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ソーシャルビジネスの課題とは?解決策とあわせて解説

ソーシャルビジネスは、事業活動を通じて地域活性化や環境問題、貧困をはじめとした社会的課題の解決を目指す企業の取り組みを指します。2015年に世界共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)が採択されたこともあり、ソーシャルビジネスへの注目は高まっています。

その一方で、ソーシャルビジネスを持続的に行うことは決して安易ではなく、事業として活動していくにはいくつかの課題が存在します。

今回は、ソーシャルビジネスの概要や、日本における課題と現状、解決策について解説します。

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ソーシャルビジネスとは?

ソーシャルビジネスとは、ビジネスの手法を活用して社会的課題の解決を目指す事業活動のことをいいます。

子育てや介護・福祉、街づくり、地域活性化、環境保護など、現代では様々な分野における社会的課題がありますが、これらの課題解決へ向けて企業や地域住民、NPO法人などがビジネスの手法を用いて取り組む事業を総称してソーシャルビジネスと呼んでいます。

出典:ソーシャルビジネス│経済産業省

出典:ソーシャルビジネス研究会報告書│経済産業省(PDF)

出典:「ソーシャルビジネス」を支援 社会的課題の解決にビジネスの手法で取り組む方を後押し│政府広報オンライン

一般的なビジネスとの違い

一般的なビジネスでは「利益を最大化すること」を目的としていますが、ソーシャルビジネスでは「社会的課題を解決すること」を第一の目的としています。

なかには、一般的なビジネス活動が社会的課題の解決に貢献することはありますが、ソーシャルビジネスは事業を始める目的そのものが“社会的課題の解決”を掲げている点が、一般的なビジネスとの大きな違いといえます。

ボランティア活動との違い

社会的課題の解決や社会貢献活動を目的としている点では、ソーシャルビジネスとボランティア活動は近いともいえますが、「その事業から収益を上げるための取り組み(ビジネス)をしているかどうか」が異なります。

ボランティア活動は、寄付金などの外部資金を頼ることもありますが、その多くは無報酬で活動を行っており、長期的な活動を行うには、無報酬でも継続的に取り組む意思を持つメンバーが必要です。

一方で、事業を通じて収益を上げるソーシャルビジネスでは、その利益を自社の活動資金に充てることで、持続的に事業活動を行いやすくなります。

経済産業省によるソーシャルビジネスの定義

経済産業省の「ソーシャルビジネス研究会報告書(平成204月)」では、以下の要件をソーシャルビジネスの定義として掲げています。

  • 社会性

現代社会において、早急に解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションにすること。社会的課題とは、環境問題や貧困問題、少子高齢化、都市部への人口集中、高齢者・障害者の介護・福祉、子育て支援など、多岐にわたる。

  • 事業性

社会性の項目で掲げたようなミッションに対してビジネスの手法で取り組み、継続的に事業活動を進めていくこと。

  • 革新性

新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その活動が社会に広がることを通して、新しい社会的価値を創出すること。

 

例えば、定年退職した人がこれまでの自分の経験を活かして地域貢献に取り組んだり、若者が社会的課題の解決に目的意識を見出したりするなど、様々な立場の人々が色々な形で社会と関われるのが、ソーシャルビジネスの良さといえます。

ソーシャルビジネスを通じた社会的課題の解決と同時に、新たな交流や雇用、市場ニーズの創出、地域活性化につながる取り組みとしても期待されています。

ソーシャルビジネスの現状

日本におけるソーシャルビジネスの現状について解説します。

日本における主なソーシャルビジネスの分野

日本政策金融公庫総合研究所が平成26912日に公開したアンケートによると、以下の順にソーシャルビジネスへの関心が高いことがわかりました(全国の18歳〜64歳の男女3,143名に実施)。

