SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」の概要と取り組みをわかりやすく解説
「SDGsについて興味があるけど具体的に何をすればいいの?」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
SDGsには17の目標があり、まずはそれぞれの目標について理解を深め、「自分にできることは何か?」「自社の事業と関連が深そうな目標は何か?」を見定めることが大切です。
全部で17あるSDGsの目標のうち「12・つくる責任 つかう責任」は、おもに「消費と生産」へ目を向けた目標です。
今回はSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」についてわかりやすく解説するとともに、日本や世界における取り組み事例を紹介します。
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目次
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」とは
今、生産と消費の問題は、世界各地で深刻な問題となっています。
天然資源の物的消費が加速していて、将来的な資源不足が懸念されている状況です。また、生産したものが「ごみ」として捨てられると、大気や水質、土壌の汚染などあらゆる環境問題を招きます。こうした事態を改善するためには、持続可能な消費と生産を実現することが重要です。
持続可能な消費と生産のパターンを確保する
持続可能な消費と生産パターンを確保できるようになると、少ないものでもよりよく活用できるサイクルが生まれ、資源の利用や劣化、汚染を減らすことにつながります。また、質の良いものを必要最低限所有する生活を目指すことで、各個人の生活の質を高めることも必要です。
数字で見る「消費・生産」の現状
仮に2050年までに世界の人口が96億人に達した場合、現在の生活を維持するためには地球が3つは必要となるといわれています。
多くの国でインフラや建設が進んでいる今、石灰石やケイ砂、蠟石など、非金属鉱物の利用が増えている状況です。生活水準は改善へ向かっていますが、消費・生産の過程で進む環境汚染は深刻であり、自然が浄化できるスピードを超える速さで、人間は水を汚染しているのが現状です。
また、食料においては、生産される食料全体のうち3分の1の量(13億トン)が廃棄されたり、腐敗や傷んだりしています。
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SDGs目標12の8つの達成目標
SDGsの目標12には、以下8つの達成目標が設定されています。
1.持続可能な消費と生産の10年計画を実行する
- “先進国がリーダーとなり、開発途上国の開発の状況や、対応力を視野に入れ、すべての国が主体的に行動する。”
「持続可能な消費と生産の10年計画」は、各国からの拠出金で設立された基金を通じ、二酸化炭素の排出を減らすための計画です。
二酸化炭素を減らすためのライフスタイルおよび持続可能な消費・生産を実現するための仕組みを目指しています。
2.天然資源を持続的に管理し、効率よく使えるようにする
- “2030年までに、天然資源を持続的に管理し、過剰な利用を減らす。”
天然資源の消費が加速している今、適切な管理が求められています。天然資源を使用しないという意味ではなく、無駄のない「効率な使い方」を考えて管理することが重要です。
3.廃棄される食料を減らす
- “2030年までに、お店や消費者のところで捨てられる食料を半分に減らし、生産者からお店に渡る過程で食料が失われることを減らす。”
前項でも触れた通り、世界で生産されている食料は、そのうちの3分の1が捨てられています。これは食料を無駄にしているだけではなく、ごみとして廃棄することで環境汚染を招くリスクもあります。
食料が廃棄となるシーンは、「一般家庭の食べ残し」のほか、「お店の食品ロス」「生産者からお店に並ぶまでに傷ついて売り物にならなくなる」「売れるまでに食品が腐敗してしまう」などさまざまです。
持続可能な社会の実現のためにも、世界は2030年までに食料の生産・消費について真剣に考えなければなりません。
4.大気や水、土壌などへごみが出てしまう量を減らす
- “国際的な取り決めのもと、化学物質や廃棄物を管理し環境への影響を回避できるようにする。”
あらかじめ決定されている国際的な取り決めにしたがい、「化学物質」「あらゆるごみ」の処分を考える必要があります。その際、環境に悪影響を及ぼさないようにしなければなりません。環境だけではなく、人の健康にも目を向け、大気汚染や水の汚染、土壌への化学物質などの流出を減らすことが重要です。
5.ごみの削減、リサイクル、リユースなどをすすめる
- “2030年までにごみの発生を防ぐ、もしくはリサイクルやリユースなどでごみの量を減らすようにする。”
私たちが社会生活を送る以上、ごみが発生することは避けられないことです。しかし、例えば企業であれば、製造方法を工夫することで、ごみを最小限に抑えられる場合があるでしょう。
また、ごみの発生を抑えるだけではなく、「リユース」「リサイクル」などとして、ごみとして処分される量を減らすことも大切です。
6.成果を報告するレポートの情報に適切なルールを設ける
- “規模の大きな会社、あらゆる国で活動する会社に持続可能な取り組みなどを含めた定期的なレポートの提出をすすめるようにする。”
