社会

小学生向け防災教育とは?目的や必要性、取り組み例15選を紹介

災害大国の日本おいては、子どものうちから興味・関心を持つように促し、被災時に備えとして防災に関する知識を得ておくことが重要です。防災教育を行うことで、単に知識として防災について知るだけでなく、自分ごととしてとらえ、自発的に考える力を育むことにもつながります。

小学生向けの防災教育には、興味・関心が持てるよう工夫された内容であることが求められます。実際に、小学生向け防災教育としてどのような内容のものが提供されているのでしょうか。

本記事では、小学生向けの防災教育とは何かとして、目的・必要性をお伝えします。また、防災について学ぶための方法・教材(本・ワークブックなどの教材、クイズ・ゲーム・ワーク、動画、イベント、施設)についても紹介します

 

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小学生向け防災教育とは

小学生防災教育がなぜ重要なのか、目的と必要性を紹介します。

1.小学生向け防災教育の目的

防災教育は年齢に関わらず重要ですが、年代ごとに理解度や思考力が変わるため、発達の段階に応じた防災教育が重要視されています。そこで文部科学省の「学校防災のための参考資料「生きる力」を育む防災教育の展開」より、小学生の防災教育の目標を紹介します。

小学校段階における防災教育の目標は次のとおりです。

  • 日常生活の様々な場面で発生する災害の危険を理解し、安全な行動ができるようにするとともに、他の人々の安全にも気配りできる児童

この目標を達成するための、具体的な指導内容についても、次のように定めています。

1.知識、思考・判断

  • 教師の話や指示を注意して聞き理解する。
  • 日常の園生活や災害発生時の安全な行動の仕方が分かる。
  • きまりの大切さが分かる。
  1.  危険予測・主体的な行動
  • 安全・危険な場や危険を回避する行動の仕方が分かり、素早く安全に行動する。
  • 危険な状況を見付けたとき、身近な大人にすぐ知らせる。
  1. 社会貢献、支援者の基盤
  • 高齢者や地域の人と関わり、自分の できることをする。
  • 友達と協力して活動に取り組む。

小学生時に防災の危険性を理解し、安全な行動をとることの重要性を知ることは、その後成長の土台となります。子ども自身の防災対策としても、地域の防災活動の担い手を守り、育成するといった観点からも、小学生時の防災教育は重要だといえるでしょう。

引用:学校防災のための参考資料「生きる力」を育む防災教育の展開|文部科学省(PDF)

中学生の目標

  • 地域の防災活動や災害時の助け合いの大切さを理解し、すすんで活動できる

高校生の目標

  • 安全で安心な社会づくりへの参画を意識し、地域の防災活動や災害時の支援活動において、適切な役割を自ら判断し行動できる

2.小学生向け防災教育の必要性

地域住人の一人として、小学生も一人ひとりの防災意識を高めていくことが必要です。災害への備えには大きく「自助」「共助」「公助」の3区分があります。「自助」とは、災害が発生したときに、まず自分自身や家族を助けること。「共助」とは、地域のような身近なコミュニティの人たちが協力して助け合うこと。そして「公助」とは自治体や消防、警察、自衛隊といった公的機関による救助・援助のことです。

公助は大規模な防災活動ができる一方で、地震のような広範囲の災害時に公助だけに頼ってしまうと、リソースが不足してしまいます。そのため災害時には「自助」「共助」も大きな役割を果たします。

実際の災害時に「自助」「共助」が果たした役割には、次のようなものがあります。

  • 阪神・淡路大震災

実際に、阪神・淡路大震災において、倒壊家屋などに閉じ込められた住民のおよそ8割が、近隣の住民によって救助されたといわれていいます。

  • 最大震度6弱の地震時

また、家具固定率が60%を超えている静岡県では。過去に発生した最大震度6弱の地震において、地震の規模に比して被害が比較的小さかったといわれています。これは、子どもの頃からの防災教育により、静岡県の住民が普段から適切な備えを行っていたことと、関係しているのではないかと考えられています。

出典:特集 防災教育|防災情報|内閣府

防災教育では「自助」「共助」の精神を持つことが求められるため、家庭・学校・自治体など幅広い防災の取り組みによって、それらの意識を育むことが重要です。

小学生では、体格面や体力面から直接的な救助は難しいかもしれませんが、例えば、倒壊した家屋に閉じ込められた人がいることを知らせることや、津波の際に大きな声を発しながら高台に避難するといった行動をとることは可能です。

小学生が防災を学ぶためにおすすめの方法・教材

小学生向けの、防災に関して学ぶ方法や教材を以下の区分から全15種類紹介します。

  • 本・ワークブック
  • クイズ・ゲーム・ワーク
  • 動画
  • イベント
  • 施設

2023620日現在の情報です

本・ワークブック

1【本・ワークブック】香川県 小学生用防災教育副読本

香川県ホームページでは地震と風水害について学べる教育副読本として、「地震がやってくる前に」「風水害に備えよう」の2つのPDFファイルを公開しています。香川県は南海トラフ地震の影響が大きいとされるため、南海トラフ地震の被害予想や発生確率なども掲載しています。

