フェアトレードの5つの問題点とは? 解消するための7つの方法
途上国との公正・公平な貿易を行う仕組みである「フェアトレード」の市場が徐々に拡大しています。フェアトレードは、途上国における児童労働や不当な賃金による搾取など、社会的課題解決への重要な要素です。
しかし、世界的に拡大傾向にあるフェアトレードには、「価格問題」「商品イメージ」「フェアトレードの認知度」など、普及を妨げている問題も数多く存在しています。また、フェアトレードにとって、当然の価格で取引される仕組みであるにも関わらず、社会貢献の一種として捉えられてしまっているなど、根本的な目的がを理解されていないといったことも大きな問題です。そこで本記事では、フェアトレードの目的や抱えている5つの問題点と現状や、解決策について解説します。
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フェアトレードとは?
フェアトレードとは、直訳すると「公正・公平な貿易」であり、途上国で生産された原材料や製品を適正な価格で購入する仕組みです。大量生産、大量消費が続く現代社会のなかで、企業や消費者は価格の安さを重要視してきましたが、そのしわ寄せが途上国の生産者や労働者に及んでいます。
社会全体が価格のみを追い求めた結果、途上国において「労働環境の悪化」「不当な低賃金」「違法な児童労働」「環境に悪影響を及ぼす生産システム」などの大きな社会問題が発生しているのです。これらの社会的問題を解決するため、途上国との平等な貿易を継続的に行い、持続可能な生産と消費を目指す貿易の仕組みがフェアトレードです。
出典:フェアトレードミニ講座|フェアトレードとは?|fairtrade japan|公式サイト (fairtrade-jp.org)
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フェアトレードが抱える5つの問題点
国際的な目標である持続可能な社会の実現に向けて、大きな役割を担うフェアトレードですが、その普及を妨げている問題も数多く存在しています。特に日本では、他の先進国と比較してフェアトレードの普及が遅れており、企業や消費者がフェアトレードへの理解を深めることが必要です。ここでは、フェアトレードが抱えている5つの問題点について解説します。
認知度の問題
欧州における消費者のフェアトレード認知度は80%を超えるといわれています。しかし、日本ではまだ多くの消費者が認知に至っていないのが現状です。
2019年に一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム(FTFJ)が実施した、「フェアトレードに関する意識・行動調査」では、53.8%がフェアトレードという言葉を見聞きしたことがあるとの結果が出ています。
出典:【国内海外フェアトレード市場動向】国内市場規模131.3億円とコロナ禍にも関わらず伸張|特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパンのプレスリリース
日本の消費者の約半数以上が「フェアトレード」という単語自体は見聞きしていますが、そのなかでフェアトレードが貧困や環境に取り組む活動であると答えられた人の割合は6割程度であり、上記のデータでは全体の認知度は32. 8%に留まっていることが示されています。
このように、一般消費者にフェアトレード自体の意味や目的が理解されていないことが、普及の大きな妨げになっている一因だといえるでしょう。
出典:「フェアトレード」の認知率 32.8%に上昇~ 10 代での知名度は 8 割近くに ~日本フェアトレード・フォーラム(PDF)
曖昧な基準
フェアトレードの基準は、「世界フェアトレード機関(WFTO)」や「国際フェアトレードラベル機構(FLO)」によって定められています。しかし、これらの基準は、それぞれの機関が発行している認証ラベルを使用するために必要な基準であり、「フェアトレード商品」という文言は誰でも自由に使用可能です。
企業が直接途上国から仕入れたものを、独自の基準でフェアトレード商品として販売しているケースもあり、市場には異なる基準に基づくフェアトレード商品が数多く存在しています。販売しているフェアトレード商品全てに問題があるわけではありませんが、「フェアトレード」という単語を使用する基準が明確ではないため、消費者に混乱が生まれていることも事実です。
このような基準の曖昧さが、一般消費者のフェアトレード商品の購入ハードルを高めており、ひいてはフェアトレードの普及を妨げています。
認証ラベルの問題
フェアトレード商品の代表的な認証ラベルは、「世界フェアトレード機関(WFTO)」と「国際フェアトレードラベル機構(FLO)」が作成している2種類です。しかし、フェアトレード認証ラベルには、取得条件ハードルの高さや、継続的なコストの発生、ラベル自体の認知度の低さなどの問題が存在しています。
認証ラベルの取得条件
- FI フェアトレード認証ラベル(国際フェアトレードラベル機構)
FI フェアトレード認証ラベルを取得するには、国際フェアトレードラベル機構が定めた「社会的基準」「経済的基準」「環境的基準」の3つの厳しい基準をクリアする必要があり、さらに下記のようなコストが発生します。
