「5つのP」とは?SDGsを理解するために役立つ考え方を知っておこう

日本でも取り組みが広がる「SDGs(持続可能な開発目標)」。世界のあらゆる社会問題を解決するための、国際目標です。SDGsには、17の目標と169ものターゲットが設定されており、すべてを覚えて理解するということはなかなか難しいでしょう。
SDGsの「5つのP」とは、17の目標をPeople(人間)、Prosperity(豊かさ)、Planet(地球)、Peace(平和)、Partnership(パートナーシップ)に分ける考え方です。
本記事では、「5つのP」について、わかりやすく解説します。また、SDGsへの理解を深めるために役立つ、他のキーワードも紹介します。
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SDGs「5つのP」とは?
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、「2030アジェンダ」という文書に掲げられている、世界共通の目標です。貧困や人権、地球環境など、世界が抱えているさまざまな課題が含まれています。193の国連加盟国は、2030年までにSDGsを達成し、よりよい未来を実現することを目指しています。
「2030アジェンダ」の前文・宣言の部分には、SDGsの必要性や決意、未来のビジョンなどが記載されており、「5つのP」についても明記されています。「5つのP」とは、この前文に記載されている、“People(人間)”、“Prosperity(豊かさ)”、“Planet(地球)”、“Peace(平和)” 、“Partnership(パートナーシップ)”という、5つの決意のことです。
SDGsには、互いに関連する17の目標が設定されていますが、これらをすべて覚え、関連性を理解することはなかかなか難しいことです。そこで、17の目標を「5つのP」に分類して考えてみることで、複雑なSDGsの全体像をイメージしやすくなります。
出典:SDGsを広めたい・教えたい方のための「虎の巻」‐国際連合広報センター P.4より引用(PowerPoint)
この図は、国連広報センターのホームページに掲載されている“SDGsを広めたい・教えたい方のための「虎の巻」”という資料のものです。資料では、「2030アジェンダ」と17の目標について、概括的に紹介されています。
- ※「2030アジェンダ」とは
「2030アジェンダ」とは、2015年9月、ニューヨークの国連本部で開催された国連サミットで採択された文書で、正式名称は「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。外務省のホームページに仮訳が掲載されており、誰でも閲覧及びダウンロードすることができます。「2030アジェンダ」は、「前文」「宣言」「SDGs」「実施手段とグローバル・パートナーシップ」「フォローアップとレビュー」という5つの項目で構成されています。
SDGsの17の目標は、「5つのP」に分類することができます。各目標と世界の現状及び課題を、項目ごとに紹介します。
People(人間)
貧困と飢餓を終わらせ、すべての人が衛生的な環境の下で暮らし、教育を受けることができるようにすること、すべての人が尊厳を持ち、平等に、持てる潜在能力を発揮できるようにすることが、決意されています。
ここに分類されるのは、貧困や人権に関する目標で、以下の6つです。
- 目標1:貧困をなくそう
- 目標2:飢餓をゼロに
- 目標3:すべての人に健康と福祉を
- 目標4:質の高い教育をみんなに
- 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
- 目標6:安全な水とトイレを世界中に
あらゆる形態の貧困は、極めて重要な課題です。SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)では、極度の貧困(1日1.25米ドル未満)で暮らす人々や、途上国などにおける栄養不良の人々の割合をほぼ半減させるなど、成果が見られました。しかし、今でも多くの人々が貧困・飢餓の状態にあり、安全な水や衛生へアクセスすることができず、教育や、十分な医療を受けることができない環境で暮らしています。
また、貧困は、途上国だけの問題ではありません。社会経済が急速にグローバルな発展をしていくなかで、日本を含む先進国の、都市部における貧困や格差も浮き彫りになってきました。女性に対する差別や暴力、意思決定への参加も、まだまだ男女平等とはいえない状況で、ジェンダー問題も大きな課題となっています。