また副読本だけでなく、パワーポイント資料も公開されています。パワーポイント資料はスライドの追加・削除等を自由に行えるため、対象や時間に応じた工夫が可能でしょう。

参考:小学生用防災教育副読本|香川県

2【本・ワークブック】横浜市 じぶん防災ハンドブック

横浜市のじぶん防災ハンドブックはイラストを用いながら主に地震と風水害について紹介しています。地震・風水害ごとのワークもしっかりと掲載されているほか、大雪や火山についても触れるなど、網羅性の高い内容になっています。

参考:じぶん防災ハンドブック|横浜市

3【本・ワークブック】福岡県防災教育副読本「命をまもる!!ガイドブック」

福岡県防災ホームページでは、低学年用・高学年用に分けて防災副読本を公開しています。低学年用・高学年用それぞれ「風水害編」「地震・津波編」があります。実際の災害時の写真や、被災した小学生の声を載せるなどして、子どもが災害について深く考えられる内容となっています。

また、本副読本を活用して防災教育を行う際に参考になる、「指導の狙い」「授業展開例」「補足説明」などが記載された「指導参考資料」も用意されています。

参考:子ども向け|防災啓発|福岡県防災ホームページ

クイズ・ゲーム・ワーク

4【ワーク】写真で危険探し

内閣府防災教育・周知啓発WG 防災教育チームでは自分事として考えることにつながる「写真で危険探し」というワークを提言しています。これは学校生活や自身が写った写真など、身近な写真を題材にして、写真のなかの危険を探す、というワークで、身の回りの危険を自分事化する効果があるとされています。

なお、中高学年は防災小説という選択肢もあります。防災小説とは災害条件を指定し、自分を主人公として被災小説を書くことです。「その時自分は何をしているか」「どんな気持ちか」「家族や町はどうなるか」を想像することで、災害と向き合うことができるとされます。

参考:防災教育・周知啓発ワーキンググループ防災教育チーム 提言|内閣府(PDF)

5【クイズ・ワーク】青森県 ~防災を正しく学び、考える~あおもりおまもりノート

青森県ホームページでは防災教育活動支援ツールのひとつとして「~防災を正しく学び、考える~ あおもりおまもりノート」を公開しています。ノートでは、複数の選択肢から正しいものを選択させるクイズ形式の設問が複数入っています。また、教室にいる際に地震が起きたという前提条件のもと、絵を見ながら危険だと思うところを○で囲むといった考えさせる内容も入っています。また、指導ガイドも用意されています。

さらに、投影を想定したプレゼンテーションソフト形式の資料や、防災教育素材(データ)集も準備されています。高学年であれば詳細なデータを提供することで、より質の高い防災教育が可能でしょう。ただし、プレゼンテーションソフトや防災教育素材(データ)集について提供を受けたい場合は、問い合わせが必要です。

参考:「~防災を正しく学び、考える~あおもりおまもりノート」等の防災教育活動支援ツールについて|青森県庁ホームページ

6【ワーク】内閣府政策統括官(防災担当) TEAM防災ジャパン

内閣府政策統括官が運営する「TEAM防災ジャパン」にある、子どもが防災について調べるのをサポートするコンテンツです。Webサイトでは6つのステップに分かれており、地域を自宅周辺、家のなかのリスク、もしくは家の人と話し合うことなど、防災について考えるサポートをします。最後のステップでは自身で調べたものを発表するためのポイントにも触れています。

参考:私のお家は大丈夫?自分の地域を知って、災害に備えよう!|TEAM防災ジャパン

7【クイズ・ゲーム】埼玉県 小学生向けイツモ防災教材

埼玉県ホームページにある小学生向け教材で、「イツモ防災=いつもの生活のなかでできる備え」としてクイズやゲームを通して防災の考えを学ぶことができるものです。例えば家のなかのイラストを見て答える「地震でできなくなることクイズ」「家具転倒防止間違い探しゲーム」、被災時に暖をとる方法や、食器の代替品を作る方法などを考える「防災グッズ(知恵と工夫)クイズ」などがあります。一つひとつのクイズは短いですが、種類が豊富で、多方面から防災について考えることができるでしょう。

参考:小学生向けイツモ防災教材|埼玉県

8【クイズ・ゲーム】国土交通省 防災カードゲーム「このつぎなにがおきるかな?」

国土交通省のホームページで公開されている防災カードゲームです。「津波編」と「水害編」のカードがあり、それぞれの災害が発生したときに起こる状況を「A」「B」「C」の3段階で説明しています。シンプルに何がおきるかならべる「防災7ならべ」のほか、かるた形式やトランプのババ抜きに似た形式でも遊べます。

