企業がSDGs宣言をするメリットとは?作り方をテンプレート付きで紹介
日本企業の間にも、SDGsがかなり浸透してきました。近年、SDGsの方針や取り組み内容などを「SDGs宣言」として文書にまとめ、自社ホームページなどで公開する企業が増えています。なぜ、改めて宣言する必要があるのでしょうか。
今回は、SDGs宣言の概要や目的、企業がSDGs宣言を行うメリット、宣言までの流れや、宣言書の作り方、宣言を行う際の注意点まで、わかりやすく解説します。
SDGsのはじめの一歩を実現する「SDGsの社内浸透方法」とは?
\SDGsイベント・研修向け体験型アクティビティの資料はこちら/
SDGs宣言とは
SDGs宣言とは、企業や団体が、SDGs達成に向けてこれから取り組むこと、またはすでに取り組んでいることを、文書にまとめて外部に公表することをいいます。
SDGs宣言に決まったルールはありませんが、自治体でSDGs宣言の制度が構築されている場合は、宣言書の様式や、宣言の方法などが決められていることが多いです。企業単独でもSDGs宣言を行うことは可能ですが、自治体の制度を利用したほうが、自治体のホームページに宣言書を掲載してもらえたり、広報で特集を組んでもらえたりすることがあるため、企業のSDGsの取り組みをより広くPRできるでしょう。
政府は、地方創生SDGsに取り組む地域の企業や団体を見える化し、自律的好循環を形成するために、自治体に「地方創生SDGs登録・認証等制度」の構築を促しており、「宣言」も、この制度の一つのモデルとして示されています。
「地方創生SDGs登録・認証等制度ガイドライン2020 年度【第一版】」によると、「宣言」とは地域の企業などが地方創生SDGsに取り組む意思を宣言するものであり、そうした企業などを奨励することが宣言制度を構築する目的であるとしています。
参考:地方創生SDGs|地方創生SDGs・地方創生SDGs官民連携プラットフォーム・「環境未来都市」構想(内閣府)
SDGsの社内浸透にお困りですか? SDGsコンパスなら体験を通してSDGsを楽しく学べます!
企業がSDGs宣言を行うメリット
SDGs宣言を行うことで、企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。期待できる3つの効果を紹介します。
消費者・顧客に選ばれやすくなる
SDGsの広がりとともに、世界のさまざまな社会課題や環境問題に対する意識が高まっており、消費者や顧客の価値観も変化しています。商品やサービスの質や値段だけでなく、「SDGsに配慮した商品やサービスを購入したい」という意見や、必要以上に買わない、長く使用する、リサイクルできるものを選ぶといった消費行動をとる人が増えているのです。人や社会、環境に配慮した消費行動は「エシカル消費(倫理的消費)」と呼ばれており、日本でも関心が高まりつつあります。
SDGs宣言を行うことで、「SDGsに取り組んでいる企業である」ことを、消費者や顧客にアピールできます。企業イメージが向上し、自社の商品やサービスが選ばれやすくなることが期待できるでしょう。
企業としての信頼度が上がる
SDGsに最大限貢献するためには、企業単独の力では限界があります。そのため、自社だけでなく、グループ企業や取引先に対して、SDGsへの取り組みや地域貢献活動など、サステナブルな行動を求める企業も増えています。中には、二酸化炭素(CO2)排出量削減目標数値をアンケートとして求められるケースもあるそうです。
このような中で、自社の利益ばかりを追求した経営を続けていては、取引を打ち切られてしまうことがあるかもしれません。SDGs宣言を行うことで、企業としての信頼度が上がり、取引先と関係強化につながると考えられます。また、新規取引先の獲得など、新たなビジネスチャンスにつながる可能性もあるでしょう。
人材を確保しやすくなる
2020年度から順次実施されている新学習指導要領の前文と総則には、「持続可能な社会の創り手となる」ことが盛り込まれており、学校の授業や試験にSDGsが取り入れられるようになってきています。そのため、若い世代はSDGsへの関心が高く、「社会課題に向き合っている企業かどうか」という点を重視して就職先を選ぶ人も多いのです。SDGs宣言は、採用活動時のアピール要素にもなると考えられます。
また、SDGs宣言を行うことで、既存社員にも「企業としてSDGsに積極的に取り組んでいく」という方向性を示すことができます。社員が自身の業務とSDGsとのつながりが理解できれば、やりがいが生まれ、モチベーションの向上や、離職率の低下といった効果も期待できるでしょう。
SDGs宣言までの3ステップ
SDGs宣言を行うことで、さまざまなプラスの効果が期待できることがわかりました。では、実際にSDGs宣言を行うためには、一体何から始めれば良いのでしょうか。ここからは、SDGs宣言までを3ステップに分けて解説します。
ステップ1:優先課題を決める
SDGs宣言は、企業としてSDGs達成に向けてこれから取り組むこと、またはすでに取り組んでいることを、外部に宣言することです。すでにSDGsに取り組んでいるという企業は、あとは宣言書を作成して公開するだけですので、ステップ3に進んでください。
SDGsにまだ取り組んでいないという企業は、SDGsにどのように取り組んでいくかを明確にしなければ、宣言することはできません。まずは、自社が取り組む優先課題を決定するために、SDGsへの理解を深め、自社の事業を分析します。そして、自社の事業とSDGsの17の目標とを紐付けて、優先的に取り組む課題を決めましょう。
SDGsと自社の事業との関連性がなかなか見えない場合は、事業を推進するための経営改善の取り組みや、本業以外で取り組んでいることにも目を向けてみてください。たとえば、女性社員が仕事と育児を両立しやすいように独自の休暇制度を設けているなら、それ自体が目標5「ジェンダー平等を達成しよう」への貢献につながると考えられます。
このプラスの効果をより大きくするにはどうしたら良いのか、マイナスの効果があるなら、それを改善するにはどうしたら良いのかを検討することで、SDGsへの取り組み方が見えてくるはずです。
ステップ2:目標と計画を策定する
