クリーンエネルギーとは?種類ごとの特徴、現状の課題と政府の取り組みを紹介
近年、「〇〇エネルギー」という言葉をよく耳にするようになりました。その1つが、「クリーンエネルギー」です。
本記事では、クリーンエネルギーとは何か、類似する「〇〇エネルギー」の意味、クリーンエネルギーの具体的な種類と、注目される理由、普及・拡大させるための政府の取り組みを紹介します。
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目次
クリーンエネルギーとは
英単語の「clean(クリーン)」には、“清潔な”、“よごれていない” などの意味があります。「クリーンエネルギー」に明確な定義はありませんが、「環境をよごさないエネルギー」を指す言葉として用いられることが多くあります。二酸化炭素(CO2)や、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)などを排出しない、または排出量が非常に少ないエネルギーが、クリーンエネルギーであると言えるでしょう。例えば、太陽光発電や風力発電、地熱発電などです。
私たちが日々エネルギーを消費することで、どれくらい二酸化炭素が排出されているのか、エネルギー別に見てみましょう。
出典:【2-1-9】各種電源別のライフサイクルCO₂排出量 | エネ百科|きみと未来と。
火力発電は、圧倒的に二酸化炭素の排出量が多いことがわかります。これだけを見ると、「化石燃料以外はすべてクリーンエネルギー」と思ってしまいそうですが、そうとは言い切れません。どのエネルギーがクリーンエネルギーに該当するのかについては、後述します。
何を持って「クリーン」なのか、より理解を深めるために、クリーンエネルギーと類似する「○○エネルギー」という言葉の意味を見てみましょう。
再生可能エネルギーとは
1つめは、「再生可能エネルギー」です。再生可能エネルギーには、法律で定められた定義があります。
(引用元:エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律 | e-Gov法令検索)
太陽光・風力・地熱・中水水力・バイオマスといった、発電時に温室効果ガスを排出しないエネルギーのことです。環境にやさしいだけでなく、国内で生産できるので、エネルギー自給率の向上にも寄与することができます。政府は、再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、さまざまな政策に取り組んでいます。
再生可能エネルギーは、クリーンエネルギーと同語と理解して問題ないでしょう。
出典:総論|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー|経済産業省 資源エネルギー庁
グリーンエネルギー(グリーン電力)とは
2つめは、「グリーンエネルギー」または「グリーン電力」です。グリーンエネルギーは、経済産業省資源エネルギー庁と環境省が実施する「グリーンエネルギーCO2削減相当量認定制度」において、以下の3つの要件をすべて満たすものとして定義されています。
(b)原子力による発電でないこと。
(c)発電過程における温室効果ガス及び硫黄酸化物・窒素酸化物等有害ガスの排出がゼロか、または著しく少ないこと。”
引用元:グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度_運営規則|経済産業省 資源エネルギー庁(PDF)
また、再生可能エネルギーには、2つの価値があります。1つは電力そのものの価値、もう1つは温室効果ガスを排出しないという価値(環境価値)です。環境価値のみを切り離し、一般財団法人日本品質保証機構が証明書として具体化したものを「グリーン電力証明書」といいます。
- クリーンエネルギー:二酸化炭素などを排出しないエネルギー
- グリーンエネルギー:再生可能エネルギー
新エネルギーとは
3つめは、「新エネルギー」です。新エネルギーとは、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」に定められているエネルギーのことで、同法では、以下のように定義されています。
(引用元:新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法 | e-Gov法令検索)
同法の施行令には、具体的な10種類が定められています。
- バイオマス燃料製造
- バイオマス熱利用
- 太陽熱利用
- 海水、河川水などの熱利用
- 雪氷熱利用
- バイオマス発電
- 地熱発電
- 風力発電
- 水力発電(出力1,000kW以下)
- 太陽光発電
新エネルギーと他3つのエネルギーとの違いは、新エネルギーは普及が十分でないものに限られているという点です。しかし、現時点ではいずれのエネルギーも十分に普及しているとは言えない状況ですので、こちらもほぼ同語と理解して問題ないでしょう。
出典:新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令 | e-Gov法令検索
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クリーンエネルギーの種類
前述したように、クリーンエネルギーには決まった定義がありません。さまざまな意見がありますが、5つの再生可能エネルギー(太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマス)については、クリーンエネルギーに該当すると言えるでしょう。それぞれの特徴について解説します。
1.太陽光
