環境
社会

生物多様性とは?意味や重要性を理解しよう

環境分野における重要なキーワードのひとつに、「生物多様性」があります。生物多様性とは、読んで字のごとく、多種多様な生物が存在していることを表す言葉です。しかし、単純に生物の数が多ければ良いというわけではありません。

本記事では、生物多様性とは何か、重要視されている理由を解説します。また、生物多様性は驚くべき早さで失われています。その原因と、保全をめぐる動き、私たちにできることも紹介します。

SDGsイベントの相談をするSDGsイベントの資料をダウンロードする

生物多様性とは?

生物多様性(Biodiversity)」とは、地球上の多種多様な生命のつながりを表す言葉です。「生物的な(biological)」と「多様性(diversity)」という二つの単語から成っています。

地球上に生命が誕生したのは、約40億年前のことです。環境に適応しながら進化を続け、現在では、最大値で3,000万種もの生物が生息していると言われています。すでに発見されている生物は175万種おり、未発見の生物をあわせると500万種~3000万種いると推定されています。ヒト、トラ、イルカ、ネコといった動物だけでなく、植物や菌、バクテリアなども生物」です。

生物たちは皆、それぞれ個性があり、他の生物とかかわることで生きています。一種のみで生きていくことができる生物は、存在しません。このかかわりを辿っていくと、地球上のすべての生物は、直接的・間接的につながっているということになるのです

つまり、生物多様性とは、多種多様な生物がただ存在している状態を指すのではなく、そのバランスが保たれ、つながり合って形作られる、複雑で多様な生態系そのものを指しているのです。そして、生物多様性が維持されているからこそ、私たちは地球からの恩恵を受けることができています

生物多様性という言葉が使われるようになったのは、1985年のことです。20世紀後半から、世界経済の発展に伴う環境破壊が深刻な状況になり、世界の政治家や科学者たちは、地球の未来に対して危機感を覚えるようになりました。その危機意識は世界中に広がり、近年はSDGs(※)の存在もあって、生物多様性は重要なキーワードとして注目を集めています。

※SDGsとは
2015年9月の国連サミットで採択された2030年までの国際目標、「Sustainable Development Goals」の略称で、具体的に解決するべき17の目標と169のターゲットがあります。目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」には、生態系の回復や生物多様性の保全についてののターゲットが設けられています。

出典:出典:生物多様性とは?その重要性と保全について |WWFジャパン

出典:SDGsの目標とターゲット:農林水産省 

生物多様性の3分類

生物多様性の保全等に世界で取り組んでいくために、1992年5月に「生物多様性条約」が採択されました。この条約では、生物多様性を「生態系の多様性」、「種の多様性」、「遺伝子の多様性」の3つのレベルに分類しています。

①生態系の多様性

生態系の多様性」とは、自然環境によって多様な生物のかかわり方があるということです。

地球上には、森、里山、湿原、海、川など、たくさんの美しい自然があります。これらの環境ごとにが、さまざまな形で生物同士がつながり合い、多様なな生態系を作り出が存在しているのです。

例えば、一口に「森林」と言っても、地域によって気候や地形・地質などの条件は異なります。自然環境が異なれば、そこに生息する生きもの生物も違います。そしてその森もまた、その生きもの生物たちがいるからこそ、根を張り、葉をつけることができるのです。つまり、さまざまな生物の相互作用から構成される多様な生態系が存在しています。

②種の多様性

種の多様性」とは、動物、植物、微生物にいたるまで、生物の種類が多様であるということです。

生物は、環境に適応するために、長い年月をかけて進化していくうちに、その種類が分かれ増えていったと考えられています。現在までに、約175万種もの生物が見つかっていますが、これらは地球上に生息するすべての生物のうちの、ほんの数%であると言われています。

出典:生物の多様性(生物と自然環境の多様性) – 探究ノート|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア 

③遺伝子の多様性

「遺伝子の多様性」とは、同じ「」の中にもさまざまな遺伝子を持つ生物がいるということです。

例えば、同じ「人間」という種であっても、人によって顔も違えば、体格や肌の色、目の色など、個体によって微細な違いがあります。これらの個体差は、「人間」という種の生物の中に、多様な「遺伝子」が内包されているため、生じています。「蝶」には、比較的大型の「アゲハチョウ」もいれば、庭でよく見かける「シロチョウ」、小型が多い「シジミチョウ」などが存在します。また、「アゲハチョウ」の中には、黄色みがかった羽を持つ「キアゲハ」や、体と羽の一部が紅色の「ベニモンアゲハ」など、さまざまな特徴を持った「アゲハチョウ」がいるのです。