「2030アジェンダ」が採択されてから丸6年が経過し、各目標で前進が見られていましたが、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けました。極度の貧困で暮らす人々はこの数十年で初めて増加し、飢餓・栄養不良の悪化、医療現場の混乱、読解力の低下、女性に対する暴力や家事・育児等の負担の増加など、停滞または逆戻りしてしまっている現状があります。
▼MDGsについてはこちらの記事も参照
MDGsとは?SDGsとの違い、経緯や成果を解説
Prosperity(豊かさ)
すべての人々が、豊かで充実した生活を送れるよう、経済・社会・技術を、自然と調和させながら進展させていくことが、決意されています。
ここに分類されるのは、暮らしや経済に関する目標で、以下の5つです。
- 目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 目標8:働きがいも 経済成長も
- 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
- 目標10:人や国の不平等をなくそう
- 目標11:住み続けられるまちづくりを
2019年の時点で、世界の7億5900万人の人々が、いまだに電力を利用できていません。しかしながら、1人当たりのエネルギー需要は増加しており、現在のエネルギーシステムでは、将来にわたり持続していくことは不可能なレベルに達しています。
また、エネルギーは、温室効果ガス排出量の大部分を占めており、このままでは、地球環境も限界を迎えてしまうでしょう。環境への負担が少ない、持続可能なエネルギーシステムの構築が急がれます。
また、電力だけでなく、インフラやインターネット環境が整備されていないなど、開発が遅れている地域が世界には多く存在しており、経済成長の速度や、産業・技術のレベルには、国や地域で大きな格差があります。この格差を埋め、すべての人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい雇用)を実現するためには、資金や技術等あらゆる面で、先進国の支援が必要です。
強制労働、人身売買、児童労働なども大きな問題で、SDGsは、これらを撲滅することを目指しています。また、途上国では、発展する都市部へ移住する人が多く、人口の集中、貧困、スラム地区の改善なども課題です。
さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で、世界経済は大きな打撃を受けました。景気は回復しているものの、元の水準に戻るには数年かかるとみられています。
Planet(地球)
未来にわたって地球で暮らしていくために、持続可能な消費、生産、天然資源の管理、気候変動への緊急な対応など、地球環境を守ることが、決意されています。
ここに分類されるのは、地球環境に関する目標で、以下の4つです。
- 目標12:つくる責任 つかう責任
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標14:海の豊かさを守ろう
- 目標15:陸の豊かさも守ろう
近年、地球温暖化によるものと考えられる異常気象が発生することが増えました。「サステナブル」や「カーボンニュートラル」など、地球環境の問題に関する言葉を耳にすることも多くなり、世界の環境問題に対する意識の高まりを感じます。
国連広報センターが発表している「持続可能な開発目標(SDGs)報告2021」によると、森林管理や気候ファイナンスの増加など、一部の取り組みでは前進もみられます。
しかし、マテリアル・フットプリント(採掘された資源の量を表すもの)や、海のデッドゾーン(海洋生物が生息できない海域)、絶滅の危機に瀕している生物種の割合はいずれも増加しており、地球の平均気温も速いスピードで上昇しています。2015年に採択された「パリ協定」では、地球の平均気温上昇を、産業革命前の1.5℃に抑えることが世界の共通目標とされていますが、達成のめどが立っていない状況です。
地球は今、危機的な状況にあること一人ひとりが自覚し、できることから取り組んでいかなければなりません。
▼環境問題についてはこちらの記事も参照
SDGsと環境問題の関係は?解決するためにできること
Peace(平和)
恐怖と暴力をなくし、平和的であり公正で、すべての人で社会を育んでいくことが、決意されています。平和なくして持続可能な開発はあり得ず、逆も同じことがいえるとされています。
ここに分類される目標は、1つのみです。
- 目標16:平和と公正をすべての人に
世界には、対立や紛争が起きている国や地域が多く存在しています。また、法律や制度が整っていない地域では、暴力や犯罪が蔓延し、多くの人が理不尽に犠牲になっています。SDGsは、あらゆる暴力や犯罪をなくし、人権を守るしっかりとした制度を構築し、すべての人が司法を利用できるようにすることを目指しています。
