社会

人種差別をなくすための活動とは?現状の取り組みや今できることを紹介

世界にはさまざまな人種差別が残っており、言われのない差別に苦しんでいる人々がいます。年齢や性別、生まれた国や民族など、差別の要因はさまざまですが、どのような理由であっても人の権利を侵害する差別行為は許されるものではありません。SDGsにおいても、人種差別は解決すべき社会的課題に挙げられており、地球に暮らすすべての人々に、人種差別を失くすための行動が求められています。人種差別を世界から失くすためには、より多くの人々が、人種差別の歴史や現状について正しく認識することが必要です。本記事では、人種差別の現状や、差別解消に向けた取り組みについて解説します。

 

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人種差別とは?

すべての人々は、「平等であり幸福に暮らす権利」を生まれたときから持っています。しかし、「人種」「皮膚の色」「言語」「宗教」「国籍」「民族」「出自」などに偏見を持つ人から不当な差別的扱いを受け、苦しんでいる人々が存在しているのが現状です。このような人種による問題を解決するために、世界では人種差別に関する条約を定め、各国が人種差別解消を目指した取り組みを行っています。しかし、依然として「人種差別」はなくなっていません。

持続可能な社会の実現を目指す「SDGs」においても、人種差別問題は解決すべき目標として挙げられています。SDGsの目標である「誰一人取り残さない」世界を実現するためにも、すべての人々が人種差別問題解消に向けて取り組むことが必要です。

SDGsと人種差別問題

SDGsは17の達成目標から成り立っており、そのひとつである「目標10.人や国の不平等をなくそう」が人種差別問題に深く関連しています。「目標10」では、以下のターゲットを設定し、人種差別による社会の不平等解消を目指しています。

  • 「2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、生まれ、宗教、経済状態などにかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすすめる。」
  • 「差別的な法律、政策やならわしをなくし、適切な法律や政策、行動をすすめることなどによって、人びとが平等な機会(チャンス)をもてるようにし、人びとが得る結果(たとえば所得など)についての格差を減らす。」

参考:10.人や国の不平等をなくそう | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)

「目標10.人や国の不平等をなくそう」では、地球上で暮らす、すべての人々が平等で幸福に生活できる社会の実現を目標にしています。この目標を達成するためには、一人ひとりがお互いの「違い」を理解し、受け入れることが必要です。

 

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どのような人種差別問題があるのか

世界のあらゆる場所で、人種差別による問題が根強く残っています。日本においても、人種差別は未だに続いている問題であり、他国だけの問題ではありません。人種差別問題を解消するためにも、まずはどのような人種差別が行われているのか、現状を理解しておく必要があります。

世界の人種差別問題

世界での人種差別問題を理解するためには、ヨーロッパによるアフリカ植民地化の歴史を知る必要があります。当時の南アフリカ共和国は白人政府によって管理されており、黒人を強く差別する「アパルトヘイト政策」が行われていました。この政策によって、黒人はさまざまな不利益を被ることとなり、政策が廃止された現在においても、当時の差別意識が未だに残り続けているのです。

アパルトヘイト政策とは

アパルトヘイト政策は、白人政府が白人社会を守るために行った政策です。白人が暮らしやすい社会のために、黒人に対して不当な扱いを強いる以下のような法律を制定しました。

  • 鉱山・労働法

鉱山で働く、白人と黒人の職種区分と人数比を全国で統一する法律で、最初の人種差別法。圧倒的に黒人の人口が多いにも関わらず、白人と黒人の人数比を統一することで、多くの黒人の労働機会が奪われました。

  • 原住民土地法

全人口の70%を占める黒人を、国土の僅か9%(原住民指定地)に居住させる法律。

  • 原住民代表法

普通選挙人候補から黒人を削除し、黒人の代表として白人議員を選出する法律。

  • 異人種間結婚禁止法

異なる人種間での、恋愛や結婚を禁じる法律。

アパルトヘイト政策は、国際社会から「人類の人類に対する犯罪」と激しい非難を受けましたが、当時の政府は、「人種ごとの分離発展」のためであるとして、この不平等な政策を推し進めました。

