環境

マイクロプラスチック問題への対策とは。問題の現状と対策・企業事例13選

使いやすく便利で、日常生活のさまざまなシーンで利用されているプラスチック。しかし、プラスチックは使い捨てにされることが多いうえ上、自然に分解されない性質上、廃棄されたものは半永久的に残り続け、その多くが最終的に海へと流出失しています。そこで問題になっているのが、プラスチックが5mm以下に粒子化したマイクロプラスチック問題です。非常に細かい粒子であるマイクロプラスチックは、有害な化学物質を取吸しやすい性質を持ち、海洋を移動することで世界中の海へ悪影響を及ぼす大きな社会問題となっています

本記事では、マイクロプラスチック問題の現状や対策、企業が行っている取り組み事例について解説します。

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マイクロプラスチックとは?

マイクロプラスチックとは、5mm以下の微細なプラスチックのことを指します。有害物質を含吸着させたんだマイクロプラスチックを魚が誤って摂取してしまうことで起こる生態系への被害や、食物連鎖を介して人に悪影響を及ぼす可能性が懸念されています。近年、マイクロプラスチックの海洋流出は大きな社会問題です

マイクロプラスチックは、発生原因によって以下の2つに分類されます。

1次的マイクロプラスチック

製造された段階で、すでに微細なものが1次的マイクロプラスチックです。洗顔料や歯磨き粉のようなスクラブ剤に利用されており、マイクロビーズ(0.5mm以下のプラスチック粒子)と呼ばれています。排水溝を通じて多くのマイクロビーズが海へと流出失。目に見えない程小さいため、一度製品化され使用したものは回収が非常に困難です。その性質上、生産自体が規制されている国も数多くあります。

2次的マイクロプラスチック

発砲スチロールやペットボトルなどのような、大きなサイズで生産されたプラスチックが、紫外線や風波にさらされることで劣化し、粉砕・細分化されたものが2次的マイクロプラスチックです。レジ袋のように飛ばされやすく、海に流れ込みやすいプラスチック製品は、2次的マイクロプラスチックが発生する原因となります。削減するためには、細分化される前に回収するなどの仕組みが必要です。

マイクロプラスチック問題の現状と対策

マイクロプラスチック問題の解決は、世界において中の大きな課題です。さまざまな国がマイクロプラスチック流出を抑制するために、対策や規制を実施しています。ここでは、日本でのマイクロプラスチック問題の現状や対策と、世界中で進む規制内容について解説します。

日本の現状と対策

環境省の海洋ごみ実態把握調査(マイクロプラスチックの調査)によると、日本周辺海域(東アジア)では、北太平洋と比べ16倍・世界の海と比べると27倍ものマイクロプラスチックが存在しています。日本周辺海域は、マイクロプラスチックのホットスポットであり、大きな課題を抱えています。

出典:海洋ごみとマイクロプラスチックに関する環境省の取組(PDF)

また、東京湾で捕れたカタクチイワシの調査では、計64匹のうち49匹から150個のマイクロプラスチックが検出。そのうちの約1割は、洗顔などの生活用品に使用されている「マイクロビーズ」との結果が出ており、マイクロプラスチック流出による、海洋生物への被害が確認されています。

出典:カタクチイワシの8割からプラごみ 東京湾で、国内初: 日本経済新聞 (nikkei.com)

問題解決に向けた対策

日本におけるマイクロプラスチック削減への対策として、海洋漂着物処理推進法(※)の改正を行い、事業者へのマイクロプラスチック使用抑制や、廃プラスチック類の排出抑制を促しています。しかし、あくまで事業者の自主性に任せており、マイクロプラスチックの製造や販売自体を法的には規制していません

※海洋漂着物処理推進法……「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」。2009年7月15日に公布・施行

出典: 海岸漂着物処理推進法の概要(改正後)(PDF)