名刺サイズ、はがきサイズ、A4サイズと3種類のサイズがあり、活用形式に応じてダウンロード可能です。

参考:水管理・国土保全:防災カードゲーム「このつぎなにがおきるかな?」|国土交通省

動画

9【動画】青森県防災普及啓発アニメーション動画

アニメーションで災害時にとるべき行動を周知する、普及啓発アニメーション動画です。30秒と短い時間ですが、地震、津波、大雨洪水などシチュエーションを絞り、重要度の高い情報を端的に伝えています。

参考:青森県防災普及啓発アニメーション動画|青森県庁ホームページ

10【動画】千葉県 防災意識高揚のための啓発動画

千葉県のホームページには「防災意識高揚のための啓発動画」が複数あります。大人がいない状況での被災に焦点を当てた「安全に登下校するために」があるほか、「避難訓練の心構え」「いざというときの連絡方法」など、日ごろの防災意識の重要性を説く動画も複数ありあります。

参考:ちばコレchannel ~千葉県の動画を皆さまへお届けします~

11【動画】国土交通省 若年層等向け動画

国土交通省のホームページには小学生向けの防災ワークやタブレットやPCで行える防災クイズなどが公開されています。そのなかの「リスクシミュレーションアニメ マイ・タイムライン劇場」は、「赤ずきんちゃん」「浦島太郎」などのキャラクターによる防災動画です。子どもにもなじみあるおとぎ話の登場人物たちがリスクを回避するために自ら考え行動していく内容となっており、「シミュレーション」することの重要性が分かる動画となっています。

参考:防災教育ポータル|国土交通省

イベント

12【イベント】防災フェス

親子で楽しく楽しめる防災イベントが「防災フェス」です。提供企業がオリジナルの体験型防災イベントとして、防災謎解きやワークショップをプロデュースします。また、フード企画・手配、地産地防の観点からのオリジナルイベントの企画、講演会、集客支援、会場装飾や演出、ノベルティ手配まで幅広いサポート力で楽しく、意義のある防災フェスを実現します。

参考:防災フェス|あそび防災プロジェクト

13【イベント】防災ヒーロー入団試験

防災ヒーロー入団試験は子どもでも参加可能な体験型防災アクティビティイベントです。種目の一例として、水消火器を使って的を倒す「水消火器射的」や、新聞紙スリッパを作ってイボイボの上を歩く「防災スリッパ作り」などがあります。これらの種目によって体と頭を動かしながら楽しく防災を学べます。自治体、教育機関、企業や商業施設のファミリーイベントなど、さまざまなシーンで開催できる体験型防災です。地域・学校・家族の交流にも貢献します

参考:防災ヒーロー入団試験|あそび防災プロジェクト

施設

14【施設】防災施設

災害の怖さ・対処法を学べる施設があります。ここでは2か所の施設を紹介します。

  • 防災館

東京都消防庁が運営する施設で、地震の揺れの体験、初期消火や応急救護、火災の煙からの避難要領など、防災に関する知識や技術を学べるほか、VR防災体験も可能です。施設は池袋、立川、本所の3か所にあります。特に立川防災館は楽しみながら防災体験できる施設を目指しており、親子での防災体験イベントも開催しています。

参考:防災館 東京消防庁 都民防災教育センター

  • 神奈川県総合防災センター

神奈川県総合防災センターでは地震・風水害といった災害体験のほか、通報体験、心肺蘇生体験などもできる「体験フロア」があります。なお、該当施設は県内各地で大規模な災害が発生した場合には救援活動の拠点としての役割を果たします。そのために各種の防災資機材や物資を備蓄しており、施設自らが平時の準備の重要性を知らしめる存在であるといえます。

参考:神奈川県総合防災センター – 神奈川県ホームページ

15【施設】地震体験車

特定の施設ではなく、学校や自治体等でレンタルできる地震体験車もあります。ここでは2つ紹介します。

  • 足立区 地震体験車・煙体験ハウス

実際の地震に近い揺れを体験できる震体験車と煙体験ハウスです。区内の学校・町会自治会・事業所等で防災訓練を実施する際に、予約のうえ利用可能です。

参考:「地震体験車」「煙体験テント」の運行について|足立区

  • 長野県 地震体験車

長野県の地震体験車で、県内の市町村、消防機関へ貸し出ししています。車椅子リフターがあるため、車椅子での体験も可能です。

参考:地震体験車について|長野県

まとめ

災害に備えるためには、小学生のうちから防災の必要性や対応の基礎的な知識を学び、興味・関心を持つことが非常に重要です。そのためには、分かりやすく伝えることはもちろんですが、実際に体験してみることが効果的です。防災について学ぶ方法はさまざまですが、自発的に興味・関心を持てるもものにまず触れてみるように促しましょう。教材やクイズなどの活用とともに、体験型の防災教育を検討してみてください。

 

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