CSRとは?取り組むメリット・企業事例をわかりやすく解説
CSRとは、「企業の社会的責任」という意味の言葉です。木を植えたり、ボランティアに参加したり、「CSR=社会貢献活動」というイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか? もちろんこれらもCSRの一部ですが、それだけではありません。
本記事では、CSRの基礎知識や普及した背景、メリット・デメリットを、わかりやすく解説します。また、積極的なCSR活動に取り組む企業の事例も、あわせて紹介します。
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CSR(企業の社会的責任)とは?
CSRとは、Corporate(企業) Social(社会の) Responsibility(責任)という3つの英単語の頭文字をとったものです。日本語では「企業の社会的責任」と訳されます。企業も社会を構成する一員であり、地域社会や環境に配慮した行動をとるべきであるという考え方です。
社会的な課題に取り組まなければならないのは、政府や自治体だけではありません。企業も、商品・サービスの提供、従業員の雇用などを通じて、環境や人々の暮らしにさまざまな影響を与える可能性があります。企業規模の大小にかかわらず、自社の活動が与える負の影響を最小限に抑えるよう努めていかなければならないのです。
「CSR=社会貢献活動」というイメージが強いですが、それだけではありません。CSRには、以下のようなことも含まれます。
- 法律やその他の社会規範を遵守すること
- 情報を開示すること
- 企業活動の透明性を高めること
- 利害関係者に対する説明責任を果たすこと
これらは、企業が最低限果たすべき「義務」ともいえる部分です。例えば、いくら社会貢献活動に積極的に取り組んでいても、社内でデータの書き換えや虚偽の申告といった不正が行われていれば、それはCSRを果たしているとはいえないでしょう。まずは「義務」の部分をしっかり果たしたうえで、社会的課題に取り組んでいくことが大切です。
また、社会的課題は時代の流れや世界情勢によって変化するものであり、何を重視すべきかは事業内容によっても異なります。そのためCSRの取り組みは、企業の事業内容により多種多様な事例があります。
参照:令和2年度 CSR(企業の社会的責任)と人権セミナー|公益財団法人人権教育啓発推進センター(PDF)
サステナビリティやSDGsとの違い
CSRと混同しがちな言葉に、「サステナビリティ」と「SDGs」があります。CSRとの違いを整理してみましょう。
サステナビリティとは、「持続可能性」という概念です。1980年代に初めて登場し、その後「持続可能な開発」として、世界に広く知られるようになりました。「持続可能な開発」とは、“将来の世代のニーズを損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすこと”と定義されています。
「よりよい世界を目指す」という方向性はCSRと同じですが、サステナビリティは企業にとどまらず、社会全体に対するものです。企業はCSRを果たすことで、社会全体のサステナビリティに貢献することができます。
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2030年までに地球規模のさまざまな課題の解決を目指す国際目標です。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」という文書に記載されています。具体的に達成すべき17の目標と169のターゲットが設定されており、世界中の企業に取り組みが求められています。
「企業が社会的課題に取り組む」という点はCSRと同じですが、SDGsは経営に統合し、「事業」として取り組むものです。対してCSRは、本業とはかかわりのない社会貢献活動や、それ自体に利益を伴わない活動も含まれます。
参照:SDGsとは:農林水産省
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CSRが普及した背景
CSRという概念はなぜ誕生し、ここまで普及したのでしょうか。その背景にある4つの要因について解説します。
企業の不祥事が多発
CSRが普及した要因としてまず挙げられるのは、企業の不祥事が増加したことです。粉飾決算、自動車のリコール隠し、食品の偽装表示、談合など、国内外で企業や組織の不正行為が相次いで発生しました。
これによりステークホルダー(利害関係者)の企業に対する不信感が増し、説明や情報開示を求める声が大きくなったのです。
企業活動の「社会性」や「倫理性」が評価
2つ目に、ステークホルダーの企業に対する評価軸が変わってきたということが挙げられます。急速なグローバル化により、企業活動の影響が及ぶ範囲が広く複雑になったこと、発展途上国における児童労働などの問題が明らかになってきたことなどから、人権や労働環境への配慮が求められるようになりました。また、ESG投資が世界的な潮流となっているように、投資家も企業の社会性や倫理性を重視する傾向が強くなってきています。
このような変化に加えて、インターネットの急速な発展、世界の意識の向上により、企業はあらゆるステークホルダーから監視される時代となったことも、1つの要因といえるでしょう。
環境問題・人権問題への注目の高まり
3つ目は、地球の環境問題です。一般市民の意識が向上し、企業活動に伴う環境破壊に対して厳しい目が向けられるようになってきています。
日本においても、高度経済成長により、大気汚染・水質汚濁・自然破壊など公害問題が深刻化し、1971年に環境庁が発足されました。このような背景から、日本では特に「環境」に重点を置いたCSR活動に取り組む企業が多い傾向があります。