とくに大きな会社やさまざまな国で活動する会社に対して、会社の成果を報告するレポートに「持続可能な取り組み」などを含めて申告することを推進することが重要です。
持続可能な取り組みに関する情報が含まれていることで、第三者もきちんと確認・監視しやすくなるだけではなく、会社の信頼性にもつながります。
7.ものやサービスを購入する際には持続可能な形で行われるようにすすめる
- “国や自治体がものやサービスを購入する際には、持続可能な形になるようにする。”
国の政策や、優先される事柄にしたがい、国および自治体が購入する商品に関しては、持続可能な形で行われるようにすることが重要です。
8.持続可能な開発や自然と調和したくらし方に意識を持つようにする
- “2030年までに人々が持続可能な開発・自然と調和したくらし方に関する情報を得たり、意識を持ったりする。”
持続可能な開発は一部の人々だけの取り組みでは成り立たない目標です。多くの人々が持続可能な開発や自然について目を向け、どこにいても意識を持てるようにすることこそSDGs目標12が目指す場所なのです。
達成するための具体的な方法3つ
ここからは、SDGs目標12を達成するための具体的な方法について詳しく紹介します。
1.途上国に対する科学的および技術的な能力の強化の支援
SDGsの目標を達成するために必要な方法として、まず挙げられるのが「開発途上国に対する支援」です。
開発途上国は、まだまだ科学的な分野において、知識や技術が先進国に比べて低いのが現状です。そうした状況をふまえて、先進国などが積極的に支援していく必要があります。
一口に「支援」といってもさまざまな形がありますが、とくに重要となるのが科学的および技術的な能力の強化に対する支援が必要です。
2.持続可能な開発による影響をはかるための方法を考える
地域に仕事を生み出すことや、観光業にたいして持続可能な開発がもたらす影響がどの程度あるのかを調べる方法を模索し、実行することが大切です。
もともと、地方の文化や特産品を広めるといった観光業は持続可能な産業の1つです。持続可能な開発がこうした観光業に対し、どの程度影響をもたらすのかを知っておくことは重要です。
3.開発に与える影響をできる限り小さくする
資源の無駄づかいが懸念されている今、その原因となる「化石燃料」に対する補助金の仕組みを現代の方向性に合わせて変える必要があります。
まずは、各国の状況を見ながら税金の制度を変えたり、利益を優先し、地球環境の破壊を招くような取り組みへの補助金を排除したりするなど、あらゆる面で対策を講じなければなりません。その際には、開発途上国にも目を向け貧困者などが守られるようにすることも重要です。
開発に与える影響をできる限り小さくし、「貧困者」「影響を受ける人」の損害が大きくならないようにします。
日本における取り組み事例
食品ロスやごみが多い日本において、SDGsの目標12は決して他人事ではありません。ここでは、SDGsの目標12における日本企業の取り組み事例を紹介します。
1.【企業】e-TEC
e-TECでは、環境汚染に目を向け、リサクイクル法に基づいて不要になった空調機器を処理するなど、製造過程で環境に配慮しています。
また、同社の協力会社に、リサイクル法における勉強会を行うなど、周辺会社にもSDGs目標12の取り組みを広げています。他にも、廃コンテナを活用してきのこを栽培するなど、国内の自給自足にもつなげています。
出典:持続可能な開発目標(SDGs)への取り組み | イーテックは空調(エアコン)、LED、遮熱、太陽光発電などをBestMixさせたエネルギー提案を致します
2.【企業】金子商店
野菜・果物の卸売業を中心に展開している金子商店では、持続可能な消費と生産パターンの確保を実現しています。非製造業である同社は、卸売業として管理する在庫は、賞味期限などを適切にチェックし、廃棄の防止を積極的に目指しています。
また、プラスチックごみにおいては、すべてを廃棄するのではなく、一部の再利用を除いてリサイクルを徹底。廃棄物や二酸化炭素の排出を減らし、持続可能な社会づくりの一端を担っています。
出典:金子商店
3.【企業】サンシャインジュース
サンシャインジュースが行うSDGs目標12は、「フードロスの軽減」です。収穫時の野菜が規格外であるなどの理由で廃棄されてしまうことを受け、一般的なお店では売れにくい素材を回収。野菜ジュースとして活用するというフードロス活動を行っています。
また、コールドプレスジュースをつくる過程で残る素材の搾りかすを、料理のだしとして活用するなど、廃棄処分にならないようにしています。
また、だしとして活用した後の搾りかすは、一旦土に還して堆肥作りに活用したり、染料としてパートナーに提供したりするなど、無駄のない活用に取り組んでいます。
出典:環境への取り組み SDGs & SUNSHINE JUICE
4.【企業】GSアライアンス
GSアライアンスは、SDGsの目標12の実現に向け、「Nano Sakuraブランド」を通して地球にやさしい素材の使用を促進しています。
エネルギーを必要とせず、持続可能な材料に着目し「二次電池」「光触媒材料」などを採用しています。繰り返しつかえることから、ごみの量を減らすことにつながっているのが特徴です。自社製品でのSDGsの取り組みを実現しています。
出典:GSアライアンス | GSA News&Activities
世界における取り組み事例
