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SDGsマッピングとは?やり方や注意点を解説


さまざまな場面でSDGsというワードが使われるようになり、SDGsを経営戦略に取り入れようとする企業は着実に増えてきました。その一方で、「SDGsに対してどのように取り組めばいいのだろうか」「自社の事業内容とSDGsがどのように関係しているのかわからない」といった声もよく聞かれます。そこで今回は、企業活動とSDGsの目標を関連づける手法として、SDGsマッピングを紹介します。具体的なやり方や注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。

 

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SDGsマッピングとは?

SDGsとは、持続可能でより良い社会の実現をめざす世界共通の目標です。ゴールとして17の目標が掲げられ、そのなかには企業が率先して取り組むべき課題も含まれています。

SDGsマッピングは、企業がSDGs に対して戦略的なアプローチをする際に、自社が優先して行うべき取り組みを明確にし、重点化を図ることができるフレームワークです。SDGsマッピングを実施することで、情報を視覚化してわかりやすく整理できます。

企業がSDGs経営を導入する際に、頼れる指針となるのが「SDGコンパス」です。SDGsコンパスでは、SDGsへの取り組み方を具体的に5つのステップで示しています。SDGsコンパスのステップ2「優先課題を決定する」のプロセスでは、優先課題の決定を「バリューチェーン」「サプライチェーン」から考えることが推奨されています。

バリューチェーンとサプライチェーンは混合されやすい言葉ですが、以下のような違いがあります。バリューチェーンは自社の活動が分析対象となりますが、サプライチェーンは供給に関わるすべての企業が対象です。

参照:SDGs の企業行動指針(PDF)|SDG Compass

  • バリューチェーン(価値の連鎖)
    ・自社の事業活動を段階ごとに分析し「価値の連鎖」として捉える考え方。
    ・どの工程でどんな価値が生み出されているのかを分析できる。
  • サプライチェーン(供給の連鎖)
    ・原材料の調達、製造、在庫管理、流通、販売、消費といった、製品や商品が生産者から消費者に届くまでの一連の流れ。
    ・全体の工程を一元的に管理できる。

SDGsマッピングは、このバリューチェーンとサプライチェーンを通じて、自社がSDGsに及ぼす影響を把握する作業です。自社の事業活動とSDGs の関連性を17目標のアイコンを使い「見える化」することで、自社が取り組むべきことが明確になり、目標設定や指標の策定をしやすくなります。

環境省の『SDGs活用ガイド』においても、中小企業が「自社の活動内容の棚卸を行い、SDGsと紐付けて説明できるか考えること」が推奨されています。

参照:中小企業のための SDGs 活用ガイドブック(PDF)|中小機構

企業のSDGsマッピング事例(日立グローバルライフソリューションズ株式会社)

出典:環境への取り組み~わたしたちのめざすもの~:日立グローバルライフソリューションズ株式会社

SDGsマッピングの事例として、家電品や空調機器の製造・販売を行う日立グローバルライフソリューションズ株式会社の取り組みを紹介します。同社では、自社のバリューチェーンをSDGsの17の目標および169のターゲットと照らし合わせてマッピングし、企業活動全体で正(プラス)の影響を強化して、負(マイナス)の影響を最小化する取り組みを実践していることを示しています。

マッピングにより注力すべき活動とゴールが明確になれば、持続可能でより良い社会の実現に一歩近づくことができます。また、SDGsマッピングを用いて自社の取り組みを視覚的にわかりやすく伝えることで、投資家や消費者からの信用、支持の獲得にもつながるでしょう。

 

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SDGsマッピングの重要性

SDGsに取り組む企業の課題として、事業との関係性や優先的に取り組むべき課題がわかりにくいことが挙げられます。SDGsの諸課題に対して、プラスの影響がある面は強化し、マイナスの影響がある面は最小化すれば、事業活動を通じた社会貢献度がより高まるでしょう。

そのためには、自社の事業や業務を棚卸ししてSDGsの17目標を紐付ける際に、プラスの面だけでなくマイナス面もピックアップすることが大切です。

SDGsマッピングを実施し、自社の強みと弱みを客観的に把握できるようになれば、将来のビジネスチャンスやとリスクを見つけるヒントを得られるかもしれません。紐づけた結果を分析することで、次にとるべき戦略が見えやすくなるでしょう。