近年は、判決手続きのないままに拘留される人の割合はやや減少、国内の人権機関を有する割合の増加など、進歩も見られます。しかし、国連広報センターの2021年の報告によると、児童労働がこの20年間で初めて増加するなど、ここにも新型コロナウイルス感染症が影響しています。
また、途上国だけの問題だと感じてしまいがちですが、DVや虐待などの家庭内暴力、障がい者や無国籍者などの立場の弱い人々の権利の問題など、日本もさまざまな課題を抱えているのです。
Partnership(パートナーシップ)
すべての国や政府、国際機関や、企業、団体など、すべての人が参加する「持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップ」を通じて、アジェンダを達成することが決意されています。
ここに分類される目標は、1つのみです。
- 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
目標17は、主に開発途上国を支援するために、資金・貿易・技術と能力の面でパートナーシップを強化することが示されています。「Prosperity(豊かさ)」の項目でも触れたように、途上国は、自国の力だけでは解決することが難しい問題を多く抱えており、先進国の助けが必要なのです。
「パートナーシップ」は、SDGsのあらゆる場面で強調されている、非常に重要なキーワードです。例えば、「SDG Compass(SDGsの企業行動指針)」という、企業のためのSDGsガイドのなかでは、SDGsを経営に統合するステップのひとつとして、「パートナーシップに取り組む」という項目があります。
SDGsの課題は、企業や団体単独の力では効果的に対処することが難しく、最大限貢献するためにも、内部だけでなく、外部のステークホルダー(利害関係者)とのパートナーシップに取り組むことが推奨されています。
出典:パートナーシップで目標を達成しよう | 国連広報センター
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SDGsを理解するために役立つキーワード
SDGsを理解するために役立つキーワードは、「5つのP」だけではありません。「SDGs」と合わせて、特に耳にすることが多いキーワードを、3つピックアップして紹介します。SDGsが目指す持続可能な未来をイメージして、自分にできることは何があるのか考えてみましょう。
誰一人取り残さない
「誰一人取り残さない」。この言葉は、「2030アジェンダ」の宣言に記載されています。
SDGsの前身ともいわれているMDGsでは、途上国の課題解決を目指して多くの成果を上げました。しかし、例えば「乳幼児死亡率の削減」など達成できなかった目標もあります。また、グローバル化する社会のなかで、途上国だけでなく、先進国の貧困や格差、人権などの問題も明らかになりました。
SDGsでは、こうしたすべての人々を含めて、誰一人取り残すことなく、持続可能な未来を目指しています。国連広報センターの「持続可能な開発目標(SDGs)報告2021」に、17の目標に加えて、「誰一人取り残さない」の項目が加えられていることからも、非常に重要なSDGsのスローガンであることがわかります。
報告によると、障がい者のうち、これまでに何らかの差別を受けた経験がある人の割合は3人に1人、特に女性に多いとされています。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で、観光収入を主要財源としている小島嶼開発途上国などは、大きな打撃を受けました。また、保健分野の不平等も拡大するなど、新たに取り残されてしまっている人が出てきている現状があります。
経済・社会・環境
「2030アジェンダ」前文で、持続可能な開発の三側面、「経済」「社会」「環境」を調和させると記載されています。
これまで、経済活動を重視するあまり、環境や人権、健康が犠牲になってしまうことがありました。身近な例では、中国の大気汚染問題があります。急速な工業化によりエネルギーの消費が拡大し、町は濃霧に覆われ、PM2.5は日本にも運ばれてきています。環境への悪影響はもちろんのこと、中国では国民の健康被害も問題となっています。
また、開発途上国の環境問題も大きな課題です。貧困を解消するために経済の発展は不可欠ですが、それと引き換えに、大気汚染が深刻な状況になっています。しかし途上国は、環境問題に対応する資金的な余裕や技術もなく、環境への配慮が後回しになってしまうのです。
経済や社会は、地球環境のうえに成り立っています。3つの要素を並び立たせることは容易ではありませんが、いずれかを犠牲にするようでは、持続可能な開発の実現は不可能なのです。
出典:RIETI – 深刻化する環境問題― 危機から商機へ ―
5つの主要原則