国外に目を向けると、製造過程で素材を見直したり、製造する際の無駄を排除したりするなど、さまざまな取り組みが行われています。
出典:SDG INDUSTRY MATRIX—産業別SDG手引き—食品・飲料・消費財産業|UNGC(PDF)
1.レゴ・グループ
デンマークで誕生したおもちゃ会社であるレゴ・グループ。プラスチック素材の組み立てブロックを製造する有名企業です。
同社が実施している取り組みは、レゴの部品や包装材料の製造時につかう素材に目を向けたものです。持続可能な原材料を新たに研究・開発・実施するために、大規模な投資を決定。包装容器のサイズを小さくするなど、徐々に取り組み内容を広げています。
2.コンシューマー・グッズ・フォーラム
「コンシューマー・グッズ・フォーラム」は、アジアやアフリカ、中東などに事業を展開している会社です。事業内容は、小売業やサービス業など多岐に渡ります。
そんな同社では、SDGsの目標12を視野に入れ、冷蔵庫やエアコンで使用する「冷媒(温度を調整する機器)」に関する決議に合意することにしました。オゾン層の破壊を促す冷媒の1つであるHFC冷媒(フルオロカーボン)の使用を中止することを目指しています。
オゾン層を守ることにつながる「非HFC冷媒」が法的に認められ、利用が可能になれば取り換えを実施するという考えを示しています。
3.ペプシコ
「ペプシコ」は、アメリカのニューヨークに本社がある企業です。食品や飲料品などを展開するだけではなく、マーケティングや流通事業などさまざまな事業を展開しています。
ペプシコが取り組むSDGsは、現地のココナツサプライヤーとの連携が挙げられます。処理済みの排水をそのまま排出するのではなく、肥料などとして農産業分野で再利用しています。
また、商品の包装材料を見直してサイズを小さくするなど、SDGsの目標12に向けた取り組みを行っています。
4.ナイキ
スポーツウェアやスニーカー、スポーツ用品など、スポーツに関する製品を開発・販売しているナイキ。アメリカの企業であり、日本にも進出しています。
ナイキが取り組むSDGsは、デザイン制作の段階で廃棄物を最小限に抑えるようにすることを目指しています。また、環境にやさしい素材を活用するなど、地球にも配慮した製品を展開しています。ナイキ独自のSDGsに取り組んでいます。具体的には、ナイキの商品に対し、再生素材を50%以上し、地球環境に配慮しています。
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
概要
- SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
- 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
- オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化
特徴
- 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
- チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
- 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる
【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)
概要
- 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
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特徴
- あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
- 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)
概要
- 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
- 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
- すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント
特徴
- ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
今回紹介した通り、世界で生産されている食品のおよそ3分の1が廃棄されている状況です。そして、水の汚染も深刻であり、目を向けなければならないポイントは非常に多いといえます。
本ページで紹介したSDGs目標12は、ごみの削減や環境破壊への対策を中心に考えられています。しかし、現状としては、まだまだ課題が多い目標であり、私たち一人ひとりが日常生活のなかで意識して過ごさなければなりません。
自社でSDGsに取り組みたいと考えている方は、まずはごみを減らすための工夫から初めてみてはいかがでしょうか。
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SDGsコンパスの資料をダウンロードするこの記事を書いた人
SDGsコンパス編集部
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