについてよくある3つの質問|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
設備導入における、地域でのトラブル増加
巨大な設備を必要とする再生可能エネルギーの発電所は、設置する地域に大きな変化をもたらします。地域の活性化に繋がるなどのメリットはありますが、一方で景観・環境破壊や騒音問題、生態系への悪影響など、さまざまなデメリットも指摘されているところです。施工業者と地域住民との間で起こるトラブル件数も増加しています。
系統制約の問題が顕在化
日本では、エリアごとに電力の需要と供給のバランスを管理しており、エリアの繋がりはあるものの、大量の送電は難しいといった問題があります。しかし、再生可能エネルギーは、天候などによって生産量が大きく変動することに加え、再生可能エネルギーのポテンシャルがある地域と、電力需要が高い地域とに乖離があります。送電可能な電力量が決まっているなかで、再生可能エネルギー事業者には、「系統に繋げることができない」「費用が高い」「時間がかかる」といった問題が発生しています。電気を他のエリアに送ることが困難な日本では、まず系統の制約問題の緩和や解消が必要です。
参照:再エネの大量導入に向けて ~「系統制約」問題と対策|再生可能エネルギー・新エネルギー|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
再生可能エネルギー利用発電9種類のメリット・デメリット
再生可能エネルギーにはさまざまな種類があり、それぞれのエネルギーを利用した発電方法にも、その特徴やメリット・デメリットがあり、それらは多岐に渡ります。ここでは、9種の再生可能エネルギーを利用した発電方法について解説します。
太陽光発電
太陽光エネルギーを電池に集め、電気に変換する発電方法。再生可能エネルギーのなかで、最も発電量が多いものです。
メリット
・日照時間が多い地域では、安定した発電が可能
・騒音などによる地域への被害がない
デメリット
・導入費用やメンテナンスによるランニングコストなど、コストが高い
・メガソーラーなど大規模設備を導入するには広大の土地が必要なため、森林伐採や工事後の土砂崩れの可能性など、設置ケースによっては大きな環境負荷がかかる
・発電量が天候に大きく左右される
・エネルギー変換効率(エネルギー資源を電力に変換した割合)が悪い
風力発電
大きな風車を風の力で動かして、その動力を電気に変換するもの。風力発電の発電コストは、国際的に価格低下が進んでおり、今後日本でも導入拡大が期待されています。
メリット
・昼夜関係なく発電可能
・「陸上」と「洋上」どちらにも設置でき、設置場所の選択肢が多い
・エネルギー変換効率が40%程度あり効率的
デメリット
・騒音による周辺住民への健康被害が懸念
・風車に鳥が激突するなど、自然環境への影響
・景観への悪影響
バイオマス発電
木屑や燃えるゴミなどを燃やしたり、生ゴミや廃油などを発酵させたりした際に、発生する熱によって電気を生産する発電方法です。木質燃料、バイオ燃料(バイオエタノール)、バイオガス(生ゴミ・家畜の糞尿)など、多くの資源を活用できます。
メリット
・カーボンニュートラル(燃やしても大気中のCO2が増加しない)
・安定した電力供給が可能
・国産材使用による地域活性化効果
・排熱エネルギー再利用
デメリット
・木質バイオマス発電では、燃やすための事前作業工程が多くコストが高い
・各地に分散している資源を1ヶ所に集め、運搬する必要があるため、人件費・運搬費がかかる
・発電効率が最大20%と効率が悪い
水力発電
水が上から下に落ちるときの勢いを利用して、電気エネルギーに変換する発電方法。中小水力発電のような小型の発電設備は、開発可能な場所が多数あり、拡大が進んでいます。
メリット
・地域での雇用や産業の創出など、地域と共生できるエネルギー源としての役割
・エネルギー変換効率が80%と非常に効率的
・日本の地形に合っており、設置可能場所が多い
デメリット
・ダムなどの既存施設を利用しているため、大型の発電設備は新規開発が困難
・降水量によって発電量が左右される
・大規模な発電所から需要地が遠く、送電ロス(発電所で発電された電気を一般家庭や事業所に送る際に、電気抵抗で電力が失われる現象)が起こる
地熱発電
地下にあるマグマの熱エネルギーを利用し、発電する方法。火山帯に位置する日本は地熱発電に向いており、安定して生産することが可能な発電方法として期待されています。地熱発電のなかでも「バイナリー方式」のみが、新エネルギーとして定義されます。
メリット
・天候や昼夜関係なく安定した生産が可能
・発電に使った高温の蒸気・熱水を再利用できる
デメリット
・発電効率が20%と低い
・地熱貯留層の精密な調査が困難であり、開発リスク高い
・国立公園や温泉地帯など、開発が難しい地域に約80%の資源がある
・蒸気・熱水を採取するための井戸を掘る費用が 1 本当たり数億円するため、コストが高い
太陽熱利用
太陽の熱で空気や水の温度を上げ、暖房や給湯に使用する方法です。動力や電力をあまり必要としない単純なシステムのため、古くから導入されており実績も多数あります。
メリット
・設置スペースが少なく小面積でも使用可能
・住宅に設置可能で、災害時にも使用可能なエネルギー
デメリット
・天候に大きく左右される
・日照時間が長い場所など、設置地域が限定される
・導入コストが高い
雪氷熱利用
雪や冬の冷たい外気を利用して凍らせた氷を、冷熱が必要な期間まで保存し活用する方法です。
メリット
・水分を含むため、農作物が乾燥せず保存に最適
・街おこしなど地域復興のシンボルとして期待