太陽光発電は、太陽電池により太陽光を直接電気に変換する方法です。日本の平地面積あたりの導入量は世界一となっており、国内の再生可能エネルギーの主力として、導入が拡大しています。発電コストも着実に下がってきてはいるものの、今後はより低コスト化するための技術開発が必要です。
個人でも導入しやすい、遠隔地の電源や災害時の非常用電源として活用できるなどのメリットがある一方、気象条件により発電出力が左右されることや、災害時の事故や設置工事・メンテナンス不備などによる安全面の不安、景観や環境へ影響、廃棄の問題などの課題があります。
出典:大雨でも太陽光パネルは大丈夫?再エネの安全性を高め長期安定的な電源にするためには①|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁
2.風力
風力発電とは、風の力で風車の羽を回し、電気エネルギーに変換する発電方法です。2000年以降、導入件数は急激に伸びています。
大規模に発電できれば火力並みの経済性も確保できる可能性があること、風さえあれば昼夜を問わず発電できること、変換効率が良いなどのメリットがある一方、風力発電の導入に適した土地が限られていることや、騒音や事故、バードストライク(鳥の衝突事故)などの課題があります。
3.地熱
地熱発電とは、地下で熱せられた高温の蒸気を利用してタービンを回すことで発電させる方法です。日本は世界第3位の地熱資源量を有しており、今後の活用が期待されています。
発電後の高温蒸気・熱水は再利用が可能であること、枯渇する心配がない、昼夜を問わず発電できる、天候に左右されないなどのメリットがある一方、開発コスト・リスクが高い、地熱資源のある地域が偏っている、規制や地元の反対運動のためになかなか導入が進まないなどの課題があります。
4.中小水力
中小水力発電とは、河川の流水や農業用水、上下水道などを利用した、3万kW未満の規模の水力発電のことです。
自然条件によらず安定供給が可能であること、発電所は数十年稼働できること、多くの技術・ノウハウが蓄積しているなどのメリットがある一方、事業開始前の調査などに時間がかかること、コストがかかること、環境への影響や水利権の調整などの課題があります。
出典:水力発電は安定供給性にすぐれた再生可能エネルギー|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁
5.バイオマス
バイオマス発電とは、動植物などから生まれた生物資源を使って発電することです。木くずや畜ふん、汚泥や生ごみなどを活用している事例があります。
循環型社会の実現に寄与する、農山漁村や地域の活性化につながるなどのメリットがある一方、エネルギー利用可能なバイオマス資源が限られていること、発電コストが高いなどの課題があります。
出典:バイオマス発電|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー
これってクリーンエネルギー?原子力・ダム水力・水素について
温室効果ガスを排出しない、または非常に少ないエネルギーであるにもかかわらず、「クリーンエネルギーとは言えない」という意見が多いのが、原子力・ダム水力(大規模水力)・水素とアンモニア の3つです。
それぞれのエネルギーの特徴と、クリーンエネルギーに該当しないとされる理由について解説します。
1.原子力
原子力発電は、ウランの核分裂により発生する熱エネルギーで水を沸かし、その蒸気でタービンを回転させて発電する方法です。一度原子炉に入れたウランは1年間は使い続けること可能で、温室効果ガスも排出せず、経済性にもすぐれています。しかし、事故となれば大きな被害が発生します。2011年の福島第一原子力発電所の事故が発生して以降、日本国民の原子力に対する信頼は、まだ回復していません。
出典:原子力発電の特徴 | 原子力開発と発電への利用|一般財団法人日本原子力文化財団
出典:EU、原発を「グリーン」認定の方針 ドイツやオーストリアは反対 – BBCニュース
2.ダム水力(大規模水力)
ダム水力(大規模水力)は、水が高いところから流れ落ちる力を利用して発電する方法です。温室効果ガスを排出しない環境にやさしい発電方法ですが、ダムを建設するために多くの人々が立ち退きを強いられてきたことや、ダムの建設により環境が破壊されて生態系への影響がでることは、貯水池が二酸化炭素やメタンを放出しているという報告があることなどから、クリーンとは言えないという意見が多いのです。
出典:ダムが川と暮らしをこわす‐国際環境NGO FoE Japan(PDF)
3.水素
政府は水素・アンモニアを新たな資源として位置づけ、「水素社会」の実現を目指していますが、これに対してもさまざまな意見があります。それは、水素の製造工程で温室効果ガスが排出される場合があるからです。
水素は、製造方法により以下の3つに分類することができます。
- グレー水素(化石燃料をベースとしてつくられたもの)
- ブルー水素(化石燃料をベースとしているが、温室効果ガスの排出量を削減する手法でつくられたもの)
- グリーン水素(再生可能エネルギーなどからつくられたもの)
グリーン水素でなければ、環境に対して「クリーン」とは言えないという意見が多いのです。
出典:次世代エネルギー「水素」、そもそもどうやってつくる?|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁
クリーンエネルギーが注目される理由
クリーンエネルギーが大きな注目を集めている理由は、2つあります。1つは地球温暖化、もう1つは、日本ならではのエネルギー問題があるからです。それぞれについて解説します。
1.地球温暖化
地球温暖化によるものと思われる異常気象が、世界各地で頻発するようになりました。地球温暖化は、これまでにない速さで進んでいると言われています。地球温暖化の原因となるのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスです。