また、遺伝子の違いによって、生息地や耐性も異なります。遺伝子が多様であることは、種の生存率を高めることにつながっているのです。

出典:私たちの生活を守る「生物多様性」って、なに?|なんとかしなきゃ!プロジェクト

出典:チョウの図鑑|岐阜大学教育学部

生物多様性はなぜ重要?

私たちの暮らしは、生物多様性からもたらされる恩恵(生態系サービス)により成り立っています。さまざまな恩恵は、「基盤サービス」「供給サービス」「調整サービス」「文化的サービス」4つに分類することができます。

①基盤サービス

基盤サービス」とは、酸素、気候、水、土壌など、生物の生存に欠かせない基盤となるもののことです。これらはすべて、生物多様性に支えられています。

 

例えば、私たちの呼吸に必要な酸素は、植物の光合成により生み出されます。森林や海があるからこそ気温や気候も安定し、水が循環するのです。また、森林の木々もひとりでに育つわけではありません。豊かな土壌が、動物の糞や死骸、他の植物を分解して栄養素をつくり出すことにより育ちます。

このように、すべての生命はつながっていて、ひとつの輪になっています。

②供給サービス

供給サービス」とは、私たち人間が日々の中で利用しているもののことです。

魚や肉、野菜や果物などの食材はもちろん、身の回りにあるものは、木材や燃料、鉱物などの自然資源で出来できています。薬や化粧品も、自然界にある成分を調合してつくられます。

野生種の遺伝子情報も、供給サービスのひとつです。これらの中から優れた性質を選び出し、組み合わせることで、より美味しく丈夫な農作物や家畜をつくり出すだすことを「品種改良」と言います。

その他にも、観賞用の植物や、ペットとしての動物なども、供給サービスに含まれます。

③調整サービス

調整サービス」とは、大気質や気候、水量・水質など、環境のバランスを整える自然の力のことです。

例えば、森林酸素を生み出すだけでなく、雨水を貯えてきれいにしたり土砂崩れや土石流などの災害を防いだり被害を軽減させるという役割もあります。また、海のマングローブやサンゴ礁は、津波や高潮から沿岸を守るという機能も果たしています。

このように、私たち人間が生活する環境は、自然の調整力によって守られているのです。

出典:生物多様性のめぐみ | 生物多様性 -Biodiversity- 

④文化的サービス

文化的サービス」とは、自然景観や芸術地域性豊かな文化伝統などのことです。

例えば、名だたる芸術家たちが生み出してきた美術作品の中には、雄大で美しい自然に影響を受けたものが多数あります。また、エコツーリズムやレジャーのように、自然は観光資源としても活用されています。

また、世界にはさまざまな文化や伝統がありますが、それらは自然と共に育まれてきました。特に、南北に長い島国である日本は、海と山、気候にも恵まれ、地域ごとに多様な文化があります。四季折々の食材を生かした「和食」は、無形文化遺産にも登録されています。

出典:生物多様性から受ける恵み/茨城県

出典:「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されています:農林水産省 

生物多様性が失われる原因

地球上のすべての生命を支えている生物多様性が、これまでにない速さで失われつつあり、多くの生物が絶滅の危機に瀕しています。原因はさまざまですが、そのほとんどが人間活動によるものです。

なぜ、生物多様性が失われているのか、4つの原因について解説します。

①開拓や乱獲

一つめは、豊かな暮らしを求める人間による、過剰な開拓や乱獲です。

農地や産業用地へ転用するために、これまで多くの森林が伐採され、沿岸地域が埋め立てられてきました。このような土地開発により、住処を奪われている生物たちがいます。また、道路やダムなど、人間が構造物を設けたことで生息できる範囲が狭くなることや、生物の移動を妨げることでエサ不足になったり、近親交配で種内における遺伝子の多様性を損なってしまったり、劣化してしまったりする可能性もあるのです。