世界中で進む規制

1次的マイクロプラスチック(マイクロビーズ)の規制内容

アメリカやイギリスなど多くの国で、マイクロビーズを使用した製品の製造や販売・輸入などが法律によって規制されています。

2次的マイクロプラスチックの規制内容

マイクロプラスチックの発生原因となる、プラスチック自体にも多くの国が法的に規制をかけています。規制対象には、使い捨てのレジ袋・食品容器・ストロー・カトラリー等が挙げられており、有料化や販売・使用自体の禁止など、各国でさまざまな対策が実施されています。(2018年時点)

出典:プラスチックを取り巻く国内外の状況 (env.go.jp)

マイクロプラスチック問題はSDGsにも深く関係

マイクロプラスチック問題は、持続可能な社会の実現を目指す「SDGs」にも大きな関係があります。SDGsとは、社会問題解決に向けた17目標を達成することで、持続可能なよりよい世界を目指す国際的な目標です。ここでは、特に関わりが深い「目標12:つくる責任つかう責任」「目標14:海の豊かさを守ろう」についてとマイクロプラスチック問題との関係性を解説します。

SDGsにおける17の目標とは?基本的な内容をわかりやすく解説!

目標12「つくる責任つかう責任」との関係

「つくる責任つかう責任」では、限りある資源を有効活用することで、大量生産・大量消費の社会から、持続可能な消費と生産に転換することを目標に掲げています。「つくる責任つかう責任」を達成するためのターゲットには、廃棄物が環境に負荷を与えないように管理することや、ゴミの削減、リサイクル・リユースなどが含まれており、廃棄プラスチックの削減とも深い関わりがあります。2次的マイクロプラスチックが発生する原因であるプラスチック自体の生産や消費を減らしたり、廃棄せずに再利用したりすることで、SDGsが掲げる目標達成への大きな貢献となるでしょう。

SDGs目標12の概要と日本・世界の取り組みをわかりやすく解説

目標14「海の豊かさを守ろう」との関係

「海の豊かさを守ろう」では、化学物資による海の汚染を防ぐことなどがターゲットに含まれており、海洋資源の保全を目標に掲げています。海洋汚染の原因であるマイクロプラスチック問題の解決は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標の1つである「海の豊かさを守ろう」を達成するために必須です。また、マイクロプラスチックは、海洋生物だけでなく人体への悪影響も懸念されており、今後も持続的に安全な魚を食べられるることができる環境を守るためにも、問題への対策が必要とされています。

SDGs目標14の概要と日本・世界の取り組み事例をわかりやすく解説

マイクロプラスチック対策の企業事例13選

マイクロプラスチックの削減は、世界的にも技術が確立しておらず、非常に困難なものです。そこで環境省は、12企業の取り組みをまとめた「マイクロプラスチック削減に向けたグッド・プラクティス集」を公表し、日本企業が持つ技術を活かした成功事例を、国内外に共有する取り組みを実施しています。また、技術的な削減のみでなく、マイクロビーズ自体の使用制限もマイクロプラスチック削減には必要不可欠です。ここでは、日本の企業が行っているマイクロプラスチック削減に向けた技術的な対策や、使用制限などの事例13選を紹介します。

株式会社アダストリア

アダストリアグループは、「ファッションのワクワクを、未来まで。」というサステナビリティポリシーのもとで、環境保護を目的とした、海洋プラスチック問題解決に取り組んでいます。洗濯などで衣服から落ちる「繊維くず」が、マイクロプラスチックとして環境に大きな負荷を与えていることに着目し、「繊維くず」の流出を抑制する効果のある洗濯ネット「FIBER HOLD BAG(ファイバーホールドバッグ)」を開発。「FIBER HOLD BAG」を使用することで、最大80%の流出抑止効果が見込まれます。

出典:「作る責任、使う責任」海洋汚染を防止する洗濯ネットを開発 | A-Cross | Play fashion! | 株式会社アダストリア (adastria.co.jp)