【関心が高いソーシャルビジネスの分野】

  1. 社会的排除に関する問題
  2. 地域社会に関する問題
  3. 地球環境に関する問題
  4. 開発途上国支援に関する問題

こちらのアンケートも同様に、一般国民も障害者支援などの医療・福祉分野や、少子高齢化・地域経済の衰退などの項目に対して関心が高いことがいえ、今後もますますニーズや注目が高まることが予想されます。

出典:「ソーシャルビジネス・コミュニティビジネスに関するアンケート」の結果について│日本政策金融公庫総合研究所(PDF)

ソーシャルビジネスに対する融資の拡大

出典:日本政策金融公庫

日本政策金融公庫国民生活事業のデータよると、令和2年度におけるソーシャルビジネス関連融資実績は、15,037件(前年度比126.8%)、1,845億円(同212.3%)と発表されました。

支援事業における分野別のデータでは、特に介護・福祉事業者向けの融資実績は、13,741 件(前年度比169.7%)、1,723億円(同291.0%)と、前年度を大きく上回る結果となりました。

これは、一般的に対面でサービスを提供する介護・福祉事業者が、新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に収支が悪化し 資金需要が発生したものと考えられています。

日本のソーシャルビジネスの課題とその解決策

今後もソーシャルビジネスの高い需要が予想される現代社会において、社会的課題の解決に取り組もうと考えている事業者は多いと思います。

しかし、単に“社会的課題の解決ができそうなビジネス”を実践しても、思うような効果は得られないかもしれません。

まずは、次に解説する「日本のソーシャルビジネスにおける課題」を理解し、その解決策に取り組むことがソーシャルビジネスの効果を発揮させるために大切なポイントになります。

出典:ソーシャルビジネス研究会報告書│経済産業省(PDF)

課題① 認知度の向上

“ソーシャルビジネス”という言葉の認知度を向上させることは、日本のソーシャルビジネスにおける大きな課題となっています。

経済産業省の「ソーシャルビジネス研究会報告書(平成204月)」によると、“ソーシャルビジネス”という言葉を聞いたことのある人の割合は、「よく聞く」が12.5%、「一度はある」が51.3%、「聞いたことはない」が36.2%という結果であったことがわかりました。

また、ソーシャルビジネスを手がける事業者(主に会社名)を思い付く人の割合についての調査では、「思いつかない」が83.6%、「1つ、2つある」が14.3%、「3つ以上ある」が2.1%という結果になりました。

これらのことからも、“ソーシャルビジネスという言葉を聞いたことはあるけれども、どのような事業者が社会的課題の解決に取り組んでいるのかまではわからない”という認識の人が多くの割合を占めているといえます。

なお、同調査は10年以上も前の回答であり、現在では日々のニュース報道やSNSメディアでの情報拡散、SDGsの浸透などによって、ソーシャルビジネスの認知が多少向上していると考えられます。

※SDGs(持続可能な開発目標)とは?
2015年に国連の加盟国の全会一致で採択された、持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標です。2030年を達成の期限としており、環境や人権、経済成長など、様々な分野の課題を解決するために17の目標が設定されています。

楽天インサイト株式会社が実施した、全国の2069歳の男女1,000人を対象に行った「SDGsに関する調査」では、「SDGs」という言葉の認知計(「よく知っている」と「聞いたことがある」の合計回答数)は50.7%となりました。

このように、社会的課題の解決と関連性の高い言葉の認知に伴ってソーシャルビジネスの認知も広がりつつあるものの、今後もより大きな成果を得るためには多くの人の協力や取り組みがカギとなり、社会的認知度の向上は1つの課題といえるでしょう。SDGsについて、以下の記事より詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

SDGsとは何かをわかりやすく解説!世界をより良くするための17の目標を知ろう

出典:持続可能な開発目標『SDGs』の認知度は約50%|楽天インサイト

「認知度の向上」の解決策

ソーシャルビジネスの認知度の向上を解決するためには、まずは企業が、自社が提供しているサービスを必要としている人たちへ向けて情報発信を行い、自社の活動を多くの人たちに知ってもらうことが必要不可欠です。