このほかにそれだけでなく、食料や生活資材、観賞用、ファッションなど、人間の贅沢のために、動植物が過剰に採集されているという現状も生態系に大きな影響を与えています。

②里地里山の変化

二つめは、手入れ不足の里地里山が増え、自然の質が低下していることです。

かつて人々は、暮らしに必要なさまざまなものを、里地里山から得ていました。山菜やきのこなどの食材、燃料用の薪や炭などです。それらを継続的に利用するために、適切な伐採や落ち葉かきなど、里地里山を手入れし、資源を循環させていました。このような環境は、カタクリやギフチョウといった生物が好む環境でもあったのです。

しかし今では、里地里山に入らなくても、スーパーや通販などでいろいろなものが手軽に入手できるようになりました。また、少子高齢化や地方の過疎化により、里地里山を手入れする人手も不足しています。こうして、里山という生態系から、人間という種が離れてしまったことで環境が変わったことで生態系のバランスが崩れ、イノシシやニホンザル、ニホンジカなど、深い森林などの暗い環境を好む生きもの生物が増加し、さらなる生態系のバランスの悪化が加速しています。さらに、里山という緩衝地帯が失われたことで、それらの生物が直接、街などに現れ、害獣として被害を生むようにもなってしまいましたているのです。

また、前述したように、森林には水を貯えたり、土砂災害を防いだり軽減させるという役割もあります。手入れが十分に行き届かないことで、これらの機能が低下することも懸念されています。

③外来種の持ち込み

三つめは、外来種の持ち込みです。

外来種とは、本来その地に生息していない生物のことです。外来種が侵入・定着してしまうと、もともとその地域に生息していた生物が居場所を失ってしまったり、捕食されたりして、生態系のバランスが崩れてしまいます。また、外来種と同時に寄生虫や疾病気が持ち込まれる可能性もあり、大きな問題となっています大変危険です。

外来種が持ち込まれる原因は、いくつかあります。まずは、ミシシッピアカミミガメやアライグマのように、ペットとして持ち込まれたものが捨てられたケースです。それから、ハブを退治するために持ち込まれたマングースのように、天敵として導入されたケース、ヒキガエルやブラックバスのように食用やファッション、釣りなどのレジャー用として持ち込まれるケースもあります。もちろん、積み荷に紛れ込むなど、意図せずに侵入してしまうこともありますが、多くは、人間の都合によるものなのです。

また、動植物だけでなく、生物にとって有害な化学物質を持ち込むことで、生態系に影響を与える場合もあります。

④地球温暖化

四つめは、地球温暖化です。

地球温暖化が進むと、氷が溶けだす時期が早まったり、海面が上昇したり、さまざまな変化が現れます。近年は、日本にいても、地球の変化を感じることが多くなりました。連日の猛暑日、災害級の豪雨の増加、桜や紅葉の時期がずれ込んできていることも、地球温暖化が関係していると考えられています。

環境が変われば、生物たちは生息しづらくなり、自分たちに合う場所を探して移動します。日本国内でも、一部の温暖性の昆虫が北上していることが確認されています。また、環境の変化のスピードについていけない生物や、移動が困難な生物は、絶滅してしまう可能性もあるのです。地球の平均気温が1.5~2.5度上昇すると、動植物の絶滅のリスクは20~30%高まると言われています。

出典:今、生物多様性が危ない/茨城県

出典:生物多様性に迫る危機 | 生物多様性 -Biodiversity-

生物多様性の現状

現在、生物多様性はどのような状況にあるのでしょうか。

生物多様性を測る指標のひとつに、LPI(生きている地球指数)があります。LPIとは、陸・淡水・海の脊椎動物約4,400種の、約21,000個体群を対象に、個体群サイズの変動率から算出されるものです。これによると、1970~2016年の間に、脊髄動物の個体群は平均68%の減少、淡水域は84%も減少しました。

生物多様性完全度指数(BII)」、「IUCNレッドリスト指数(RLI)」など、他にもいくつか指標がありますが、いずれのデータを見ても、生物多様性がこれまでにない速さで失われていることは明らかです。

日本においても、約3割の野生動植物が絶滅の危機に瀕しています。

私たちの暮らしは、生物多様性の上に成り立っています。このままのペースで失われ続ければ、食料と水の確保が難しくなる、気候変動のリスクが高まる、感染症の発生、医薬品の開発の停滞など、さまざまな影響が出てくることも考えられるのです。