参照:環境問題の歴史|日本の大気汚染の歴史|大気環境の情報館|大気環境・ぜん息などの情報館|独立行政法人環境再生保全機構
社会的責任に関するグローバル規格が整備
4つ目に、CSRが規格化されたことが挙げられます。世界では90年代半ばごろから、国際機関などによる行動規範や基準が多数作成されていましたが、捉え方や要求内容はさまざまなものでした。国際的な統一基準を求める声が高まり、2010年に誕生したのが国際規格ISO26000です。
ISO26000では、社会的責任の7つの原則と、7つの中核課題が設けられています。
- 7つの原則
説明責任・透明性・倫理的な行動・ステークホルダーの利害の尊重・法の支配の尊重・国際規範の尊重・人権の尊重
- 7つの中核課題
組織統治・人権・労働慣行・環境・公正な事業慣行・消費者課題・コミュニティへの参画及びコミュニティの発展
国際的な手引書ができたことで取り組みやすくなり、グローバルな評価を獲得するためCSRに取り組む企業が増えていきました。
参照:ISO26000 (国際標準化機構の社会的責任規格) | CSOネットワーク
企業が取り組むべきCSR活動とは
企業はどのようなCSRに取り組むべきなのか、「コンプライアンス」「環境」「人権」「社会」という4つの項目における具体的な例を紹介します。
コンプライアンスの徹底
具体的な例としては、
- 自社の「倫理行動規範」を策定する
- 専門部署を設置し、法令の遵守状況を定期的にチェックする
- 社内の法令違反を訴えるための「内部通報窓口」を設置する
- 情報管理に関する社内研修制度を導入する
などが挙げられます。
環境対策
経済や社会は、地球環境の上に成り立っています。今後も豊かな暮らしを続けていくために、環境保全の取り組みは不可欠です。
具体的な例としては、
- サプライチェーン(商品・サービスが提供されるまでの一連の流れ)全体を見直し、あらゆる工程における環境負荷を軽減させる
- 環境に配慮した商品やサービスを開発・提供する
などが挙げられます。
人権尊重
年齢や性別、国籍もさまざまな多様な人材が活躍する時代となりました。すべての人がいきいきと働けるような職場環境をつくるために、人権リスクに対する取り組みが求められています。
具体的な例としては、
- 公正な採用選考システムの確立
- ワークライフバランスの確保
- サプライチェーン全体の見直し。社内だけでなく社外に人権侵害のリスク(労働搾取、児童労働など)がないか把握する。万が一あった場合には、直ちに対処する。
などが挙げられます。
参照:CSRで会社が変わる、社会が変わる|財団法人人権教育啓発推進センター(PDF)
地域社会への貢献
社会貢献とは、企業が地域社会と共存を図り新たな発展を目指していくための活動です。地域社会に支えられているからこそ、企業活動は成り立ちます。地域を良くしていくことが自社の基盤を強化することにもつながるのです。
具体的な例としては、
- 企業の資源(人材・物・資金)を活用した、寄付やメセナ活動
- 地域社会と一体となった商品開発
- 介護や教育の支援
などが挙げられます。
CSRのメリット
CSR活動に実際に取り組むうえで、どのようなメリットがあるのでしょうか。2012年に一般財団法人商工総合研究所が公表した、中小企業を対象としたCSRに関する調査結果を交えながら、解説します。
企業のイメージアップにつながる
CSRに取り組む目的・理由については、63.4%の企業が「企業イメージの向上」と回答しており、最も高くなっています。また、環境保護への取り組みに関しては、実際に46.4%の企業が、イメージの向上を成果として実感しているようです。
良いイメージを持ってもらうことで、商品・サービスの売り上げの向上、新規顧客の開拓、優秀な人材の確保などのメリットも期待できるでしょう。
ステークホルダーとの関係を強化できる
ESG投資が世界中で拡大しているように、ステークホルダーは企業の非財務情報を重視するようになってきています。さまざまな声に耳を傾け、それぞれに真摯に対応し事業活動を改善させていくことは、企業に対する信頼や評価を高めることにつながります。
また、通信技術の急速な発達により、噂や不確かな情報が一瞬で広まってしまう時代となりました。CSR活動に取り組むことで、このような誤解から生じるレピュテーションリスクを減らすこともできるでしょう。
参照:朝日新聞デジタル:第2回 CSR経営を進めるメリット – 知っておきたいCSRの今~社会的な信頼度をあげるために~ – CSR最新情報 – ビジネス
社員の意識・満足度が向上する
CSRに取り組む目的・理由について、「企業イメージの向上」、「経営理念等に社会的責任の履行が含まれている」についで、三番目に多いのが「従業員の満足の向上」です(55.6%)。また環境保護への取り組みに関しては、52.6%が「従業員の満足度、モラールの向上」を成果として実感しており、最も高くなっています。
これにより、生産性の向上や、離職率の低下及び定着率向上といったメリットがもたらされるでしょう。
参照:中小企業の社会的責任(CSR)に関する調査(概要)|一般財団法人 商工総合研究所(PDF)
CSRのデメリット
CSR活動は、企業に多くのメリットをもたらす可能性があることがわかりました。逆に、取り組むことでデメリットはあるのでしょうか。同じく一般財団法人商工総合研究所の中小企業を対象とした調査結果を交えながら、デメリットについて解説します。
コストがかかる
CSRに取り組んだことによるデメリットとしては、63.1%の企業が「コストの増加」と回答しています。
CSR活動はビジネスチャンスにつながる可能性を秘めていますが、SDGsと違い「事業」として行うものではなく、それ自体が利益を伴わない活動も含まれます。業績によっては、規模を縮小せざるをえない場合もあるようです。