・処理に多くのコストをかけていた雪を、資源として利用できる
デメリット
・利用可能地域が限定される
・夏季まで保存するには大量に集め運搬する必要があり、人件費・運搬費などがかかる
・運搬時に放熱損失(熱エネルギーが周りに拡散する)が起きやすい
温度差熱利用
地下水や河川水・下水などの水源と大気の温度差を利用する方法で、冷暖房など地域熱供給源として利用されます。
メリット
・天候に左右されず安定したエネルギー供給が可能
・雪を溶かすための熱源や、温室栽培など多くのシーンで活用できる
デメリット
・導入コストが高い
地中熱利用
浅い地盤を活かした再生可能エネルギーで、大気と地中の温度差を利用して効率的な冷暖房を行います。火山地帯にある熱を利用する地熱発電と違い、足元にある熱エネルギーを利用するため、さまざまな場所で活用できます。
メリット
・エアコン(空気熱源ヒートポンプ)が使用できない外気温-15℃以下の環境でも利用可能
・騒音が少ない
デメリット
・初期コストが高く、コスト回収まで時間がかかる
・市街地が高度に密集している地域での施工事例が少なく、熱負荷が集中するなど問題発生の可能性がある
再生可能エネルギーを利用した発電方法のデメリットを解消するためには
再生可能エネルギーを利用した発電方法には、メリットが数多くある一方でデメリットもあることをお伝えしました。そのようななか、再生可能エネルギーの普及率を向上させるため、デメリット解消に向けての動きが見られます。ここでは、デメリットを解消するために必要な行動や取り組みについて解説します。
コスト削減に向けた取り組み
欧米と比べ、日本では太陽光パネルや風力発電機の価格は約1.5倍、工事費も約1.5~2倍と非常に高く、普及が遅れています。コスト削減に向けて、流通構造や取引慣行などの改善が必要です。入札制度の導入を実施し、メーカーや発電事業者の競争を促すことで、コスト削減を図るなどの取り組みが進められています。
参照:資源エネルギー庁がお答えします!~再エネについてよくある3つの質問|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
エネルギーミックス
再生可能エネルギーは、気候などによって供給が安定しないといったデメリットがありますが、環境負荷が少ないといったメリットが存在します。各発電方法にはメリット・デメリットがあり、お互いの長所を活かし、短所を補うといった考え方がエネルギーミックスです。再生可能エネルギーによる電力供給量を基に、足りない場合は他の発電方法での発電量を増やすなど、火力発電、原子力発電、再生可能エネルギーによる発電のバランスを保ち、電力を無駄なく安定的に供給するための施策です。
系統制約への対策
間接オークション
エリア間で送電するための「連系線」は、先着順で利用者が決められており、コストの安い事業者が後から申請をしても、空き容量がなければ利用できない仕組みになっています。しかし、このような仕組みでは効率が悪いため、改善策としてコストの安い事業者を優先するルールが「間接オークション」です。
連系線の増強
既存の系統だけでは、再生可能エネルギー利用の発電規模が拡大した際に対応ができなくなるため、連系線の増強工事が必須です。再生可能エネルギー利用の割合が大きい北海道と、電力需要の多い本州間での増強工事を行うなど、送電可能な電力量を増やす対策を行っています。
蓄電池の活用
再生可能エネルギー利用による発電方法の問題点である生産量の増減をコントロールするためには、各発電所へ蓄電池を設置することが有効です。風力発電が大量に導入されている北海道では、発電所ごとだけでなく、系統側に蓄電池を設置することで電力の生産量を調整しています。
参照:再エネの大量導入に向けて ~「系統制約」問題と対策|再生可能エネルギー・新エネルギー|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
日本版コネクト&マネージ
発電事業者は、発電した電力を送電するために、電力会社に系統への接続契約を行っています。しかし、送電可能な電力容量には限界があります。容量を超えた分に関しては、新しい送電設備を作り対応していますが、多大なコストがかかるという問題があります。この問題を解決するために作られた新たなルールが「日本版コネクト&マネージ」です。「日本版コネクト&マネージ」では、送電線の容量にある隙間に着目し、既存の送電設備の効率化を図っています。
(出典:出力制御について|なるほど!グリッド|資源エネルギー庁 (meti.go.jp))
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まとめ
再生可能エネルギーを利用した発電方法は、環境に優しく、持続可能なエネルギーとして注目されています。しかし、再生可能エネルギーには多くのメリットがある一方で、さまざまなデメリットや課題もあり、再生可能エネルギーを利用した発電方法の普及が遅れているのも事実です。日本では、国として再生可能エネルギー普及率の向上に大きな力を入れており、デメリット解決へ向けた施策も数多く行われています。今後、再生可能エネルギーを化石燃料の代替エネルギーへと位置付けるための取り組みはますます加速していくでしょう。
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この記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
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