社会課題の解決につながるサービスを考案し、提供できる体制が整っても、そのサービス自体を多くの人たちに知ってもらわなければ利用にはつながりません。

「自分たちがどのような活動をしているのか」「活動からどのような価値が生まれているのか」を可視化し、言語化することで、自社活動への理解を深めてもらうことが認知向上には欠かせません。

昨今では、テレビや新聞などの報道以外にも、インターネットやSNSをはじめとしたWEB媒体を活用したPRの取り組みが増えています。

自社のサービスや取り組みのターゲットとなる人物像を明確にし、共感・信頼・問題定義を中心とした情報発信を行うことで、自社のサービスや取り組みの認知を広げていくことが、ソーシャルビジネスの成功につながります。

出典:ソーシャルビジネスの経営講座~10分で学ぶソーシャルビジネス経営のポイント~|日本政策金融公庫

課題② 事業としての展開(収益化)

ソーシャルビジネスは「社会的課題を解決すること」を第一の目的としているものの、あくまでも“ビジネス活動”であることから、利益や活動資金の増収も忘れてはいけない経営の要素です。

日本政策金融公庫総合研究所が実施した「社会的問題と事業との関わりに関するアンケート(平成26年)」によると、ソーシャルビジネスを手がける企業における「ソーシャルビジネスによる最近1年間の売上高」をみると、「1,000万円未満」の割合が28.8%と最も多く、次いで「2,000万円〜5,000万円」の割合が27.8%であることがわかりました。

同アンケートにおける最近1年間の採算をみると、売上高を「赤字」とする企業は75.0%を占めており、ソーシャルビジネスを持続可能な事業として展開できている企業は決して多くないといえます。

社会的課題の解決は、短期的ではなく中〜長期的に取り組まなければ解決が難しい分野が多くあるため、持続可能なビジネス活動の維持は、ソーシャルビジネスには必須の要素といえるでしょう。

「事業展開」の解決策

ソーシャルビジネスといえど、従来のビジネスと同様に「成果目標」や「必要資源」などの経営戦略における必須項目の整備が必要です。

そのため、「自分たちの作り上げたサービスで社会的課題の解決を目指したい」というソーシャルビジネス事業者の強い想いだけでは、持続可能なビジネス活動の実施は難しいのが現状です。

ソーシャルビジネスの持続可能な事業展開を考える際には、まずは国や自治体、金融機関などが実施している企業向けの支援を活用したり、地域住民や他の活動団体などと連携したりすることで、相互支援を行うことによる事業継続を検討する方法が挙げられます。

特に、事業展開を考えるうえで必要不可欠な要素であるヒト・モノ・カネが不足しやすい中小企業にとっては、「専門性を持つNPOと連携した事業展開」も1つの有効手段といえます。

昨今では、その地域に特化した取り組みを実施する団体や、環境問題・途上国の開発支援に取り組む団体、子育て・教育などを支援する団体のように、様々な専門領域に特化したNPO法人が日本各地に存在しています。

NPO法人と聞くと、ボランティア活動をイメージする方も少なくはないと思いますが、今ではソーシャルビジネスに取り組む団体も増加しており、それらの団体と連携することで双方の強みを有効活用した活動の実現につながるでしょう。

また、ソーシャルビジネスに取り組むにはある程度の資金の用意が必要になります。日本政策金融公庫では、平成272月にソーシャルビジネス専用の融資制度が創設され、いくつかの条件を満たすことで支援が受けられます。

なお、事業計画を策定する際には、日本政策金融公庫が提供しているツール「ビジネスプラン見える化BOOK」の活用がおすすめです。

こちらのツールでは、事業計画の策定プロセスを6つのステップ(組織使命、現状把握、実現仮説、成果目標、財源基盤、組織基盤)に分けて解説し、各ステップのワークシートが用意されています。

