社会

サプライチェーンとバリューチェーンの違いとは?分析してSDGsに役立てよう 

「サプライチェーン」と「バリューチェーン」の分析は、企業がSDGsへの取り組みを始めるうえでも役立ちますです。これらを分析して自社の事業活動を明確化させることで、SDGsへの適切な取り組みにつなげがることができるためです。

この記事では、サプライチェーンとバリューチェーンの概要や違い、SDGsとの関係について解説します。

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サプライチェーンとは 

「サプライチェーン」とは、原材料の調達・設計・製造・物流・販売といった、製品をつくり、消費者の手に届くけるまでの一連の流れを指します。この流れ全体を管理することを「サプライチェーンマネジメント」といい、近年は特にその重要性がを増しています。

サプライチェーンマネジメントの重要性

「企業は自社の利益を追求するだけでなく、環境や社会全体に与える影響に配慮しながら事業活動をすべき」という考え方である「CSR(企業の社会的責任)」が、近年重要性を増しています。

こうした環境や人権といった問題については、2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の目標としても取り上げられており、いまや世界中がSDGsに対する取り組みを行な行っています。そのなかでCSRも強く求められるようになり、環境・労働環境・人権などに関するリスクを事前回避するのに有効な手段として、サプライチェーンマネジメントに注目が集まるようになりました。

ヨーロッパではおもに人権の分野で、企業に適切なサプライチェーンマネジメントをするよう義務付ける法令が整備されつつあります。ドイツでは、2023年に「サプライチェーン・デューデリジェンス法(投資対象となる企業の価値やリスクなどの事前調査を義務付けた法令)」が施行されるまでに至っています。この流れはいずれ世界の潮流となることが予想されるため、日本も今のうちからサプライチェーンマネジメントに対する取り組みを進める必要があるでしょう。

また、多くの企業がSDGsへの取り組みに着手するなか、そうしたSDGsに対する取り組みは、消費者や投資家などが企業を選ぶ指標の1つになっているほどです。そのため、SDGsの達成につながるサプライチェーンマネジメントを行っていないことは、もはや企業にとってリスクともいえるのです。

バリューチェーンとは 

サプライチェーンとあわせて知っておきたい言葉に「バリューチェーン」があります。バリューチェーンとは、原材料の調達・設計・製造・物流・販売の各工程が生み出している価値の流れを示す用語です。

各工程と事業活動による利益を結びつけることで、それぞれの工程にどれだけの価値があるかがわかり、改善点が浮かび上がってきます。

バリューチェーンの具体例

「価値の流れ」といってもピンとこない人も多いかもしれません。ここでは、2つの企業事例具体例とともに、バリューチェーンについて解説します。

1つ目の例は、「顧客との長期的な関係性」という価値に重きをおいた保険代理店「ほけんの窓口」です。一般的に保険業といえば、セールスレディや代理店が保険商品を販売するパターンですが、ほけんの窓口の場合は形態が異なります。店舗や相談会などで顧客の将来に対する不安を聞き取り、専門用語を使わずに保険についてわかりやすく解説し、それぞれの事情に合った保険商品を提案することで、保険選択の手助けをしているのです

一般的な保険業と異なる価値提供をすることで、顧客のニーズをより正確につかみ、信頼を獲得できるようになりました。また、住所変更をはじめとする手続きの補助や継続的な相談といった価値提供を行い、顧客との長期的な関係を築いています。

2つ目の例は、「徹底したコスト削減」を行なった「ニトリ」です。ニトリでは、製品の部品を海外から輸入し、自社で組み立てて販売する「ノックダウン方式」を採用し、極力ムダを省いています。さらに、生産から流通、販売までを自社で対応するスタイルであるため、仲介にかかるコスト削減に成功しました。こうした大手ならでは経営方針により、「お、ねだん以上。」というキャッチコピー通りの「低価格でおしゃれなものを買える」という価値を顧客に提供しているのです。

参考:ほけんの窓口グループ株式会社 | 受賞企業・事業レポート | ポーター賞

バリューチェーン分析のメリット

「バリューチェーン分析」を行うことで、自社の強みを論理的に把握でき、適切なリソース配分ができるようになります。バリューチェーン分析とは事業活動の工程ごとの価値を見つけ出すためのフレームワークで、以下のような手順で行います。

  1. 自社の活動の洗い出し
  2. 主活動と支援活動に仕分け
  3. コスト分析
  4. 強み・弱みの分析
  5. VRIO分析の実施
  6. 自社が力を入れる事業の決定

まず、自社の事業活動についてあらゆる工程を洗い出し、主活動(製品が消費者に届くまでの活動)と支援活動(主活動を支える活動)のどちらにあたるかを仕分けしていきます。次に、工程ごとの利益やコストといった数値や、競合と比較して自社の強み・弱みを明確にしていきます。

最後に、VRIO(ブリオ)分析で「Value(価値)」「Rareness(希少性)」「Imitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」という4つの観点から活動を分析し、自社が力を入れていくべき事業が何であるかを見つけ出します。