出典:過去50年で生物多様性は68%減少 地球の生命の未来を決める2020年からの行動変革 |WWFジャパン

生物多様性の保全をめぐる動き

国連は、2021年から2030年までを「国連生態系回復の10年」と位置づけ、生態系を保全・回復させるための取り組みを加速させています。

日本でも、2021年11月、「2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)」が設立されました。2011年から2020年までの間、生物多様性の普及・啓発に取り組んできた「国連生物多様の10年日本委員会(UNDB-J)」の後任組織です。企業や国民の行動変容と、ステークホルダー間の連携を促す枠組みを構築するために、総会や各種フォーラム、イベントなどを実施していくとしています。

しかしながら、日本の意識・取り組みは、世界と比べて少々遅れているというのが現状です。2019度の内閣府の世論調査によると、自然についての関心度は高いものの、「生物多様性」という言葉の意味を知っていた人は20.1%と低く、「聞いたこともなかった」と回答した人の割合は47.2%でした。

また、日本の生物多様性における取り組みが不十分であるとして、WWFジャパンは日本政府に、

  1. 環境外交を強化すること
  2. 金融セクターへの働きかけを強化すること
  3. サプライチェーンの把握と、持続可能な生産・消費を促進するための施策の実施

3点を提言しました。

資源に乏しい日本は、自然資源を海外からの輸入に依存しています。海外の環境問題も自分事と捉え、意識を高めていかなければなりません

出典:J-GBFについて|2030生物多様性枠組実現日本会議|環境省

出典:環境問題に関する世論調査 2 調査結果の概要 2 – 内閣府 

出典:10年後を決める生物多様性の議論進行中 |WWFジャパン

私たちにできること

2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)」の前身、「国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)」は、私たち一人ひとりにできることとして、「MY行動宣言」を提示し、普及・啓発に努めてきました。日常の中で取り組める5つのアクションを紹介します。

  1. たべよう
    自分の住んでいる地域の旬の食材を食べてみましょう。食材を通して、環境の変化に気づきやすくなります。また、輸送に伴う環境負荷も少なく、安価で手に入りやすいことも魅力です。
  2. ふれよう
    山に登ったり、海や川で遊んだり、自然の中で生きもの生物に触れてみましょう。直接肌で感じることが、生物多様性への理解を深めるための第一歩です。
  3. つたえよう
    自然体験の中で感動したこと、興味を持ったことを、写真や絵、文章などで他の人にも伝えましょう。
  4. まもろう 
    ボランティア活動や寄付など、保全につながる行動を起こしてみましょう。
  5. えらぼう
    環境や生態系へ配慮された商品を選びましょう。

出典:MY行動宣言の紹介 TOP | 国連生物多様性の10年日本委員会

まとめ

私たちの暮らしは、生物多様性からの恩恵により成り立っています。人間がこのままのペースで自然資源を消費し続ければ、いずれ地球に限界が来てしまうでしょう。

地球は、かつてないほど危機的な状況にあります。美しい自然と生態系、そして自分たちの生活を守るためにも、生物多様性への理解を深め、一人ひとりができることから始めていかなければなりません

 

 最期に、SDGsの取り組みを行いたい人におすすめなプロジェクトをご紹介します。

「SDGsの取り組みを会社でしたいけれど、何をすればいいのかわからない」

そんな考えをお持ちの方にぴったりなのが、「SDGsコンパス」です。

SDGsコンパスは、企業や自治体の「SDGsへのはじめの一歩」を助けるプロジェクトです。

チャンバラや謎解きなど、年間で1000件ほどのイベントを開催しているIKUSAがビジネスゲームやワークショップ、あるいは謎解きを通してSDGsに興味がわくきっかけを作ります。

「会社のみんなで、楽しくSDGsの活動をしたい」

「謎解きやワークショップを通して、リラックスした気分でSDGsについて学びたい」

そうお考えの方は、ぜひ資料をご覧ください。

出典:生物多様性とはなにか | 生物多様性 -Biodiversity-

SDGsイベントの相談をするSDGsイベントの資料をダウンロードする
あらたこまち

この記事を書いた人

あらたこまち

雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。

関連するコラム記事

新着コラム記事