サプライチェーンマネジメントとは?必要とされる背景や導入するメリットについて解説
製品がつくられ、消費者の手に届くまでの流れを指す「サプライチェーン」。それを全体管理する「サプライチェーンマネジメント」は、企業にとってさまざまな面で重要な取り組みと言えます。この記事では、サプライチェーンマネジメントとは何か、必要とされる背景、導入するメリット、国際情勢などについて解説します。
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目次
サプライチェーンマネジメントとは
サプライチェーンとは、原材料の調達・設計・製造・物流・販売といった、製品がつくられて消費者の手に届くまでの一連の流れを指します。サプライチェーンマネジメントとは「サプライチェーン」を全体管理することです。
家電メーカーを例に取ると、「部品メーカーから部品を調達して自社で家電を製造し、完成した家電を運送業者が配送、配送先の家電量販店が消費者に販売する」という流れ全体がサプライチェーンです。
サプライチェーンは自社だけでなく他社の動きも含むため、マネジメントするには関係企業との連携が必要になります。
参考:サプライチェーンとは?意味・定義 | ITトレンド用語 | NTTコミュニケーションズ
サプライチェーンとは?基本についてわかりやすく解説
今サプライチェーンマネジメントが求められている背景
従来のサプライチェーンマネジメントは、製品の品質やコスト、納期といった企業の利益に関わる部分を効率化するために行われていました。しかし、近年はそこに新たな目的が加わるようになったのです。
グローバル化が進む現代では製品が国外で販売されることも当たり前になり、世界レベルのネームバリューを持つ企業が増えていきました。そうして企業活動が世界をマーケットとして行われるようになり、企業が社会・消費者に対する影響力を持つようになるなか企業の影響力が高まるなかで求められるようになったのが、「CSR(企業の社会的責任)」という概念です。
CSRとは、「企業は自社の利益を追求するだけでなく、環境や社会全体に与える影響に配慮しながら事業を行うべき」という考え方です。例えば、製品の原材料の調達が環境破壊につながっていたり、違法な労働環境のなかで製品が製造されていたりした場合、CSRが果たされているとは言えません。
こうした環境や人権といった問題については、2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の目標としても取り上げられており、いまや世界中がSDGsに対する取り組みを行なっています。そのなかでCSRも強く求められるようになったため、環境・労働環境・人権などに配慮したサプライチェーンマネジメントを指す「CSR調達」や「サステナブル調達」という言葉に注目が集まるようになりました。
現在、SDGsに対する取り組みを行う企業は増えており、消費者や投資家などが企業を選ぶ指標の1つになっているほどです。そのため、SDGsの達成につながるサプライチェーンマネジメントを行なって実施していないことは、もはや企業にとってリスクともいえるのです。
参考:CSR調達入門書―サプライチェーンへのCSR浸透―|グローバルコンパクト
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サプライチェーンマネジメントに取り組むメリット
企業がサプライチェーンマネジメントに取り組むことには、消費者や投資家などからの好評価につながって競争力が上がること以外にも、以下のメリットがあります。
- 社会・環境リスクの回避
- 被害の最小限化
サプライチェーンでの「強制労働」「長時間労働」「賃金未払い」「環境破壊」などの社会・環境リスクが発覚した場合、企業のブランドイメージは傷つき、周囲からの信用を失墜させることになります。苦情や抗議が殺到して業務が停滞したり、不買運動が起こったりして大幅な減収につながることもあるでしょう。環境・労働環境・人権などに配慮したサプライチェーンマネジメントに取り組むことで、企業は社会・環境リスクによる社会的・経済的打撃を回避できるのです。
また、サプライチェーンマネジメントを行うなかで手続きやルールを整備しておけば、万が一トラブルが起こっても被害を最小限に抑えられます。例えば、製造過程での確認事項を明確にしておくことで、事故や製品の不備が発生する可能性を下げることができます。そうなれば、リカバリーにかかるコストを削減できるだけでなく、企業価値を高めることにもつながるでしょう。
サプライチェーンマネジメントをめぐる国際動向
日本でも注目され始めているサプライチェーンマネジメントに対して、海外ではどのような動きがあるのでしょうか。
2021年には、一定規模以上の企業に「人権デューデリジェンス」を義務付ける「サプライチェーン法案」が、ドイツで閣議決定されました。デューデリジェンスとは、投資対象となる企業の価値やリスクなどを事前調査することであり、「人権デューデリジェンス」においては以下の項目などが調査対象となります。
- 児童労働
- 強制労働
- 奴隷的労働環境
- 労働基本権の制限
- 人体に影響を与える環境問題(水質汚濁、大気汚染)
上記の閣議決定を受けて、2023年に「サプライチェーン・デューデリジェンス法」が施行されることも決定しています。
こうしたドイツの動きを参考に、EUでも似た内容のルールが設けられると見込まれていることから、サプライチェーンマネジメントへの取り組みはやがて世界的な潮流になっていくでしょう。そのため、日本もその流れに乗り遅れないよう、今のうちから本格的にサプライチェーンマネジメントへの対応を進める必要があります。
企業ができる取り組み
ここでは、サプライチェーンマネジメントに対して企業ができる取り組みを、企業事例をもとに紹介していきます。
企業事例:NEC(日本電気株式会社)
例えば、電機メーカーのNECでは以下のような取り組みを行っています。
- CSR リスク・セルフチェックシートに基づく自己診断の実施
- 国内外のグループ会社で共通のCSR リスク管理システムの確立
- CSR 情報開示と説明責任の推進
NECでは、「品質・安全性」「環境(製品・場)」「情報セキュリティ」「公正取引関連」「労働安全・衛生」「人権」の 6 項目について、独自の管理目標値を設定しています。それをもとにCSRリスク・セルフチェックシートを作成し、社内で自己診断を行うことでトラブルを未然に防いでいます。
海外にも多くのグループ会社を抱えるNECでは、国内外でサプライチェーンマネジメントへの対応に差が出ないよう、グループ会社内で意識や知識を共有する必要に迫られました。そのため、独自のCSRリスク管理システムを確立させることを目指しています。
ほかにも、2004年9月以降、毎年 CSRへの取り組みの実状に関する「CSR 報告書」を発行することで、取引先企業や消費者などに対して情報開示を行なっています。
