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社会

環境保全とは?取り組み内容や個人ができることについて解説

これまでの経済発展により人々の生活は快適になりましたが、環境への負担によって気候変動が起こっています。気候変動による温暖化や自然災害の増加を抑えるためには、地球環境への負担を減らす「環境保全」に向けた取り組みを進めていくことが必要です。

本記事では、環境保全についての基本的な内容や、国や企業が行っている取り組み、個人でもできる取り組みについて解説します

 

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環境保全とは?

環境省によると、環境保全とは「事業者等の事業活動により環境に加えられる影響で、環境保全上の支障の原因となるおそれのある環境負荷の低減のための取り組み」と定義されています。環境保全への具体的な取り組みは、以下のような活動です。

  • 「温暖化」「オゾン層破壊」「海洋の汚染」「野生生物種の減少」などによる地球環境への悪影響を減らす
  • 「大気汚染」「水質汚濁」「土壌汚染」「騒音」「振動」「地盤の沈下」「悪臭」など、人の健康や生活環境に被害を与える公害を防止する
  • 「天然資源の使用削減や再利用」「リサイクル等」(水を含む)を促進する
  • 企業の事業活動などによる、環境への負荷を低減する

環境保全と聞くと、自然環境のみを守るための取り組みであると思われがちです。しかし、環境保全には自然環境への負担を少なくすることで、人々の暮らす環境を守るといった目的も含まれています。

参考:環境省 環境保全の定義 (env.go.jp)

環境保全に向けた施策

日本では、環境への負担をできる限り少なくするために、さまざまな取り組みが行われています。ここでは、「環境保全型農業」「環境保全協定」「グリーン成長戦略」について見ていきましょう。

環境保全型農業

環境保全型農業とは「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業」です。農作物の生産は、少なからず自然環境への負荷がかかっているため、その影響を最小限にとどめ、環境に優しい持続性のある農業を行っていく必要があります。そのため、環境保全型農業では、以下のような環境保全に向けた取り組みを行っています。

カバークロップ

カバークロップとは、土壌侵食の防止や改善を目的として、農地を休ませる時期に収穫物ではない植物を植えたり、植物のマルチング(土の表面を資材で覆う方法)をしたりする取り組みです。自然の植物を使うことで化学肥料の使用が少なくなるため、環境への負荷を軽減することができます。

有機農業

有機農業では、「遺伝子組み換え技術」や「化学的に合成された肥料や農薬」を使用しないことで、環境への負荷を軽減します。また、その土地自体の生物などと共生した畑づくりに取り組むため、生態系への悪影響を防ぐことにも繋がります。

地域特認取組

地域特認取組とは、カバークロップや有機農業のような、一定の決まりがある農業ではなく、地域の特性や環境などを考慮した環境への負荷が軽減される農業を対象としたものです。

農業者がこのような取り組みを行うためには、設備や器具を新しく準備する必要があるため、多くの費用がかかります。そこで、農林水産省は、これら環境保全への取り組みを行っている農業者の支援を目的とした「環境保全型農業直接支払交付金」という支援金の制度を定めています。

参考:環境保全型農業関連情報:農林水産省 (maff.go.jp)

環境保全協定

環境保全協定とは、「法令の規制を上回る自主的な環境保全対策を事業者に促すため、大規模な事業所が集中して立地している地域において、地元市町の要請に基づき、県、市町及び主要事業所で締結しているもの」です。

日本では「自然環境保全法」により、事業者は自然への負担を考えながら事業活動を行うことが定められています。しかし、環境への負荷を軽減するためには、「自然環境保全法」以上の取り組みが必要です。そこで、各自治体では、地域の特性に合った独自の協定を結ぶことで、より効果的な環境保全への活動を事業に促しています。

参考:環境保全協定 (hyogo.lg.jp)

グリーン成長戦略

日本政府は、2020年10月に「2050年までに温室効果ガス排出量をゼロにし、カーボンニュートラルの実現を目指す」と宣言しました。カーボンニュートラルを実現するには、大規模な改革が必要であるため、経済産業省を中心とした「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(グリーン成長戦略)」を策定することで、取り組みを加速させています。

本来、経済の成長とカーボンニュートラルの実現は両立が非常に難しいものです。「グリーン成長戦略」では、従来の経済システムを変革し、経済成長と環境保全の両立に取り組む企業を支援することで、2つの両立を目指しています。また、今後の成長が期待されている14の産業分野を挙げ、具体的な成長目標を設定することで、カーボンニュートラル実現へのより明確なプランを示しています。

参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 (METI/経済産業省)