  • プラス面の最大化例
    ・人材の多様性を尊重して、誰もが働きやすい職場環境を整える
    ・温室効果ガスの排出量を削減できるような自社製品を開発・提供する
    ・新規事業を立ち上げて、地域の雇用を拡大する
  • マイナス面の最小化例
    ・生産過程で使用する大量の水をリサイクルして再利用する
    ・貨物を運ぶ自動車は、排気量の少ないエコカーを導入する
    ・商品の容器や包装に使うプラスチックをサステナブルな包材に切り替える

参照:SDGs の企業行動指針(PDF)|SDG Compass

SDGsマッピングの手順

ここからは、SDGsマッピングを実施する手順をご紹介します。

1.事業内容や取り組みなどを洗い出す

まず、自社の事業や取り組みなどのなかでSDGsの17目標に関連がありそうなものを洗い出すことからスタート。自社が貢献できるSDGsを特定するヒントとして、先ほど紹介した「バリューチェーン」「サプライチェーン」を活用するといいでしょう。原料の調達から生産、製品の販売、廃棄に至るまで、一連の事業プロセスを見つめることで、解決すべき課題が明らかになります。

この時に重要なのは、取り組みの大小を気にせず、できるだけ多くの情報を出すことです。特定の意見に偏らないよう、各部署のメンバーに参加してもらいましょう。

アイデアの発想に効果的な方法に「ブレインストーミング(通称ブレスト)」があります。ブレストとは、集団でアイデアを出し合って、発想の誘発を期待する技法です。さまざまなやり方がありますが、ここでおすすめするのは、メンバー全員に付箋紙を配り、メンバーそれぞれにアイデアを書き出してもらう方法です。アイデアをたくさん出すことによって、SDGsマッピングの成果を上げることにつながります。

2.取り組みと関係があるSDGs目標を紐付ける

1で取り上げた取り組みがSDGsの17目標のうち、どの項目に該当するのかを紐づけていきます。ホワイトボードや模造紙などに枠線を引き、縦枠にSDGsの目標を1から17まで並べて、そこに先ほど書き出した付箋紙をどんどん貼り出していきましょう。

たとえば「商品に使うプラスチックを削減している」という取り組みは「目標14.海の豊かさを守ろう」に該当するため、目標14の枠に付箋紙を振り分けます。
まだ取り組んでいなくても、SDGsに影響があると思われるものは、すべて洗い出すことが望ましいでしょう。

3.環境や社会への影響を考える

ステップ3では、2で作成した自社事業や取り組みが、環境や社会にどのような良い影響を与えているのかを考えるのと同時に、近い将来起こりうる影響にも配慮します。SDGsは、環境・社会・経済の3つの側面のバランスをとることをめざして定められた目標なので、環境や社会への影響を考慮する必要があるからです。

SDGsの概念を表す構造モデルを「SDGsウェディングケーキモデル」といいます。この考え方では、SDGsの17目標を「生物圏」「社会圏」「経済圏」の3つに分類し、生物圏が社会圏の土台になり、社会圏が経済圏の土台になるように整理されています。3層とも改善すべき課題がありますが、とりわけ一番下の層にある生物圏にマイナスの影響を与えないことが重要です。自社が事業活動を継続することで環境や社会にどんな影響を及ぼすのかが、明確にわかるように整理して、実態を把握できるように可視化しましょう。

4.169のターゲットと紐付ける

最後のステップとして、これまで整理した内容がSDGsの17目標の下に設定されている169のターゲットのどれに該当するのかを考えていきます。169のターゲットとは、SDGsの17目標を達成するために解決すべき具体的な課題として設定されているものです。

たとえば2で取り上げた「商品に使うプラスチックの削減」は、目標14のターゲットである「14-1 2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚を防止し、大幅に削減する」と関連しています。