2020年度の日本の温室効果ガスの排出量は、11億4,900万トン(速報値)でした。内訳を見てみると、二酸化炭素は10億4,400万トンで、このうち9億6,700万トン(84.2%)が、エネルギー起源によるものとなっています。
パリ協定(※1)やSDGs(※2)を達成するためには、カーボンニュートラルの実現が不可欠ですが、そのためには、温室効果ガスの大部分を占めるエネルギー起源の二酸化炭素が占める割合を、低減させていかなければならないのです。
2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された、気候変動問題に対する2020年以降の国際的な枠組みです。世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比較して2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること目標としています。
2015年の国連サミットで採択された2030年までの国際目標、「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。さまざまな課題に対する17のゴールと169のターゲットが設定されています。
出典:2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について|国立環境研究所(PDF)
2.日本が抱えるエネルギー問題
日本は世界と比べてもエネルギー自給率が低い国です。2018年度は11.8%、OECD(経済協力開発機構)諸国35ヵ国中34位となっています。現在の日本は化石燃料に大きく依存しており、資源の輸入先も特定の地域に偏っています。このような状態は、国際情勢の影響を受けやすく、供給が不安定になってしまう可能性があるのです。
原因としては、国内のエネルギー資源が乏しいことと、日本ならではの気候的・地理的な問題から、世界に比べて再生可能エネルギーが十分に普及していないことが挙げられます。
出典:2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁
クリーンエネルギーに関する政府の取り組み
クリーンエネルギーを普及・拡大させていくため、政府はさまざまな取り組みを進めています。そのなかから、再生可能エネルギーの導入を推進するための「FIT制度・FIP制度」、策定に向けて議論が進められている「クリーンエネルギー戦略」を紹介します。
FIT制度・FIP制度
2012年からスタートしたFIT制度(固定価格買取制度)とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、固定価格で一定期間買い取ることを、国が電力会社に義務付けた制度です。この制度により、日本でも再生可能エネルギーの導入がかなり進みました。電力の買取費用の一部は、「賦課金」という形ですべての電力利用者から徴収される仕組みとなっており、この額が、2021年度には2.7兆円に達する見込みです。今後、再生可能エネルギーをより普及・拡大させていくためには、このような負担をできるだけ少なくしていかなければなりません。
そこで、2022年4月からは、FIP制度が始まりました。FIT制度との違いは、下図のとおりです。
出典:再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁
FIT制度では固定価格で買い取られていた電力を、FIP制度では、市場価格にプレミアムを上乗せした金額で買い取ります。これにより、電力システム全体のコスト低減が期待できるとされています。
出典:もっと知りたい!エネルギー基本計画① 再生可能エネルギー(1)コスト低減、地域の理解を得てさらなる導入拡大へ|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁
クリーンエネルギー戦略
クリーンエネルギー戦略とは、岸田政権が策定に向けて議論を進めている、温暖化対策を経済成長につなげる戦略のことです。
日本は、2050年カーボンニュートラル、2030年温室効果ガス46%削減という目標を掲げています。これを達成するために、事業者それぞれ、国民一人ひとりが、炭素中立型のライフスタイルに転換していくための、具体的な筋道を示すことを目的としています。
脱炭素にかかわる重要戦略として、「グリーン成長戦略」と「エネルギー基本計画」があります。これらとの関係性は、下図のとおりです。
クリーンエネルギー戦略の論点は、各分野でのエネルギー移行策、水素・アンモニアを活用するための環境整備、原子力の将来像などです。政府は、2022年6月をめどに取りまとめるとしています。
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- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
クリーンエネルギーには明確な定義はありませんが、再生可能エネルギーやグリーンエネルギー、新エネルギーとほぼ同じ意味合いで用いられています。
日本ならではのエネルギー問題があるように、国や地域によってエネルギー事情は異なります。しかし、地球温暖化はこれまでにない速さで進んでいます。可能な限り世界と歩調を合わせ、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいかなければなりません。
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この記事を書いた人
あらたこまち
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。