具体的な取り組み事例

地方自治体や企業では、環境負荷の軽減を目的とした、さまざまな取り組みを行っています。ここでは、実際に行われている、環境保全に向けた具体的な取り組み事例を見ていきましょう。

各地域で行われている取り組み事例

環境への負担を少なくするための取り組みは、地域の特性などによってさまざまな形があり、地方自治体では、地域ならではの環境問題や独自の生態系を守るための取り組みを行っています。

京都市「京都伝統文化の森推進協議会の森づくり」

京都は、東山・北山・西山の三山に囲まれた、非常に自然豊かな都市です。しかし、近年の人口増加や生活様式の変化などによって、自然と人が疎遠になりつつあります。本来、人と自然は共生の関係にあり、人の手が入ることで、植生が一定に保たれていました。しかし、人の手が離れることで、一部の木が「枯れてしまう」「増えすぎてしまう」など、さまざまな変化が起きています。

そこで、京都市では、「京都に根付いた自然と共生する日本の伝統文化を復活させ、美しい森林景観を取り戻す」ことを目的に、森林環境を守るための活動を行っています。森林環境保全に向けた具体的な内容としては、勾配や土質などの環境特性に配慮した「植林活動」や、樹木がしっかりと根を張る「災害に強い森づくり」などの、健全で持続性のある森林の実現を目指した取り組みです。

参考:京都伝統文化の森プロジェクト – 「京都伝統文化の森推進協議会」は、京都東山の国有林(「東山風景林」)を舞台として、森林づくりを通じて、京都に根付いた自然と共生する日本の伝統文化を復活し、全国にそして世界に発信していくための取組です。 (kyoto-dentoubunkanomori.jp)

宮崎県「田園景観と希少生物が育む 豊かな農村環境づくり」

宮崎にある和石(よれし)地区は、周囲が国有林に囲まれているといった性質上、外来種等の進入が少なく、希少な生物が生息できる環境にあります。同地区では、この希少な環境や生物を残していくために、外部の人を招いた「里山ウォーキング」や「観察会」や、「和石地区田園の景観を守る会」による環境保全活動などを行っています。また、これらの取り組みによって、地域住民にも希少植物の守ろうという意識が共有されており、地域全体で保全活動に取り組んでいる点も大きな特徴です。

参考:和石地区田園の景観を守る会(PDF)

北九州市「アジア低炭素化センターを核にした海外展開」

北九州市では、「2050年にはCO2排出を市内で2005年度比50%、アジア地域で150%削減」を目標に、環境ビジネスに取り組んでいます。2010年6月には、脱炭素社会を目指すための拠点である、「アジア低炭素化センター」を開設しました。センターの有する環境技術や社会技術を、アジア地域へ積極的に輸出することで、社会にイノベーションを起こし、新しい価値観や文化を創造する、「アジアの低炭素革命」を目指しています。

参考:アジア低炭素化 低炭素化センター(PDF)

大崎町「リサイクル率日本一、焼却に頼らずごみを減量」

大崎町には焼却炉がなく、家庭から出たすべてのごみを埋め立て処理していました。しかし、事前の計画よりも早く処理場の容量を超えてしまうとの問題が発生し、ごみの分別処理への取り組みを始めました。分別当初は、缶・ビンおよびペットボトルのみの分別でしたが、現在では町民の協力もあり、27品目にも及ぶ分別を行った上で、ごみの出し方にも細かい指定がされています。

また、ごみの収集や運搬・再資源化や、生ごみの堆肥化などは、「有限会社そおリサイクルセンター」へ委託しています。住民と企業・行政が協力し、これらの取り組み行ったことで、焼却炉に頼らない低コストの廃棄物処理システム「大崎リサイクルシステム」を確立しました。このシステムにより、大崎町ではごみの80%以上をリサイクルすることに成功しており、埋め立て処理場は、当初の計画から40年以上もの期間使い続けることができることになりました。

参考:リサイクル率日本一、焼却に頼らずごみを減量 |WWFジャパン

神戸市「公共交通の利用促進でCO2削減しながら子育て世帯を支援」

神戸市は、子どもの市バス・地下鉄の料金を無料にし、ファミリー層のマイカー利用を減らすことで、CO2排出量を削減する取り組みをしています。22ヶ月間もの実証実験の結果、乗客数は1日あたり1,100人増加し、502トンのCO2排出量削減に成功しました。

企業の取り組み事例

日本では、政府や自治体だけでなく、企業も環境を守るための取り組みを積極的に行っています。ここでは、日本企業が行っている、環境保全に関する取り組み事例を見ていきましょう。