SDGsへ取り組むにあたって、「普遍性」、「包摂性」、「参画型」、「統合性」、「透明性と説明責任」という5つの主要原則があります。
日本政府は2016年12月、「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」を決定しました。そのなかでも、この5つの主要原則を重視し取り組むと記載されています。
- 普遍性
国内実施と国際協力の両面で率先して取り組む。国内での取り組みは、国内だけでなく、国際目標の達成にも寄与する可能性があり、逆に国際協力は、国内の繁栄にもつながる。 - 包摂性
女性や子ども、障がい者や高齢者など、弱い立場に置かれた人々に最初に手が届くように焦点を当て、保護及び能力強化のための支援を行い、さらに、人権の尊重、ジェンダー平等も実現する。 - 参画型
弱い立場に置かれた人々を取り残さないだけでなく、そのような人たちも一人ひとりが当事者となり、全員参加型で取り組む。 - 統合性
経済・社会・環境の三分野の関連を重視しつつ、統合的解決の視点を持ち、異なる優先課題を有機的に実施する。 - 透明性と説明責任
取り組みを定期的に評価、公表し、説明責任を果たす。
実施指針は、2020年12月に一部を改定され、外務省のJAPAN SDGs Action Platformに掲載されています。改定版では、これまでの取り組みの分析・評価もされており、行動をより加速・拡大しSDGsの達成に取り組むとしています。
SDGs研修・体験型SDGsイベント
【SDGs研修】ワールドリーダーズ(企業・労働組合向け)
概要
- SDGs社会に合わせた企業経営の疑似体験ができるSDGsビジネスゲーム
- 各チームが1つの企業として戦略を立てて交渉し、労働力や資金を使って利益最大化を目指す
- オプションとして「SDGsマッピング」を行うことで学びの定着・自分ごと化
特徴
- 自分達の利益を追求しつつも、世界の環境・社会・経済も気にしなければならず、ビジネス視点からSDGsを感じ、考えることができる
- チームで戦略を練り様々な可能性を話し合う必要があるため、深いチームビルディングに繋がる
- 様々な選択肢の中から取捨選択して最適解を導く考え方を身につけることができる
【親子参加型職業体験イベント】キッズタウンビルダーズ(商業施設・企業・労働組合向け)
概要
- 体験を通じてSDGs目標の「質の高い教育」を学べる親子参加型ワークショップ
- 子どもが楽しみながらも本気で学べる、複数の職業体験を実施
- 会議室やホールなど企業様のイベントとしても開催可能
特徴
- あえて「映える」職業ではなくありふれた職業を選定している
- 合計で就業人口の7割を占める上位5つの職業をピックアップし、本質的な学びが得られる職業体験
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
【親子・子ども向け地域イベント】SDGsアドベンチャー(商業施設・自治体向け)
概要
- 体験を通じてSDGsを学べる親子・子ども向けワークショップ
- 子どもが本気で楽しめる複数の体験型アクティビティを実施
- すべてクリアした方にSDGs缶バッチをプレゼント
特徴
- ハッピーワールドの世界観を演出することで参加者が没入感をもって取り組める
- 海の環境やゴミの分別・再利用など、参加者は身近なことからSDGsを学べる
- ファミリーが高い関心を持つテーマ性のあるイベントで集客・施設周遊を促進
まとめ
SDGsの「5つのP」、そしてSDGsを理解するために役立つキーワードについて解説しました。複雑なSDGsですが、このようなキーワードを通して考えてみると、「持続可能な開発」とは何なのか、全体像がイメージしやすくなります。
SDGsは「2030アジェンダ」という文書の一部です。SDGsがどのような未来を目指しているのか理解するためにも、SDGsの17の目標と169のターゲットだけでなく、「2030アジェンダ」全体を読んでみるのもおすすめです。
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進めるための具体的なステップを紹介!
自分ゴト化を促進!3分で分かるSDGs研修・イベントサービスの詳細動画
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この記事を書いた人
あらたこまち
雪国生まれ、関西在住のライター・ラジオパーソナリティ・イベントMC。
不動産・建設会社の事務職を長年務めたのち、フリーに転身。ラジオパーソナリティーとしては情報番組や洋楽番組を担当。
猫と音楽(特にSOUL/FUNK)をこよなく愛し、人生の生きがいとしている。好きな食べ物はトウモロコシ。
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