自社の強みが明確になったところで、そこに注力できるようにリソースを再配分すれば、より効率的に事業活動を行えるようになります。人や資源のムダが削減されることで、社会的・環境的リスクも抑えられます。

サプライチェーンとバリューチェーンの違い 

サプライチェーンとバリューチェーンは「サプライ(供給)」と「バリュー(価値)」という言葉のほか、以下のような違いがあります。

 

サプライチェーン

バリューチェーン

意味

製品が消費者に届くまでの流れ

事業活動の工程ごとの価値の流れ

おもな利用目的

供給の効率化・最適化

(課題の発見)

力を入れるべき事業の把握

(強みの発見)

対象

供給活動に関係する企業すべて

自社のみ

着目する活動

供給に直接関わる活動のみ

間接的に関わる活動(支援活動)も含める

 

基本的には、どちらも企業の事業活動の質を向上させるために利用されますが、サプライチェーンが課題や問題点を発見して改善するために用いられるのに対して、バリューチェーンはすでにある強みや長所をさらに強化するために用いられます。特にサプライチェーンに関しては、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みのなかで、環境・労働・人権といった分野に配慮してマネジメントを行う必要性が高まって増えています。

また、バリューチェーンが社内の事業活動を分析するだけであるのに対し、サプライチェーンは自社だけでなく供給に関連するすべての企業が管理の対象です。そのため、サプライチェーンを正確に把握するためには関連企業との綿密な連携が必要になります。関連企業間でサプライチェーンの全容を共通認識することで、より改善点を見つけやすくなるでしょう。

サプライチェーン・バリューチェーンとSDGsの関係

 

SDGsへの取り組みが普及し始めた近年においては、SDGs達成のための取り組みを行わないことこそが、企業にとってのリスクになります。とはいえ、SDGsへの取り組みとして何をすればよいのかわからないという企業も多いでしょう。SDGsへの取り組みを行うためには、自社のサプライチェーンとバリューチェーンを分析することが役立ちます。

そもそもSDGsとは?

SDGsは「エスディージーズ」と読み、「持続可能な開発目標」という意味です。持続可能な開発をするうえで重要な17の目標と196のターゲットを定めています。

地球環境を今以上に悪化させないよう、地球上にある問題を解決するために立てられた目標が、2030年を達成期限としたSDGsなのです。

SDGsの前身となったMDGs(ミレニアム開発目標)は発展途上国が対象で、明確な数値目標も設定されなかったため、さまざまな課題が残る形となりました。それを受けて、SDGsでは対象に先進国も含め、さらに国や地域レベルだけでなく、自治体や企業による取り組みが推奨されるようになったのです。特に企業に対しては、大企業・中小企業といった企業規模の違いにかかわらず、積極的にSDGsの達成に取り組むことが求められています。

SDGsに向けたサプライチェーン分析のポイント

サプライチェーンには、原材料の調達・設計・製造・物流・販売といったさまざまな工程があります含まれます。そのなかで、SDGs達成の妨げになる問題が隠れていないかを見つけることが重要です。

例えば、調達の工程で「森林伐採」や「強制労働」が行われていたり、物流の工程で「温室効果ガスの排出」や「過重労働」があったりすれば、社会・環境リスクにつながっていきます。そうなれば、SDGsの達成から遠のいてしまうだけでなく、ブランドイメージの失墜や売上の減少、株価の暴落といったダメージを受けることにもなりかねません。そのため、企業は環境・労働・人権などの分野に着目して、サプライチェーン内で問題が起こっていないかを分析する必要があります。

SDGsに向けたバリューチェーン分析のポイント

製品を消費者へ提供する各工程での価値に着目するバリューチェーンでは、各項目での活動内容がSDGsとどう関わっているかを分析する必要があります。

例えば、環境に配慮した製品の企画を立てたり、製造でクリーンエネルギーを使用したり、物流を適切な労働環境下で行っていれば、SDGsの環境や労働に関わる分野に良い影響を及ぼしていることになります。

問題点を改善するために行うサプライチェーン分析とは異なり、バリューチェーン分析は、すでに行われている事業活動のなかからSDGsと関連している部分を見つけ出し、強化するために行われます。

まとめ

企業の事業活動に関わる用語としてよく耳にする「サプライチェーン」と「バリューチェーン」。これらは、企業がSDGsに関する取り組みを行ううえで重要であるため、それぞれの意味や違いを把握しておく必要があります。

自社のサプライチェーンとバリューチェーンについて分析を行い、事業活動がSDGsとどう関わっているかを知ることは、企業がSDGsへの取り組みを始める大きなきっかけにもなります。

SDGsに対する取り組みを行うことで企業価値を高めるためにも、サプライチェーンとバリューチェーンについての理解を深め、事業活動に役立てていきましょう。

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マッスー

この記事を書いた人

マッスー

Webライター兼Web編集者。出版社に約10年勤務した後にフリーランスに。おもに、金融系・社会科系・ライフスタイル系のジャンルで執筆・編集に携わっています。基本的には引きこもりの超夜型で、お気に入りの音楽とスイーツに囲まれながら仕事をしています。

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