株式会社ニトリ「環境保全活動」

株式会社ニトリでは、商品開発や店舗運営の分野において、以下のような資源の効率的な活用に取り組むことで、環境保全活動を行なっています。

  • エコ素材を使った商品開発
  • 商品パッケージの簡素化
  • 環境に配慮した製品開発
  • 店舗の省エネ化
  • 電気自動車充電設備の導入

また、上記の取り組み以外にも、「帳票の電子化」「両面印刷奨励」「会議室へプロジェクター配備」など紙の利用数を減らすといった取り組みを行っています。

参考:環境保全活動|会社情報|ニトリ公式企業サイト (nitori.co.jp)

森永製菓株式会社「容器・包装における環境配慮の推進」

森永製菓株式会社では、包装材使用の課題である「プラスティック問題」「森林破壊」「気候変動」に配慮した、以下の3つの取り組みを進めています。

  • プラスティックの減量・減容:「inゼリー」「チョコモナカジャンボ」などを対象とした、プラスティック使用量の削減
  • 環境配慮型材料への切り替え:「ハイチュウ」「inゼリー」などの包材を、バイオマス由来のプラスティック包材に変更
  • リサイクルの推進:ゼリー飲料の空き容器を回収する取り組みである「inゼリーリサイクルプログラム」の実施

また、長期的なプラスティック削減目標として、「inゼリー」のプラスティック使用量 25%削減を目指しています。

参考:容器・包装における環境配慮の推進 | 地球環境の保全 | 森永製菓グループのサステナビリティ | 森永製菓株式会社 (morinaga.co.jp)

株式会社リコー「環境経営の推進汚染予防への取り組み」

経済の発展や利便性を高めるために使われる化学物質ですが、使いすぎると自然環境に大きな負担をかけてしまいます。株式会社リコーでは、「リコーグループ化学物質管理基本規定」を定めることで、化学物質による「人体への健康被害の予防」や「環境負荷削減に繋がる技術の開発・導入」などに取り組んでいます。

参考:汚染予防 | リコーグループ 企業・IR | リコー (ricoh.com)

株式会社NTTドコモ「生物多様性・生態系の保全」

株式会社NTTドコモは、生物多様性・生態系を守るための取り組みとして、「2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全することを目標とする30by30の達成」を目標とする「30by30アライアンス」に参加しています。その他にも、自然環境保護活動である「ドコモの森」では、全国47都道府県49か所において、ドコモ社員やドコモグループ社員を中心とした森林整備を行っています。

参考:生物多様性・生態系の保全 | 企業情報 | NTTドコモ (docomo.ne.jp)

株式会社 東芝「生物多様性の保全」

東芝グループでは、「東芝グループ生物多様性ガイドライン」を定め、生物多様性の保全を目的とした、以下のような取り組みを行っています。

  • 生物多様性に影響を与える事業活動を把握する
  • 生物多様性に配慮した事業活動などにより、生物多様性に及ぼす影響の低減を図り、持続可能な利用を行う
  • 取り組みの推進体制を整備する

また、生物多様性の保全活動を推進するため、「30by30アライアンス」や、「経団連生物多様性宣言(※)イニシアチブ」に参加にしており、生物多様性の主流化に貢献しています。

※経団連生物多様性宣言……「自然共生社会の構築を通じた持続可能な社会の実現」を目指すための宣言

参考:生物多様性の保全 | 環境活動 | 東芝 (global.toshiba)

環境保全に向け個人ができること

一見、難しく感じる環境保全への活動ですが、「地球温暖化の防止」や「海や森などの自然環境や生物多様性を守る」ことにつながる取り組みは、個人でも始められます。ここでは、個人ができる環境保全への具体的な取り組みを紹介します。

地球温暖化の防止

地球温暖化の防止につながる取り組みとして、「温室効果ガス排出量の抑制」や「ごみの削減」「エネルギー消費量削減」などに関するものがあります。

海や森などの自然環境や生物多様性を守る

人と自然が共存していくには、海や森の持続性を保つための取り組みが必要です。以下のような消費活動や行動をこころがけることで、自然環境や生物多様性の保護につながります。

 

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SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)

 

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  • チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
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概要

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  • ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進

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まとめ

人々の持続的な生活を守るためにも、環境保全に向けた取り組みは不可欠です。国や企業・各自治体では、環境保全に向けたさまざまな取り組みが行われており、一定の効果が表れています。しかし、環境を保全していくためには、国や企業・自治体だけの取り組みだけでなく、一人ひとりが環境問題の現状や、環境を守るためにできることを知る必要があります。

個人においても、環境保全に向けてできる取り組みがあるため、小さいことから積極的に実施していくことが、環境を守る第一歩となるでしょう。

 

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