参考:外務省: わかる!国際情勢 躍進する南アフリカ~途上国のリーダーとして 

日本にもある人種差別問題

日本においても人種による差別が行われています。人種差別問題は他国だけの問題ではなく、日本でも解決しなければならない重要な社会的課題です。

アイヌの人々への差別

アイヌ民族とは、北海道を中心に生活していた民族です。アイヌの人々は、明治政府の一方的な同化政策により、文化や生活習慣が奪われるなどの被害を受けました。当時は、アイヌの出身であるというだけで、就職や結婚などにおいて差別を受けており、未だに差別意識が残っています。差別問題を解消するためには、アイヌの歴史や文化を、日本で暮らすすべての人々が正しく理解する必要があります。

参考:公益社団法人 北海道アイヌ協会

部落差別問題

部落差別問題とは、歴史的過程のなかで形作られた、現代にも残っている身分差別問題です。「同和地区」や「被差別部落」などと呼ばれる地域に生まれたり、住んだりしている人々は、就職や結婚などに対する差別を未だに受け続けています。日本政府は、同和問題への理解と差別意識の解消のために、部落問題に対する歴史的教育や、企業への啓発などを実施しています。

参考:5 同和問題(部落差別)|東京都総務局人権部 じんけんのとびら

外国人への差別問題

「言語」「宗教」「文化」「習慣」などを理由とした外国人への人種差別行為が、日本で大きな問題になっています。賃貸の契約拒否や、不当な雇用条件、施設利用の拒否など、日本に住む外国人はさまざまな被害を受けています。外国人への差別問題を解消するためには、多様性を認め、お互いの習慣や文化を尊重できる社会を実現することが必要です。

参考:法務省:外国人の人権を尊重しましょう

人種差別解消に向けて

人種差別をなくすために、世界ではさまざまな取り組みが行われています。人種差別解消に向けて、世界や日本でどのような取り組みが行われているのか見ていきましょう。

世界での取り組み

ここでは、人種差別撤廃に関連する条約「人種差別撤廃条約」と、アメリカで実施された人種差別に対するデモ活動「Black Lives Matter活動」を紹介します。

人種差別撤廃条約

人種差別撤廃条約とは、1965年に国連が採択した「人種差別の解消」を目指す国際条約です。この条約では、人種差別を以下のように定義しています。

  • 「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの」

上記の定義を要約すると、人種差別行為とは、さまざまな生活分野において「人種」「肌の色」「血統」「民族」「種族的な出身」などを理由に区別や制限、排除をするといった相手を害する行為です。

このような人種差別を世界からなくし、差別のない社会を実現するための取り組みを各国が積極的に行うことが求められています。

参考:Q&A

Black Lives Matter活動

Black Lives Matter活動とは、アフリカ系アメリカ人である黒人男性に対して、白人警察が残虐な行為を取ったことをきっかけに、アメリカで始まった人種差別への抗議デモ活動です。アメリカでは、白人警察官による取り締まり行為で黒人の命が奪われるケースが相次いでおり、大きな問題になっています。このような黒人への人種差別行為を解消するための行動として、遺族を中心とした集団抗議活動や、音楽業界によるデモ活動「Black Out Tuesday」などが行われています。

参考:日本の人種差別問題、「Black Lives Matter」で浮き彫りに – BBCニュース

日本国内での取り組み

ここでは、外国人への人権侵害行為である「ヘイトスピーチ」に対する日本国内の取り組みを紹介します。

法務省:ヘイトスピーチ、許さない。

「ヘイトスピーチ」とは、特定の国の出身者や、その子孫という理由だけで日本から排除しようとしたり、危害を加えたりする差別的言動です。日本は、2016年に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取り組みの推進に関する法律」(ヘイトスピーチ解消法)を制定し、外国人への差別解消に向けた取り組みを行っています。また、法律の制定だけでなく、法務省では「民族や国籍などの違いを認め、互いの人権を尊重し合う社会を築く」ために、「ヘイトスピーチ」が許されない行為であることを、国民に浸透させる活動を実施しています。

参考:法務省:ヘイトスピーチ、許さない。

企業による取り組み事例

人種差別をなくすための活動は、国だけでなく、多くの人々を雇用している企業も積極的に行わなければなりません。ここでは、実際に企業が行っている、人種差別問題解消に向けた4つの取り組み事例を見ていきましょう。

1.アディダス:アメリカでの新規採用3割以上を黒人と中南米系に

スポーツ用品の大手メーカーであるアディダスは、2020年、新たな採用方針としてアメリカで新規に雇う従業員の3割以上を、黒人もしくは中南米系にすると発表しました。この新規採用方針は、「Black Lives Matter活動」などによる人種差別撤廃の声に、企業として答えた取り組みです。また、アディダスでは、黒人を支援する活動を対象に、4年間で2,000万ドルを寄付する予定であるとも発表しています。