次に、ステップ1で設定した優先課題に対してどのように取り組んでいくのか、具体的な目標と計画を策定します。実際に取り組みを進めていくためには、事業のプロジェクトなどと同様に、明確な目標と達成に至るまでの計画が必要です。
目標を設定する際は、自社の過去のデータや同業他社の目標を基準にするのではなく、「社会から自社は何を求められているか」という視点で考えてみましょう。このようなアプローチ法を、「アウトサイド・イン・アプローチ」といいます。アウトサイド・イン・アプローチで意欲的な目標を設定し、現状の達成度とのギャップを埋めていく努力をすることが、新たなイノベーションの創出につながります。
参考:SDGsの企業行動指針‐SDG Compass (PDF)
ステップ3:SDGs宣言を作成し公表する
企業としてどのようにSDGsに取り組んでいくか、方針が固まったら、最後はいよいよSDGs宣言書を作成します。宣言書の作り方は、次項で詳しく解説します。
作成した宣言書は、自社のホームページなどに掲載して外部に公表しましょう。また、SDGs宣言を行うことで、社員のモチベーションや働きがいの向上という効果も期待できます。外部だけでなく、社内でもSDGs宣言書をしっかり共有し、社員一人ひとりに自社のSDGsの方針を理解してもらいましょう。
SDGs宣言書の作り方
ここからは、SDGs宣言書の作り方を紹介していきます。
【テンプレート】SDGs宣言書に記載する項目
冒頭でも説明したように、SDGs宣言に決まったルールはなく、必ず記載しなければならない項目というものもありません。しかし、自治体でSDGs宣言の制度が構築されている場合は、宣言書の様式や宣言の方法が決められている場合が多いので、まずは自治体に宣言の制度があるか、ホームページなどで確認をしてみてください。
ここでは一例として、SDGs宣言書に記載されている項目を紹介します。
- タイトル(社名+SDGs宣言)
- 宣言文
- 宣言した日
- 社名+代表取締役の名前
- 取り組み+関係するSDGsの目標
- SDGsの概要
以下は、SDGs宣言書のテンプレートです。
株式会社○○○ SDGs宣言 当社は、SDGs(持続可能な開発目標)に賛同し、事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを宣言します。 20××年××月××日 株式会社〇〇〇 代表取締役 〇〇〇〇 ~~~~以下に取り組みます。~~~~ 【プラスチック削減】プラスチックごみを削減し海洋汚染を防ぎます。 ・使い捨てプラスチック容器を紙素材に変更する。 ・プラスチック製アイキャッチシールを廃止する。 (目標12「つくる責任 つかう責任」、目標14「海の豊かさを守ろう」) 【気候変動対策】CO2排出量を削減し、事業活動に伴う環境負荷を低減します。 ・本社社屋に太陽光パネルを設置し、自家発電を行う。 ・社用車を電気自動車へ移行する。 (目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標13「気候変動に具体的な対策を」) 【ダイバーシティの推進】社員一人ひとりが持てる能力を十分に発揮し、いきいきと働ける職場環境をつくります。 ・独自の育児休暇制度を創設する。 ・フレックスタイム制をはじめ、多様な働き方を整備する。 ・日本人社員と外国人社員がお互いの文化を理解するための交流会を定期的に開催する。 (目標5「ジュエンダー平等を実現しよう」、目標8「働きがいも 経済成長も」) 【地域貢献】地元の人材や、地元の材料、食品などを積極的に活用し、地域活性化に貢献します。 ・行政と連携し、U・Iターン人材を積極的に採用する。 ・地産地消を推進する。 (目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」)
~~~~SDGs(持続可能な開発目標)とは~~~~ SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年9月の国連サミットで採択された国際目標です。2030年までに、誰一人取り残さない持続可能でより良い世界を実現することを目指しています。貧困や飢餓、ジェンダー問題、地球環境問題など、さまざまな社会課題に関する17の目標と169のターゲットで構成されています。 |
銀行のサポートサービスを利用する方法もある
SDGs宣言を行う方法としては、「自治体のSDGs宣言制度を利用する」、「企業単独で宣言書を作成して外部へ発信する」のほかに、「銀行のSDGs宣言サポートサービスを利用する」という方法もあります。銀行のSDGs宣言サポートサービスは、取引のある企業や個人事業主を対象としたサポートサービスで、多くが以下のような流れで進められます。
- ヒアリングにより現在のSDGsの取り組み状況を整理
- SDGs宣言書の作成支援
- PRに活用
銀行のSDGs宣言サポートサービスを利用する場合も、宣言書の様式や宣言方法が決められている場合がほとんどです。費用はかかりますが、現在のSDGsの取り組み状況の整理からサポートしてもらえるので、「SDGsに取り組みたいが何から手を付けて良いかわからない」という人は、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
また、自治体のSDGs宣言制度を利用する場合同様、作成したSDGs宣言書を、サポートを受けた銀行のホームページに掲載してもらえる場合もありますので、企業単独で行うよりも、SDGsの取り組みを広くPRできます。費用はサポートの範囲にもよりますが、税込み110,000円~としている銀行が多いです。
SDGs宣言を行う際の注意点
SDGs宣言を行うことで、消費者や顧客に選ばれやすくなる、企業としての信頼度が向上する、人材を確保しやすくなるなど、さまざまなプラスの効果が期待できます。逆に、SDGs宣言を行うことにより、何かデメリットが生じる可能性はあるのでしょうか。最後に、SDGs宣言を行うときの注意点を2つ紹介します。
「宣言しただけ」で終わらない