株式会社ダイセル

化粧品の材料には、合成系プラスチックの微粒子が多く含まれており、化粧を落とした際に、それらが排水溝を通して海まで流れることでマイクロプラスチック問題の原因になっています。そこで株式会社ダイセルでは、天然素材由来の「生分解可能なセルロースアセテート粒子」を合成プラスチックの代替品として使用し、自然環境に負荷を与えない化粧品を開発。自然界への循環が可能な化粧品として、大きな注目を集めています。

出典:株式会社ダイセル 生分解可能なセルロースアセテート粒子と化粧品・BELLOCEA® | 日本弁理士会 関西会 (kjpaa.jp)

スズキ株式会社

スズキ株式会社では、世界初の船外機に取り付け可能なマイクロプラスチック回収装置を開発。船外機が水を汲み上げながら進む構造を利用し、フィルター式の回収装置を取り付けることで、走行するだけで水面付近のマイクロプラスチックが回収可能に。国内で実施したモニタリング調査において、マイクロプラスチックの回収が確認されています。

出典:スズキ、世界初の船外機用マイクロプラスチック回収装置を開発|スズキ (suzuki.co.jp)

住友ゴム工業株式会社

経年使用して細かく破断した人工芝は場外へと流出することがありスポーツ用人工芝は、経年使用などによって場外に流出することがあり、これらがマイクロプラスチック発生の原因になる可能性が懸念されています。そこで、住友ゴム工業株式会社では、スポーツ用人工芝からのマイクロプラスチック流出を抑制するために、国内初めての取り組みである実証実験を「西宮浜多目的人工芝グラウンド」にて実施。グラウンドの外周にマイクロプラスチック流出を防ぐためのゾーンを設置することで、経年劣化などによって発生したマイクロプラスチックが、場外に流出しない仕組みを実現しています。

出典:スポーツ用人工芝由来のマイクロプラスチック問題への取り組みについて~環境省 グッド・プラクティス集への実証実験掲載~ | 住友ゴム工業 (srigroup.co.jp)

帝⼈フロンティア株式会社

合繊起毛素材(フリース)がマイクロプラスチック発生の原因となる懸念が高まっていることで、合繊起毛素材を避ける動きが多くの衣料品メーカーで広がっています。そこで帝人フロンティア株式会社は、非起毛のポリエステル裏毛素材の提案を実施しました。起毛素材は、洗濯時に微細な毛羽や繊維くずが落ち、排水溝を通じて海に流出されることで、マイクロプラスチックの発生に繋がることが問題になっています。一方で、非起毛のポリエステル裏毛素材は、起毛素材と比較して洗濯時に落ちる繊維量が大幅に減少するとのデータがあるのです。合繊起毛素材の代替品として、非起毛のポリエステル裏毛素材を使用することで、マイクロプラスチック流出の抑制へと繋がります。

出典:帝人フロンティア/非起毛裏毛素材の提案強化/マイクロプラスチック問題に対応 | THE SEN-I-NEWS 日刊繊維総合紙 繊維ニュース

日本化学繊維協会

日本化学繊維協会では、日本初のISO規格(※)化を目指し、洗濯時に流出する繊維くず量測定方法の開発に取り組んでいます。国際基準の測定方法を開発することで、マイクロプラスチックが発生しづらい高機能な繊維素材の開発促進や、海洋環境中の繊維くずによるマイクロプラスチック流出量の推計に役立つことが期待されています。

※ISO規格……国際標準化機構(International Organization for Standardization)が定めた、世界共通の標準規格

出典:マイクロプラスチック削減に向けたグッド・プラクティス集(PDF)

プランツラボラトリー株式会社

日本の稲作では、自然界で分解されないウレタンプラスチックの培地(※)が広く用いられており、紫外線などでの劣化によるマイクロプラスチック発生が懸念されています。プランツラボラトリー株式会社では、海洋生分解性を有する樹脂を使用した培地を開発。マイクロプラスチックの発生原因であるウレタンプラスチックの使用を減らすことで、環境負荷軽減への貢献が期待されています。