参考:アディダス、米国での新規採用3割以上を黒人と中南米系に – CNN.co.jp

2.アップル:初の黒人起業家支援施設をデトロイトに開設

2021年にアップルは、同社において全米初である黒人起業家支援施設をミシガン州デトロイトに開設すると発表しました。同社は、人種差別問題解消のための黒人コミュニティーへの支援に対して、1億ドルの予算を充てる活動「人種的公平と正義のイニシアチブ」を発表しており、今回の取り組みはその一環とされています。アップルにおいても、「Black Lives Matter活動」が今回の取り組みを始めるきっかけです。今後も人種差別撤廃に向けて、多くの黒人が通う「歴史的黒人大学(HBCUs)」の学生に向けた育成プログラムの実施や、マイノリティーの起業支援を行うベンチャーへの投資など、さまざまな取り組みを計画しています。

参考:米アップル、初の黒人起業家支援施設をデトロイトに開設へ(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ 

3.花王:「美白」表現を撤廃

化粧品大手メーカーである花王は、「美白」と表示されている商品の、販売停止や表記変更を発表しました。花王の人種差別撤廃に向けたこのような取り組みも、「Black Lives Matter活動」が世界に広がっていることがきっかけです。美白表現の削除は、花王が日本で初ですが、海外では英ユニリーバが「ホワイトニング」や「ライトニング」「フェアネス」などの、人種差別に繋がる表現の削除を、以前から積極的に実施しています。白い肌が美しいといった固定概念を変えることで、誰もが生まれ持った容姿や肌の色に対して、ポジティブに考えられる世の中の実現を目指しています。

参考:花王、「美白」表現を撤廃 人種の多様性議論に配慮: 日本経済新聞

4.ウーバー:「反人種差別企業」になるための施策

ウーバーのCEOであるダラ・コスロシャヒは、同社が「反人種差別的な企業」になると発表し、以下のような取り組みを実施しています。

  • 黒人が所有する中小企業支援のため、1,000万ドルを投資する
  • ドライバーなどを対象とした反人種差別教育の充実
  • 偏見や差別問題に特化したカスタマーサポートの創立
  • 黒人が所有するレストランの配達料を0ドルに
  • 賃金の公平性確保と黒人代表の倍増

このような人種差別解消に向けた取り組みを行うことで、「ウーバーで働く人や、ウーバーとともに働く人が、平等に扱われ、存在価値を感じられる会社になる」ことを目指しています。

参考:ウーバー、「反人種差別企業」になるための施策を発表…黒人所有の中小企業支援に1000万ドル拠出など | Business Insider Japan 

個人でできる取り組み例

人種差別問題をなくすためには、国や企業が取り組みを行うだけではなく、個人でも行動を起こすことが大切です。ここでは、すぐにでも始められる、個人でできる取り組み例について見ていきましょう。

  • 人種差別問題をしっかりと学び、現状について理解しておくことが大切です。
  • 人種差別のつもりではなくとも、知識不足により差別的発言をしてしまう可能性があります。友人や家族などであっても、これらの差別的発言に対しては、しっかりと注意しましょう。
  • 人種差別解消に向けた取り組みを行っている企業に対して、製品の購入や投資を積極的に行いましょう。
  • 「人種差別をしない」といった考えではなく、「人種差別に反対する」意識を持ち、行動や発言をすることが大切です。
  • 人種差別解消を求める活動などに参加することが、世の中の意識を変えるきっかけになります。

一人ひとりが人種差別問題に関心を持ち、多くの人が上記のような取り組みを始めることで、問題は解決へと進んでいくでしょう。

 

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まとめ

国際社会では、人種差別問題を解決するために、さまざまな取り組みを実施しており、すべての人々が幸せに暮らせる社会の実現を目指しています。しかし、世界には、人種差別で苦しむ人々が残っており、まだまだ「平等な社会」は成り立っていません。現状のままでは平等な社会の実現への道のりは遠く、差別問題解消に向けた取り組みを強化していく必要があります。

差別はするべきではないものと、多くの人が認識していることでしょう。しかし、自分が絶対に差別をしないと思い込むことは危険です。知識不足により、無意識に差別に繋がる言動をしてしまうおそれは誰にでもあります。そのことを念頭に置きつつ、人種差別を世界からなくすために一人ひとりが人種差別についてしっかりとした知識を持ち、解決に向けて行動することが大切です。

 

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