参考:第5章 CSR 経営におけるサプライ・チェーン・マネジメントの現状と今後
中小企業ができる取り組みの例
ただ、規模の小さな企業では上記のような取り組みが厳しいのが現実です。上記は大企業における取り組み事例ですが、中小企業ができる向けの取り組みとしては、以下のようなものがあります。
- CSRやサプライチェーンマネジメントに関する社員研修の実施
- サプライチェーンマネジメントに関するガイドラインの設定
- 顧客の状況や科学的な安全性データなどの整備
サプライチェーンマネジメントへの取り組みでまず必要になるのが、CSRやサプライチェーンマネジメントに関する知識です。研修の実施やガイドラインの周知などを通して社員に知識を身につけてもらいさせ、社内の意識改革を進めることが重要です。
そのほか、日頃から製品に関するあらゆるデータを整備しておくことで、取引先企業や消費者から製品への質問や確認が寄せられた場合でも、すばやい対応で企業相手からの信頼を高めることができます。
参考:CSR調達入門書―サプライチェーンへのCSR浸透―|グローバルコンパクト
サプライチェーン問題が顕在化した事例
サプライチェーンマネジメントに取り組むメリットとして、「社会・環境リスクの回避」があります。これは、いいかえればサプライチェーンにおいてさまざまなリスクが顕在化したことで、大きな打撃を受けた企業がいくつもあるからなのです。ここでは、サプライチェーンのなかで問題が発覚した事例を紹介します。
人権・労働に関する事例
- ある靴メーカーは、ベトナム工場で児童を劣悪な環境や労働条件のもとで過剰な労働を強制していましたこき使っていました。そのことをマスコミから糾弾されたために不買運動が起き、売上げが減少して株価が下落しました。
- ある自転車メーカーのインドの工場では、劣悪な労働環境下での従業員トラブルをきっかけに、従業員が暴徒化して死傷者が出る騒ぎとなりました。それを受けて工場は閉鎖され、企業の株価は暴落しました。
- ある衣料メーカーの日本の工場では、外国人技能実習生を「月400時間以上、残業200時間超、休みは月2~3日、手取賃金は1万円(時給換算「25円」以下)」という条件下で働かせていました。耐えかねた実習生は、社長らを相手に賃金支払いを求めて提訴しました。
環境に関する事例
- ある食品メーカーで生産されるパーム油が、保護されている自然林を違法に伐採してつくられたプランテーション(大農園)から供給されていることが発覚しました。それを受けてそのメーカーに対する不買運動が起こり、売上高が減少しました。
- ある石油関連企業のタンカーが操舵ミスによりアラスカ沖で座礁し、1,080万ガロンの原油を海に流出させました。その結果、海洋生態系は大きなダメージを受けたため、損害賠償訴訟を起こされ、賠償金50億ドルの判決が下りました。
腐敗(ワイロ)に関する事例
- ある米航空機メーカーが旅客機販売に関して便宜を図ってもらうため、日本の政治家にワイロをおくりました。それが発覚すると、元首相を含む複数の政治家が逮捕されて有罪判決となり、衆議院が解散する事態にまで至りました。
- あるイギリスの製薬会社が中国での売上を伸ばすため、病院の医者や政府関係者などに約500億円相当のワイロをおくりました。それが発覚すると地裁から約500億円の罰金刑を受けることになり、結果として売上が6割も減少することになりました。
参考:CSR調達入門書―サプライチェーンへのCSR浸透―|グローバルコンパクト
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
概要
- SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
- 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
- オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化
特徴
- 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
- チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
- 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる
【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)
概要
- 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
- 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
- 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能
特徴
- あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
- 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)
概要
- 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
- 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
- すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント
特徴
- ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
近年ではサプライチェーンマネジメントに対して、自社の利益だけでなく、環境・労働環境・人権などへの配慮も求められるようになりました。CSR(企業の社会的責任)といった概念や、SDGs(持続可能な開発目標)といった世界の共通認識が普及するなか、企業の事業活動に対する周囲の目はよりシビアになっています。
国際的にもサプライチェーンマネジメントに対する取り組みが進んできているため、日本でも今のうちから行動を起こすことが必要です。企業の規模によって取り組みの幅は異なるでしょうりますが、自社の持続的な成長のこれからの日本のためにも、できることから始めていきましょう。
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この記事を書いた人
マッスー
Webライター兼Web編集者。出版社に約10年勤務した後にフリーランスに。おもに、金融系・社会科系・ライフスタイル系のジャンルで執筆・編集に携わっています。基本的には引きこもりの超夜型で、お気に入りの音楽とスイーツに囲まれながら仕事をしています。