※培地……植物の成長を促す、人工的に作られた環境

出典:水耕栽培用培地の開発事業が環境省「マイクロプラスチック削減」優良事例に掲載|ニュース|生産資材|JAcom 農業協同組合新聞

レンゴー株式会社

マイクロビーズの代替材料となる「ビスコパール」を開発。ビスコパールは、木材由来のパルプを原材料にして作られており、海水中の微生物によって水と炭酸ガスに分解されるため、環境への負荷が少ない製品です。洗剤や化粧品原料、研磨材など幅広い用途で、マイクロビーズの代替品として使用できるため、マイクロプラスチックの削減に繋がります。

出典:ビスコパール | 製品案内 | レンゴー株式会社 (rengo.co.jp)

花王株式会社

洗い流す化粧品や歯磨きなどで使われているスクラブ剤にマイクロプラスチックビーズを使用しており、環境への負荷を懸念。2016年末にすべての洗い流す化粧品および歯磨きにおいて、スクラブ剤の使用を停止し、代替素材(天然由来成分のセルロース、コーンスターチ)への切り替えを実施しています。

出典:より安全でより健康な製品 (kao.com)

株式会社マンダム

マンダムは、海洋プラスチック問題の解決を目指す、「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス」(略称「CLOMA」※)に入会。紙等の代替素材、生分解性に優れたプラスチックの導入検討など、プラスチック削減に向けた取り組みを実施しています。また、マイクロプラスチック削減の対策として、2017年度に洗い流しの製品に使用していたマイクロプラスチックビーズを、代替原料に変更しています。

※CLOMA……業種を超えた幅広い関係者の連携を強め、プラスチック製品の持続可能な使用や、代替素材の開発・導入を推進するためのプラットフォーム

出典:株式会社マンダム|CSR情報|マンダムグループのCSR考働|環境 (mandom.co.jp)

出典:クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス | 海洋プラスチックごみ問題解決のためのアライアンス (cloma.net)

株式会社コーセー

コーセーでは、2014年度に開発の新しい洗浄料からマイクロプラスチックビーズの使用を停止。既存製品に使用しているマイクロプラスチックビーズにおいても、2018年1月にすべて切り替えを実施しています。また、

2次的マイクロプラスチックの発生原因である、容器や包装のプラスチック使用量削減にも取り組んでいます。

出典:商品における取り組み | 地球環境のために | 株式会社コーセー 企業情報サイト (kose.co.jp)

株式会社資生堂

資生堂では、2018年以降の洗い流すタイプの製品において、マイクロプラスチックビーズの使用を停止しています。

出典:マイクロプラスチックビーズ | 資生堂 (shiseido.com)

P&Gジャパン合同会社

以前まで、角質除去・クレンジング製品と歯磨き粉の一部にマイクロビーズを使用。しかし、近年の環境負荷への懸念にを配慮して、すべてのフェイシャル・ボディ洗浄料と、歯磨き粉からマイクロビーズを排除しています。現在、P&Gが製造している製品はマイクロビーズ・フリーです。

出典:P&G製品成分 (pg.com)

まとめ

マイクロプラスチック問題は、大きな社会問題として世界中で取り上げられており、各国で多くの対策や法的な規制が進められています。日本においては、法改正などによるマイクロプラスチック減少への協力を企業に呼び掛けていますが、あくまでも企業の自主的な対応に任せており、法規制には至っていません。しかし、日本周辺海域には、他の地域と比べ莫大なマイクロプラスチックが流出しており、日本は率先してマイクロプラスチック削減に取り組む必要があります。

マイクロプラスチック問題への対策は、国・企業ともにさまざまな取り組みを実施しており、問題解決に向けて行動しています。今後、マイクロプラスチックに対する取り組みは、より一層拡大されていくでしょう。

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