出典:ライセンス取得手順と料金を確認する|認証の取得|参加しよう|fairtrade japan|公式サイト (fairtrade-jp.org)
- WFTO フェアトレード保証ラベル(世界フェアトレード機関)
製品自体に認証を定めている「FI フェアトレード認証ラベル」と違い、WFTO フェアトレード保証ラベルを取得するためには、組織や団体自体が「世界フェアトレード機関」へ加盟する必要があります。「世界フェアトレード機関」への加盟条件は、団体の理念や活動が世界フェアトレード機関の掲げる「フェアトレード10の原則」を順守していること、さらにフェアトレード商品の売上げが全体収支の50%以上を占めることなどが定められています。
認証ラベル認知度の低さ
日本では、一般消費者にフェアトレード認証ラベルの認知があまり進んでいません。2019年に実施された「倫理的ラベル/マークの認知度」の調査では、フェアトレードの代表的な認証ラベルである「FI フェアトレード認証ラベル」「WFTO フェアトレード保証ラベル」の両ラベルの認知度が10%未満との結果が出ています。このように認知自体がされていないため、厳しい基準をクリアしフェアトレード認証ラベルを取得しても、売上に繋がりづらいといった問題点があります。
出典:「フェアトレード」の認知率 32.8%に上昇~ 10 代での知名度は 8 割近くに ~日本フェアトレード・フォーラム(PDF)
商品価格と購買状況
フェアトレード商品は、生産コストが高いことや、認証ラベルを取得する費用がかかること、商品代金に加えて途上国発展に向けた補助金を支払っていることなどから、販売価格が上がりやすいといった問題点があります。また、フェアトレードがあまり認知されていない日本では、消費者のニーズが低く他の先進国と比べて市場規模が小さいため、高価格になる傾向があり、消費者により敬遠されているといった問題も存在します。しかし、価格の問題に関しては、「正当な賃金」「環境への考慮」によって生産された原材料や製品が高価格なことは当然であり、消費者の価格認識自体を改めることも必要です。
日本におけるフェアトレード商品の購買状況
出典:【国内海外フェアトレード市場動向】国内市場規模131.3億円とコロナ禍にも関わらず伸張|特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパンのプレスリリース
上記の通り、フェアトレードの普及が遅れている日本と、国際フェアトレードラベル機構のあるドイツでは、市場規模に大きな差があります。また、フェアトレード商品における、国民11人当たりの年間購入額が最も多いスイスでは、日本の約108倍もの購入額があり、一般消費者にフェアトレードが普及していることが伺えます。欧米諸国では消費者のフェアトレード商品へのニーズが高く、販売数量が見込めることから、ある程度価格を抑えたフェアトレード商品が作られています。その結果、購入額の大きさに繋がるという好循環が作られているのです。
日本でフェアトレードを普及させるには、まずは一般消費者がフェアトレードについて理解できる環境を作り、商品のニーズを増やすことが求められます。ニーズが増え、市場の規模が拡大することで、消費者に負担のかからない価格での供給が可能となり、日常生活にフェアトレード商品が浸透するでしょう。
フェアトレードに対する間違った認識
フェアトレードは、平等な貿易を行うことで、途上国の生産者・労働者支援に繋がる仕組みですが、「フェアトレード」の認知が進んでいない日本では、ただの社会貢献や奉仕活動など、間違った認識をされているケースも少なくありません。フェアトレードの取り組みは、あくまでも途上国の経済的発展や生産者・労働者の自立に繋がる「ビジネスモデル」であり、ただの社会貢献や奉仕活動になれば発展や自立を阻害する可能性があります。フェアトレードは、低品質の高額商品を購入することによる慈善活動ではなく、安全に作られた品質の高い商品の流通に繋がる仕組みであり、消費者と生産者・労働者双方にメリットがある「win-win」を目的とした仕組みです。
フェアトレードの最終的な目的は、対等な貿易が行われて途上国が豊かになり、フェアトレードと銘打つ必要性がなくなることにあります。
フェアトレードの問題点を解消する7つの方法
フェアトレードの普及には、阻害している問題を解決するための取り組みが必要です。ここでは、普及に向けて、どのような対応をしていくべきなのか、具体的な7つの解決策について解説します。
出典:日本のフェアトレード市場調査報告(その2) 日本におけるフェアトレードの課題と対応(PDF)
フェアトレードの市場規模を拡大するため、国としての政策や支援を実施
EUでは、政府がフェアトレードの市場を拡大するためのキャンペーンなどを支援しており、一般消費者の日常生活にまでフェアトレード商品が深く浸透しています。政府主導でフェアトレードに取り組むことで、フェアトレード市場の拡大がより加速していくでしょう。
自治体としてフェアトレードへの取り組みを行う
2000年にイギリスから始まった「フェアトレードタウン」では、自治体でフェアトレードを推進する取り組みを実施。市民や行政・企業・学校など町ぐるみで、フェアトレード商品の積極的な購入・販売やキャンペーンなど、フェアトレードを広める活動を行っており、フェアトレードタウンの数は世界で2,000を超えています。身近な自治体がフェアトレードに取り組むことで、フェアトレード自体を日常生活に浸透させる効果が望めます。