ソーシャルビジネスの事業計画を初めて作成する際にはもちろんのこと、自社の既存事業を見直したい場合にも有効活用できるツールとなっています。

出典: NPOマップ[ソーシャルビジネスステーション]|日本政策金融公庫

出典:事業計画の策定|日本政策金融公庫

課題③ 人材の確保・育成

ソーシャルビジネスを成功させるためには、社会的課題の解決へ向けた取り組みに理解のある人材の確保と育成が求められます。

日本政策金融公庫総合研究所が、一定の条件を満たした事業者に対して実施した「社会的問題と事業との関わりに関するアンケート(平成26年)」によると、ソーシャルビジネスを進めていくうえでの課題として、最上位が「人手の確保」の49.0%、次いで「従業員の能力向上」が41.9%という結果となりました。

ソーシャルビジネスは、「社会的課題の解決を目指す」という特性により、事業化が難しいケースは多くあります。また、少子高齢化による労働人口の減少に伴って十分な人材確保ができず、ソーシャルビジネスに取り組む人材の確保までに至らないことも少なくありません。

さらには、社会的課題の解決には専門的な人材が必要な場合もあり、人材の確保・育成はソーシャルビジネスを手がける多くの企業にとっての課題となっています。

出典:ソーシャルビジネスの経営実態〜「社会的問題と事業との関わりに関するアンケート」から〜│日本政策金融公庫総合研究所

出典:ソーシャルビジネスこそ理想の新事業|日経BizGate

「人材の確保・育成」の解決策

ソーシャルビジネスに取り組む人材の確保へ向けた活動として、まずは自社が求める人材像や所持しているスキルなどの要件を明確化することが、自社との考えにマッチする人材募集につながります。

また、金銭的な報酬以外にも、非金銭的な報酬も提供できる環境を整えることは、人材確保の取り組みとして有効に活用できるでしょう。

自社に携わることで「どのような社会貢献につながるのか」「どのような経験を得られるのか(成長できるのか)」などの非金銭的報酬についても、経営戦略とあわせて考えることが、ソーシャルビジネスに取り組む人材の確保に重要です。

なお、それでも外部からの人材確保が難航した場合には、自社の持つ人材のなかからソーシャルビジネスに取り組む専門的な人材を育成することも、1つの有効的な方法として考えられます。

人材に求める能力やスキル、経験を得られるような講義・研修などを企画したり、社内からソーシャルビジネスに対する意欲のある人材を募ったりして、社内人材でソーシャルビジネスに取り組める環境を作り上げることも効果的です。

出典:ソーシャルビジネスの経営講座~10分で学ぶソーシャルビジネス経営のポイント~|日本政策金融公庫

まとめ

ソーシャルビジネスとは、ビジネスの手法を活用して社会的課題の解決を目指すビジネス活動です。昨今では、環境問題やSDGsなどの取り組みや認知が広がりつつあり、今後も人々が生活し続けられる社会の実現に向けて、ソーシャルビジネスの重要性や注目度は高まっています。

その一方で、企業や団体がソーシャルビジネスを行うには、ソーシャルビジネス自体の認知向上や、優秀な人材確保・育成などの課題が存在します。

自社によるソーシャルビジネスの活動内容やその目的を、ソーシャルビジネスを必要としている人々へ的確に届けて活動内容の認知向上に努めることが、持続的なソーシャルビジネス活動に求められています。

今後、ソーシャルビジネスの取り組みを検討している方は、今回紹介したソーシャルビジネスの課題とその解決策をしっかりと把握することが成功につながります。

また、以下の記事でソーシャルビジネスの事例について紹介しています。参考にぜひご覧ください。

ソーシャルビジネスの企業事例20選!日本・海外の取り組みを紹介

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りょう

この記事を書いた人

りょう

都内在住。美容系メディアのコンテンツ制作をきっかけにライター活動をスタート。現在までにSDGs、HR領域、SNSマーケティング、外遊び、オンラインイベントなどの幅広いジャンルを執筆。読者の皆さまに寄り添えるような、わかりやすい文章を心がけています。

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