人員確保が困難な場合も
CSRの取り組みを行った結果、53.4%が「人手が足りない」と回答しています。
少子高齢化により、さまざまな業界で人手不足が深刻な状況となっています。本業とは別に人員を確保する余裕がないため、CSRの必要性は理解しているものの、取り組みが不十分になる企業も多いようです。
企業のCSR取り組み事例
東洋経済新報社は毎年、「CSR企業ランキング」を作成しています。ランキングは、CSR分野(人材活用・環境・企業統治・社会性)に、財務(収益性・安全性・規模)の両面が重視されたものとなっています。
第15回目となる2021年版のランキング(2020年調査)から、上位3社の取り組み事例を紹介します。
参照:CSR企業ランキング2021年(第15回)-東洋経済オンライン
KDDI株式会社
前年に引き続き2年連続トップとなったのは、通信事業者のKDDIです。KDDIでは、「安全で強靭な情報通信社会の構築」、「情報セキュリティの確保とプライバシーの保護」などの6つのマテリアリティ(重要課題)を定め、さまざまな活動に取り組んでいます。
具体的には、
- 子どもや高齢者を対象としたスマホ講座の開催
- 地域の環境保全活動や子ども向けの環境教育
- 募金やボランティアなどの被災地支援
- ICT等を活用した地方創生
- ダイバーシティの推進
などがあります。
また、「KDDI Sustainable Action」を策定し、SDGsにも積極的に取り組んでいます。SDGsにより貢献するために、設定した「8つの社会課題領域」とマテリアリティとの関係性の整理も行いました。
参照:マテリアリティ (重要課題) | サステナビリティ | KDDI株式会社
NTT
通信事業者のNTT(日本電信電話)が、前年の3位から1ランクアップして2位となりました。
特に高く評価されたのは、職場環境や雇用の面です。NTTは、「チームNTTのコミュニケーション」を重点課題の1つとして、ダイバーシティの推進や、人権の尊重、魅力ある職場の実現などに取り組んでいます。その結果、有給取得率は88.7%、障害者雇用率2.7%(法定雇用率は2.3%)、人権に関する研修の受講率は97.3%など、さまざまな面で成果が表れています。
もう1つの強みは、環境面です。「人と地球のコミュニケーション」を重点課題の1つとして、CO2排出量の削減や、資源の有効利用に取り組んでいます。CO2に関しては、2030年までに、ICTを活用し、自社排出量の10倍以上を社会全体で削減するという、高い目標を設定しています。
そのほかにも、「人と社会のコミュニケーション」、「安心・安全なコミュニケーション」を重点課題として、さまざまな活動を実施しています。
参照:CSR | NTT
富士フイルムホールディングス
3位は、ヘルスケアなどの分野で事業を展開する、富士フイルムホールディングスです。
環境・健康・生活・働き方・サプライチェーン・ガバナンス という6つの重点課題に対する取り組みに加えて、新型コロナウイルス感染症への対応に関しても、積極的に支援を行っています。ヘルスケア分野だけでなく、リモートワークソリューションの提供、感染予防ポスター・POPの無料提供など、ニューノーマル(新しい日常)時代の暮らしをサポートするため、幅広い活動に取り組んでいます。
また、富士フイルムホールディングスのこれまでの代表的な取り組みとして、「公益信託富士フイルム・グリーンファンド(FGF)」があります。自然保護を目的とした、民間企業として日本初となる公益信託です。創立50周年を迎える前の年(1983年)に設立され、これまで多くの活動や研究に対して助成や支援を行い、成果を上げてきました。
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
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- SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
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- 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
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概要
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- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
CSRにはさまざまな捉え方がありますが、単純に「CSR=社会貢献活動」ということではありません。SDGs達成に向けた取り組みが世界中で広がっている今、改めてCSRとは何かを理解し、社会的責任を果たしていくことが求められています。
本記事で紹介した東洋経済のランキングのように、CSRやSDGs、サステナブルに取り組む企業の事例集やデータは多数あります。他企業の取り組みを参考に、自社のCSR体系を見直してみてはいかがでしょうか。
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【関連記事】
SDGsやサステナブルについてはこちらの記事でより詳しく解説しています。ぜひ参考にご覧ください。
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サステナブルとは?SDGsとの関係性や企業の取り組みを紹介
ESG投資とは?SDGsとの違いやメリットをわかりやすく解説
この記事を書いた人
あらたこまち
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。