SDGs宣言をしたあとは、具体的な取り組みや進捗状況などの情報を定期的に発信し、透明性を確保していかなければなりません。宣言しただけで終わってしまったり、宣言の内容と実際の取り組みが乖離していたりすると、企業イメージの向上どころか、逆に「SDGsウォッシュだ」と批判を受ける可能性もあります。
「SDGsウォッシュ」とは、SDGsと「ごまかし」や「粉飾」を意味する英単語「whitewash」を組み合わせた造語です。実態がない、または実態以上にSDGsに取り組んでいるように見せかけたり、SDGsに関する不都合な事実を発信しなかったりすることを指します。SDGsウォッシュについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
SDGsウォッシュが企業に与えるダメージとは?事例と対策を紹介
SDGsへの取り組みから新たなイノベーションを生み出すために、アウトサイド・イン・アプローチで意欲的な目標を設定することはもちろん大切ですがが、その目標が達成できなかった場合には、批判の対象となるリスクがあるということも理解しておかなければなりません。定期的に情報を発信することで、このリスクを軽減することができます。
また、SDGsの取り組みを確実に推進するために、自治体によっては、SDGs宣言を行った後に定期的な進捗報告を求めているところもあります。
ロゴはルールを守って使用する
自治体のSDGs宣言制度や、銀行のSDGs宣言サポートサービスを利用せず、企業単独で宣言書を作成する場合は、SDGsのロゴやアイコンの使用ルールに注意しましょう。
SDGsのロゴや各目標のアイコンは、商業用途および資金調達目的以外の用途であれば、誰でも使用できます。許可申請も不要です。しかし、使用する際の細かいルールが定められています。たとえば、ロゴやアイコンの色を決められた色以外に変更することや、書式を変更すること、加工すること(拡張する、陰を付ける、斜角を付けるなど)は禁止されています。目を引く宣言書にしたいからといって、デザインにこだわるあまりルール違反とならないように気を付けましょう。
SDGsのロゴや各目標のアイコンと、使用時のルールがまとめられたガイドラインは、国連広報センターのページからダウンロードできます。
SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン | 国連広報センター
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
概要
- SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
- 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
- オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化
特徴
- 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
- チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
- 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる
【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)
概要
- 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
- 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
- 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能
特徴
- あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
- 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)
概要
- 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
- 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
- すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント
特徴
- ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
SDGs宣言を行うことで、企業は「SDGsに積極的に取り組んでいる企業である」ことを外部にアピールできます。企業のイメージや社会的価値が向上し、さまざまなプラスの効果が期待できるでしょう。また、SDGs宣言を社内で共有することで、社員に対しても企業としてのSDGsの方針を明確に示すことができます。
しかし、宣言した内容を達成できなかったときには、批判の対象となるリスクを背負うことになるという点は理解しておかなければなりません。「宣言しただけ」の企業にならないよう、まずはしっかりと目標と計画を策定しましょう。そして、宣言後は計画を確実に実行し、定期的に情報を発信し続けることが大切です。
SDGs宣言に決まったルールはありませんが、自治体でSDGs宣言の制度が構築されている場合は、様式やルールが決まっていることが多いです。企業単独でも宣言は可能ですが、自治体と連携して宣言を行うほうが、SDGsの取り組みをより広くPRできますので、まずは自治体のホームページをチェックしてみてはいかがでしょうか。
SDGsのはじめの一歩を支援するSDGsイベント・研修とは?
SDGsのはじめの一歩を実現する「SDGsの社内浸透方法」とは?
進めるための具体的なステップを紹介!
自分ゴト化を促進!3分で分かるSDGs研修・イベントサービスの詳細動画
\SDGsイベント・研修向け体験型アクティビティの資料はこちら/
【関連記事】
SDGsとは
この記事を書いた人
あらたこまち
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。