出典:フェアトレードタウンとは – 一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム (fairtrade-forum-japan.org)
認知度向上の施策
全国で統一したフェアトレードキャンペーンの実施や、消費者がわかりやすいロゴの作成、フェアトレード商品を扱う小売業者に対しての支援や研修活動などを行うことが、社会全体の認知度向上へと繋がります。
フェアトレード事業への融資制度拡充
フェアトレード事業を展開するには、認証ラベルの獲得や、仕入れコストなど多額の費用がかかります。NPOバンク(※)などを活用した融資制度の拡充を図ることで、フェアトレード商品の市場拡大が見込めます。
出典:NPOバンクについて – 全国NPOバンク連絡会 (npobank.net)
組織や団体などによる、フェアトレード事業への支援
ジェトロやJICA・自治体国際化センター・国際協力協会など、フェアトレードと関連した組織や団体と、フェアトレード事業者を繋げるための仕組みや、支援制度を作ることで、フェアトレード事業の拡大を目指します。
フェアトレード商品の品質向上
フェアトレード商品には、途上国で作られた低品質の製品を高価格で購入するといったマイナスイメージを持つ消費者もいます。商品自体の品質を向上させることで、フェアトレード商品にネガティブな印象を持つ消費者の意識が変わり、購入へと繋がります。
卸しの取引条件改善
低ロットの取引を可能にするなど、フェアトレード商品の販売ハードルを下げることで、フェアトレード市場の拡大が見込めます。
フェアトレードの現状
世界的に拡大傾向にあるフェアトレードですが、普及状況は国によって大きなばらつきがあります。ここでは、各国におけるフェアトレード商品の市場規模と、日本の現状について解説します。
国別の市場規模
代表的なフェアトレード先進国として挙げられるのは、アメリカ、イギリス、ドイツなど。これらの国では市場に多くのフェアトレード商品が流通しており、一般消費者の生活に浸透しています。また、売上規模の小さい北欧やカナダなどのなかには、国民1人当たりのフェアトレード商品購入額が欧米を超えている国もあり、フェアトレードが広く普及していることが伺えます。しかし、欧米・北欧を除く国では、フェアトレードの市場規模はまだまだ小さく、成長段階にあるといえるでしょう。
出典:消費者も知っておきたい、フェアトレードのメリットとデメリット! 現状と問題点は? | MIRAI Times|SDGsを伝える記事が満載|千葉商科大学 (cuc.ac.jp)
日本の現状
日本でのフェアトレード商品の市場規模は、フェアトレード先進国と比較すると、まだまだ小規模ではありますが、年々拡大し続けています。日本で市場が拡大している要因の一つは、社会的に SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが広がっており、それに合わせて企業もフェアトレードへ大きな関心を寄せていることです。企業が積極的にフェアトレード商品の販売をすることにより、一般消費者にもフェアトレードへの関心が生まれ、フェアトレード商品の市場が拡大・成長することが期待されています。
出典:【国内海外フェアトレード市場動向】国内市場規模131.3億円とコロナ禍にも関わらず伸張|特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパンのプレスリリース
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
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概要
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- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
途上国との公正で公平な貿易を行う仕組みであるフェアトレードは、持続可能性を求める現代社会で急速に広まっています。一方で、フェアトレードの普及を妨げる問題も数多く存在しており、問題解決に向けた行動が必要です。特に日本は、フェアトレードに対する一般消費者の認知度が非常に低く、先進国のなかでもフェアトレードの普及が遅れているため、積極的な拡大への取り組みが求められています。
途上国における生産者や労働者の権利を守り、持続可能な生産や消費に繋がるフェアトレードは、SDGs達成にも繋がる世界的に重要な取り組みであり、今後より広く普及していくでしょう。フェアトレード自体の目的を一般消費者に理解してもらい、認知度を上げていくことが、フェアトレードを日常生活に浸透させる第一歩です。
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この記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
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