参照:SDGs の企業行動指針(PDF)|SDG Compass

SDGsマッピングの注意点

SDGsマッピングは、自社の取り組みが SDGs17目標のどの項目に関連するのか、後付けで割り当てることから「後付けマッピング」とも呼ばれています。しかし、今までと何も変わらない既存の事業や活動に、SDGsの17目標を後付けでマッピングしても本質的な問題解決になりません。社会や地球の環境は良くなるどころか、むしろ悪化の一路をたどることになるでしょう。

SDGsマッピングを通じて、SDGsへの取り組みを世のなかにアピールすれば、企業イメージの向上につながります。ですが、カラフルなロゴを貼るだけでSDGsに取り組んでいるような気分になっていると「SDGs ウオッシュ」だと批判される可能性があります。

SDGsウォッシュとは、SDGsに取り組んでいるように見せかけて、実態が伴っていないビジネスを揶揄する言葉です。一度SDGsウォッシュとみなされると、企業のイメージダウンや、消費者や取引先企業からの信頼の低下は避けられないでしょう。

SDGsマッピングは、あくまでもSDGsの目標達成を推進するためのツールとして活用することに意義があります。後付けマッピングでこれまでの活動を整理したうえで、次のステップとしてSDGsのゴールに留意しながら今後の経営目標を立て、実行していくことが重要です。

参照:『SDGsウォッシュ』と言われないために ~「SDGsの実装化」に向かう日本企業のグッド・プラクティス~(PDF)|ニッセイ基礎研究所

IKUSAのSDGsマッピングにトライしてみよう!

基本的なSDGsマッピングでは、自社事業とSDGsの17目標を紐付けて整理していきます。しかし、前提としてSDGsの知識が必要になるため、初心者には取り組みにくいという声も上がっています。そこでおすすめしたいのが、ゲーム感覚で気軽に取り組める入門編のワークショップ、IKUSAのSDGsマッピングです。

IKUSAのSDGsマッピングは、体験型イベント「SDGsビジネスゲーム ワールドリーダーズ」もしくは「オンラインSDGs謎解き ある惑星からのSOS」のオプションとして参加が可能です。自社の取り組みを「SDGsウェディングケーキモデル」に分類し、自社とSDGsのつながりを見つけていきます。SDGsに関する基礎知識を楽しみながら学ぶことができ、他社の取り組み事例の紹介などもあるので、初心者の方でも一から取り組めます。

SDGsの目標を達成するには、一人ひとりがSDGsを「他人ごと」ではなく「自分ごと」として考え、行動することが大切です。SDGsマッピングを実施し、自社とSDGsのつながりを実感することで、SDGsを身近なものとして捉えられるようになるでしょう。チーム内で一緒に考え、話し合いながらワークを進めていくので、チームビルディングとしても有効です。

参照:https://sdgs-compass.jp/sdgs-mapping/

 

SDGs研修・体験型SDGsイベント

SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)

 

概要

  • SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
  • 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
  • オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化

特徴

  • 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
  • チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
  • 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる

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【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)

概要

  • 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
  • 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
  • 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能

特徴

  • あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
  • 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
  • ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進

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【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)

概要

  • 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
  • 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
  • すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント

特徴

  • ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
  • 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
  • ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進

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まとめ

SDGsマッピングとは、わかりやすくいうと、自社がSDGsに対して優先的に行うべき取り組みを特定するための作業です。自社の現状の企業活動をすべて棚卸してみると、SDGsの17のゴール、169のターゲットとどう関係しているのか整理することができます。SDGsマッピングを通じて、思わぬ発見があるかもしれません。

しかし、既存事業とSDGsの17つのゴールを紐づけただけでは、SDGsの目標達成に貢献するのは難しいでしょう。そのままではSDGsウォッシュとみなされ、批判を浴びる可能性があります。SDGsマッピングで現状を把握するだけでなく、これから自社が貢献すべき優先課題や取り組みを特定し、実際にアクションを起こすことが重要です。

SDGsの達成期限である2030年はすぐそこまで迫っています。SDGsマッピングを通じて自社のミッションを見直し、自分たちができることから実践していきましょう。

 

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正木友実子

この記事を書いた人

正木友実子

福岡在住。大学を卒業後、大手食品メーカー勤務を経て、異業種のライターへ転身。求められている情報をわかりやすく伝えることがモットー

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